2015.05.25 | ニュース

前立腺がんの治療が認知能力に影響する?

アンドロゲン除去療法についての観察研究
from Journal of clinical oncology : official journal of the American Society of Clinical Oncology
前立腺がんの治療が認知能力に影響する?の写真
(C) Ljupco Smokovski - Fotolia.com

前立腺がんの治療にアンドロゲン除去療法というものがあります。アンドロゲン除去療法が、認知症の症状のような認知能力低下のリスクを増やすという説がありますが、その是非ははっきりわかっていませんでした。アメリカの研究で、アンドロゲン除去療法を受けている人とそうでない人を追跡調査した結果、アンドロゲン除去療法を受けている人では確かに認知能力低下が多かったことが報告されました。

◆アンドロゲン除去療法とは

前立腺がんの治療には、前立腺を取り除く手術(前立腺摘除術)、放射線療法などのほか、がんの進行に関係するホルモンの量をコントロールする、ホルモン療法と呼ばれるものがあります。

アンドロゲン除去療法はホルモン療法のひとつです。前立腺がんはアンドロゲン(男性ホルモン)があるときのほうが進行しやすい性質があるため、精巣からアンドロゲンが分泌される働きをホルモン剤で抑えたり、精巣を手術で取り除くことによって、前立腺がんの進行を抑えることができます。これがアンドロゲン除去療法です。

 

◆アンドロゲン除去療法で治療中の人、手術を受けた人、前立腺がんがない人を比較

研究班は、アンドロゲン除去療法を受けている前立腺がん患者58人の認知能力を治療開始時、治療開始後6か月、治療開始後12か月に検査し、前立腺がんに対して前立腺摘除術だけの治療を受けた人84人、また前立腺がんがない男性88人の認知能力と比較しました。

 

◆認知能力低下が多かった

調査の結果は次のようなものでした。

アンドロゲン除去療法を受けている人は、すべての対照群に対して経時的に認知能力低下が起こる率が高かった(P=0.01)。グループによって治療開始時点での認知能力に違いはなかったが(P>0.05)、アンドロゲン除去療法を受けている人は6か月(P<0.05)、12か月(P<0.05)時点で認知能力低下を示すことがより多かった。

アンドロゲン除去療法を受けている人は、前立腺がんに対して前立腺摘除術を受けた人と比べても、前立腺がんがない人と比べても、認知能力低下が多いという結果でした。

 

この研究だけで、「アンドロゲン除去療法には認知能力低下のリスクがある」と判断することはできません。

治療開始時の認知能力がどのグループでも同程度だったことは確かめられていますが、その後認知能力低下を起こしやすい要因のある人が、アンドロゲン除去療法を受ける場合が多かったという可能性は否定できません。

この点については、アンドロゲン除去療法を受けるかどうかをランダムに決める研究が行われれば、より明確な情報が得られそうです。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Course and Predictors of Cognitive Function in Patients With Prostate Cancer Receiving Androgen-Deprivation Therapy: A Controlled Comparison

J Clin Oncol. 2015 May 11

[PMID: 25964245]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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