前立腺がんの治療が認知能力に影響する?

前立腺がんの治療にアンドロゲン除去療法というものがあります。アンドロゲン除去療法が、認知症の症状のような認知能力低下を起こしやすくするという説がありますが、その詳細ははっきりわかっていませんでした。アメリカの研究で、アンドロゲン除去療法を受けている人とそうでない人を追跡調査した結果、アンドロゲン除去療法を受けている人では確かに認知能力低下が多かったことが報告されました。
◆アンドロゲン除去療法とは
前立腺がんの治療には、
◆アンドロゲン除去療法で治療中の人、手術を受けた人、前立腺がんがない人を比較
研究班は、アンドロゲン除去療法を受けている前立腺がん患者58人の認知能力を治療開始時、治療開始後6か月、治療開始後12か月に検査し、前立腺がんに対して前立腺摘除術だけの治療を受けた人84人、また前立腺がんがない男性88人の認知能力と比較しました。
◆認知能力低下が多かった
調査の結果は次のようなものでした。
アンドロゲン除去療法を受けている人は、すべての対照群に対して経時的に認知能力低下が起こる率が高かった(P=0.01)。グループによって治療開始時点での認知能力に違いはなかったが(P>0.05)、アンドロゲン除去療法を受けている人は6か月(P<0.05)、12か月(P<0.05)時点で認知能力低下を示すことがより多かった。
アンドロゲン除去療法を受けている人は、前立腺がんに対して前立腺摘除術を受けた人と比べても、前立腺がんがない人と比べても、認知能力低下が多いという結果でした。
この研究だけで、「アンドロゲン除去療法には認知能力低下のリスクがある」と判断することはできません。
治療開始時の認知能力がどのグループでも同程度だったことは確かめられていますが、その後認知能力低下を起こしやすい要因のある人が、アンドロゲン除去療法を受ける場合が多かったという可能性は否定できません。
この点については、アンドロゲン除去療法を受けるかどうかをランダムに決める研究が行われれば、より明確な情報が得られそうです。
執筆者
Course and Predictors of Cognitive Function in Patients With Prostate Cancer Receiving Androgen-Deprivation Therapy: A Controlled Comparison
J Clin Oncol. 2015 May 11
[PMID: 25964245]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。