ぼうこうがん
膀胱がん
膀胱の粘膜にできる悪性腫瘍
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最終更新: 2025.01.24
膀胱がんの基礎知識
POINT 膀胱がんとは
膀胱に発生する悪性腫瘍です。50歳以降の男性に多くみられ、喫煙・化学物質への暴露・慢性的な感染などと関係があります。症状で最も多いのが血尿です。血尿は他の病気を原因とすることもありますが、膀胱がんの血尿は痛みを伴わない特徴があります(無症候性血尿)。その他の症状としては排尿時の痛みや頻尿などです。膀胱がんが疑われる人には膀胱鏡検査や、CT検査、MRI検査などが行われ、治療には手術や抗がん剤治療、放射線治療などがあります。痛みがない血尿が出たときは膀胱がんに注意が必要です。すみやかに泌尿器科で調べてもらってください。
膀胱がんについて
- 膀胱の粘膜にできる
悪性腫瘍 (がん ) - 膀胱がんの
発症 の危険性を高めるもの- 喫煙
- アニリン色素、ナフチラミン、ベンチジンへの
慢性的 な接触 - ビルハルツ住血吸虫への感染(日本ではほとんど原因とはならない)
- シクロフォスファミドという薬の使用
- 罹患者数:23,383人(2019年)
- 死亡者数:9,598人(2021年)
- 男性に多い(男性の罹患者数は女性の3倍)
- 60歳以降に多い
- 早期から
血尿 などの症状 が出るので、症状から発見されることが多い - 他の病気を調べている最中にも見つかることがある
膀胱がんの症状
血尿 (無症候性 肉眼的血尿)- 痛みを伴わない血尿
- 排尿の最後の尿が赤くなることが多い
頻尿 - 排尿の際の痛み
- 背中から腰にかけての痛み
- 体重減少
膀胱がんの検査・診断
- 血液検査
- 全身の状態を調べるために行う
- 膀胱がんの
腫瘍マーカー はない
- 膀胱鏡検査
- 尿道からファイバースコープを入れて、膀胱の中の状態を調べる
- より詳しく調べるためにアミノレブリンという薬を飲んだ上で検査することがある
尿細胞診 検査- 尿中の
がん 細胞の有無を調べる - がんがある場合でも尿細胞診が陽性になるのは約50%前後
- 尿中の
- 画像検査
- 膀胱の
腫瘍 の形、大きさなどを調べる 超音波検査 - 超音波で膀胱の中を観察する
- 胸
腹部CT検査 - 胸部から骨盤まで撮影する
- 他の臓器や
リンパ節 への転移 の有無を調べる - がんの深さを評価するには
MRI の方が優れている
腹部MRI 検査- 膀胱でのがんの深さの評価に向いている
- 膀胱の
- 画像診断と
内視鏡 手術(経尿道的膀胱腫瘍切除術;TURBT)の結果を基にして、ステージ を決める - ステージを決める3つの要素
- 膀胱でのがんの進行状況
リンパ節転移 の状況(有無や場所)- 他の臓器への転移の有無で判断する
- 膀胱がんの治療方針を決定するために重要なことは、膀胱がんの根の深さを調べることである
- 膀胱がんの根の深さの最終的な診断は画像診断ではなく内視鏡手術(経尿道的膀胱腫瘍切除術;TURBT)で行う
- TURBTの結果で後の治療法が決まる
膀胱がんの治療法
- 膀胱の中に
腫瘍 があると判明した場合- 画像診断の結果に関わらず、
内視鏡 手術(経尿道的膀胱腫瘍切除術:TURBT)を行う - TURBTで膀胱腫瘍の切除を行い、膀胱腫瘍の状態を顕微鏡で確認する検査(病理診断)を行う
- 結果が早期の
がん (表在性がん)、上皮内がん、浸潤がん、他の臓器に転移 している場合で治療が異なる
- 画像診断の結果に関わらず、
- 治療方針とそれぞれの特徴
- 表在性がんの治療
- 内視鏡手術(経尿道的膀胱腫瘍切除術:TURBT)でがんは切除できている
- 再発を予防するために
抗がん剤 もしくはBCGを膀胱内に注入する場合がある - 表在性がんが浸潤がんへ進行することは少ない
- 表在性がんが転移をすることはまれ
- 膀胱内に再発しやすい(約30-50%)
- 再発は2年以内が多い
- 再発しても内視鏡による治療が可能なことがほとんど
- 上皮内がんの治療
尿細胞診 が陽性のことが多い- 上皮内がんは膀胱鏡でもがんとはっきりわからない場合がある
- 上皮内がんの治療にはBCGの膀胱内注入療法が有効
- 上皮内がんが指摘された場合は
BCG療法 を行う - BCG療法により約80%の人が完全寛解となる(再発することはある)
- BCG療法による治療が上手くいかない場合には浸潤がんに進行する場合がある
- 浸潤がんの治療
- 浸潤がんとはがんが膀胱の筋層に達している状態をさす
- 膀胱全摘除術を行い尿路変更術を行う
- がんが他の臓器に転移している場合の治療
- 全身
化学療法 (抗がん剤治療 ) - 手術は原則行わない
- 全身
- 表在性がんの治療
- 治療法
- BCG療法
- BCGを膀胱の中に入れる治療
- BCGは結核のワクチン
- 表在性がんの再発予防や上皮内がんに対する治療に用いられる
- 抗がん剤の膀胱内注入療法
- 表在性がんの再発予防
- 手術(膀胱全摘除術)
- 浸潤がんに対して行われる
- 膀胱を切除して骨盤の
リンパ節 を同時に切除する - 膀胱を通らない尿の出口を作り直す必要がある(尿路変更)
- 主な尿路変更
- 回腸導管造設術
- 新膀胱造設術
尿管 皮膚瘻 (にょうかんひふろう)
- 全身化学療法
- 転移がある場合に用いる
- 治療効果を上げるために膀胱全摘の前後に行うことがある
- シスプラチンを軸にしたGC療法、M-VAC療法や、PG療法がある
- シスプラチンの効果が低い場合には、ペムブロリズマブ(キイトルーダ®)、アベルマブ(バンべチオ®)、ニボルマブ(オプジーボ®)という分子標的薬が使われることがある
- シスプラチンや分子標的薬の有効性がなくなった人には、
抗体 -薬物複合体(エンホルツマブ べドチン(パドセブ®))が使われる - FGFR3遺伝子変異又は融合遺伝子を有し、手術で切除ができない人にはエルダフィチニブという薬も検討できる
- BCG療法
膀胱がんの経過と病院探しのポイント
膀胱がんが心配な方
膀胱がんの治療は手術です。泌尿器科で行われます。心配な人は泌尿器科を受診してください。膀胱がんが発見される契機としては赤みを帯びた尿(血尿)ですが、他の病気でも血尿が出ることはあるので、正確な判断は症状のみできません。なお血尿の原因を調べるのは、クリニックでも総合病院でも可能です。
膀胱がんのタグ
膀胱がんに関わるからだの部位


