ぼうこうがん
膀胱がん
膀胱の粘膜にできる悪性腫瘍
8人の医師がチェック 174回の改訂 最終更新: 2018.02.09

膀胱がんの治療:治療の選び方・ステージ分類・再発時の治療など

1. 膀胱がんの治療には何がある?

膀胱がんの治療は基本的には手術で腫瘍を取り除くことです。手術には内視鏡を用いて腫瘍の部分だけを切り取る手術の方法と膀胱全摘除術の2つがあります。どちらの手術をするかはがんの進行度から判断し、進行度の評価にはステージ分類を用います。

【膀胱がんの治療】

  • 手術
    • 内視鏡治療(経尿道的膀胱腫瘍切除術:TURBT)
    • 膀胱全摘除術
  • 薬物治療
    • 膀胱内注入療法
      • 抗がん剤
      • BCG療法
    • 全身化学療法抗がん剤治療

手術だけでは治療が不十分だと考えられる場合には薬物治療を行います。薬物治療には膀胱内注入療法(膀胱の中に薬物を入れる方法)と全身化学療法(注射によって全身に薬を行き渡らせる方法)の2つがあります。

膀胱内注入療法は膀胱がんの治療を目的とする場合と再発を予防する目的があります。どちらの目的で用いられるかはがんの状態によって決まります。

全身化学療法は、手術の前後で用いられたり遠隔転移(膀胱から離れた場所への転移)がある場合に用いらます。それぞれのケースでの目的はやや異なります。詳しくは、「膀胱がんのBCG治療/抗がん剤治療/放射線治療とは?」で解説しています。

2. 膀胱がんの治療はどのように選ぶ?

膀胱がんの治療法は紹介したように多様です。

ではどのようにして治療を選ぶのでしょうか。

膀胱がんの治療はステージというものと病理検査の結果を基準にして選ばれます。ステージは膀胱がんの進行具合を客観的に評価して大きく4つに分類したもので治療法の決めるのに役に立ちます。病理検査はがんの悪性度を示したものでステージとは異なります。

次に膀胱がんのステージ、病理検査について順に紹介します。

3. 膀胱がんのステージとは?

膀胱がんの治療法を選ぶために、がんの進行度を評価する必要があります。進行度をステージという言葉で分類します。

膀胱がんのステージは、TNM分類という方法で決められています。TNM分類は、がんが発生した場所の状態(T)、リンパ節転移(N)、遠隔転移(M)の3点を評価項目としてステージを決める方法です。

図:TNM分類の説明。

T分類とは?

TはTumor(腫瘍)の頭文字をとったものです。膀胱がんでは、膀胱でのがんの状態を表します。がんがもともと発生した場所のことを原発巣(げんぱつそう)と言います。T分類は原発巣の評価です。

膀胱がんは膀胱の表面(尿が入っている側)から発生し、しだいに奥深くに入り込んでいきます。膀胱がんの治療方針を決めるのに最も重要なことは、がんの根の深さです。T分類はがんの深さ(深達度)によって決まります。がんの深さを調べるには、膀胱の組織を取り出して顕微鏡で観察する必要があります。組織を顕微鏡で見る検査を病理検査と言います。内視鏡の一種である膀胱鏡を用いた経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)と言う方法で組織を取り出します。膀胱鏡を尿道から入れると膀胱の中を観察したり膀胱の組織を取り出したりできます。膀胱鏡を使うことで、皮膚を切り開かないで膀胱の中の様子がわかります。TURBTの目的は膀胱鏡を使って治療または診断です。

T分類を決めるためには、CT検査やMRI検査も診断に使われますが、基本的にはTURBTの病理検査の結果によってT分類が確定されます。
 

  • T-原発腫瘍
    • TX    原発腫瘍の評価が困難
    • T0    原発腫瘍なし
    • Ta  非浸潤性乳頭状腫瘍
    • Tis 上皮内(CIS)
    • T1 粘膜下結合組織までの浸潤
  • T2  筋層浸潤があるもの
    • T2a  筋層の1/2以下の浸潤  
    • T2b  筋層の1/2以上を超える深層への浸潤
  • T3  膀胱周囲脂肪組織への浸潤があるもの
    • T3a  顕微鏡的浸潤
    • T3b  肉眼的にはっきりとした壁外浸潤(壁外に腫瘤があるもの)
  • T4  隣接臓器への浸潤
    • T4a  前立腺、子宮あるいは膣への浸潤
    • T4b  骨盤あるいは腹壁への浸潤

図:膀胱がんのT分類の説明イラスト。膀胱の壁の深い層に入り込んでいるほど進行している。

N分類とは?

N分類はリンパ節転移についての評価です。Nはリンパ節(lymph node)を指すNodeの頭文字です。

がんは時間とともに徐々に大きくなり、リンパ管や血管などの壁を破壊し侵入していきます。リンパ管にはところどころにリンパ節という関所があります。リンパ管に侵入したがん細胞はリンパ節で一時的にせき止められます。がん細胞がリンパ節に定着して増殖している状態がリンパ節転移です。リンパ節転移があるとリンパ節は硬く大きくなります。リンパ節が大きくなる原因にはがん以外にも感染症などがあります。

がん細胞が最初の段階でたどり着くリンパ節を所属リンパ節と呼びます。所属リンパ節のみの転移であれば所属リンパ節を切除することでがんを体から取り除く可能性が残されています。所属リンパ節以外のリンパ節に転移をしている場合は、手術で取り切れる可能性は少なく、全身化学療法(抗がん剤)が検討されます。

治療前にリンパ節転移を評価するにはCT検査やMRI検査が使われます。

  • Nx  所属リンパ節転移の評価が不可能
  • N0  所属リンパ節転移なし
  • N1  小骨盤内の1個のリンパ節への転移を認める
  • N2  小骨盤内の多発性リンパ節転移を認める
  • N3  総腸骨領域へのリンパ節転移を認める

M分類とは?

M分類は遠隔転移の評価です。MはMetastasis(転移)の頭文字です。膀胱から離れた臓器に膀胱がんが転移することを遠隔転移と言います。所属リンパ節転移は遠隔転移とは言いません。単に「転移」と言うと遠隔転移を指す場合が多いです。

遠隔転移がある膀胱がんは、膀胱全摘の手術が勧められません。余命の延長を目的とした全身化学療法(抗がん剤治療)を行います。

M分類を決めるにはCT、MRIや骨シンチを用いて遠隔転移を探します。

  • Mx 遠隔転移の評価が困難
  • M0 遠隔転移なし
  • M1 遠隔転移あり

ステージはどう決める?

T分類、N分類、M分類の組み合わせによってステージが決まります。TNM分類は多くの種類のがんに使われていますが、がんの種類ごとに基準が違います。

膀胱がんのTNM分類からステージを決める対応を表に示します。

  N0 N1 N2 N3
Ta/Tis 0 - - -
T1
T2a、T2b
T3a、T3b
T4a
T4b
M1

言い換えるとそれぞれのステージに対応する病気の状態は下の表のようになります。

Stage 0 Ta or Tis N0 M0
Stage Ⅰ T1 N0 M0
Stage Ⅱ T2 N0 M0
Stage Ⅲ T3 N0 M0
T4a N0 M0
Stage Ⅳ T4b N0 M0
any T N1-3 M0
any T any N M1

膀胱がんは、リンパ節転移がひとつでもあればステージⅣに分類されます。よくある誤解として、ステージⅣをすべて「末期がん」と呼ぶのは実態に合っていません。ステージⅣの状態は様々で有効な治療もあります。人数としては多くはないのですが、手術と抗がん剤治療を組みわせた治療で根治をすることもありますし、抗がん剤治療しながら社会生活を送っている人もいます。

4. 膀胱がんの病理検査とは?

下の表は膀胱がんの治療を決めるにための流れになります。病理検査ではがんが筋層に及んでいるかどうかとがんの顔つき(異型度)がわかります。

図:膀胱がんの治療方針の選び方。

病理検査は膀胱がんの治療方針を決めるために必須です。病理検査とは、体の組織を切り取って顕微鏡で観察する検査のことです。

膀胱がんの治療法の中に、内視鏡手術(経尿道的膀胱腫瘍切除術:TURBT)と膀胱摘出があります。どちらを行った場合も、続けて病理検査を必ず行います。つまり、内視鏡手術または手術で取り出した組織を顕微鏡で観察することで、がんの悪性の度合いや進行の度合いを調べます。

病理検査によって、ひとつひとつの細胞の形や細胞の並び方の特徴など非常に多くの情報が得られます。手術後の治療の計画を立てるためにも病理検査が重要です。

膀胱がんの病理検査では異型度深達度という2点の特徴を重視します。

膀胱がんの異型度とは?

異型度とは、がんの悪性度の強さを予測する指標です。顕微鏡で見た特徴が正常な細胞に近いほど悪性度は低く、逆に正常な細胞と似ても似つかないような場合は悪性度が高いとみなされます。

異型度は細胞異型と構造異型の2つから判断されます。細胞異型とはひとつひとつの細胞に注目して、細胞の形・大きさ・細胞の中身などが正常細胞にはない特徴を示していることです。正常細胞と似ていない細胞は細胞異型が高いと判断されます。

構造異型とは細胞の1つ1つに注目するのではなく、細胞の並びや向きなどに注目したときに見られる異常のことです。

膀胱がんの異型度は、細胞異型と構造異型を総合して2段階で評価します。異型が強い場合は高異型度(ハイグレード:high grade)、異型が弱い場合は低異型度(ロウグレード:low grade)とします。

以前使われていた表記では、異型度を3段階で評価していました。異型度が低いものをG1、高いものをG3、中間をG2と表記していました。現在も高異型度/低異型度とG1-G3が併記されていることが多いです。

低異型度の膀胱がんは、さらに周りに広がっていく(浸潤する)恐れが小さいと予測できます。

高異型度の膀胱がんは周囲へ浸潤する傾向があります。高異型度の膀胱がんが見つかった場合、内視鏡で切除できた後でも注意が必要です。最初に治療目的の内視鏡手術を行ったあと、取り残したがんがないか確認するためにもう一度内視鏡手術を実施することがあり、2nd TURといいます。詳しくは「膀胱がんの手術はどんな手術?」で解説します。

膀胱がんの深達度とは?

膀胱がんに対して内視鏡手術で治療が十分か、追加で膀胱を摘除する必要があるのかという見極めは重大な問題です。その判断材料となるのが膀胱がんの根の深さ(深達度)です。深達度とは、「どれぐらいの深さまでがんが入り込んでいるか」という意味です。

膀胱の壁はいくつかの層が重なってできています。膀胱の内側(尿が入っている側)から順に粘膜-粘膜下層-筋層という層があります。膀胱がんは粘膜で発生して、深い層へと順に入り込んでいきます。

図:膀胱がんのT分類の説明イラスト。膀胱の壁の深い層に入り込んでいるほど進行している。

筋層には血管やリンパ管が多く走行しています。血管やリンパ管にがんが入り込むと血行性転移やリンパ行性転移を起こします。つまり深達度が深いがんほど転移のリスクが高いがんと言えます。

筋層にがんが入っているのかどうかの判断は病理検査により行います。

膀胱鏡で見たとき膀胱に明らかながんが見つからない場合や、膀胱がんかどうか疑わしい場合には、膀胱がんを削る操作の前に膀胱鏡の鉗子で組織をつまんで取ることもあります。膀胱生検と言います。生検は病理検査と似た意味の言葉ですが、治療目的で取り出した組織を病理検査する場合は生検とは言いません。

膀胱がんの治療の基本は手術です。しかし、診断時にすでに転移がある場合は、抗がん剤による治療を行います。抗がん剤の治療については、「膀胱がんのBCG治療/抗がん剤治療/放射線治療とは?」で解説しています。

膀胱がんを深達度に注目して3つに分類してみたいと思います。1つ目はがんの根が深くない表在性がん、2つ目は粘膜に存在する上皮内がん、3つ目はがんの根が深く筋層まで及んでいる筋層浸潤がんです。それぞれの治療法は以下の通りです。

  • 表在性がん:内視鏡手術(経尿道的膀胱腫瘍切除術、TURBT)
  • 上皮内がん:BCG膀胱内注入療法(BCG療法)
  • 筋層浸潤がん:膀胱全摘除術

表在性がんはがんの根が浅いだけに内視鏡治療で十分に切除することが可能です。悪性度は低いのですが、再発することもあるので治療後には定期的な経過観察は必須です。

上皮内がんは、粘膜内のがんです。上皮内がんは浅い層にあるがんなので一見すると悪性度は高くないと思われがちなのですが、治療が不成功に終わると筋層浸潤がんに進行することが知られています。上皮内がんは、膀胱の至る所にがんがあることが多い特徴があり内視鏡手術では治療することが難しいです。上皮内がんがある場合には膀胱のいたる所でがんがあると考えてBCGという薬を膀胱内に入れてその作用によりがん細胞を死滅させます。

筋層浸潤がんはがんの根が深く転移する可能性を念頭において治療しなければなりません。治療法として確立されているのは膀胱を全て切除する膀胱全摘除術です。膀胱の一部だけ切除する方法は標準的な治療とはみなされておらずどれほどの効果があるか不明です。

5. 膀胱がんは再発する?

膀胱がんは治療後に再発することがあります。再発率や再発時の治療は、がんの状態によって違います。

膀胱がんは大きく3種類に分けることができます。

  • 根が浅いがん(表在性膀胱がん)
  • がん自体は浅いが後に浸潤がんへ進行しやすいがん(上皮内がん)
  • 根が深いがん(浸潤性膀胱がん)

膀胱がんの再発はどの種類でもありえます。

以下はそれぞれの再発率、再発時の治療や再発予防に関して解説します。

6. 表在性膀胱がん(上皮内がん以外)の再発時の治療

図:表在性膀胱がんの説明イラスト。

がんの根が浅い表在性膀胱がんは意外にも再発率が高いです。再発にも特徴があります。

  • 以前に腫瘍ができていた場所とは異なる場所にも再発することがある
  • しばらく時間を経過した後の再発

こうした特徴は時間的空間的多発と言われます。膀胱がんは時間的空間的に多発することから、一見膀胱がんの再発のように見えるものの中には、最初に見つかったがんの取り残しから増殖したのではなく、膀胱の別の場所で新しく発生したがんであるという考えもあります。

再発の機序(しくみ)についてははっきりわかっていませんが、仮説として以下のような考えがあります。

  • 尿の中にがん細胞が混じり違う場所に定着することで再発する
  • 膀胱の中にがんの手前の段階にある部位が多く存在し、時間差でがんになって現れる(多中心性発生)

表在性膀胱がんは再発を繰り返しても浸潤がんになる人は少数です。再発しても多くは内視鏡での治療を繰り返すことで治療が可能です。手術の後は膀胱内にBCGや抗がん剤を注入する治療で再発を予防することが可能です。表在性膀胱がんはがんの根の深さの分類ではTaとT1に当たります。上皮内がんも表在性がんに含まれますが、上皮内がんの治療は異なるので分けて後述します。

表在性がんではリンパ節及び遠い場所(遠隔)へ転移することは極めて珍しいです。

Ta、T1の腫瘍とは

TaやT1という名前は、膀胱がんを根の深さ(深達度)で分類したものです。どちらも表在性膀胱がんの一種です。

Taはがんが粘膜上皮までの深さであることを指します。Taは膀胱鏡で見るとイソギンチャクのような形の腫瘍(乳頭状腫瘍)です。上皮内がんも粘膜上皮にとどまるがんですが、平坦な形をとります。

顕微鏡による検査(病理検査)でもTaの特徴は上皮内がんとは大きく異なります。

T1も表在性膀胱がんに含まれます。T1はTaよりも根が深いがんです。がんの根が粘膜下層まで及んでいるものをT1と呼びます。Taに比べるとがんの根が深いT1は浸潤がんの一歩手前です。そのぶんT1の治療には慎重さが必要になります。

再発時の治療

TaとT1で再発時の治療は共通しています。

経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT:Transurethral resection of bladder tumor)をまず行います。

再度TURBTを行うことで治療が可能です。切除した腫瘍を調べた結果をもとに、再発予防や追加治療が必要かどうかの判断をします。

再発予防、その後の治療

切除した腫瘍の状態を確認し方針を決定します。

再発した腫瘍の深達度:

  •  Ta→BCGもしくは抗がん剤による維持療法、経過観察
  •    T1→2nd TUR

解説します。

リスク分類では、再発した腫瘍は、どのような深達度のがんであっても高リスク群に分類されます。高リスク群にはBCG維持療法が推奨されます。詳しくは「膀胱がんのBCG治療/抗がん剤治療/放射線治療とは?」で解説しています。

ただし再発した腫瘍がTaであった場合は経過観察の方針が取られることもあります。BCG療法を行う際には副作用の問題を考える必要があります。BCG療法を行うべきかどうかは、切除した腫瘍の悪性度や患者さんの状態を総合して判断します。

再発した腫瘍がT1と診断された場合は、2nd TURを行います。「膀胱がんの手術はどんな手術?」で解説しています。

再発した腫瘍が筋層に浸潤している場合は膀胱全摘除術が検討されます。ただし実際に当てはまる人は少数です。

再発や進展の可能性はあるのか?

表在性膀胱がんは、転移の可能性が少なく、内視鏡で十分に完治が可能です。しかし、再発することや浸潤がんに進展することがしばしば問題になります。

  • 再発:腫瘍がまたできること 
  • 進展:腫瘍が再発したときにその腫瘍が浸潤がんになること

TaよりT1の方が再発や進展しやすいですが、単純ではありません。その他の要因も複雑に影響します。

危険性を予測するための重要な検査が病理検査です。病理検査とは、体の組織を切り取って顕微鏡で観察する検査のことです。TURBTで表在性膀胱がんと周りの膀胱組織を一緒に取り出し、病理検査を行います。

再発や進展を予測するためには、いくつかの要因を点数化します。

  • 膀胱がんの数(腫瘍数)
    • 膀胱がんは膀胱の中に多発した状態で見つかることがあります。数多くある場合は危険性が高いと判定します。
  • 膀胱がんの大きさ
    • 大きいほうが危険性が高いと判定します。
  • 初発か再発か
    • 再発したとき、特に再発を繰り返しているときは危険性が高いと判定します。
  • 根の深さ(深達度、T因子)
    • がんが膀胱の壁の中に深く入り込んでいるほうが危険性が高いと判定します。
  • 周りの膀胱組織に上皮内がん(CIS)があるか
    • 膀胱がんの周りには、がんがないように見えても顕微鏡で見ると上皮内がんが見つかる(併発している)ことがあります。上皮内がんが見つかったときは危険性が高いと判定します。病理検査で見つかったCISは腫瘍数には入れません。
  • がんを顕微鏡で見たときの様子(異型度)
    • 顕微鏡で見ると、膀胱がんの組織が正常組織の見た目とどれぐらい違っているかがわかります。正常組織からかけ離れた見た目になっているがんを「異型度が高い」と言います。異型度が高いほど悪性度が強いとみなします。

下記の表によりスコアをつけます。

因子 再発スコア 進展スコア
腫瘍数 単発 0 0
2-7個 3 3
8個以上 6 3
腫瘍サイズ <3cm 0 0
≧3cm 3 3
再発歴 初発 0 0
≦1再発/年 2 2
>1再発/年 4 2
T因子 Ta 0 0
T1 1 4
併発CIS なし 0 0
あり 1 6
異型度(1973年WHO) G1 0 0
G2 1 0
G3 2 5
合計スコア 0-17 0-23
再発スコア 1年再発率 5年再発率
0 15% 31%
1-4 24% 46%
5-9 38% 62%
10-17 61% 78%
進展スコア 1年進展率 5年進展率
0 0.2% 0.8%
2-6 1% 6%
7-13 5% 17%
14-23 17% 45%

参照:欧州泌尿器科学会作成のガイドライン

腫瘍の個数、大きさ、初発なのか再発なのか、術後の病理検査でのがんの根の深さ(深達度)、がんの悪性度(異型度)、上皮内がん(CIS)の有無を総合して評価して再発率や進展率を過去のデータから算出しています。

腫瘍の数は多ければ多いほど、大きさは大きければ大きいほど再発・進展のリスクが上がります。

再発歴は重要です。再発までが早ければ早いほど次に再発する可能性が上がります。しかし進展に関しては、再発までの時間はあまり関係ありません。つまり再発が早いと悪いがんなのかは一概には言えません。

がんの根が深いほど再発をしやすい傾向にあります。また、がんの悪性度は再発や進展に大きく影響しています。

上皮内がんは後述しますが、がんの根こそ浅いものの、浸潤がんに発展する可能性が高く特に注意が必要です。

表在性膀胱がんは、リスクのスコアが低く、低リスクに分類されるものでも1年以内の再発率が15%とされています。全体に再発率は高いと言えます。また、表在性膀胱がんもいくらかの割合で浸潤がんへ進展することがあります。

表在性膀胱がんの治療においては、命を脅かす浸潤がんにならないように経過を見ていくことが重要です。再発しないに越したことはありませんが、再発しても浸潤がんにさえならなければ他の臓器に転移などをして命を脅かす恐れは小さいと考えられます。

7. 上皮内がん(CIS)Tisの再発時の治療

図:CIS(Tis)は表在性膀胱がんに分類される。

CISは上皮に発生したがんです。CISは表在性膀胱がんに分類されますが、手術によって治療を行うことは原則ありません。例外として、前立腺部尿道に上皮内がんを認める場合は速やかな膀胱全摘を考慮します。

CISに対しては、BCGという薬を膀胱内に注入することで治療を行います。結核の予防接種にも使われているBCGです。上皮内がんはBCGにより高い治療効果を得られます。再発時には再度BCG療法を行うか、膀胱を摘出する手術を考慮します。

上皮内がんがTaやT1と同時に存在する場合はしばしばあります。その時には上皮内がんの治療を行います。

治療効果

膀胱がんのうち上皮内がん(CIS)に対しては原則として手術は勧められません。膀胱内にBCGという薬品を注入する治療法が選択されます。BCG膀胱内注入療法は、1週間に1回ずつ、6〜8回かけて治療を行います。BCG膀胱内注入療法によって高い効果が得られます。検査でがんが検出されなくなる人(完全奏効)は80%程度と報告されています。

BCG膀胱内注入療法による効果が不十分な場合の治療

上皮内がんに対して高い治療効果があるBCG膀胱内注入療法ですが、中には効果を示さない場合もあります。その場合は追加でBCG療法を行います。追加のBCG療法では、治療が不十分であった人のうち約50%が完全奏功になったとする報告があります。追加のBCGでも効果が不十分の場合は膀胱全摘除術が有効です。追加のBCG療法が不十分だと判断するのは最初のBCG療法開始後6ヶ月が経っても上皮内がんが消失しない場合です。

図:膀胱上皮内がんの治療方針。

          

BCG膀胱内注入療法によって完治した後の再発

BCG膀胱内注入療法によって一度完治(完全奏功)した後の再発の治療に関しては明確な基準はありません。治療の選択肢としては、膀胱全摘、もしくはBCG膀胱内注入療法で再度治療を行うことになります。

  • 膀胱全摘
  • BCG膀胱内注入療法(BCG療法)

明確な基準はありませんが、最初のBCG療法から再発までの期間が長い場合(1年以上)は再度BCG療法で治療を行う価値があるとする意見もあります。しかしBCG療法による効果が見込めない上皮内がんは浸潤がんへ移行する確率が高いので、膀胱全摘が安全策ともいえます。特に再発したがんの深達度がT1で病理所見が高悪性度(high grade)の場合は浸潤がんへの移行が強く懸念されるので膀胱全摘除術が推奨されます。

再発予防

上皮内がんをBCG療法により治療した後に、BCG膀胱内注入療法を定期的に行う維持療法は再発や進展の予防となるという報告があります。理論的にも、再発効果は高いことが予想されますが、問題点も指摘されています。

  • 期間や回数などのスケジュールが決まっていない
  • BCG膀胱内注入療法は副作用などの問題から完遂できないことも多い

以上の問題から維持療法の最適な投与間隔などが定まっていないのが現状です。維持療法を行わずに経過を見るという選択肢を提示されることもあります。

BCG療法によって効果がない場合の経過

上皮内がんはBCG膀胱内注入療法による治療効果が高いです。しかし、治療による効果が得られない場合があります。この場合は、浸潤がんへの進展が懸念されます。

BCG膀胱内療法に抵抗を示した場合に膀胱全摘と病理検査を行ったところ、約1/4の人の膀胱でがんはすでに浸潤がんに進展しており、そのうち5.8%にリンパ節転移もあったとする報告があります。

上皮内がんは浸潤がんへの進展を見逃さないのが治療を進めていく上で重要なポイントです。

膀胱上皮内がんで膀胱全摘を考慮する場合のまとめ

上皮内がんはBCG膀胱内注入療法により高い効果を得られます。治療で注意する点は浸潤がんへの進展を見逃さないようにすることです。以下が膀胱全摘を考慮する場合のまとめです。

  • 治療前の評価で前立腺部尿道に上皮内がんが存在する場合
  • BCG治療開始から6ヵ月後の評価で完全奏功とならない場合 
  • BCG治療開始後に再発しT1で悪性度が高い(high grade)場合

前立腺部尿道にがんがある場合は、BCGががん細胞まで届きにくいために治療効果が理論上期待できません。またBCGに効果を示さない場合や、BCG膀胱内注入療法により効果を一度示したもののその後再発した場合は膀胱全摘を考慮します。

8. 浸潤性膀胱がんの再発時の治療

浸潤性膀胱がんの手術(膀胱全摘)後の再発は、再発の場所によって4種類に分けられます。

  • 膀胱を摘出した近く(局所再発)
  • 他の臓器
  • リンパ節
  • 上部尿路再発

再発があった場合はがん細胞が全身にあると考えられます。全身にあるがんを治療することが目標となり、抗がん剤による治療を行うことが一般的です。上部尿路再発は特殊な再発なので後述します。

図:浸潤性膀胱がん

再発率

膀胱全摘後の再発率は、膀胱局所の再発が5〜15%で、離れた場所での再発(遠隔転移)が20〜50%と遠隔転移による再発が多い傾向にあります。局所再発、遠隔転移はともに2年以内に多く発生します。特に術後1年以内に再発する割合は50%とされています。その一方で、治療後10年を超えて再発する場合もあり、長期的な経過観察が必要とされます。

また膀胱がんに特徴的な再発として、尿の流れ道である尿管腎盂(じんう)にも再発(上部尿路再発)が起きることがあります。膀胱全摘後の上部尿路再発は0.75〜6.4%とされています。

再発時の治療

膀胱全摘後に再発が画像上で確認された場合は、抗がん剤による治療が開始されます。

再発時の抗がん剤治療については、「膀胱がんのBCG治療/抗がん剤治療/放射線治療とは?」で解説しています。

再発後の経過

転移が出現した後に抗がん剤治療を開始した場合、50%の人が生存する期間は14ヶ月前後とされています。

ただし、この結果は、再発時の様々な状態を一括りにして行われた臨床試験の結果です。たとえば肝臓に転移がある人、リンパ節のみに転移がある人、いくつもの臓器に転移がある人を一緒に集計しています。がんの状態やもともとの体の状態などは人によって異なります。

統計上の数字は一つの目安に過ぎません。日々、がんと向き合いながら正しい診断、治療を継続していくことが重要です。

参照:J Clin Oncol. 2005;23:4602-08

特殊な再発、上部尿路再発とは?

膀胱は尿路という尿の通り道を形成する臓器の一部を担っています。尿は腎臓で作られ、腎盂(じんう)-尿管-膀胱という順に流れていきます。腎盂と尿管は膀胱と同じような組織で形成されています。ここでは尿管と腎盂とを上部尿路と呼ぶことにします。上部尿路に発生するがんも膀胱がんと同じ種類のがんです。

膀胱がんは治療後に上部尿路に再発する場合があります。表在性膀胱がんと浸潤性膀胱がんがそれぞれ上部尿路再発する確率が報告されています。

  • 浸潤性膀胱がん:2-7%
  • 表在性膀胱がん:0.8%

参照:J Urol. 2007;177:2088-2094, J Urol. 2009;181:1035-1039

表在性膀胱がんの場合で上部尿路に再発することは稀です。上部尿路に再発した場合は、転移などがなければ腎臓と尿管を取り除くことでがんを体から取り除くこと(根治)が可能な場合があります。他の臓器での再発とは異なる点です。

9. 膀胱がんに診療ガイドラインはある?

診療ガイドラインは、治療にあたり妥当な選択肢を示すことや、治療成績と安全性の向上などを目的に作成されています。膀胱がんにも診療ガイドラインがあります。

膀胱がんの診療ガイドラインは日本泌尿器科学会、EAU(欧州泌尿器科学会)、NCCN(全米総合がん情報ネットワーク)、AUA(米国泌尿器科学会)など各学会が作成したものが存在します。

ガイドラインがいくつも存在するのは理由があります。ひとつの理由は、国ごとに病院に行くときの環境などが違うことを考慮しているためです。もうひとつの理由として、医学的に唯一の正解を決めにくいような場合に対して、学会ごとに意見が違うためでもあります。

日本泌尿器科学会の膀胱がんの最新のガイドラインは2015年に発刊され無料公開されています。

http://www.urol.or.jp/info/guideline/data/01_bladder_cancer_2015.pdf

ガイドラインは治療の助けになりますが、ガイドライン通りに治療を行うことが全て正しいわけではありません。その時々、患者さんの状態はひとりひとり異なることを考えに入れるべきです。また、ガイドラインにはまだ反映されていない新しい知見が役に立つ場合もあります。

10. 膀胱がんの手術をする病院はどうやって探す?

膀胱がんの手術は2通りあります。比較的根が浅い表在性がんに対して行われる内視鏡手術(経尿道的膀胱腫瘍切除術:TURBT)と根が深い筋層浸潤がんに対して行われる開腹手術(膀胱全摘除術)です。この2つの手術を担当するのはいずれも泌尿器科医です。

膀胱がんの治療ができる病院の条件は、まず泌尿器科がある病院です。

多くの泌尿器科では診断から治療まで行えます。ただし、泌尿器科医は医師の中でも多いとは言えません。中規模な病院でも泌尿器科は1人で勤務していたり非常勤の医師で対応している場合があります。このような体制では開腹手術が行えない場合や内視鏡手術でさえ行えない場合は決して珍しくはありません。

病院の体制については受診前に情報を集められるだけ集めておくことをお勧めします。現在は多くの病院がインターネットで検索できるようにホームページを作成しています。病院によっては在籍している医師の情報、診療実績などを掲載していますので、ここは非常に参考になります。

手術数が多ければ多いほど膀胱がん診療に力を入れていて、手術も手慣れているだろうと想像するのはある程度妥当と言えます。

インターネットなどで手術や医師に関する情報が得られなければ、病院に電話などで直接問い合わせてみるのも一つの手です。

膀胱がんの疑いが強く内視鏡の手術を受けようと考えたとき、せっかく病院に行き、長い待ち時間を我慢して診てもらった結果、"ここでは手術ができない"ということになっては時間がもったいないと言わざるを得ません。

以上の点を踏まえて病院を探すことが重要です。

膀胱がんの名医はどこにいる?

名医の基準は治療を受ける人の考え方により異なりますので、ここでは具体的な名前を上げることはしませんが、名医に巡り合えるヒントを考えてみたいと思います。

膀胱がんの治療は手術が主体です。がんの程度によらず手術療法が標準治療として確立しています。そのような特徴から膀胱がんの治療は手術がうまくいくことが大切です。一人一人の医師について手術が得意かどうかを調べるのは難しいですが、病院の手術件数は目安になります。

膀胱がんの手術療法には内視鏡手術と開腹手術の2つがあります。

開腹手術が勧められるのは、内視鏡では取りきれない膀胱がんの人です。開腹手術である根治的膀胱全摘除術(膀胱全摘)の手術時間は一般的に8時間程度です。長い時間を要する大手術です。加えて膀胱全摘は合併症の多い手術でもあります。報告によると膀胱全摘後に大なり小なりの合併症を経験する患者さんは8割程度とされます。これは極めて高い数字です。その理由は膀胱を取ること自体が体に大きな負担となるので、術後体力が落ちてしまい傷の治りが遅かったり、感染症にかかってしまうことなどが考えられます。

しかし、膀胱がんで開腹手術が必要になるのは実は少数派で、患者さんの中でも2割程度です。ほとんどの人は内視鏡手術(TURBT)で十分に治療が可能です。

つまり、内視鏡手術に比べると膀胱全摘除術はありふれた手術ではありません。泌尿器科医全員が膀胱全摘に精通しているわけではありません。泌尿器科医にとって、手術時間が長く、難易度も高い膀胱全摘除術は自らの力量が問われるところです。

手術の後は、医師がつきっきりで過ごすわけではありません。手術の後は看護師と接する時間が長くなるので、その病院の看護師が膀胱全摘除術後の管理に精通しているかも重要です。

多くの症例が集まる病院では、手術に長けた医師がおり、それ以外の医師も看護師も技術が高いことが想像されます。

ここまでは数の重要性を強調してきましたが、膀胱がんの特徴を考えた上でもう一つ重要なことがあります。それは長く付き合える医師を見つけるということです。

膀胱がんは進行度に関わらず再発率が高いがんです。時間が経っても再発の可能性がある厄介な性格があります。つまり担当医との付き合いも長く、10年も通院している人も珍しくありません。長期の通院を想定して、担当してもらう先生と良好な関係を築くことも重要なことです。

医者と患者と言えどやはり人間同士です。多少の遠慮や我慢があっても大事なことは迷わず相談できるような人間関係を築くことが重要です。治療期間が長くなると、少し気になっている聞いていいものか迷うことが多々あります。このようなことは気軽に聞いて解決できるほうがいいでしょう。簡単なことでも繰り返しになることでも、その都度聞いて解決して行くことが大事です。それができる関係を築けるような、気が合いそうな人柄かも考えてみてください。

世間的に名が通った名医を探すための答えにはなっていませんが、以上のことを参考にしていただければあなたにとっての名医に出会う確率は上がると考えます。

名医を探すポイントを整理します。

  • 膀胱がんの治療は手術が主体、その病院の手術数に注目することは有効 
  • 長期の経過観察が必要なので良好な関係性が築けそうな雰囲気を感じ取る