ぼうこうがん
膀胱がん
膀胱の粘膜にできる悪性腫瘍
8人の医師がチェック 174回の改訂 最終更新: 2018.02.09

膀胱がんの症状:初期症状(血尿など)・末期症状

目次

膀胱は尿を溜める臓器なので、膀胱がんになると排尿に関連した症状が現れます。その症状は血尿や排尿時の痛みなどさまざまです。ここでは膀胱がんで現れる症状について説明します。

1. 膀胱がんの症状

膀胱がんは症状をきっかけにして発見されることが多いです。膀胱は尿を溜めておく臓器なのでがんができると排尿に影響して症状となって現れます。また、膀胱がんが進行して転移や他の臓器に影響して現れる症状もあります。

  • 初期から現れる症状
    • 血尿
      • 見た目に赤い血尿:肉眼的血尿
      • 見た目には赤くはないけれど検査で指摘される血尿:顕微鏡的血尿
    • 排尿時の痛み
    • 頻尿:尿の回数が多いこと
  • 転移や進行してから現れる症状
    • 尿が極端に少なくなる
    • 下肢の浮腫むくみ
    • 骨の痛み

以下では「初期から現れる症状」と「転移や進行して現れる症状」の2つに分けてそれぞれを説明していきます。

2. 初期から現れる症状:血尿・排尿時の痛み・頻尿

膀胱は尿を溜める臓器なので、がんができて影響を及ぼすと排尿に関連した症状が現れます。それぞれに詳しく説明していきます。

血尿

血尿には2つの種類があります。

  • 見た目が赤い血尿(肉眼的血尿)
  • 見た目は正常だが、検査で血尿が出ていると指摘される血尿(顕微鏡的血尿)

この2つは一括りに血尿といっても実は大きな違いがあります。
それぞれの違いについて説明します。

■肉眼的血尿

膀胱がんを最も疑うのは肉眼的血尿の中でも他の症状(痛みなど)をともなわないものです。このタイプの血尿を無症候性肉眼的血尿と言います。ほかにも血尿が出る原因はいろいろありますが、無症候性血尿の原因としては膀胱がんが最も疑わしいと考えられます。特に、膀胱がんの血尿として特徴として知られているのが、排尿の終わり頃が赤くなる終末時血尿です。また、過去の報告では、無症候性肉眼的血尿を訴えた人のうち13-28%が膀胱がんであったとされています。

一方で、膀胱がん以外でも無症候性肉眼的血尿の原因なることがあります。次のものが代表的なものです。

無症候性肉眼的血尿には病気が隠れている可能性が高いので、原因を調べなければなりません。CT検査(造影CT)や膀胱鏡、尿細胞診などを行います。とくに膀胱がんや尿管がん腎盂がんの可能性について調べておくことが重要です。原因がはっきりとすれば、必要に応じて治療を行います。

■顕微鏡的血尿

学校や職場などの健康診断などで尿検査が行われます。この時に「赤い尿なんて出ていないのに血尿が出ている」という指摘を受けることがあります。この見た目には正常にもかかわらず血尿が出ていると指摘される場合を顕微鏡的血尿と言います。つまり、顕微鏡で見ないとわからない程度の血尿ということです。

血尿が出ていると指摘されると漠然と「膀胱がんではないだろうか?」と不安になると思います。しかし、顕微鏡的血尿を契機に膀胱がんと診断される人は0.4~6.5%と多くはありません。顕微鏡的血尿の原因は膀胱がん以外にも様々あり、膀胱がんが原因であることは少ない部類に入ります。

顕微鏡的血尿が見つかった場合、膀胱がんの可能性を考えてさらに詳しい検査が必要になることがあります。次の条件に当てはまる人が詳しい検査が必要な人です。

【顕微鏡的血尿で詳しい検査が必要な人】

  • 喫煙している
  • 職業上で発化学薬品に触れたことがある
  • 過去に肉眼的血尿があった
  • 40歳以上の男性
  • 泌尿器科に過去に受診したことがある
  • 膀胱炎などの尿路感染症にかかったことがある
  • 排尿するときに刺激症状がある
  • フェナセチン(鎮痛剤)をかなりの頻度で使っていた
  • 骨盤内に放射線による治療を受けたことがある
  • シクロフォスファミド(免疫抑制剤、抗がん剤)による治療歴

膀胱がんの有無を調べる検査としては、超音波検査や膀胱鏡検査、尿細胞診などがあります。それぞれの検査の詳しい内容は「膀胱がんの検査」で説明しています。

■男女別での血尿の原因について

男性と女性では血尿の原因に違いがあることが知られています。男女別の原因について説明します。

◎男性

膀胱がんは男性に多く、男女比では、約4:1と言われています。
このため、男性で血尿が現れた場合、原因として膀胱がんを考えておく必要があります。また、同じ血尿でも痛みなどを伴う場合、尿管結石の可能性もあります。男性特有の血尿の原因としては、前立腺肥大症がありますが、頻度は多くはありません。

◎女性

女性の膀胱がんは少なく、血尿が現れたときにはまず次の原因を考えます。

  • 女性器からの出血が血尿に見える
  • 膀胱炎

女性器(子宮、卵巣)からの出血が尿に交ざると血尿として自覚される場合があります。
また、女性は膀胱炎にかかりやすく、膀胱炎で血尿を認めることはしばしばあります。女性が膀胱炎になりやすいことなどの理由については「女性は膀胱炎になりやすい:原因や症状、注意事項について」で詳しく説明しているので参考にしてください。

排尿時痛

がんによる刺激が膀胱に及ぶと、排尿時に痛みをともなうことがあります。排尿時痛は膀胱がんの中でも上皮内がんというタイプに多く認められる傾向にあります。上皮内がんは膀胱の表面に発生し、排尿するときに剥がれやすく、剥がれた時に痛みが生じると考えられています。
しかしながら、排尿時痛は膀胱がん特有の症状ではありません。例えば、次のような原因でも排尿時痛が生じます。

排尿時痛は、がん以外を原因とする場合のほうが多いです。
膀胱がんかどうかにかかわらず、排尿時痛があるときは尿の通り道に何らかの問題が発生している可能性が高いので、早めに泌尿器科を受診して診察を受けてください。

頻尿

頻尿は排尿回数が多くなることを指します。尿が溜まりにくくなったり、膀胱に刺激が起きたりすることが原因で頻尿は起こります。膀胱がんが大きくなると尿がたまるスペースが小さくなりますし、がんができると強い刺激が膀胱に加わるので頻尿を自覚することがあります。

とはいえ、頻尿の原因が膀胱がんであることは多くはありません。男性の頻尿の原因として最も多いのは前立腺肥大症ですし、女性では膀胱炎です。他にも過活動膀胱なども頻尿の原因としては膀胱がんより多いです。
つまり、頻尿の原因はがんではない病気(良性疾患)のことが多く、頻尿でいきなりがんを心配する必要はありません。一方で、頻尿が続くと生活に支障をきたしてしまうので治療が必要です。頻尿でお困りな人は泌尿器科を受診して原因を詳しく調べて、必要に応じて治療を受けてください。

3. 転移や進行してから現れる症状

膀胱がんが転移や進行するとさまざまな症状が現れます。初期から見られる症状とは異なる「転移や進行してから現れる症状」について説明します。

尿量が極端に少なくなる

膀胱がんは膀胱の表面(内側)の粘膜から発生します。がんが進行すると深く根を伸ばしていき、さまざまなものを巻き込みながら増殖していきます。
膀胱と腎臓をつなぐ尿管を巻き込んだ場合には尿量が極端に少なくなります。尿管は左右に1本ずつあり、腎臓と膀胱をつなぎ、腎臓で作られた尿を膀胱に運ぶ役割をしています。がんによって尿管口が巻き込まれると尿管から膀胱への尿の流れが悪くなり尿量が極端に少なくなります。


 

■尿管が巻き込まれた場合にはその後どうなるのか

尿の流れが悪い状況でも腎臓は関係なく尿を作り続けます。すると、行き場を失った尿は尿管にとどまり尿管や、腎臓と尿管を繋ぐ腎盂(じんう)という場所がどんどん拡張していきます。この状態を水腎症と呼びます。
水腎症の状態が続くと腎臓への負担が大きくなって機能しない状態に陥ります。この状態を腎不全(腎後性腎不全)といいます。

腎不全はどのような状態なのか

腎不全は、腎臓が尿を作る機能が障害された状態です。
腎臓は体にとって不要な物質を尿の中に出しています。尿に排泄される物質の中には体に溜まると害を及ぼすものもあります。特に命に影響を及ぼすものはカリウムという物質です。カリウムが過剰に溜まると致死的な不整脈を起こす原因になります。

水腎症による腎不全の場合、この次に説明する身体の外から腎臓に管を通してそこから尿を出す腎(じんろう)によって治療することができます。腎瘻などによって尿を体の外に出すことができれば、カリウムの濃度を下げられます。他にもカリウムの濃度を下げる治療はいくつかあります。

◎カリウムの濃度を下げる治療

  • 点滴治療(グルコースインスリン療法、カルチコールの点滴)
    • グルコース・インスリン療法は、カリウムを一時的に血液内から別の場所に移動させる方法です。
    • カルチコールは、カリウムによる不整脈を防ぐ作用があります。
    • 点滴は根本的な解決ではありませんが、緊急処置と並行して行われます。
  • 内服薬(陽イオン交換樹脂)
    • ゼリー状の内服薬です。ゼリーでカリウムを吸着して体外に排出を促します。点滴治療同様、緊急処置と並行して行われます。
  • 血液透析
    • 透析はあまりにもカリウムの値が高く、命に影響が及ぶ危険性が高いと判断された場合に行われることがあります。血液を管で取り出し(脱血)、機械により血液中のカリウムを取り除き、きれいになった血液を体に戻します(返血)。他の治療に比べて行われることは少ないです。
    • 慢性腎臓病による透析の場合と違い、緊急治療としての透析はその場限りで行います。繰り返し脱血と返血をするためのシャント手術は、緊急の透析では行いません。

■腎瘻(じんろう)
膀胱がんによって水腎症を起こした場合には、背中から針を刺して腎盂(腎臓の一部分)まで届く穴を開け、管(カテーテル)を入れて尿を出す方法で行います。この方法を経皮的腎瘻造設術(けいひてきじんろうぞうせつじゅつ)といいます。瘻とはトンネルのことで、腎瘻は腎臓から体の外につながるトンネルという意味です。
腎瘻が挿入されると下の図のようになります。

図:経皮的腎瘻造設術の説明イラスト。

腎瘻は次のような特徴があります。

  • 利点
    • 腎臓に直接管を挿入するので、確実に尿を体外に出すことができる。
  • 欠点
    • 全身の状態が悪い場合や、血液を固まりにくくする薬を飲んでいる場合には行えない場合がある。
    • 腸や太い血管に傷がついてしまう合併症がまれにある。
    • 背中に管が挿入されたままで過ごさなければならないので、生活が不便。

その他では内視鏡を用いて尿管に管を挿入する方法もあります。ただし、膀胱がんによる水腎症の場合は内視鏡を使う方法はあまり使われません。理由は2つあります。

  • 膀胱内が腫瘍で充満しており技術的に困難な場合が多い。
  • 膀胱内の尿にはがん細胞が浮遊しており、管を挿入することで膀胱内の尿が腎臓(腎盂)に混入する懸念がある。

このためほとんどの場合は経皮的腎瘻造設術で水腎症の治療が行われます。治療して腎臓の機能が改善した後に、抗がん剤治療や手術などが検討されます。
抗がん剤治療については「膀胱がんの薬物治療」で、手術については「膀胱がんの手術」でそれぞれ説明しているので参考にしてください。

下肢の浮腫:足がむくむ

膀胱がんがリンパ管に入り込んだとき、がんが足へ向かう血管を圧迫したりリンパ管自体を閉塞したりすると下肢の浮腫(ふしゅ、むくみ)が発生します。また、この前に説明した膀胱がんによって水腎症が起きて腎不全にいたった場合にも、下肢に水がたまり浮腫を来すことがあります。
下肢のむくみは原因によって治療が異なります。がんが大きくなって血管やリンパ管の流れに影響している場合には抗がん剤治療によって効果が現れ、水腎症によって腎不全が起きている場合には腎瘻などの水腎症の治療で改善することがあります。その他に利尿剤なども治療に用いられます。

骨の痛み

膀胱がんが腰痛から見つかることは多くありません。
膀胱がんは骨に転移をしやすいことが知られており、すでに診断されている人に腰痛が出た場合、がんが骨に転移して痛みの原因になっていることもあります。

■骨転移を調べる方法
膀胱がんを発病している人に腰痛が起きたからといって腰骨に転移をしているとは限りません。がんは初期の段階では転移をすることが少ないので腰痛を感じるからがんが転移したと心配になることはありません。
腰痛がでて診察でもがんが転移している可能性がある場合には詳しく検査が行われて調べられます。骨転移は骨シンチグラフィーという検査法で調べられます。骨シンチグラフィーは放射線を利用して全身を画像化する検査です。全身の骨を一度に調べられる点が優れています。
骨シンチグラフィーで骨転移がはっきりとしない場合、CT検査やMRI検査が行われます。骨転移の症状は痛みの他にしびれなどの麻痺症状も現れます。麻痺症状は痛みより深刻な状態です。このため、麻痺症状など深刻な状態にあると考えられる場合、より短時間で検査ができるCT検査やMRI検査が行われることもあります。

■骨転移の治療
骨転移によって起こる「痛み」や「麻痺」といった症状はともに生活の質を下げる原因になるので速やかに治療が行われます。治療の方法は次のものが組み合わされて用いられます。

  • 放射線治療
  • 薬物治療
    • 骨を丈夫にする薬
      • ゾレドロン酸
      • デノスマブ
    • 鎮痛剤:痛み止め
      • NSAIDs
      • 医療用麻薬(オピオイド)

転移した部位がこれ以上大きくならないようにするために転移した部分に放射線を照射します。放射線治療によって転移した部分が小さくなったり神経への影響を少なくすることができます。
また、同時に痛みに対してはNSAIDsや医療用麻薬といった鎮痛剤を用いて症状の緩和を行います。
「痛み」や「麻痺」といった症状が落ちつたところで、骨を補強し、骨折などを予防する点滴(ゾレドロン酸、デノスマブ)や抗がん剤などを使用して治療します。

■腰痛の原因
腰痛は他の病気を原因とすることも多い症状です。腰痛の原因として膀胱がんの転移が原因になっていることはまれな部類です。腰痛があるからといって「膀胱がんが転移したのか」と必要以上に心配になる必要はありません。ちなみに腰痛の主な原因は次のように多様です。

腰痛の原因となる病気は多様です。腰痛が長引くと生活にも支障がでるので、なるべく早くに治療を受けるほうが望ましいです。整形外科や内科などを受診して原因について調べてもらってください。

4. 症状がないのに膀胱がんはあるのか

膀胱がんは血尿などの症状をきっかけにみつかる

膀胱がんは痛みを伴わない血尿(無症候性肉眼的血尿)、排尿時の痛み(排尿時痛)などの症状を契機に病院を受診し発見されることが多いです。

しかし、近年は超音波検査、CTやMRIが広く普及してきたことにより、検診での超音波検査や他の目的で撮影されたCTやMRIによって膀胱がんが指摘される場合も増えてきています。

また健康診断などで、見た目は赤くないのに血尿(顕微鏡的血尿)が出ていると指摘されることもよくあります。顕微鏡的血尿を契機に膀胱がんと診断される人は0.4~6.5%と報告されています。

5. 膀胱がんの末期症状は?

まず「がんの末期」には明確な定義はありません。
ここで言う「末期」は抗がん剤による治療も行えない場合、もしくは抗がん剤などの治療が効果を失っている状態で、日常生活をベッド上で過ごすような状況を指すことにします。

膀胱がんの末期は、がんによって身体がむしばまれQOL(生活の質)が低下して緩和的な治療が主体になってきている段階です。(緩和医療に関しては「緩和医療って末期がんに対して行う治療じゃないの?」で詳細に解説しています。)
 

膀胱がんの末期では肺、肝臓、骨などに転移していることも多くがんが身体にさまざまな悪影響を及ぼします。このような状況では、以下のような症状が目立つ悪液質(カヘキシア)と呼ばれる状態が引き起こされます。

  • 常に倦怠感につきまとわれる
  • 食欲がなくなり、食べたとしても体重が減っていく
  • 身体のむくみがひどくなる
  • 意識がうとうとする

身体の栄養ががんに奪われ、点滴で栄養を補給しても身体がうまく利用できない状態が悪液質では起こります。身体の問題が気持ちにも影響して、思うようにならない身体に対して不安が強くなり苦痛が増強します。末期の症状は抗がん剤などでなくすことが出来ないので、緩和医療で症状を和らげることが大切です。また不安を少しでも取り除くために、できるだけ患者さんが過ごしやすい雰囲気を作ることも大事です。

【参考】
標準泌尿器科 第9版