ぜんりつせんひだいしょう
前立腺肥大症
前立腺肥大症は前立腺の良性腫瘍です。前立腺肥大により排尿障害などの症状をみとめることを前立腺肥大症といいます
12人の医師がチェック 149回の改訂 最終更新: 2019.01.29

前立腺肥大症の治療:薬(ユリーフ®、ハルナール®、アボルブ®、ザルティア®、漢方薬)、手術の解説

前立腺肥大症の治療は手術によるものと薬物によるものがあります。前立腺肥大症の手術の目的は症状を軽くすることです。手術にはある程度負担が伴います。体の負担と症状の改善のバランスを考えることが重要です。

1. 前立腺肥大症の薬物治療

前立腺肥大によって排尿障害などの症状がある場合は、まず薬物による治療を開始します。

それぞれの薬について説明します。

α1遮断薬

α1遮断薬に分類される主な薬剤名を挙げます。

商品名 一般名
ハルナール® タムスロシン
フリバス® ナフトピジル
ユリーフ® シロドシン
エブランチル® ウラピジル
ミニプレス® プラゾシン

■薬の作用

α1遮断薬は、前立腺と膀胱の出口の筋肉(平滑筋)を緩ませる作用があります。前立腺が大きくなったことによる閉塞を和らげることで、尿の出しにくさや残尿量を減少させ、症状を緩和します。

前立腺や膀胱の出口にある平滑筋細胞はアドレナリンが結合する物質を持っています。アドレナリンが結合する物質をアドレナリン受容体といいます。前立腺や膀胱の出口の平滑筋細胞は、アドレナリン受容体にアドレナリンが結合すると収縮し、尿を止めます。健康な人ではアドレナリンの作用により排尿がコントロールされています。

α1遮断薬はアドレナリンとアドレナリン受容体の結合を阻害することで効果を発揮します。つまり、アドレナリンが尿を止める働きを弱くして、尿の出しにくさを改善します。

アドレナリンは排尿以外にも全身で多様な働きをしています。α1遮断薬はほかの臓器でもアドレナリンの作用を弱くしてしまうことにより副作用を現すことがあります。

α1遮断薬は服用開始後1-2週間程度と比較的早くに効き始めます。α1遮断薬に分類される薬にも種類がいくつかあり副作用の出現頻度や効果に若干の差があります。

■副作用

α1遮断薬はアドレナリンとアドレナリン受容体の結合を妨げることで効果を発揮します。アドレナリン受容体の中にも種類があり、α1遮断薬は膀胱の出口や前立腺に多いタイプのアドレナリン受容体を選んで阻害することで効果を発揮しますが、まれに他の場所に作用して副作用として出現することがあります。

α1遮断薬の主な副作用としては、起立性低血圧、逆行性射精、めまい、ふらつき、下痢などを認めることがあります。

5α還元酵素阻害薬

商品名 一般名
アボルブ® デュタステリド

■薬の作用

前立腺が大きくなることには、ジヒドロテストステロン(DHT)という物質が強く関わっているとされています。DHTはテストステロンという男性ホルモンから合成されます。テストステロンをDHTに変換するのものを5α還元酵素といいます。5α還元酵素阻害薬は、テストステロンと5α還元酵素の結合を阻害することでDHTを減少させ、前立腺の縮小を促します。

■副作用

5α還元酵素阻害薬の主な副作用は次のものです。

  • 性機能への影響
  • 乳房の張り(女性化乳房)
  • 胸焼け(胃部不快感) 

男性ホルモンの一種であるDHTが減少することから、男性の機能への影響がみられます。また乳房の張りなどの症状も見られることがあります。

■注意点

5α還元酵素阻害薬の内服中は、前立腺がん腫瘍マーカーとして利用されるPSAの計測値が約半分になります。これは前立腺がん発症する危険性が半分になったということではありません。検査値のノイズのようなものです。
前立腺がんの疑いがある人では、5α還元酵素阻害薬の影響に惑わされないように、PSAの値を注意深く観察していく必要があります。
PSAが上昇がしてきた場合には詳しい検査が追加される場合があります。

PDE5阻害薬

商品名 一般名
ザルティア® タダラフィル

■薬の作用

PDE5阻害薬は膀胱の出口(膀胱頸部)、前立腺、尿道の筋肉(平滑筋)を緩ませることで排尿を促します。前立腺や膀胱頸部を緩ませるのはα1遮断薬と同じですが、薬の作用が異なります。血管を緩ませる効果もあるので血流が増えて膀胱などの機能が改善する効果もあります。

■副作用

PDE5阻害薬の最も大事な注意点は、心臓に持病がある人に関係します。PDE5阻害薬以外に使用している薬との飲み合わせで、危険な低血圧が起きることがあります。悪い飲み合わせを避けるために、持病がある人、薬を飲んでいる人は前立腺肥大症の治療を始める前にしっかりと担当医に伝えることが重要です。他の副作用としては頭痛、ほてり、消化不良などがあります。

抗アンドロゲン剤とは?

商品名 一般名
プロスタール® クロルマジノン酢酸塩

■薬の作用

アンドロゲン薬は男性ホルモンであるテストステロンを減少させます。テストステロンは前立腺肥大と関連しており、テストステロンが減少すると前立腺が縮小する効果が期待できます。前立腺が小さくなることにより、前立腺によって妨げられていた尿の流れがスムーズになることが期待できます。

■副作用

副作用としては女性化乳房、うっ血性心不全血栓症(血管の中で血の塊ができる)、肝機能障害糖尿病などがあります。

■注意点

抗アンドロゲン薬は注意すべき副作用が多いので、使用中は定期的に血液検査などを行うことが勧められています。また症状が改善しない場合は、漫然と継続して使用するべきではないとされています。目安となるのは16週間とされています。
ただし、自己判断で飲むのをやめるのは危険です。抗アンドロゲン薬を処方されてしばらく経っても効果を感じられないときは、処方した医師に相談してください。

抗コリン薬

主な抗コリン薬

商品名 一般名
ベシケア® コハク酸ソリフェナシン
ウリトス®、ステーブラ® イミダフェナシン
バップフォー® プロピベリン塩酸塩
トビエース® フェソテロジンフマル酸塩
ネオキシ®テープ オキシブチニン塩酸塩
デトルシトール® 酒石酸トルテロジン

薬の作用

前立腺肥大症の患者さんの中には、過活動膀胱(かかつどうぼうこう)という頻尿症状を合併している人がいます。過活動膀胱の治療には抗コリン薬という薬が用いられます。

抗コリン薬は膀胱の過剰な収縮を抑えます。一方で排尿困難感が強い前立腺肥大症の人に対して抗コリン薬を使用すると、尿が出なくなる(尿閉)などの症状が出現する副作用も懸念されます。

頻尿症状の強い前立腺肥大症の人に対しては抗コリン薬が有効な場合もありますが、副作用により尿閉などが出現しないかをしっかりと観察する必要があります。

副作用・注意点

排尿障害の症状が強い前立腺肥大症の人は、副作用による尿閉の可能性があるため、抗コリン薬の使用は慎重に行う必要があります。その他の副作用としては、口の中の乾燥、便秘、脈が遅くなる(徐脈)などもあります。

漢方薬

前立腺肥大症に対して保険の適応がある漢方薬は、八味地黄丸(ハチミジオウガン)、牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)の2つです。

前立腺肥大症の症状を明らかに改善したとする報告はありませんが、牛車腎気丸はα1遮断薬と併用することで症状などの改善を認めることがあるとされます。

その他の薬

その他の薬では植物に由来した薬物などがあります。

  • オオウメガサソウエキス・ハコヤナギエキス配合剤(商品名:エビプロスタット®)
  • セルニチンポーレンエキス錠(商品名:セルニルトン®)

両者とも慢性前立腺炎などに対してよく使用される薬です。他の薬剤と併用することで効果があるとする報告もあります。前立腺肥大症に対して植物由来の薬だけで効果が得られる人はかなり限られていると考えられます。

前立腺肥大症に市販薬は効くのか

市販薬で明らかに前立腺肥大症の症状を改善することが示されたものはありません。

以上に挙げた薬はいずれも泌尿器科などの医療機関で処方されるものです。医療用医薬品を人から買ったりもらったりして飲むことは非常に危険ですのでやめてください。インターネットなどを通じて偽造薬を販売している悪質な業者も実際に存在します。

2. 前立腺肥大症の手術

前立腺肥大症はまず薬物療法が行われることが多く、薬物療法の効果が不十分な場合などに手術による治療を考慮します。手術の目的は前立腺を削って小さくすることで排尿しやすくすることです。

手術の方法は主に内視鏡を使う方法です。以前は開腹手術が行われていましたが、近年の内視鏡手術の発達により開腹手術が行われることは限られてきました。

主な手術方法は以下のものです。

  • TURP(transurethral resection of prostate;経尿道的前立腺切除術)
  • HoLEP(holmium laser enucleation of the prostate;ホルミウムレーザー前立腺核出術)
  • PVP(photoselective vaporization of the prostate;光選択的前立腺レーザー蒸散術)

それぞれの手術方法について以下で説明します。

TURP(経尿道的前立腺切除術)

TURPは、前立腺肥大症の手術としては歴史があり標準術式となっています。TURPは内視鏡を尿道から膀胱へ挿入し電気メスを用いて前立腺を切除する手術です。

手術手順を簡単に説明します。

膀胱内に内視鏡を挿入し、膀胱の出口にある前立腺を確認します。水を流しながら前立腺を内側(尿道に隣り合う部分)から電気メスで削っていきます。削った前立腺は膀胱内に一度移動させ、後でまとめて取り出します。十分に前立腺を切除した(削った)後、止血を行います。止血がしっかりできたことを確認し、膀胱の中に排尿の管(尿道カテーテル)を挿入し手術を終了します。

手術時間は1-2時間程度になります。麻酔は全身麻酔でも半身麻酔でも行うことができます。

手術の後は膀胱に管を入れたことの違和感や痛みを軽減するために、背骨の中に痛み止めの薬を送る管を入れておくことがあります(硬膜外麻酔)。

手術の後は、前立腺からの出血を観察するために尿道カテーテルをしばらく入れたままにします。尿道カテーテルは出血の危険性がないと判断された時点で抜くことになります。管を抜いた後は、尿道が手術によってむくんでいるので、多少尿が出しにくい感じや排尿のたびにしみる感じを自覚することがあります。

合併症

◎出血
前立腺は血流が豊富な臓器です。手術によって前立腺を削ることで出血します。出血を少なくするために止血しながら手術を行いますが、前立腺が大きい場合には出血も多くなる傾向にあります。まれに輸血が必要な場合もあります。

◎再出血
手術が終わった後、再度出血することがあります。その場合は内視鏡による止血のための手術が必要になります。手術後1か月は再出血の可能性があるので注意が必要です。

感染症
尿は本来無菌ですが、前立腺肥大症で尿が膀胱に溜まるようになると尿に細菌が入り込むことがあります。手術時に尿の中に細菌が隠れていた場合などで、手術の後に感染症が発生することがあります。その場合は抗生剤で治療します。

◎前立腺被膜損傷
前立腺の周りには被膜(ひまく)という硬い殻のようなものがあります。被膜が破れると、前立腺の中に入っていた水分がお腹の中(腹腔)に漏れることがあります。ほとんどが自然に吸収され問題になりませんが、漏れた量が多い場合は下腹部を切開し、貯まった水を排出するための管(ドレーン)を入れることがあります。

◎TUR症候群
TURPによって体の中の物質のバランスが崩れることがあります。
TURPは、膀胱の中に絶えず液体を入れたり出したりしながら行います。手術に使用する液体を灌流液(かんりゅうえき)と言います。今は2種類の灌流液が使われています。

  • 生理食塩水
  • ソルビトール溶液(商品名:ウロマチック®️

灌流液の水分は前立腺を切除していく過程で体の中に吸収されます。すると体の中の物質の濃度に影響があります。特に問題になるのがナトリウムなどの電解質です。

電解質は全身の臓器にとって大切な役目があります。電解質が多すぎても少なすぎても問題が起こります。TURPでは、灌流液の水分が吸収されることによって、血液中の電解質が薄まってしまうことに注意が必要とされます。ナトリウムが薄まった低ナトリウム血症の状態では、血圧の低下、吐気や意識障害などを引き起こすことがあります。TURPなど、前立腺や膀胱の内視鏡手術によって現れるこれらの症状をTUR症候群と呼びます。

生理食塩水には血液と同じ濃度の塩化ナトリウムが含まれているので、血中のナトリウム濃度に影響がありません。ソルビトール溶液では、手術が長時間に及ぶと、吸収された灌流液により電解質の異常を起こすことがあります。ソルビトール溶液を使う理由は、電気メスを使って手術する場合、電流をよく通す生理食塩水を灌流液に使うと感電するからです。

現在は、機械が進歩して灌流水に生理食塩水が使用可能な器具(TURisシステム)が登場し、TUR症候群の危険性は減ってきています。しかしながら、TURisシステムが未導入の施設もあります。どのような灌流液を使用するかはTUR症候群のリスクに関係します。心配なら手術の前の説明のときに質問することができます。

手術中にTUR症候群が疑われた場合は症状が重くなる前に手術を中止し、後日残った腫瘍を切除するなどの方法で予防を行います。

◎尿道損傷
内視鏡を出し入れするときに尿道に傷がついたりすることがあります。尿道損傷は前立腺が大きいことや、元々の尿道が細いことなどが原因で起こりやすくなります。尿道損傷が起きたときの対応策としては尿の管(尿道カテーテル)を通常より長く入れておき、尿が傷に触れないようにして傷が自然に治るのを待ちます。
損傷の程度によりますが、多くは尿道カテーテルを1週間程度留置することで治癒が期待できます。

■後遺症

◎術後尿失禁
尿道カテーテルを抜いたあと、一時的に尿失禁をきたすことがあります。ほとんどは1週間ほどで改善します。術中に外尿道括約筋(がいにょうどうかつやくきん)を損傷した場合には、尿失禁が改善しないこともあります。

◎逆行性射精
射精時に精液が膀胱に逆流し尿道から出なくなります。

尿道狭窄
内視鏡の出し入れに伴う合併症で尿道が狭くなり尿の勢いが弱くなります。尿道を広げる手術が必要になる場合があります。

HoLEP(ホルミウムレーザー前立腺核出術)とは?

HoLEPは、レーザーを用いて前立腺をくり抜き除去する手術です。レーザーでくり抜いた前立腺のかけら(切片)をいったん膀胱に送り、膀胱内で細かく砕き体の外に出します。HoLEPはTURPに比べて出血が少ないことなどが優れている点とされています。HoLEPはどの施設でも行っているわけではありません。レーザーが導入されておりHoLEPの技術を習得した医師が在籍している施設で行われます。

HoLEPはTURPと同じく内視鏡で行う手術です。TURPはカンナで前立腺を削り取るような手術ですが、HoLEPは、前立腺を外の硬い殻からくり抜くようなイメージの手術です。前立腺を大きなブロックにして切除します。切除したものを膀胱の中で細かくして体の外に出します。HoLEPはTURPに比べて前立腺が大きいときでも出血量を抑えながら切除することが可能といわれています。

■合併症

◎出血
前立腺は血流が豊富な臓器です。手術によって前立腺を傷付けることで出血します。出血を少なくするために止血しながら手術を行いますが、前立腺が大きい場合には出血も多くなる傾向にあります。まれに輸血が必要な場合もあります。

◎再出血
手術が終わった後、再度出血することがあります。その場合は内視鏡による止血のための手術が必要になります。手術後1か月は再出血の可能性があるので注意が必要です。

◎発熱、感染症
もともとの尿が汚れている場合などは、手術の後に感染症を併発することがあります。その場合は抗生剤の投与で治療を行います。

◎前立腺被膜損傷
前立腺の周りには被膜という硬い殻のようなものがあります。被膜が破れると前立腺の中の水分がお腹の中(腹腔)に漏れることがあります。ほとんどが自然に吸収され問題ありませんが、漏れた量が多い場合は下腹部を切開し、貯まった水を排出するための管(ドレーン)を入れることがあります。

◎尿道損傷
内視鏡を出し入れするときに尿道に傷がついたりすることがあります。尿道損傷は前立腺が大きいことや、元々の尿道が細いことなどが原因で起こりやすくなります。尿道損傷が起きた時の対応策としては尿の管(尿道カテーテル)を通常より長く入れておき、尿が傷に触れないようにして傷が自然に治るのを待ちます。
損傷の程度によりますが、多くは尿道のカテーテルを1週間程度留置することで治癒が期待できます。

■後遺症

◎術後尿失禁
尿道カテーテルを抜いたあと、一時的に尿失禁をきたすことがあります。ほとんどは1週間ほどで改善します。術中に外尿道括約筋(がいにょうどうかつやくきん)を損傷した場合には、尿失禁が改善しないこともあります。

◎逆行性射精
射精時に精液が膀胱に逆流し尿道から出なくなります。

尿道狭窄
内視鏡の出し入れに伴う合併症で尿道が狭くなり尿の勢いが弱くなります。尿道を広げる手術が必要になる場合があります。

PVP(光選択的前立腺レーザー蒸散術)

PVPは、前立腺をレーザーで蒸散(じょうさん)する治療です。ここで言う蒸散とは組織の水分(血液)を気化させて体積を減らすことです。PVPに使用するレーザーはHoLEPで使う赤いレーザーと違って緑色です。PVPは内視鏡手術の一つですが、TURPやHoLEPとは異なり前立腺を切除するのではなくレーザーで蒸散させる治療です。PVPで用いるレーザーは血液中の酸化ヘモグロビンに吸収され、強い熱を発生します。この強い熱により前立腺から血液が気化します。前立腺は血液が多い組織であり、蒸散すると薄い膜のようなものしか残りません。膜が形成されることで出血も予防されます。

PVPはTURPと比較して出血が少なく、手術の後の尿道カテーテルを留置する期間も短く済むと言われています。HoLEPと同様にPVPはどの施設でも行っているわけではありません。PVP用のレーザーが導入され、PVPの技術を身に付けた医師も在籍している施設で行われます。

■合併症

◎出血
前立腺は血流が豊富な臓器です。手術によって前立腺を削ることで出血します。出血を少なくするために止血しながら手術を行いますが、前立腺が大きい場合には出血も多くなる傾向にあります。まれに輸血が必要な場合もあります。

◎再出血
手術が終わった後、再度出血することがあります。その場合は内視鏡による止血のための手術が必要になります。手術後1か月は再出血の可能性があるので注意が必要です。

◎発熱、感染症
尿は本来無菌ですが、前立腺肥大症で尿が膀胱に溜まるようになると尿に細菌が入り込むことがあります。手術時に尿の中に細菌が隠れていた場合などで、手術の後に感染症が発生することがあります。その場合は抗生剤で治療します。

◎前立腺被膜損傷
前立腺の周りには被膜(ひまく)という硬い殻のようなものがあります。被膜が破れると、前立腺の中に入っていた水分がお腹の中(腹腔)に漏れることがあります。ほとんどが自然に吸収され問題になりませんが、漏れた量が多い場合は下腹部を切開し、貯まった水を排出するための管(ドレーン)を入れることがあります。

■後遺症

◎術後尿失禁
尿道カテーテルを抜いたあと、一時的に尿失禁をきたすことがあります。ほとんどは1週間ほどで改善します。術中に外尿道括約筋(がいにょうどうかつやくきん)を損傷した場合には、尿失禁が改善しないこともあります。

◎逆行性射精
射精時に精液が膀胱に逆流し尿道から出なくなります。

尿道狭窄
内視鏡の出し入れに伴う合併症で尿道が狭くなり尿の勢いが弱くなります。尿道を広げる手術が必要になる場合があります。

前立腺肥大症の手術後の経過

前立腺肥大症の手術は前立腺がんの手術に比べると体への負担は大きくありません。内視鏡による手術の場合はクリニック(診療所)を中心に日帰りで手術を行う施設もあります。

こで手術をしても、どんな手術をしても手術後には尿道カテーテルが挿入されています。尿道カテーテルを抜く日は患者さんの術後の状況によって異なります。尿道カテーテルが挿入されているとしばらくは「ずっと尿意があるような気がする」という違和感が強く出ます。その時は座薬が効果的なので積極的に使うことをお勧めします。

カテーテルが挿入されている状態で患者さんが気をつけるべきことは、カテーテルを引っ掛けたりしないことです。

カテーテルを抜去した後には思ったより尿が出ないと感じる場合もあります。それは少し尿道がむくんだり、膀胱の排尿筋の収縮が鈍くなっているためです。徐々に排尿状態は改善してきます。尿流測定で手術の前後を比較してみるとさらに改善を実感できるでしょう。その後しばらくは定期的に通院することになります。

前立腺肥大症の手術にかかる時間・費用

手術にかかる費用は、外来で行うか入院するか、また入院するなら入院期間などにより異なります。保険適用の手術を行い3割負担の場合、10万円前後となります。

手術にかかる時間は手術の方法によっても違います。TURPなら手術自体は1-2時間ほどで終わります。

前立腺肥大症の手術はどれを選ばいいのか

前立腺肥大症の手術は内視鏡手術を中心に行われています。内視鏡手術の中ではTURP、HoLEP、PVPなどが代表的です。TURP、HoLEP、PVPはどれも保険適用となっており、それぞれの特徴を比べて自分に合いそうなものを選択することができます。手術の結果には極端に大きな違いはありません。

HoLEPやPVPは従来のTURPと比較して出血量が少なかったり、入院期間が短いという報告もありますが、どの病院でも行えるほど普及していないのも現状です。HoLEPやPVPを希望しても手術までの待ち時間が長いことも予想されます。

自分の症状をいつまで我慢できるか、手術で特に希望するポイントなどを考えて、手術を行う場所、方法などを検討してみてください。

手術する病院はどうやって探せばいいのか

前立腺肥大症の手術は泌尿器科で行います。したがって泌尿器科を受診することが大事です。病院によっては手術の方法が限られている場合もしばしばあります。

前立腺肥大症は急激に悪化するようなことがないので、がんの治療ほどは急がなくても大丈夫です。特に希望する手術の方法がある場合は、インターネットで手術方法を指定して病院を探すのもいいと思います。例えば「前立腺肥大症 〇〇市(お住いの場所) 〇〇(手術の方法)」などのキーワードを入力するということです。

病院の検索も重要ですが、検索に時間を要しすぎるのも得策ではありません。目星がついたらひとまず受診してみて手術の話を聞いてみるとよりイメージが湧くかもしれません。

3. 前立腺肥大症の治療ガイドラインはある?

診療ガイドラインは、治療にあたり妥当な選択肢を示すことや、治療成績と安全性の向上などを目的に作成されています。前立腺肥大症にも診療ガイドラインがあります。

前立腺肥大症の診療ガイドラインは日本泌尿器科学会、EAU(欧州泌尿器科学会)、AUA(米国泌尿器科学会)など各学会が作成したものが存在します。

ガイドラインがいくつも存在するのは理由があります。ひとつの理由は、国ごとに病院に行くときの環境などが違うことを考慮しているためです。もうひとつの理由として、医学的に唯一の正解を決めにくいような場合に対して、学会ごとに意見が違うためでもあります。

日本泌尿器科学会の前立腺がんのガイドラインは2011年に発刊されています。2017年の4月に最新のガイドラインが発刊予定です。

ガイドラインは治療の助けになりますが、ガイドライン通りに治療を行うことが全て正しいわけではありません。その時々、患者さんの状態はひとりひとり異なることを考えに入れるべきです。また、ガイドラインにはまだ反映されていない新しい知見が役に立つ場合もあります。