ぜんりつせんひだいしょう
前立腺肥大症
前立腺肥大症は前立腺の良性腫瘍です。前立腺肥大により排尿障害などの症状をみとめることを前立腺肥大症といいます
12人の医師がチェック 149回の改訂 最終更新: 2019.01.29

頻尿の原因は、前立腺肥大症?症状について解説

前立腺肥大症の症状は排尿開始の遅れや残尿感、夜間頻尿などさまざまです。排尿に関する症状のことをまとめて排尿障害ということがあります。前立腺肥大症が深刻になると他の臓器にも悪影響を及ぼします。

1. 前立腺肥大症の主な症状

尿が出にくくなるのは前立腺肥大症の代表的な症状です。膀胱の出口付近にある前立腺が大きくなり尿の通り道を圧迫するために尿が出しにくくなります。次のように排尿に関するさまざまな症状が現れます。

  • 尿を溜める機能が不十分で出る症状(蓄尿症状)
    • 尿意切迫感
    • 頻尿
    • 夜間頻尿
    • 切迫性尿失禁
  • 尿を出すときの症状(排尿症状)
    • 尿がなかなか出ない(排尿開始の遅れ)
    • 排尿時間が長くなる
    • 尿の勢いが弱い(尿線細小)
    • 排尿不快感
    • 尿が途中で止まる(尿線途絶)
    • 失禁してしまう(溢流性尿失禁)、尿が出せなくなる(尿閉
    • 排尿後に雫のように垂れてしまう(終末時滴下)
  • 尿を出した後の症状(排尿後の症状)
    • 残尿感

前立腺肥大症の初期の段階では、軽度の排尿困難と夜間頻尿、排尿不快感などの症状が出現します。その後排尿困難感は次第に増強します。飲酒、風邪薬などにより急に尿が出なくなることがあります(尿閉)。さらに、残尿感、尿意切迫感や切迫性尿失禁などの症状が出現します。

この中でも悩まれる人が多い「夜間頻尿」と危険な状態である「尿閉」について次で詳しく説明します。

夜間頻尿

夜トイレに行く(排尿する)ことを夜間頻尿と言います。
夜間頻尿の定義は就寝から起床までに1回以上排尿に行くことです。頻尿という名前がついているのに1回でも頻尿というのは、少し不思議な感じがするかもしれませんが、定義の上ではこうなっています。

夜間頻尿は、前立腺肥大症でよくある症状の一つですが、他の病気などによって現れることもあります。

  • 尿量が多いこと(糖尿病尿崩症
  • 刺激物により排尿する筋肉が過活動状態になること(カフェイン、アルコール、喫煙)
  • 残尿が増加する病気(前立腺肥大症、過活動膀胱神経因性膀胱) 
  • 横になると尿量が増える病気(高血圧、心不全

夜間頻尿は、様々な病気を原因として現れる症状です。夜間頻尿の問題は睡眠が妨げられる点です。睡眠は人生の中で大きな部分を占めています。夜間頻尿によって睡眠が妨げられるなどの症状があるときは泌尿器科を受診して原因を特定することが改善の道筋になります。

尿閉

尿閉とは膀胱から尿を出せない状態です。急性尿閉と慢性尿閉に分けることもあります。

  • 急性尿閉:排尿が不可能で、痛みを伴い膀胱が張った(緊満)状態
  • 慢性尿閉:排尿後にも尿で緊満した膀胱が触知され、痛みはなく、尿失禁を認める状態(残尿がかなり多いことを示唆します)

ここでは前立腺肥大症の人に多い急性尿閉について説明します。前立腺肥大症の人は以下のような原因で尿閉が引き起こされることが知られています。

  • アルコール
  • 風邪薬(感冒薬)
  • アレルギー薬(抗ヒスタミン薬)
  • 抗不安薬、抗不整脈

前立腺肥大症の人はアルコールや薬をきっかけにして尿閉が起こります。風邪などで病院にかかった場合には、慎重に薬を選ぶ必要があるので、前立腺肥大症があることを担当医に伝えておくことが大事です。

■もし尿閉が起こったらどうすればいいのか

尿閉の治療は泌尿器科が専門なので、かかってみてください。
近くの泌尿器科が診察をしていない時間であれば病院の救急外来に行ってください。尿閉は自分で対処できる状態ではないので、医療機関を受診しなければなりません。

尿閉の治療

尿閉の治療には以下の方法があります。

  • 導尿
  • 尿道カテーテル留置
  • 膀胱(ぼうこうろう)

尿閉になった場合は、まずは尿を体の外に出さないと、その後腎不全(腎臓が機能しなくなること)に発展し命に危険が及びます。
腎不全を避けるためには尿を身体の外に出さなければなりません。
尿の出口から尿道に細い管(尿道カテーテル)を入れ尿を抜きます(導尿)。尿道カテーテルを入れっぱなしにする(留置する)場合もあります。一度尿を抜いてもその後再度尿閉になる可能性が高いと見られた場合には、
尿道カテーテルを入れっぱなしにする(留置する)場合もあります。

前立腺があまりにも大きい人は尿道カテーテルが入れにくいことがあります。尿道カテーテルを入れるのが難しい場合は、皮膚から針を膀胱まで刺して、小さな穴を開けて管を挿入します。この方法を膀胱瘻と呼びます。

尿閉は長く放置すると危険な状態を呼び起こすこともあります。急に尿が出なくなったと思ったら早めに泌尿器科に行ってください。

2. 前立腺肥大症が原因で起こる病気とその症状:膀胱結石・膀胱炎・腎不全

前立腺肥大症が深刻な状態になるとそれに引き続いて病気を起こすことがあります。
膀胱結石・膀胱炎腎不全について説明します。

血尿

前立腺肥大症により尿の流れが悪くなると膀胱の中に結石ができることがあります。結石ができる原因は2つあります。

  • 尿の停滞(残尿)
  • 感染

解説します。
前立腺肥大症によって尿の流れが悪くなると、排尿後も膀胱に尿が残ることになります(残尿)。残尿が多くなると尿の成分が固まりやすくなったり、溜まっている尿に細菌が入り込んで感染しやすくなったりします。つまり、残尿や感染は膀胱結石の原因になります。膀胱結石ができると、結石に細菌が付いたり、結石が膀胱を傷つけたりして慢性的な感染を引き起こす原因にもなります。

膀胱結石ができると「排尿時に痛みを感じる」や「常に排尿に行きたいような感じがする」、「赤い色の尿が出る」などの症状が現れます。

前立腺肥大症と膀胱結石が両方発生(合併)している場合は、速やかに治療しなければさらに悪化する恐れがあります。手術で膀胱結石と前立腺肥大症を治療します。

膀胱炎

本来、尿にはほとんど細菌がいません。しかし前立腺肥大症によって膀胱から体の外へ尿を出しにくい状況が続くと、溜まった尿の中に細菌が繁殖して感染しやすくなります。尿の中で細菌が繁殖すると膀胱炎などを引き起こします。

尿の流れが悪いと感染しやすくなる原理は、川を想像すればイメージが湧きやすいです。
流れのある川はきれいなことが多いです。しかし、流れの少ない淀んだ川は水も汚いことが多いと思います。尿の流れも自然の川の流れと同じです。流れがあればきれいですが、流れが滞ると汚れます。前立腺肥大症により尿の流れが滞ると、細菌が膀胱の中に繁殖し、膀胱炎になりやすくなります。

膀胱炎になると下腹部が痛んだり、頻尿といった症状が現れます。
膀胱炎の症状については「膀胱炎の症状」で説明しているので参考にしてください。

腎不全

前立腺肥大症がかなり進行すると、尿が出にくくなります。尿は慢性的に膀胱に溜まり、膀胱が拡大していきます。溜まった尿の量が増えると上流の尿管腎盂(じんう)から尿が出て行きにくくなります(水腎症)。尿の渋滞は腎臓の大きな負担になります。尿が出て行かない状態では腎臓の機能が少しずつ低下していきます。尿が出て行かないことで、長期間のうちに腎臓の機能が失われることもあります。

腎不全はかなり進行するまで症状が現れません。しかもその症状は「身体のだるさ」や「吐き気」「足のむくみ」など、一見排尿と関係がないこともあるので、気づくのが遅くなることもあります。このため、前立腺肥大症と診断された後には、定期的に医療機関を受診して調べてもらうと、腎不全に早めに気づいて対処することができます。

3. 前立腺肥大症でまれに現れる症状

前立腺肥大症は多くの症状があります。ほとんどは排尿に関係した症状です。
ここではまれではありますが、前立腺肥大症が深刻なときに現れる症状などについても説明します。

前立腺肥大症と腰痛は関係があるのか

基本的には前立腺肥大症と腰痛に関係はありません。
ただし、前立腺肥大症が進行して腎臓にまで影響した場合は、腰痛が出現することがあります。

前立腺肥大症が悪化すると膀胱に尿が常に溜まります。膀胱に尿が常にたまるとその上流である腎臓からも尿が流れなくなり、水腎症という状態が起こります。水腎症は腎臓の腎盂という部分が腫れて腰痛を感じることがあります。

前立腺肥大症に痛みはある?

前立腺肥大症に痛みは基本的にありませんが、進行すると痛みが出る場合があります。
前立腺肥大症により次のような状態が引き起こされると痛みが現れます。

  • 下腹部痛:尿閉による痛み、感染による痛み
  • 腰痛:水腎症による痛み

とはいえ、痛みによって前立腺肥大症が発見されることは少ないです。前立腺肥大症で痛みが出るのはかなりひどい場合だけです。多くの場合は痛みが出る前に排尿困難感などの症状が出て発見されることが多いです。

前立腺肥大症による射精への影響

前立腺肥大症の症状として射精障害が現れることは多くはありません。
しかし、前立腺肥大症の治療によって引き起こされる問題(合併症)として射精障害が出ることがあります。これは逆行性射精というものです。正常な場合、射精のときに膀胱の入り口が閉じて、膀胱へ精液が流れ込むことを防ぎます。射精時に膀胱の入り口を閉じる機能が失われると、精液が膀胱に入り込んでしまいます。
逆行性射精は前立腺肥大症の治療で起こります。
参考までに前立腺肥大症の治療を紹介します。

【前立腺肥大症の治療】

  • 薬物治療
    • α1遮断薬 
    • 5α還元酵素阻害薬 
    • PDE5阻害薬
  • 手術
    • 内視鏡による手術
    • TURP(経尿道的前立腺切除術)
      • HoLEP(ホルミウム・YAGレーザー前立腺核出術)
      • PVP(光選択式前立腺レーザー蒸散術) 
    • 開腹手術

上に挙げた治療法の多くは副作用や合併症として逆行性射精を引き起こすことがあります。たとえば薬物治療のα1遮断薬(アルファワンしゃだんやく)では15%前後で逆行性射精が現れます。手術でも方法によらず後遺症として逆行性射精を起こすことがあります。
治療についてさらに詳しく知りたい人は「前立腺肥大症の治療」を参考にしてください。