ぜんりつせんひだいしょう
前立腺肥大症
前立腺に発生する良性の腫瘍です。腫瘍によって前立腺が大きくなった状態を前立腺肥大と言い、その影響で排尿障害などの症状が現れた状態を前立腺肥大症といいます
12人の医師がチェック 182回の改訂 最終更新: 2024.04.10

前立腺肥大症の症状について:頻尿や夜間頻尿など

前立腺肥大症になると、排尿開始の遅れや残尿感、夜間頻尿などさまざま症状が現れ、これらの排尿に関する症状を一括に排尿障害ということがあります。前立腺肥大症が深刻になると症状の悪化だけではなく、他の臓器に影響を及ぼすことがあります。

1. 前立腺肥大症の主な症状

前立腺肥大症の代表的な症状は尿の出にくさです。膀胱の出口付近にある前立腺が大きくなり尿の通り道を圧迫するために尿が出にくくなります。 また、次のように排尿に関するさまざまな症状が現れます。

  • 尿を溜める機能が不十分なために現れる症状:蓄尿症状
    • 尿意切迫感
    • 頻尿
    • 夜間頻尿
    • 切迫性尿失禁
  • 尿を出すときに現れる症状:排尿症状
    • 尿がなかなか出ない(排尿開始の遅れ)
    • 排尿時間が長くなる
    • 尿の勢いが弱い(尿線細小)
    • 排尿時に不快感がある
    • 尿が途中で止まる(尿線途絶)
    • 失禁してしまう(溢流性尿失禁)
    • 尿が出せなくなる(尿閉
    • 排尿後に雫のように垂れてしまう(終末時滴下)
  • 尿を出した後に現れる症状(排尿後の症状)
    • 残尿感

初期の前立腺肥大症では、軽度の排尿困難と夜間頻尿、排尿不快感などの症状が現れます。その後、前立腺肥大症の進行に合わせて、排尿困難感が次第に増強し、初期症状に加えて残尿感、尿意切迫感や切迫性尿失禁などが現れます。

2. 前立腺肥大症が進行すると起こりやすくなる病気とその症状:膀胱結石・膀胱炎・腎不全

前立腺肥大症が深刻な状態になるとそれに引き続いて膀胱結石・膀胱炎腎不全といった病気を引き起こすことがあります。

膀胱結石

前立腺肥大症により尿の流れが悪くなると、尿の成分が結晶化して、膀胱の中に結石ができることがあります。膀胱結石ができると「排尿時に痛みを感じる」や「常に排尿に行きたいような感じがする」、「赤い色の尿が出る」などの症状が現れます。膀胱結石は強い症状の原因になるので、すみやかに治療する必要があります。

膀胱炎

本来、膀胱の中にはほとんど細菌がいません。しかし、尿の流れが停滞すると細菌が増殖しやすくなるので、膀胱の中の細菌が増えます。前立腺は膀胱の出口付近にあるので、大きくなると、尿の停滞および膀胱内の細菌を増やて、膀胱炎が起こりやすい環境を作ってしまいます。膀胱炎になると下腹部が痛んだり、頻尿といった症状が現れます。膀胱炎の症状については「膀胱炎の症状」で説明しているので参考にしてください。

腎不全

前立腺肥大症がかなり進行すると、尿が出にくくなり、膀胱やその上流である腎臓に尿が溜まります。腎臓に尿が溜まった状態が長く続くと、腎臓の機能が低下します。腎臓の機能が低下した状態を腎不全といいます。腎不全は初期症状はないことが多いのですが、進行すると、「身体のだるさ」や「吐き気」「足のむくみ」といった症状が現れます。また極度に腎臓の機能が低下すると、老廃物が溜まりすぎて、命に危険が及ぶことがあります。腎不全への進行を防ぐために、前立腺肥大症と診断され人は、治療とともに定期的に他の臓器に影響が出ていないかを調べてもらってください。

参考文献

  • 日本泌尿器科学会/編, 「前立腺肥大症診療ガイドライン」, リッチ・ヒルメディカル, 2011
  • 「標準泌尿器科学」、(赤座英之/監)、医学書院、2014
  • 「泌尿器科診療ガイド」(勝岡洋治/編)、金芳堂、2011