[医師監修・作成]前立腺肥大症とはどんな病気?症状、検査、原因、治療について解説 | MEDLEY(メドレー)
ぜんりつせんひだいしょう
前立腺肥大症
前立腺に発生する良性の腫瘍です。前立腺肥大により排尿障害などの症状をみとめることを前立腺肥大症といいます
12人の医師がチェック 165回の改訂 最終更新: 2022.07.03

前立腺肥大症とはどんな病気?症状、検査、原因、治療について解説

前立腺肥大症は前立腺が大きくなることによって、排尿障害(尿が出づらい、尿の勢いがないなど)が現れる病気です。このページでは前立腺肥大症の概要を説明します。

1. 前立腺とはどこに存在しどんな役割を担っているのか

前立腺は男性に特有の臓器です。膀胱の出口の部分にあり、尿道(尿の通り道)を取り囲むように存在しています。前立腺の標準的な体積は20mLで、身近なものにたとえると、「大きめのくるみ」くらいです。前立腺には精液の一部を作る役割があります。

前立腺肥大症と前立腺がんの違いは?

前立腺の病気には前立腺肥大症の他に前立腺がんがあります。前立腺肥大症にかかる人は年々増加しており、前立腺がんの方が馴染みがあるかもしれません。前立腺肥大症と前立腺がんは全く違う病気です。

前立腺肥大症は前立腺の中に良性腫瘍が出来る病気です。一方、前立腺がんは前立腺にできる悪性腫瘍のことでいわゆるがんです。また、前立腺肥大症と前立腺がんは発生する場所や症状に違いがあります。
前立腺は次の3つの部分に細かく分かれます。

  • 移行領域
  • 辺縁領域
  • 中心領域

移行領域は尿道に近い部位のことです。前立腺肥大症では移行領域が大きくなることが多く、このため尿道が圧迫されて尿が出にくくなります。
対して前立腺がんの多くは辺縁領域に発生します。辺縁領域は前立腺の外側の部分で、尿道とは距離があり、病気が起こっても排尿に影響することは多くはありません。このため、前立腺がんは症状がないことが多いです。

2. 前立腺肥大症の症状について

前立腺肥大症の症状は主に排尿に関連したものです。排尿行為をさらに分類すると、次のように症状が分かれます。

  • 尿を溜める機能が不十分なために現れる症状:蓄尿症症状
    • 尿意切迫感
    • 頻尿
    • 夜間頻尿
    • 切迫性尿失禁
  • 尿を出すときに現れる症状:排尿症状
    • 尿がなかなか出ない(排尿開始の遅れ)
    • 排尿時間が長くなる
    • 尿の勢いが弱い(尿線細小)
    • 排尿不快感
    • 尿が途中で止まる(尿線途絶)
    • 失禁してしまう(溢流性尿失禁)、尿が出せなくなる(尿閉
    • 排尿後に雫のように垂れてしまう(終末時滴下)
  • 尿を出した後に現れる症状:排尿後の症状
    • 残尿感

上のリストにある症状が現れた場合は前立腺肥大症の可能性があるので、詳しく調べるために診察や検査が行われます。症状について詳しく知りたい人は「前立腺肥大症の症状」を参考にしてください。

3. 前立腺肥大症の原因について

前立腺肥大症の発症には次のようにいくつかの要因が関係しています。

  • 加齢
  • 男性ホルモン

なお、食事や性行為、アルコール、遺伝などと前立腺肥大症との関係は明らかではありません。

加齢

前立腺は40歳頃から肥大することが知られており、前立腺肥大は高齢男性の排尿障害の大きな原因となっています。排尿の悩みは羞恥心を伴うこともあり相談しづらいとよく耳にしますが、原因が前立腺肥大症であれば薬物治療や手術で改善の可能性があるので、泌尿器科で相談してみてください。

男性ホルモン

男性ホルモンの影響により前立腺は肥大すると考えられています。このため、男性ホルモンの作用を抑える薬を使うと前立腺が小さくなることが分かっており、前立腺肥大症に対する治療薬に利用されています。 前立腺肥大症の治療薬については「前立腺肥大症の治療」で説明しているので参考にしてください。

4. 前立腺肥大症の検査について

前立腺肥大症の診断にはいくつかの診察や検査が行われます。

  • 問診
  • 身体診察 
  • 超音波検査
  • 尿流量動態検査
  • 血液検査
  • 内視鏡検査

診察や検査の目的は、前立腺肥大症の程度を調べることと、前立腺肥大症以外の病気の有無を調べることです。それぞれの診察や検査について詳しく知りたい人は「前立腺肥大症の検査」を参考にしてください。

5. 前立腺肥大症の治療

前立腺肥大症の治療には薬物治療と手術があります。症状や肥大の程度、年齢などを鑑みて治療法が選ばれます。

薬物治療

前立施肥大症の薬物治療には主に次の薬が使われます。

それぞれは違った作用で効果を表します。
α1遮断薬(アルファワンしゃだんやく)は膀胱や尿道の筋肉が収縮している状態を和らげることで排尿をしやすくします。前立腺肥大症の人に最初に使われることが多いです。排尿のしやすさを改善するだけではなく、夜間頻尿や尿意切迫感などさまざまな症状を改善させます。5α還元酵素阻害薬は男性ホルモンを活性化する体内の化学反応を抑えます。男性ホルモンは前立腺を大きくする働きがあるので、効果が小さくなると、前立腺が小さくなります。PDE5阻害薬は膀胱や前立腺部の尿道の血流を改善する効果があります。血流が改善すると、尿を押し出す膀胱の力や、尿道の広がりが大きくなり、排尿障害が改善します。
以上のように前立腺肥大症の薬物治療は大きく分けて3つあり、症状に合わせて、一つで治療することもあれば、複数の薬を組み合わせて治療することもあります。

手術

手術は次のような人に検討されます。

  • 薬物による治療の効果が不十分な人
  • 症状が重い人(IPSSスコアなどの基準で中等度から重度)
  • 尿閉尿路感染症・膀胱結石などを合併している人

手術は薬物治療より体への負担のが大きいです。このため、手術による利益と身体への負担のバランスを考えながら手術を行うかどうかの判断を行うことになります。
手術の方法はいくつかあります。

  • 内視鏡手術
    • TURP(経尿道的前立腺切除術)
    • HoLEP(ホルミウム・YAGレーザー前立腺核出術)
    • PVP(光選択式前立腺レーザー蒸散術)
  • 開腹手術

内視鏡による手術では前立腺を削ったり、蒸散させたりして前立腺を小さくして、症状を改善させます。内視鏡治療と聞くと新しい治療のイメージがあるかもしれませんが、実は古くから行われています。
開腹手術はお腹を切って前立腺をまるごと切り取る手術です。お腹を切り開く必要があるので、内視鏡手術に比べて手術後の痛みなど負担が大きくなりますが、大きな前立腺でも治療できる利点があります。

参考文献

  • 日本泌尿器科学会/編, 「前立腺肥大症診療ガイドライン」, リッチ・ヒルメディカル, 2011
  • 「標準泌尿器科学」、(赤座英之/監)、医学書院、2014
  • 「泌尿器科診療ガイド」(勝岡洋治/編)、金芳堂、2011