いんないはいえん(はっぷ)
院内肺炎(HAP)
入院してから48時間以上経過してから新たに発症した肺炎。通常の市中肺炎とは原因となる細菌や、使用される抗菌薬が異なる。
1人の医師がチェック 2回の改訂 最終更新: 2017.10.12

院内肺炎(HAP)の基礎知識

POINT 院内肺炎(HAP)とは

院内肺炎は入院してから48時間以上経過してから起こった肺炎です。通常の市中肺炎とは原因となる細菌が異なります。また、重症になりやすいため注意が必要です。主な症状は咳・痰・発熱・呼吸困難感などです。 身体所見に加えて、画像検査・血液検査・細菌検査で診断します。感染の原因となっている細菌に適した抗菌薬を用いて治療します。再度肺炎を繰り返さないように、呼吸器リハビリテーションも行うことが大切です。

院内肺炎(HAP)について

  • 入院してから48時間以上経過してから新たに発症した肺炎
  • 通常の市中肺炎と原因と異なり、以下のような原因菌が多い
    • 黄色ブドウ球菌
    • 大腸菌
    • インフルエンザ桿菌
    • クレブシエラ桿菌
    • プロテウス
    • エンテロバクター
    • 緑膿菌
  • I-ROADという重症度を予測する方法がある

    • 生命予後予測因子
      • I(immunodeficiency):悪性腫瘍または免疫不全状態
      • R(Respiration):SpO2>90%を維持するためにFiO2>35%を要する
      • O(Orientation):意識レベルの低下
      • A(Age):男性70歳以上、女性75歳以上
      • D(Dehydration):乏尿または脱水
    • 上記のうち2項目以下の場合は下の2つの項目をチェックする
      • CRP≧20mg/dl
      • 胸部X線写真陰影のひろがりが一側肺の2/3以上
        • いずれも該当しなければ軽症群となり、該当項目があれば中等症群となる
    • 上記のうち3項目以上であれば重症群に該当する

院内肺炎(HAP)の症状

  • 咳(せき)
  • 痰(たん)
  • 発熱
  • 倦怠感
  • 呼吸困難感

院内肺炎(HAP)の検査・診断

  • 身体診察
    • 聴診で肺に雑音が聴こえることがある
  • 血液検査
    • 全身状態や全身の炎症の程度を調べる
  • 画像検査
    • 胸部レントゲン写真(X線検査
    • 胸部CT検査
  • 細菌培養検査:感染の原因を調べるもっとも重要な検査
    • 培養
    • 血液培養

院内肺炎(HAP)の治療法

  • 抗菌薬抗生物質)を用いた検査
    • 痰の塗抹検査所見や各種培養検査の結果を踏まえて、最も適した抗菌薬を用いる
  • 吸引を行って痰が貯留しないように努める
  • 栄養不足にならないように、栄養バランスを調える
  • むせこみが原因の肺炎誤嚥性肺炎)に注意して食事内容やリハビリを考える
  • 治療を開始してから48時間から72時間後を目安に、全身状態や酸素化の状態を再評価する
    • 効果に乏しければその原因を探す必要がある
    • 場合によっては抗菌薬を変更することになる
  • 呼吸器リハビリテーションをあわせて行う

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