2017.03.12 | ニュース

肺炎になったあと10年間は心不全が増える?

カナダ4,988人の追跡調査

from BMJ (Clinical research ed.)

肺炎になったあと10年間は心不全が増える?の写真

感染症は体に負荷をかけ、目に見える症状が治まったあとに隠れた影響を及ぼすことがあります。肺炎で救急治療を受けた人の長期追跡により、心不全のリスクにどのような影響があるかが検討されました。

カナダの研究班が、患者の長期観察データの解析により、肺炎のあとの心不全のリスクについて検討し、結果を医学誌『BMJ』に報告しました。

この研究は、カナダのエドモントンにある6か所の病院と7か所の救急治療部の記録をもとに、もともと健康な成人に起こった肺炎(市中肺炎)の患者4,988人と、肺炎がない成人23,060人を比較して、長期間のうちに新たに心不全が発症する割合を調べました。

 

統計解析により次の結果が得られました。

参加者の平均年齢は55歳、2,649人(53.1%)が男性、63.4%が外来で管理された。中央値9.9年(四分位間範囲5.9-10.6)の期間において、肺炎患者の11.9%(592人)に心不全の新規発症があり、対して対照群のうちでは7.4%(1,712人)だった(調整ハザード比1.61、95%信頼区間1.44-1.81)。

対象者の半数が9.9年以上にわたって追跡されていました。その期間に、肺炎がなかった人に比べて、肺炎で治療された人では心不全の発症が1.61倍に多くなっていました。

対象者を年齢で65歳以下と65歳を超えた人に分けて解析しても、どちらにも同じ傾向が見られました。対象とする期間を90日に絞ったときも、1年としたときも、また肺炎が入院になった場合も外来で治療された場合も、同様の傾向が見られました。

研究班は「この結果から、市中肺炎は年齢にも重症度にもよらず心不全のリスクをかなり増加させることが示された」と結論しています。

 

肺炎後の心不全のリスクについての研究を紹介しました。高齢者など体力が落ちやすい人では、肺炎が治ったあとにも体調の変化がないかに敏感になっておくことは、心不全に限らず価値があると考えられます。

ただし、仮に肺炎が長期的に心不全を引き起こしていたとして、10年近くの間に対象者の1割強という割合は、特にそれだけに注意を集めるほど強い関係とは言いにくいでしょう。特に高齢者では気を付けるべき病気は心不全だけではありません。

他方、ここで統計的に見られた関係から、心不全が発生する原因について何らかの観察が得られれば、予防のための新しい研究に結び付いていくことも想像できます。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Risk of heart failure after community acquired pneumonia: prospective controlled study with 10 years of follow-up.

BMJ. 2017 Feb 13.

[PMID: 28193610]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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