肺炎のあとは心血管の病気が増える?

心血管疾患 (CVD) は死因のうちで最も多いものの1つです。CVDの発症を正確に予測できれば、予防や、より速く適切な対処をするための役に立つかもしれません。さまざまな研究から、CVDと関連する要因が指摘されていますが、新しくカナダとアメリカの研究班が、「肺炎がリスク要因であるかもしれない」という研究結果を提示しました。
◆2件の研究データを分析
この研究では、CVDを「心筋梗塞、脳卒中、死亡に至った
研究班は、過去の研究2件によって作られたデータベースから情報を取り出して、肺炎とCVDの関連を調べました。2件の研究とは次のようなものです。
1989年から1994年にかけて65歳以上の参加者5,888人を登録したCardiovascular Health Study (CHS) と、1987年から1989年にかけて45歳から64歳の参加者15,792人を登録したAtherosclerosis Risk in Communities study (ARIC)
それぞれのデータベースの中で、肺炎とCVDに関連があるかどうかを調べました。
◆肺炎後はCVDが増えていた
分析の結果、以下のことがわかりました。
CHSのデータベースについては、
CHSのデータベースに登録された591人の肺炎患者のうち、206人が肺炎による入院から10年のうちにCVDイベントを起こしていた。肺炎のあとでCVDのリスクが最も大きくなるのは肺炎から1年以内だった。
ARICのデータベースについては、
ARICのデータベースでは、680人の肺炎患者のうち112人が肺炎による入院から10年のうちにCVDを起こしていた。
2年を過ぎたあとでは、肺炎で入院した人とそうでない人の間で、CVDの
発症 率には統計的に有意 な違いがなくなった。
つまり、どちらのデータベースからも、肺炎で入院した人にその後CVDのリスクが高くなっているのが見つかり、肺炎の影響がCHSのデータベースでは10年後まで、ARICのデータベースでは2年後まで続いていたという結果でした。
この研究からは、肺炎以外の原因が肺炎とCVDの両方に関与していた可能性も否定できません。しかし、肺炎を起こしたあとはCVDを発症しやすくなっているかもしれない、という可能性もあります。対象者の年齢が違う2件のデータベースから、一方では肺炎の影響が「10年間続いた」、他方では「2年を過ぎたあとでは[…]違いがなくなった」という結果が引き出されたことも、次の研究を始めるヒントになるかもしれません。
執筆者
Association between hospitalization for pneumonia and subsequent risk of cardiovascular disease.
JAMA. 2015 Jan 20
[PMID: 25602997]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。