2015.05.11 | ニュース

肺炎のあとは心血管の病気が増える?

データベースの分析で10年以内のリスクに変化あり
from JAMA
肺炎のあとは心血管の病気が増える?の写真
(C) Subbotina Anna - Fotolia.com

心血管疾患 (CVD) は死因のうちで最も多いものの1つです。CVDの発症を正確に予測できれば、予防や、より速く適切な対処をするための役に立つかもしれません。さまざまな研究から、CVDと関連する要因が指摘されていますが、新しくカナダとアメリカの研究班が、「肺炎がリスク要因であるかもしれない」という研究結果を提示しました。

◆2件の研究データを分析

この研究では、CVDを「心筋梗塞脳卒中、死亡に至った冠動脈疾患」と定義しました。脳卒中とは脳梗塞脳出血くも膜下出血を合わせて呼ぶ言葉で、冠動脈疾患(虚血性心疾患)には心筋梗塞狭心症が含まれます。

研究班は、過去の研究2件によって作られたデータベースから情報を取り出して、肺炎とCVDの関連を調べました。2件の研究とは次のようなものです。

1989年から1994年にかけて65歳以上の参加者5,888人を登録したCardiovascular Health Study (CHS) と、1987年から1989年にかけて45歳から64歳の参加者15,792人を登録したAtherosclerosis Risk in Communities study (ARIC)

それぞれのデータベースの中で、肺炎とCVDに関連があるかどうかを調べました。

 

◆肺炎後はCVDが増えていた

分析の結果、以下のことがわかりました。

CHSのデータベースについては、

CHSのデータベースに登録された591人の肺炎患者のうち、206人が肺炎による入院から10年のうちにCVDイベントを起こしていた。肺炎のあとでCVDのリスクが最も大きくなるのは肺炎から1年以内だった。

CVDリスクは肺炎で入院した人のほうがそうでない人よりも高い状態が肺炎のあと10年間続いた[...]。

ARICのデータベースについては、

ARICのデータベースでは、680人の肺炎患者のうち112人が肺炎による入院から10年のうちにCVDを起こしていた。

2年を過ぎたあとでは、肺炎で入院した人とそうでない人の間で、CVDの発症率には統計的に有意な違いがなくなった。

つまり、どちらのデータベースからも、肺炎で入院した人にその後CVDのリスクが高くなっているのが見つかり、肺炎の影響がCHSのデータベースでは10年後まで、ARICのデータベースでは2年後まで続いていたという結果でした。

この研究からは、肺炎以外の原因が肺炎とCVDの両方に関与していた可能性も否定できません。しかし、肺炎を起こしたあとはCVDを発症しやすくなっているかもしれない、という可能性もあります。対象者の年齢が違う2件のデータベースから、一方では肺炎の影響が「10年間続いた」、他方では「2年を過ぎたあとでは[…]違いがなくなった」という結果が引き出されたことも、次の研究を始めるヒントになるかもしれません。

実際に肺炎を治療されている医師の方から見ると、肺炎のあと数年以内にCVDが増えているという印象はあるでしょうか?

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Association between hospitalization for pneumonia and subsequent risk of cardiovascular disease.

JAMA. 2015 Jan 20

[PMID: 25602997]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。