きょけつせいしんしっかん
虚血性心疾患
心臓の筋肉(心筋)が必要な酸素を受け取れなくなってしまい、心臓の働きが弱まってしまう病気
11人の医師がチェック 134回の改訂 最終更新: 2018.02.19

虚血性心疾患の基礎知識

POINT 虚血性心疾患とは

虚血性心疾患は心臓の筋肉に血液を送る血管(冠動脈)の病気で、狭心症や心筋梗塞のことを指します。冠動脈が細くなり血液が流れにくくなり十分な血液を心臓に送れない状態を狭心症といい、冠動脈の一部が詰まってしまい血液が全く流れなくなった状態を心筋梗塞といいます。主な症状は突然の胸の痛みや重苦しさ・冷や汗・吐気・胃の痛み・肩の痛みやこり・歯の痛みなどです。これらの症状が急に現れて持続する場合は医療機関を受診して下さい。問診・身体診察・血液検査・心電図検査・心臓超音波検査・心筋シンチグラフィ・心臓CT検査 を行ってこの病気が疑わしい場合には心臓カテーテル検査を施行します。治療はカテーテル治療・冠動脈バイパス手術・血栓溶解療法があります。重症の場合は死に至ることもあるので、気になる症状があれば循環器内科にかかるようにして下さい。

虚血性心疾患について

  • 心臓の筋肉(心筋)に必要な酸素が行き渡らなくなってしまった状態
    • 心筋に酸素を届けるための血管(冠動脈)が細くなったり詰まったりして起こる
    • 次のことが原因となる
      動脈硬化
      血栓
      ・冠動脈の痙攣(けいれん)
  • 狭心症心筋梗塞を合わせて虚血性心疾患と呼ぶ(詳細はそれぞれの疾患を参照)
    • 狭心症
      ・一部の冠動脈が狭くなり、心臓に十分な酸素を送れない状態
      ・動脈硬化がさらに進行すると心筋梗塞になる
    • 心筋梗塞
      ・一部の冠動脈が詰まって血流が途絶えることで、心筋が壊死した状態
    • これらのうち、突然症状が発症した場合やは悪化した場合を急性冠症候群と呼ぶ
  • 冠動脈を狭くすると考えられているもの
  • 年齢とともに罹患しやすくなる
    • 冠攣縮性狭心症は比較的若い人で起こることがおおい

虚血性心疾患の症状

  • 主な症状
    • 強い胸の痛み:胸を締めつけられるような強い痛み
    • 不安感、圧迫感:心筋梗塞では不安感、狭心症では圧迫感が出ると言われている
    • 呼吸困難
    • 冷汗
    • 吐き気
    • 食欲低下
    • 疲れやすさ(倦怠感
    • 意識障害
  • 高齢者や糖尿病の人は胸の痛みを感じないことがある
  • 狭心症の症状について詳しく
  • 心筋梗塞の症状について詳しく

虚血性心疾患の検査・診断

虚血性心疾患の治療法

  • 主な治療
    • 薬物療法
      ・硝酸薬(ニトログリセリンなど)
       ・狭心症に有効だが、心筋梗塞には有効ではない
      ・β遮断薬、カルシウム拮抗薬
       ・血圧を下げて動脈硬化を進みにくくするとともに、心臓の負担を軽減させる
      抗血小板薬抗凝固薬
       ・血液を固まりにくくして冠動脈が詰まることを予防する
      ・HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)
       ・血液中のコレステロールを減らして、動脈硬化を進みにくくする
    • 狭心症の薬物療法について詳しく
    • 心筋梗塞の薬物治療について詳しく
    • 心臓リハビリテーション:有酸素運動を行うことで、心臓の働きを改善する
      ・心機能の回復
      ・心理面の改善
      ・再発防止
    • 心臓カテーテル治療
      ・狭くなった冠動脈を広げる手術
    • 冠動脈バイパス術
      ・狭くなった冠動脈の末梢に別の場所から血管をつなぎ、栄養や酸素を含んだ血液を心臓へ送れるようにする手術
  • 予防、再発予防方法
    • 日常生活において心臓に負担をかけないような運動方法を学ぶことが必要
    • 食事などの生活習慣を改めることが重要
    • 動脈硬化をもたらす持病のコントロールを適切に行う
      高血圧症
      脂質異常症
      糖尿病
      高尿酸血症
  • 長期的な経過
    • 一度治療を行っても再発しやすい病気のため、定期的な通院が重要

虚血性心疾患に関連する治療薬

硝酸薬

  • 心臓のまわりの冠動脈を広げ血流量を増やし、心臓に酸素などを補給することで、全身の血管抵抗を減らして心臓の負担を軽くする薬
    • 狭心症では血管が狭くなることで、心臓の筋肉に十分な酸素などが届かなくなっている
    • 体内で一酸化窒素という物質は血管壁などの細胞に作用し、血管を広げる作用をもつ
    • 本剤は硝酸薬として体内に入った後、一酸化窒素を生成し血管を広げ心臓の負担を軽くする
  • 本剤には狭心症などの発作の予防的な治療薬と、発作時の治療薬がある
硝酸薬についてもっと詳しく

FXa阻害薬(抗凝固薬)

  • 体内の血液が固まる作用の途中を阻害し、血栓の形成を抑え脳梗塞や心筋梗塞などを予防する薬
    • 血液が固まりやすくなると血栓ができやすくなる
    • 血液凝固(血液が固まること)には血液を固める要因になる物質(血液凝固因子)が必要である
    • 本剤は血液凝固因子の因子Xa(FXa)を阻害し、抗凝固作用をあらわす
FXa阻害薬(抗凝固薬)についてもっと詳しく

心抑制型カルシウム拮抗薬(ジルチアゼム、ベラパミル)

  • 血管や心筋の細胞内へのカルシウムイオンの流入を阻害し、血管を広げ、心臓の負担を軽減する薬
    • 狭心症では血管が狭くなることで心臓に十分な酸素などが届かなくなっており、胸のしめつけや息苦しさなどがあらわれる
    • 血管の収縮や心臓の拍動はカルシウム(Ca)イオンの細胞内への流入が関与する
    • 本剤は血管や心筋でのCaイオンの流入を阻害する作用をあらわす
  • 薬剤によっては、頻脈性の不整脈や高血圧などへ使用するものもある
心抑制型カルシウム拮抗薬(ジルチアゼム、ベラパミル)についてもっと詳しく

虚血性心疾患の経過と病院探しのポイント

虚血性心疾患が心配な方

虚血性心疾患は心臓の血管が詰まって生じる疾患で、心筋梗塞狭心症の総称です。急激な胸の痛みと息苦しさ、そして冷や汗が出て、いかにも「緊急事態」という病状が周囲の方にも見えるのが典型的な虚血性心疾患です。このようなものであれば、救急車を呼ぶかどうかの判断で迷うことは少ないでしょう。しかし、虚血性心疾患の中には症状が出にくいものがあり、そのようなものは医療者であっても見分けるのが困難な場合があります。

典型的でない虚血性心疾患の症状として、胸の痛みがないもの、胸ではなく肩やあご、時には歯の痛みが出るものなどがあります。このような典型的でない虚血性心疾患は男性よりも女性、若年者よりも高齢者、そして特に糖尿病のある方に多いことが知られています。このような項目に当てはまる方については、軽めの胸痛であっても一度かかりつけの内科医を受診して判断を仰ぐことをお勧めします。

虚血性心疾患の診断は血液検査、心電図、心エコーを用いて総合的に行います。その中でも特に重要なのは心電図です。内科のクリニックであれば心電図検査が行えるところは多いですし、循環器系のクリニックであれば心エコーを含めて多くの検査に対応が可能です。

どのような場合にクリニックを受診して、どのような場合に救急車を呼ぶかという判断を自分で下すのは難しいところです。例えば胸や背中に動けなくなってしまうような強い痛みがあれば救急車での受診が良いでしょうし、それ以外では冷や汗(暑さのせいではなく、急激に大量の汗が出る)や、長く続く息苦しさも重症の病気を示唆するサインです。一方で、肩の痛みや歯の痛みだけしかない状況で、ご自身で虚血性心疾患の可能性を思いつくことは難しいのではないかと思います。そして、実際に肩の痛みの原因が骨や筋肉の問題だったり、歯の痛みが炎症や虫歯によるものだったりすることもあるわけですから、全身の調子は悪くなく局所の症状に留まっている場合には、まずはその専門の診療科(整形外科、歯科など)を受診して判断を仰ぐのが良いかもしれません。

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虚血性心疾患でお困りの方

虚血性心疾患については、診断がつき次第その場で治療が開始されます。クリニックで診断がついたとしたら、その場では根本的な治療ができないため、総合病院を紹介されることになるでしょう。そのような場合、救急車でクリニックから病院へ移動することになります。

心筋梗塞の大半、そして狭心症の一部は緊急でのカテーテル治療が必要となります。ほとんどの病院では、カテーテル治療は循環器専門医、冠動脈バイパス術は心臓血管外科専門医が担当します。後者の手術を行っている病院は限られるため、病院を探す上では年間の冠動脈バイパス術手術件数や、心臓血管外科専門医の数などが参考になるかもしれません。何件以上ならば良いと言うのはそもそも地域によって件数が異なるため比べることができませんが、同じ地域の病院間で比較して手術件数が少なすぎないことは、病院を探す上で参考になる基準の一つです。しかし実際は、そもそも治療のための時間的余裕がなく、できるところですぐに手術を受けなければならないケースが大半かと思われます。

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