大豆タンパクの健康強調表示に認可取り消しを米機関所長が提案

大豆のタンパク質に対する健康強調表示に科学的証拠が不足しているとして、アメリカの食品安全などに関わる政府機関の食品医薬品局(FDA)が、健康強調表示の認可取り消しを提案しました。
大豆タンパク質は冠動脈疾患を防ぐか?
食品医薬品局(FDA)の食品安全応用栄養センター所長のスーザン・メイン氏が、FDAの文書として大豆のタンパク質の健康効果についての考えを表明し、ルール化を提案しました。
大豆タンパク質を食べることで
健康強調表示とは?
FDAは、食品の健康効果に関係する表示として、12種類の健康強調表示を認可しています。
- カルシウムと
ビタミンD が骨粗鬆症のリスクを減らす - 脂肪の少ない食事がある種の
がん のリスクを減らす - ナトリウムの少ない食事が高血圧のリスクを減らす
- 飽和脂肪酸と
コレステロール が少ない食事が冠動脈疾患のリスクを減らす - 脂肪が少なく食物繊維を含む穀物製品、果物、野菜が多い食事がある種のがんのリスクを減らす
- 飽和脂肪酸とコレステロールが少なく食物繊維を含む果物、野菜、穀物製品が多い食事が冠動脈疾患のリスクを減らす
- 脂肪が少なく果物と野菜が多い食事がある種のがんのリスクを減らす
- 適量の葉酸を含む食事が子供の二分脊椎などのリスクを減らす
- キシリトール、ソルビトールなどの甘味料は虫歯の原因にならない
- 飽和脂肪酸とコレステロールが少ない食事の中で、水溶性食物繊維が冠動脈疾患のリスクを減らす
- 大豆タンパク質が冠動脈疾患のリスクを減らす
- 植物ステロールエステルが冠動脈疾患のリスクを減らす
健康強調表示のガイダンスでは、これらの認可された表示に対しても、がんや冠動脈疾患などには多くの原因がある点や、適切な摂取量についてもあわせて記載することが注意されています。
大豆タンパク質は冠動脈疾患を防がない?
大豆タンパク質については、1999年に認可されて以来、新しいデータとして一貫しない結果が報告されていました。FDAが報告の内容を詳しく調べた結果、大豆タンパク質と冠動脈疾患の関係は健康強調表示が認められる基準を満たしていないと判断されました。
FDAはこのルールが施行されるとしても、「大豆タンパク質を食べることと心臓病のリスク減少の結び付きを支持する十分な証拠がある限り、限定的健康強調表示を使用することは許す」という考えです。
限定的健康強調表示は、健康強調表示よりも柔軟なルールで表示可能なもので、個別に「FDAはこの表示を保証しません」といった注記を添えることなどが指示されています。
この提案を最終的なルールとして決めるかどうかを判断するため、75日のパブリックコメント期間が設けられています。
大豆製品に関心のある消費者に対して、FDAはアメリカ保健福祉省と農務省による『2015-2020食事
体にいい食べ物とは?
アメリカで食品の表示について検討されつつある点を紹介しました。
一般に、健康的な食事にはさまざまな食品のバランスが重要で、特定の食品に偏ることは勧められないとされます。特定の栄養素が欠乏するような状況は現代の先進国では限られています。
日本の規制でも、保健機能食品(
個々の規制以上に、「体にいい」と思える食品に何がどの程度期待できるかを事実に基づいて理解しておくことが、常識的な食事のバランスを維持するために役立つのではないでしょうか。
【訂正2017/11/7】
"Qualified Health Claim"の訳を当初「認定健康強調表示」としていましたが、一般的に使われる訳語と異なるという指摘があり、「限定的健康強調表示」に訂正しました。
執筆者
Statement from Susan Mayne, Ph.D., on proposal to revoke health claim that soy protein reduces risk of heart disease.
FDA Statement. 2017 Oct 30.
https://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/ucm582744.htm※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。