しんきんこうそく
心筋梗塞
心臓の筋肉に酸素を送る血管(冠動脈)が詰まってしまい、組織が壊死すること。痛み・冷や汗・吐き気などの症状がないこともある。突然死の原因になる
33人の医師がチェック 364回の改訂 最終更新: 2018.02.09

心筋梗塞が疑われたときに行われる検査

心筋梗塞が疑われた場合にはさまざまな検査が行われます。心臓カテーテル検査や心臓エコー検査などがその代表例です。各検査ではどういった目標に基づいてどんなことを行うのかについて説明します。

1. 心筋梗塞の検査の目的

心筋梗塞の検査は多くの種類があります。一方でその目的は大きく分けて次の2つになります。

  • 心筋梗塞になっているのかどうか
  • 心筋梗塞の重症度はどの程度か

心筋梗塞の代表的な症状は胸痛です。しかし、胸痛が起こる病気は心筋梗塞以外にも多いです。そのため、患者さんに起こっている症状が本当に心筋梗塞によるものなのかどうかを検査で調べる必要があります。また、心筋梗塞は致命的な病気です。心筋梗塞がどの程度重症なのかを素早く調べて、最適な治療をできるだけ迅速に行わなければなりません。そこで次のような検査がしばしば行われます。

  • 問診
  • 身体診察
  • 心電図検査
  • 心臓エコー検査
  • 心臓カテーテル検査
  • 血液検査
  • 画像検査

次の章からは、各検査について詳しく説明していきます。

2. 問診

問診とは身体状況や生活背景を聞かれることを指します。身体の診察を行う前に問診で尋ねられることが多いです。心筋梗塞の診断の際には問診が重要になります。

具体的には次のようなことを聞かれます。

  • 症状が出るまでにどういった生活をしていたか
  • 症状が出るまでにどういった薬を飲んでいたか
  • 喫煙をどの程度するか
  • 飲酒をどの程度するか
  • 何か持病はあるか
  • 家族に似たような症状の人はいるか
  • アレルギーはあるか
  • 初めての症状か
  • 症状の特徴をどう表現するか
  • 症状は一定か、よくなったり悪くなったりするか
  • どういったタイミングで症状は変化するか
  • 妊娠しているか

これらは心筋梗塞の有無やその状況を探る上で重要な判断材料です。また、問診は治療方針を決めるためにも役立ちます。持病のある人や妊娠している人は、注意しなくてはならない点や使用してはならない薬がありますので必ず医療者に伝えるようにして下さい。

持病の有無

心筋梗塞に関連する病気はいくつか存在します。そのため以前から分かっている病気(持病)がある場合には必ず伝えてください。気をつけるべき病気の中で代表的なものを次に示します。

これらは心筋梗塞を起こしやすい病気ですので参考にして下さい。しかし、これらの病気に該当するかどうかにかかわらず、持病がある場合には申告するようにして下さい。

常用薬の有無

常用薬の影響によって心筋梗塞の治療法を調整しなければいけないことがあります。そのため常用薬がある場合には問診で答えるようにして下さい。

心機能を低下させる可能性が指摘されている薬や治療法の選択に関わる薬の主なものは以下になります。

  • 降圧薬:硝酸薬(アイトロール®、ニトロール®など)
  • 降圧薬:βブロッカー(インデラル®、テノーミン®など)
  • 降圧薬:カルシウムチャネルブロッカー(ヘルベッサー®、ワソラン®)
  • 降圧薬:アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)(レニベース®など)
  • 降圧薬:アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)(アジルバ®、ブロプレス®など)
  • 脂質異常改善薬:スタチン製剤(リピトール®、クレストール®など)
  • 血栓剤:抗血小板薬(バイアスピリン®、プラビックス®など)
  • 抗血栓剤:抗凝固薬(ワーファリン、エリキュース®など)

これらの薬を飲んでいる場合には必ず問診で教えてください。一方で、心筋梗塞は激しい痛みを覚えたり、急性心不全合併することによって意識朦朧としたりすることがあります。そのため、持病がある場合にはお薬手帳を常に携帯するようにして下さい。

自覚症状の有無

どんな症状を感じているのかはとても大事な情報です。心筋梗塞では胸痛が有名な症状ですが、他にその進行度などによってさまざまな症状が出現します。心筋梗塞が起こっても症状の自覚がないこともありますが、出現した症状から状況を推測することができます。

  • 胸痛
  • 胸部の違和感
  • 腕や肩の痛み
  • 動悸(どうき)
  • 倦怠感 
  • 食欲低下
  • 四肢冷感(手足の冷え)
  • チアノーゼ(唇や皮膚が青くなること)
  • 息切れ、息苦しさ
  • 浮腫み(むくみ
  • 意識もうろう

これらは心筋梗塞で起こりうる代表的な症状です。もし該当するものがあった場合には、問診時に必ず伝えてください。

症状の出現した時期と進行スピード

どんな症状がいつ出現して、その症状は悪化しているのかについて把握することはとても大切です。例えば「30分前から強い胸痛を自覚しだして、全く改善していない」とか「半年前から胸痛を自覚することはあるが、悪化はしていない」といった具合に、自分の症状を伝えるようにしてください。

3. 身体診察

身体診察は病気の状況やその影響を受けている身体の状況を客観的に評価する行為です。心臓の動きや雑音を直接確認することができますし、心機能の低下した影響がどの程度身体に出ているのかも調べることができます。

次のような行為が身体診察に含まれます。

バイタルサインのチェック

医療現場では「バイタルサイン」という言葉がしばしば聞かれます。日本語に直訳すると「生命徴候」となり、主に次のものを確認します。

  • 意識の程度
  • 脈拍数
  • 血圧
  • 呼吸数
  • 酸素飽和度(血液中に含むことのできる酸素の最大量に対する実際に含まれている酸素の割合)
  • 体温

例えば、脈拍数が増えていても、それが体温上昇によって起こっているのか、頻脈不整脈で起こっているのかで、行うべき治療が変わってきます。また、酸素の値が正常であっても、通常の呼吸状態ではなく一生懸命苦しそうに呼吸しているのであれば、呼吸に異常があると判断します。

このようにバイタルサインは一つの数字だけを見て判断するのではなく、さまざまな要素から総合的に判断します。

視診

視診とは身体の様子を見た目で判断するものです。明らかな変化のあるものは見ただけで判断することができます。

例えば、心筋梗塞を疑う胸痛があったとしても、胸をよく見ると肋間に沿って水疱(水ぶくれ)があったとしたら、原因は帯状疱疹が疑わしくなります。また、肩に痛みを覚えた場合も、皮膚に出血の跡があれば打撲が疑わしくなります。このように、視診は明らかなものがあると診断に直結することがあるため、とても大切です。

聴診:心音

心臓は定期的に鼓動を打っているのでくり返し同じ動きをします。聴診器を利用すると心臓の定期的な鼓動が発する特徴的な音を聞くことができます。また、もし不整脈があった場合には不定期な心音が聞こえるために判断がつきます。

聴診器を使うことで聞こえる心臓の音はⅠ音からⅣ音までの4種類に大別できます。Ⅲ音とⅣ音は過剰心音と言い、通常は聞かれないことがほとんどです。

心音の基本は次の2つです。

  • Ⅰ音
    • 心室の収縮が始まるタイミングに僧帽弁左心室左心房の間にある逆流防止弁)や三尖弁右心室右心房の間にある逆流防止弁)が閉じることで起こる音
  • Ⅱ音
    • 心室の拡張が始まるタイミングに大動脈弁(左心室と大動脈の間にある逆流防止弁)や肺動脈弁(右心室と肺動脈の間にある逆流防止弁)が閉じることで起こる音

また、特殊な状況になると次の2つの心音が聞かれるようになります。

  • Ⅲ音
    • 心室が拡張する初期に血液が充満することで起こる音
  • Ⅳ音
    • 心室が拡張する末期に、心房がさらに血液を心室に押し込むことで起こる音

心筋梗塞によって急性心不全があると、Ⅲ音が聞かれます。通常であればⅢ音は聞かれませんが、心不全などになると馬の足音のようなⅢ音(ギャロップ音)が聞かれるようになります。

また、心雑音と呼ばれる特殊な音の有無を確認することも非常に重要です。心雑音は心臓が収縮するときに起こる雑音(Ⅰ音とⅡ音の間)と心臓が拡張するときに起こる雑音(Ⅱ音とⅠ音の間)の2種類に分けられます。心雑音は逆流防止弁の不具合(弁膜症)や心臓の壁の不具合(中隔欠損)などを表します。

心筋梗塞では急に弁膜症を起こすことがあります。今まで心雑音の指摘を受けたことがない人に突然心雑音が現れたときは要注意です。

聴診:呼吸音

心筋梗塞によって急性心不全になると通常存在しない呼吸音が聞こえることがあります。ラッセル音(ラ音)と呼ばれる副雑音の中でも、水泡音(coarse crackle、コースクラックル)と笛音(wheeze、ウィーズ)が聞かれることが多いです。

水泡音は断続性ラ音とも呼ばれる副雑音の一種で、息を吸った時を中心に「ブツブツ」や「ポツポツ」といったような音が聴診器を介して聞こえます。心不全以外にも肺炎などでも聞かれます。

笛音は連続性ラ音と呼ばれる副雑音の一種で、息を吐いたときに「ヒューヒュー」や「ピーピー」といったような音が聴診器を介して聞こえます。心不全以外にも気管支喘息などでも聞かれます。

このように心筋梗塞の場合も特に心不全に至ったときには聴診が診断の役に立ちます。

4. 心電図検査

定期的に動いて全身に血液を送る働きを持つ心臓は微細な電気信号で動いています。心電図検査ではこの電気信号の大きさや向きを調べます。

微細な電気をキャッチする装置を手足や胸に装着して検査を行いますが、電気を流すわけではないので全く痛みは発生しません。通常の心電図検査であれば横になって安静にしているだけで測定が完了します。その他の心電図では、身体に装着して日常生活を送るタイプ(ホルター心電図)や敢えて運動時に測定して運動の影響を見るタイプ(運動負荷心電図)などがあります。

12誘導心電図

12誘導心電図は最も基本的なタイプの心電図検査です。前胸部に6か所に加えて手足に1か所ずつの合計10か所の測定器を装着します。安静に横になって測定するので全く痛くありません。

この測定方法を行うと、次の12通りの方向から心臓の電気信号が測定でき、その電気信号を波形にして表すことができます。

  1. 第Ⅰ誘導
    • 左心室の横の壁(側壁)の方向から電気信号を確認する
  2. 第Ⅱ誘導
    • 心臓の先端(心尖部)の方向から電気信号を確認する
  3. 第Ⅲ誘導
    • 右心室の横の壁(側壁)や左心室の背中側の壁(後壁)の方向から電気信号を確認する
  4. aVR誘導
    • 右肩の方向から心臓の電気信号を確認する
  5. aVL誘導
    • 左肩の方向から心臓の電気信号を確認する
  6. aVF誘導
    • 足の方向から心臓の電気信号を確認する
  7. V1誘導
    • 右心室の前側やや側方から心臓の電気信号を確認する
  8. V2誘導
    • 左心室や右心室の前側の壁(前壁)の方向から電気信号を確認する
  9. V3誘導
    • 右心室と左心室の間の壁(心室中隔)の方向から電気信号を確認する
  10. V4誘導
    • 右心室と左心室の間の壁(心室中隔)の方向から電気信号を確認する
  11. V5誘導
    • 左心室の前壁や側壁の方向から電気信号を確認する
  12. V6誘導
    • 左心室の側壁の方向から電気信号を確認する

これらをよく見ると心臓を上下左右のあらゆるポイントから観察していることがわかります。心臓をあらゆる方向から確認することで、心臓の電気信号の変化をチェックできます。

心電図ではP波・Q波・R波・S波・T波の5つが基本になります。これらの波形と間隔を中心に異常の有無を判定します。心筋梗塞では詰まった血管に関与する心臓壁に炎症が起こるため、電気信号が変化(ST上昇)します。

ここで、人体は個人個人で形や位置が多少異なる点に注意が必要です。これは奇形とは違って、全員が全く同じということはなく、少しずつ異なっているのです。そのため、少し心電図の波形がいつもと違っても、本当に病気があるのかそれとも個人差なのかについて考えなければなりません。病気の有無についての判断は医者が行いますが、心電図に異常があると言われた人は何が原因なのかについて質問して確認するようにして下さい。

ホルター心電図

ホルター心電図とは24時間測定できる心電図のことです。心臓の電流を感知する装置を身体に貼ったまま生活します。腰につけたり肩にぶら下げたりしながら生活しなくてはならないので邪魔だと感じる人はいるでしょう。

一方で、24時間心臓を観察できるため大きなメリットがあります。特に一過性不整脈と呼ばれる、突然出現していつの間にか消失するタイプの不整脈には効果的です。数分間心電図を測定するくらいでは異常があっても気付けない場合もあります。自覚症状と12誘導心電図の結果が乖離している人にはホルター心電図が勧められます。

心筋梗塞では基本的にずっと心電図に変化が起こるため、12誘導心電図でわからないものがホルター心電図でわかるということはあまりありません。そのため心筋梗塞でホルター心電図が測定されることは珍しいです。

運動負荷心電図

運動負荷心電図は、運動(トレッドミル:ウォーキングマシン運動、エルゴメーター:自転車運動)をしながら測定する心電図検査です。狭心症不整脈などは運動して心臓に負担がかかると出現することがあります。そうした病気が疑われるときに運動負荷心電図は行われます。

一方で、運動負荷を行うことで心臓の状態が一気に悪くなって倒れてしまうようなこともあるので注意が必要です。特に心筋梗塞が起こっている場合では心機能が低下しているので、運動負荷をかけると多くは状況が悪化します。そのため、よほど状況が許さない限り心筋梗塞が疑われている人に運動負荷心電図検査を行うことはありません。もし、行う場合は自分の病名が何なのかを主治医に聞いてみて下さい。検査中に気持ち悪くなったり意識が飛びそうになったりした場合には、近くにいる医療者に声をかけてください。

5. 心臓エコー検査

心臓は肺で酸素を取り入れた血液を全身に送るとても大事な役割を担っています。心臓エコー検査はエコー(超音波)を用いて心臓の動きや大きさ、血液の流れを確認する検査です。超音波の出る器具(探触子、プローブ)を胸に当てて検査を行いますが、痛みを伴うこともなく、X線検査CT検査のように放射線に被曝することもありません。

エコーを使ってどんなことをするのか

エコー検査を行う場合には特別な医療器具を用います。この器具は大きなものから小さなものまでありますが、基本的に持ち運びが可能です。また、超音波を出す小さな装置(探触子、プローブ)があり、これを胸の外からあてることで心臓を見ることができます。

心臓エコー検査で特に見ることができるのは次のことです。

  • 心臓の動き
  • 心臓の大きさや形
  • 心臓にある弁の形
  • 心臓内の異物
  • 血液の流れ

心臓エコー検査の大きな利点は、これらがたった今どうなっているのかをタイムリーに観察できることです。また、痛みや事態への悪影響がないこともエコー検査の特徴です。

しかし、エコー検査にも弱点があります。骨などの密度の非常に高いものや空気のように密度の非常に低いものを観察しようとしても、うまく観察できません。また、こうした適していないものの後ろには超音波が届かないので、観察することができなくなります。したがって、次のような場面では観察の方法に注意が必要です。

  • 肋骨が邪魔をする
  • 肺が大きい

どうしても観察が難しい場合には、経食道エコー検査と言って胃カメラのようなものを用いて、体内から心臓を観察する場合があります。

心臓エコー検査は何を評価しているのか

心臓エコー検査では主に経時的な心臓の動きと血液の流れを観察します。心臓には4つの部屋(右心房、右心室、左心房、左心室)がありますが、そのいずれも観察することができます。また、心臓には4種類の血液逆流防止弁がありますが、それらの状態を観察することができます。

心臓エコー検査を行えば、心臓の動きが悪い部位や心臓の変形している部位が観察できます。心臓エコー検査で異常が見られた場合には、症状や身体所見と併せて心臓の状態を判断する材料になります。

心臓エコー検査には心臓の動きを客観的に数値化する重要な指標としてEF(Ejection Fraction)というものがあります。EFについてもう少し詳しく説明します。

EF(Ejection Fraction)とは

EFとは左心室(左室)の血液を駆出する量の割合を%で表示するものです。左室が最も広がった時の容積(左室拡張末期容量:LVEDV)と左室が最も収縮した時の容積(左室収縮末期容量:LVESV)からEFは計算されます。

EF(%)=(LVEDV-LVESV)/LVEDV✕100

上の式で導かれた数字は心臓がどのくらい効率よく動いているかを反映します。つまり、心臓があまり収縮できない場合には、左室が収縮したあとの容積が小さくならないため、EFは小さな数字になります。

簡易的に心機能を評価できるEFですが、一つ問題があります。

左室が十分に拡張できないときには、一見EFが正常でも十分な血液量を全身に送れずに心不全になることがあります。これをEFが保たれている心不全(HFpEF: heart failure with preserved ejection fraction)と言い、拡張不全と言うこともあります。EFだけを見ているとこのタイプの心不全に気づくことができませんので、左室収縮末期容量や左室拡張末期容量の具体的な数字も併せて見る必要があります。

また、さらに難しい話になりますが、E波やA波、e'という指標もあるため、これらも含めて総合的に心機能は評価されます。

  • E波:左心室の拡張早期に僧帽弁を通る血流の速度
  • A波:左心室の拡張期に左心房が収縮することで生じる血流の速度
  • e':左心室の拡張期に僧帽弁が移動する速度

心臓エコー検査では多くを調べることができます。特に身体の負担が大きいわけではないことを考えると、とても有用な検査であることがわかります。

また、エコー検査で心臓をうまく観察できない場合には経食道エコー検査が行われることがあります。これは胃カメラの要領で検査用の管を飲み込んで、食道に到達したところで心臓を観察するものです。通常のエコー検査だと肋骨に妨げられて観察が不十分になることが多いですが、食道から観察する場合にはその心配がなくなります。

6. 心臓カテーテル検査

心臓カテーテル検査とはカテーテルという細い管を血管の中に入れて行う検査です。目的によって行う内容が異なります。主なものは次になります。

  • 冠動脈造影検査
  • 血管内エコー検査
  • 右心カテーテル検査
  • 左室造影検査

ここではこれらの4つの検査について詳しく説明します。

冠動脈造影検査(CAG:coronary angiography)

心臓は栄養や酸素を含んだ血液を全身に送ります。一方で、心臓自身も栄養がないと動けなくなるので、全身に送る血液の一部を心臓の筋肉に送ります。この血管を冠動脈といい、右側に1本(右冠動脈)と左側に2本(左前下行枝、左回旋枝)存在します。この冠動脈の形や太さを調べるのが冠動脈造影検査です。

図:3本の冠動脈が心臓を取り巻いている。

冠動脈造影検査は冠動脈性疾患(狭心症、心筋梗塞など)が疑われたときに行われます。冠動脈を造影することでどのくらい血管が細くなっているのかが分かります。

主に手首の動脈(橈骨動脈)あるいは足の付け根の動脈(大腿動脈)からカテーテルを挿入して心臓付近まで進めます。そして心臓の横にある冠動脈にカテーテルを到達させて、カテーテルを通して造影剤を冠動脈に注入します。造影剤がどう流れていくのかを放射線検査で確認することで冠動脈の形や太さがわかります。

冠動脈は細ければ細いほど心臓への血流が悪くなります。心筋梗塞の場合には冠動脈が完全に途絶えていることが多く、その場合には治療によって血流を取り戻す必要があります。狭くなった冠動脈に血栓が詰まることで血流が途絶えた場合は、カテーテル治療で血流を取り戻すことが可能です。一方で、徐々に冠動脈が狭くなって血栓に関係なく冠動脈が完全に詰まってしまうこともあります。これを慢性完全閉塞病変(CTO:Chronic Total Occlusion)と言い、カテーテル治療で血流を再開させることが難しいです。

また、冠動脈が徐々に狭くなった場合には、側副血行路と呼ばれる新たにできた血管が冠動脈の血流を保っていることがあります。冠動脈造影検査ではこれを調べることができ、側副血行路が発達している場合には、狭くなっている冠動脈の治療を行わないという判断になることもあります。

冠動脈造影検査は冠動脈の状態を調べるのに有用ですが、身体への負担が小さくないことが欠点になります。特に次に該当する人は検査における危険性が高いです。

  • 造影剤アレルギーがある人
  • 重症の高血圧がある人
  • 重症の不整脈がある人
  • 心不全が非常に重症な人

これらに該当する場合には、よほどの理由がない限り他のやり方で検査することになります。

TIMI分類について

冠動脈造影検査を行うと、冠動脈狭窄の状況のみならず冠動脈の血流の程度も調べることができます。この血流がどの程度あるのかについてはTIMI分類(Thrombolysis in Myocardial Infarction分類)というものがあります。これは造影剤を用いて検査した場合に、冠動脈がどううつるかによって分類されます。

【TIMI分類】

血流の阻害されている程度

造影剤を用いた時の様子

グレード0

完全閉塞しているため、病変よりも末梢に造影剤が到達しない

グレード1

明らかに造影の遅延があり、冠動脈の末梢には造影剤が届かない

グレード2

造影の遅延はあるが、冠動脈の末梢まで造影剤が届く

グレード3

問題なく造影される

この分類は冠動脈内をどの程度血液が流れているのかがわかる重要な判断材料です。カテーテル治療後に再評価することで、治療効果を推測することもできます。

血管内エコー検査(IVUS:Intravascular Ultrasound)

心臓カテーテル検査中に血管内エコー検査(IVUS:Intravascular Ultrasound)を行うことがあります。この検査は冠動脈内にエコーを出せるカテーテルを入れて、血管内の状況をリアルタイムに確認することができます。具体的には、断面図が得られることで冠動脈の太さや動脈硬化や石灰化の程度を見ることができます。また、カテーテル治療の要否の判断やステントの太さと長さを判断するのにも有用です。

光干渉断層画像(OCT:Optical Coherence Tomography)

光干渉断層画像(OCT:Optical Coherence Tomography)は近赤外線を用いて検査する方法です。この近赤外線を発する装置を冠動脈内に挿入して冠動脈内の観察を行うことができます。

行っていることはIVUSに似ていますが、IVUSよりも解像度が高い画像を手に入れることができます。特に柔らかいプラークであるTCFA(Thin-Cap Fibroatheroma)を検出するのに有用であると考えられています。

一方で、血液中の脂質が高値の場合や血栓の主成分であるヘモジデリンがある場合には解像度が悪くなってしまいます。そのために判断が難しい場合にはIVUSを併用することがあります。

右心カテーテル検査

右心カテーテル検査とは肺動脈や右心室、右心房の圧力や血液ガス分析を行う検査です。また、血液中の酸素濃度の差や酸素消費量から心拍出量(1分間に心臓が送り出す血液量)を導き出すこともできます。

足の付け根の静脈(大腿静脈)や鎖骨の裏の静脈(鎖骨下静脈)、首の静脈(内頸静脈)からカテーテルを挿入して右心房・右心室・肺動脈に到達させます。肺動脈の最深部に到達したときの圧力を肺動脈楔入圧といい、これは左心房の圧力を反映します。

以下が右心カテーテル検査で測定する項目になります。

  • 中心静脈圧
  • 右心房圧
  • 右心室圧
  • 肺動脈圧
  • 肺動脈楔入圧(ほぼ左心房圧に同じ)

また、圧力を測定する位置での採血を行って血液ガス分析を行うこともできます。

この検査は心筋梗塞では右室梗塞(右心室における心筋梗塞)の心機能に対する影響を調べるのに有効です。

左室造影検査

左室造影検査では冠動脈造影検査と同じ要領で心臓までカテーテルを進めて、左心室に到達させます。左心室に造影剤を注入することでさまざまなことを調べられます。

  • 左心室の形
  • 左心室の大きさ
  • 左心室の動き(動きの悪い部分の有無)
  • 左心室内にある異物の存在の有無
  • 左心室の壁の厚さ
  • 拡張期および収縮期の左心室の容量
  • 弁膜症(大動脈弁、僧帽弁)の有無と重症度

心筋梗塞の心機能への影響を詳しく調べる際に行われることがあります。

(参考)

ハリソン内科学

7. 血液検査(クレアチンキナーゼ、トロポニンなど)

血液検査は多くの病気の診断や状態の評価のために行われますが、心筋梗塞の際にも血液検査を行うことがあります。よく行われる検査は次のものになります。

  • 心臓の状態を見る検査
    • トロポニンT
    • トロポニンI
    • CK-MB
    • BNP
    • NT-proBNP
  • 全身の状態を見る検査
    • CRP
    • 血液ガス分析
    • 肝逸脱酵素(AST、ALT)

これらには各々に得意分野がありますので、必要に応じて測定されます。次の段落でもう少し詳しく見ていきます。

心臓の状態を見る項目(バイオマーカー)

トロポニンTやトロポニンIは心筋梗塞の際に高値となることが分かっています。つまり、トロポニンTやトロポニンIが上昇している場合には心筋梗塞が非常に疑わしくなります。

また、同じくクレアチンキナーゼ(CK)も心筋梗塞が起こると上昇しやすい酵素です。CKは筋肉に存在するので、筋肉が壊れると血液中に放出されます。そのため心臓以外の筋肉に異常が起こっても上昇してしまいます。CKの中でもCK-MBという種類はほとんどが心臓に存在するため、これを調べることで心臓の筋肉に問題が起こっているかどうかがわかります。

心筋梗塞は心不全を起こすことがあります。心不全を診断する際に重要な検査項目はBNP(Brain Natriuretic Peptide:脳性ナトリウム利尿ペプチド)とNT-proBNPです。これらには心臓の負担を軽くする作用があります。そのため、心不全によって心臓に負担がかかった状態になると、心臓を楽にさせるために体内の量が増えるので、血液検査で高値になります。

一方で、NT-proBNPもBNPも腎臓の機能が悪いと体外に排泄されなくなるため腎機能が悪い人の値は実際よりも高値になるので検査結果の解釈には注意が必要です。

全身の状態を見る項目

CRPは感染症が疑われたときに大変よく測定される項目です。C-Reactive Protein(C-リアクティブプロテイン)の略で、体内で炎症が起こると血清中にこのタンパク質が上昇します。感染症やがん、打撲などによって全身に炎症が起こるとCRPは上昇します。

心筋梗塞でもCRPが上昇することがあります。しかし、前述のようにCRPは様々な原因で上昇する検査項目ですので、CRPが高値だから心筋梗塞があると考えるのは早計です。他の検査の結果や身体の状態から総合的に診断する必要があります。

血液ガス分析は血液中に含まれる成分やバランスを調べる検査です。調べることのできる主な項目は次のものになります。

  • 酸素
  • 二酸化炭素
  • pH(水素イオン濃度)
  • 重炭酸イオン(HCO3-)
  • 塩基超過分(BE)
  • 乳酸
  • ナトリウム
  • カリウム

これらを用いて身体のバランスがどうなっているのかを探ることができます。

心筋梗塞によって心機能が低下すると血液のめぐりが悪くなることで身体のバランスが悪くなります。

  • 肺の血液がうっ滞することで酸素と二酸化炭素の交換がうまくいかなくなる(特に酸素の交換)
  • 全身に血液をうまく送り出せなくなることによって全身の酸性・アルカリ性(pH)のバランスが乱れる

これらは比較的起こりやすい変化です。上記の2点は、心筋梗塞になった人に対して血液ガス分析を行うときに大事なポイントとなります。

また、全身の血液が回らなくなると肝臓の血流がうっ滞してうっ血肝という状態になることがあります。その場合には肝逸脱酵素と呼ばれるASTやALTという酵素が高値になります。

8. 画像検査

心筋梗塞の診断に画像検査を用いることがあります。もちろん胸痛があって明らかな心電図変化がある場合には画像検査を行わなくても心筋梗塞と診断できる場合があります。一方で、診断が難しい場合には冠動脈の太さや心筋への血流を把握できる画像検査が活躍することがあります。主に行われる画像検査は次の3つです。

  • CT検査
  • MRI検査
  • シンチグラフィー

次の段落では各々の検査についてもう少し詳しく説明します。

CT検査

造影剤を血液中に入れると血液が豊富な部位がわかりやすくなります。これを利用して冠動脈の太さを調べるのがCTA(Computed Tomography Angiography)です。CTAは特に冠動脈に異常がないことを見つけることが得意(陰性的中率が高い)です。

CTは動くものを調べるのが得意ではありません。そのため、心臓の動きに同期して、より解像度を高める工夫がなされます。

MRI検査

MRI検査はCT検査よりも心臓を詳しく調べることができます。一方で、動くものを調べることが難しい検査であるため、しっかりと心臓の動きに同期する必要があります。場合によっては、薬剤を用いて心臓の動きをゆっくりにして解像度を高めます。

特に遅延造影MRIという方法を用いると、小さな梗塞や内膜下梗塞のある部位がわかりやすくなります。また、心筋の浮腫みを見ることができるため、心筋梗塞が新規にできたのかあるいは以前からあるのかを見分けるのに有用です。

シンチグラフィー

シンチグラフィとは微量の放射線を放出する物質を血液中に入れて、どこにその物質が集まるかを測定する検査です。この検査では臓器の形だけでなく、臓器の性質を近似的に見ることができます。また、シンチグラフィーで得られるデータから断層図を見ることができる検査を単一光子放射断層撮影SPECT:Single Photon Emission Computed Tomography)と言います。

心筋梗塞が疑われた場合にはこのSPECTを用いて心筋梗塞が起こっている部位を特定します。つまり、梗塞が起こった心筋には栄養を届ける血流が見られないことを応用して、心筋に放射性物質が到達しない部位を探します。

シンチグラフィーの中には心臓に負荷をかけて、心筋の問題部位をよりわかりやすくする方法があります。しかし心筋梗塞は運動負荷をかけると状況が悪化してしまいますので、負荷をかける方法は避けた方がよいです。