だいどうみゃくべんきょうさくしょう
大動脈弁狭窄症
大動脈弁の開放口が狭くなり、心臓(左心室)から大動脈へ血液を送り出す際の負担が増えてしまう状態
17人の医師がチェック 132回の改訂 最終更新: 2020.09.17

大動脈弁狭窄症の基礎知識

POINT 大動脈弁狭窄症とは

心臓にある血液逆流防止弁の中でも大動脈弁が狭くなってしまう病気です。大動脈弁は全身に血液の流れる心臓の出口にある弁ですので、ここが狭くなると血液が全身にいきわたりづらくなります。主な症状は息切れ・動悸・胸痛などですが、進行すると失神や足のむくみが出てきます。不整脈が起こって突然死することがあるので注意が必要です。 症状や身体診察に加えて心臓エコー検査・心電図検査を用いて診断します。また、必要な場合はカテーテル検査を行います。大動脈弁狭窄症が心配な人や治療したい人は、循環器内科や心臓血管外科を受診して下さい。

大動脈弁狭窄症について

  • 何らかの原因で大動脈弁の開放口が狭くなり、左室から大動脈へ血液を送り出す際の負担が増えてしまう状態
    • 左室は、出口(大動脈弁)が狭くなったところから無理やり血液を送り出さなければならなくなる
    • 左室に長期的に負荷がかかるため、左室の筋肉が厚くなりすぎて心不全の原因になる
    • 十分に血液が送り出せないことによって、狭心症(心臓への血流低下)や失神発作(脳への血流低下)などを生じることがある
  • 主な原因
    • 加齢による変性動脈硬化のような変化)
    • 弁尖数の異常による先天性のもの
      • 本来大動脈弁は3つに分かれるが、生まれつき2つまたは1つにしか分かれないことがある(二尖弁、単尖弁)
    • リウマチ熱による後遺症
      • 癒着や石灰化
  • 人口の高齢化に伴い70-80歳代の患者が増えている
  • 失神や突然死のリスクになるので、大動脈弁狭窄症の診断を受けた人はその後も定期的にきちんと調べることが重要
  • 大動脈弁狭窄症は状態が悪くなってから症状が起こる。特に気をつけるべき症状は以下となる
    • 胸が苦しい、胸が痛い(狭心症状)
    • 意識を失う(失神)
    • 息が切れる、足がむくむ(心不全症状)
  • 上記の症状が出てしまうと、治療しなければ予後(残された時間)が限られていると言われている
    • 大動脈弁狭窄症による症状が出てから平均的な予後
      • 狭心症状が出現した場合:5年
      • 失神発作が出現した場合:3年
      • 心不全が出現した場合:2年
    • 心不全が悪化して亡くなることが多いが、不整脈によって突然死することもある

大動脈弁狭窄症の症状

  • 主な症状
    • 息切れ
    • 動悸
    • 狭心痛
    • 失神発作
    • 遅脈
    • 小脈
    • 血圧低下
  • 徐々に進行するため、初期のうちには症状が現れない場合が多い

大動脈弁狭窄症の検査・診断

  • 聴診(聴診器による診察)で異常な心臓の音(雑音)が聞こえる
  • 心臓や弁の動きなどを調べる
    • 心電図検査
    • 胸部レントゲン検査(X線写真)
    • 心臓超音波検査(以下を調べることで重症度を把握することができる)
      • 大動脈弁口面積(AVA)
      • 1回心拍出量係数(SVi)
      • 大動脈弁最大血流速度
      • 平均圧較差
  • 必要に応じて心臓カテーテル検査やドブタミン負荷心臓エコー検査でより詳しい検査を行う

大動脈弁狭窄症の治療法

  • 主な治療
    • 薬物療法(心臓の負担を軽くするが、根本的な治療ではない)
      • 利尿薬
      • 降圧薬
      • 薬物療法が効きすぎると全身血流量が下がることで失神や息切れが悪化することがあるので注意が必要
    • 手術
      • 大動脈弁置換術 (AVR)
      • バルーン大動脈弁形成術
      • 経カテーテル大動脈弁置換術
  • 手術適応
    • 症状がある場合
    • 他の心臓の病気に対する手術が必要な場合
    • 症状はなくても狭窄が強い場合(大動脈弁を通る血液の流速や大動脈弁の面積で調べる)
    • 心臓の機能が落ちてたり落ち始めている場合
    • ただし、患者さんの体力が手術に耐えられない可能性が高い時や患者さん本人が希望しない時などは積極的には行われない

大動脈弁狭窄症の経過と病院探しのポイント

大動脈弁狭窄症が心配な方

大動脈弁狭窄症によって心不全が起こると、息切れや全身のむくみといったような症状がみられます。

上記のような症状に該当してご心配な方は、まずはかかりつけ医があればそちらを、そして特にかかりつけの医療機関がない場合には循環器内科または心臓血管外科のある病院での受診をお勧めします。心臓血管外科と同様の診療科のことを胸部外科、血管外科、心臓外科と呼んでいる病院もあります。大動脈弁狭窄症を主に診療する専門医は、循環器専門医、心臓血管外科専門医です。内科を受診するか外科を受診するかは病気の重症度や時期によって変わってきますので、詳しくは後述します。大動脈弁狭窄症は心臓の弁膜症と呼ばれる病気の一種ですから、弁膜症外来のある病院やハートセンターを設けている病院も、専門性が高く高度な医療を提供していると言えます。

大動脈弁狭窄症の診断は、心エコーで行います。大動脈弁狭窄症があるかどうかの診断や、ある程度重症度の検討をつけるだけであれば、クリニックを含め、心エコーの機械がある医療機関ならばどこでも行うことができます。細かな重症度の判断や、大動脈弁狭窄症以外に心臓の病気が重なっていないかどうかを判断するためには、循環器内科、または心臓血管外科のある病院で入院して検査を行います。ここまで本格的な検査を行うのはある程度以上の重症度の場合になりますが、重症の大動脈弁狭窄症心不全につながって命に関わることがあるため、大切な検査です。心臓のカテーテル検査や、経食道エコーと呼ばれる胃カメラのようなエコー検査、また、医師の立ち会いの下で軽い運動をして、心臓に負荷をかけた時に心臓の働きがどうなるかといったことを調べます。

大動脈弁狭窄症に関連する診療科の病院・クリニックを探す

大動脈弁狭窄症でお困りの方

大動脈弁狭窄症の重症度によって治療が大きく変わります。軽症で、定期的に様子を見る方針で良いのであればクリニックへの通院で診療が可能ですし、重症で本格的な治療を考慮しなければならない場合には、心臓手術が行える病院を選ぶことになります。この場合、大動脈弁狭窄症の心臓手術は難易度が高い治療であるため、手術件数が少なすぎないことは、病院を探す上で参考になる基準の一つです。

大動脈弁狭窄症の根本治療のためには手術が必要もしくはカテーテル治療となります。いわゆる心臓手術(胸に傷を開けて心臓そのものを手術する開心術)と、カテーテル治療(脚の血管から細いワイヤーを入れて、心臓まで到達させて行う治療)の二種類があります。カテーテル治療の方が体への負担は少ないのですが、エコー検査の結果を中心に、心臓の状態に合わせてどちらの治療が適切かを判断します。

大動脈弁狭窄症であっても手術が必要ないような場合には、定期的に通院して心エコーや心電図といった検査を受けながら、症状が悪化しないか様子を見ていくことになります。大動脈弁狭窄症については、循環器内科や心臓血管外科のクリニックへ通院することが多いでしょう。長期的な通院が必要となりますので、主治医との相性も大事な判断基準の一つです。

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