しんきんこうそく
心筋梗塞
心臓の筋肉に酸素を送る血管(冠動脈)が詰まってしまい、組織が壊死すること。痛み・冷や汗・吐き気などの症状がないこともある。突然死の原因になる
33人の医師がチェック 360回の改訂 最終更新: 2018.02.09

Beta 心筋梗塞のQ&A

    心筋梗塞の原因、メカニズムについて教えて下さい。

    心筋梗塞は、心臓の血管の一部が詰まってしまうことで起こる病気です。

    心臓はほとんどが筋肉からなる臓器で、動き続けるために多くの血液と酸素を必要としています。心臓の外側を通っている血管(冠動脈)が詰まると、そこから先へ血液と酸素が流れなくなり、心臓の筋肉細胞が死んでしまいます。これは例えるならば、川がせき止められるとその先で草木が育たなくなるのと同じで、血管が詰まった場所より先の細胞は障害を受けて死んでしまうことになります。このように「血管が詰まってその先の細胞が死んでしまう」ことを医学的に「梗塞」と呼びます。心臓の筋肉(心筋)が死んでしまうために「心筋梗塞」と呼ばれるのがこの病気です。

    冠動脈が詰まる原因の大半は動脈硬化です。しかし中には、動脈硬化があまり無いにもかかわらず、神経活動の異常などで一時的に冠動脈が縮こまって血液が流れなくなってしまうこともあります。これを冠攣縮(かんれんしゅく)と呼びますが、その他にも大動脈解離や胸部の外傷、動脈瘤などが心筋梗塞の原因となることがあります。

    心筋梗塞はどんな症状で発症するのですか?

    最も典型的な症状は、突然発症する強い胸の痛みです。痛みは胸の前面が「締め付けられるような」「強く圧迫されるような」と言われることがありますが、人によって感じ方が異なります。また強い痛みの場合には「像に踏まれたような感じ」と表現する患者さんもいます。一方で中には全く痛みを感じないこともあり、特に糖尿病のある人や高齢者ではそのようなことがより多くあります。​

    痛みの範囲は胸だけでなく背中、肩、腕や、あご、歯、頭まで広がることがあります。歯やあごが痛むといって受診して、検査を受けてみると心筋梗塞だったということもあります。

    痛みの他には、吐き気・嘔吐、息切れ、動悸、手足の冷えやしびれ、意識障害など様々な症状があります。

    心筋梗塞は、どのように診断するのですか?

    心筋梗塞を診断する上では、心電図が最も簡便で有効な検査です。胸痛、息切れ、冷や汗などの症状から心筋梗塞が疑われた時点で、心電図を確認します。心電図で特徴的な波形が見られれば心筋梗塞と診断できますが、判断に迷うような波形のことや、特に異常な波形が出現しないこともあります。そのような場合には、必要に応じて酸素吸入や点滴を行いながら、数時間の間隔を空けて再度心電図を確認すると診断がつくことがあります。

    心電図以外には、採血も行います。トロポニンTやクレアチンキナーゼ (CK) といった項目など、心筋梗塞の際に数値が上昇しやすいものを中心に確認します。しかし、採血についても常に例外があり得るため、それらしい値が出ても実は心筋梗塞ではなかった(もしくはその逆)という場合があります。血液検査単独で心筋梗塞を診断することは困難です。

    機器があり、かつ循環器などが専門でエコーの扱いに習熟している医師の場合には、心エコー検査(超音波検査)を行います。直接心臓の動きを確認できるため、心筋梗塞の診断や程度、範囲の確認に役立てることができます。

    心筋梗塞の治療法について教えて下さい。

    心筋梗塞の治療法は、大きく3種類に分かれます。

    [1] 心筋梗塞の直接的治療(血管の詰まりを取り除く、血管を手術で繋ぎ替える):

    • カテーテル治療
    • 血栓溶解薬
    • 冠動脈バイパス手術

    [2] 心筋梗塞の予防的治療(一部は後述の[3]とも作用が重複):

    • 血管を詰まりにくくする薬:抗血小板薬1)、抗凝固薬
    • 冠動脈を広げる薬:硝酸薬、カルシウム拮抗薬2)
    • 動脈硬化を予防する薬:スタチン3)、エイコサペンタエン酸など

    [3] その他の面で、心臓の負担を取り除くための治療:

    • 酸素吸入
    • 鎮痛薬(モルヒネなど)
    • 降圧薬としても用いられる薬:β遮断薬4)、ACE阻害薬5)、ARB薬(それぞれが血圧を下げるだけでなく、別の作用でも心臓の負担を取り除く)
    • 抗不整脈薬
    • 食事、運動6)、禁煙7)など生活習慣の見直し

    上記以外に、心筋梗塞による合併症に対する治療も含めれば、さらに治療の種類は多岐にわたります。

    心筋梗塞は、どのくらいの頻度で起こる病気ですか?

    国内の報告では、年間10万人あたり10-100人程度と推定されています。これは欧米と比較すると低い数値ですが、近年国内の心筋梗塞患者数は増加し続けています。

    心筋梗塞の、その他の検査について教えて下さい。

    前項で記載した、心電図、採血、心エコー検査以外について解説します。

    胸部レントゲンやCT検査を行うこともありますが、心筋梗塞そのものの診断というよりも、心筋梗塞による心不全の程度を確認したり、大動脈解離など、その他の病気を併発している可能性を確認するという趣旨が強いです。冠動脈CTという心臓のCT検査もありますが、心筋梗塞の発症直後に行われることは少ないです。

    また、ここまでの検査を行ってもどうしても診断が確定しない場合には、後述のカテーテル検査を行うことがあります。カテーテル検査には、心臓の血管の詰まりを直接レントゲン越しに動画で確認できるというメリットと、もし詰まりがあればその場で即座に治療に移ることができるというメリットがあります。

    心筋梗塞の検査や治療で行う、カテーテルとは何ですか?

    カテーテルとは、細い管のような医療器具です。手首や足の付け根の血管からこの管を入れて、レントゲンで位置を確認しながら、心臓の近くまで血管内でカテーテルを進めます。冠動脈の部分まで辿り着いたら、その後はカテーテルを利用した検査と治療をそれぞれ行うことができます。

    • カテーテルによる検査

      • 冠動脈の入り口まで進めたカテーテルの中から、造影剤と呼ばれる液体を冠動脈に流します。この造影剤はレントゲンによく映る性質を持っており、造影剤の流れている冠動脈をレントゲン撮影することで、冠動脈の内側に狭い部分や詰まっている部分がないかを確認することができます。

    • カテーテルによる治療

      • 冠動脈内の狭い部分までカテーテルを進め、狭い部分の内側からバルーン(風船状の医療器具)をふくらませて血管を広げることができます。また、一時的に広がった血管が再び狭くなってしまわないように、血管の内側にステントと呼ばれる金属の器具を挿入します。ステントは、細い金属ワイヤーを編み込んでできた筒状の構造になっています。これはトンネルを内側から補強工事するような考え方に似ていて、そのまま冠動脈の内部にずっと残しておくことにより、その後の心筋梗塞再発を予防します。

    心筋梗塞と狭心症の違いについて教えて下さい。

    狭心症は、心筋梗塞と同様に冠動脈が細く、狭くなることで生じる病気です。症状も似ていて、胸痛、息切れ、冷や汗などで発症します。狭心症は心筋梗塞に至る一歩手前の病状であると考えることができます。

    心臓の血管が細くなって血液がわずかしか流れなくなった状態が狭心症です。血液の流れがわずかに残っていたとしても、心筋細胞にとって血液量が不足しているのであれば胸痛などの症状が出現します。特に運動後などで心臓が激しく拍動した後に症状がでやすくなります。その後痛みに耐えてしばらく安静にしていると、心筋細胞が再び落ち着いて症状が改善します。

    このように、血管が完全に詰まってしまうことなくぎりぎりのところで持ちこたえているのが狭心症です。完全に血液が流れなくなって細胞が死んでしまうと、心筋梗塞と呼ばれます。

    心筋梗塞が重症化すると、どのような症状が起こりますか?

    心筋梗塞が未治療のまま進行した場合には、多くの場合2つの経過のいずれかを辿ります。

    • 詰まった血管が細く、影響が及んだ範囲が小さい場合

      • 死んでしまった心筋細胞は生き返りませんが、周囲の心筋でその役割を肩代わりできる程度であれば、こちらの経過を辿ります。痛みはやがて治まり、心臓の機能は以前よりも低下して、例えば息切れしやすくなる、不整脈が出やすくなるなどの可能性がありますが、日常生活はある程度送れるようになることが多いです。

    • 詰まった血管が太く重要なものであり、広範囲に影響が及んだ場合

      • 治療をしない限り、時間が経てば経つほど心臓への負担が高まって心不全状態に陥ります。そのままでは突然の不整脈で心停止が生じたり、心破裂(心臓に穴が空いて血液が漏れ出すこと)などで突然死に至ることがあり得ます。

      • 急性心筋梗塞の短期死亡率(急性期死亡率)は、国内近年の報告によると6-10%程度とされています。カテーテル治療の技術革新と共に死亡率は改善傾向にはありますが、それでも命を落とすことのある重大な病気の一つです。

    カテーテルの検査や治療は、どの程度危険なのですか?

    カテーテル検査や治療には、様々な合併症があります。合併症とは、処置や手術が正しい手順で行われた場合であっても一定の割合で発生してしまう、体に悪影響を及ぼすような事柄のことです。

    カテーテル検査(治療)を足の付け根の血管から行った場合、その部位からの血が止まりにくくなって血腫が生じる割合は5%程度とされています。血腫は、見た目は青あざのようなものですが、この場合かなり範囲が広く、太ももが強く腫れたり場合によっては出血が多くて輸血が必要になることもあります。

    また血管内に溜まったプラークと呼ばれる、ごみのようなものがカテーテルに触れる際に剥がれてしまい、その影響で脳梗塞が発症するリスクも0.1%程度で存在します。

    それ以外には、カテーテルの処置中に造影剤と呼ばれる注射薬を使用するため、この造影剤に対するアレルギー反応(じんましんや呼吸の苦しさなど)が生じてしまったり、カテーテル検査(治療)自体がX線を用いる処置のため、一定量の被ばくがあるとされています。

     

    医療では患者さんの長期的な健康を第一に考えます。全く健康で、心臓に何の異常もないことが分かっている場合であれば、これらのリスクを負って検査を受ける必要はありません。一方で、これらを勧められる、もしくはこれらが必要だとされる場面というのは、心筋梗塞や狭心症といった深刻な病気が差し迫っているか、その可能性が高い状況であるはずです。合併症やデメリットもある検査・治療ではありますが、何もしないことによって命を失ってしまう、あるいは重大な後遺症を残してしまうことが最大のリスクだと考えられます。

    確かに、カテーテル検査(治療)を受けるべきかどうかの判断が悩ましいような、どちらの選択肢も妥当だと考えられる場面も、ないことはありません。しかし多くの場合には、これらのカテーテル検査(治療)がふさわしいと考えられたり、あるいはそのメリットの方がデメリットを大きく上回る場合であったりします。医師と相談の上で、納得が行かない点を極力減らし、適切な治療を受けられることが大切です。

    心筋梗塞と診断が紛らわしい病気はありますか?

    突然の激しい胸の痛みと息切れで発症するという点では、大動脈解離、肺塞栓症などがしばしば似た症状を示します。これらはいずれも命に関わる重大な病気です。

    しかし本当に区別が困難なのは、心筋梗塞の中でも症状が出にくいタイプのものです。高齢者や糖尿病のある方、そして男性よりも女性においては、心筋梗塞でも胸痛が出にくいことがあるとされています。心筋梗塞が起きていても「胸に少し違和感がある」という程度の症状でゆっくり外来を受診される方もいます。症状の弱い心筋梗塞はその分診断が難しく、典型的でないものについては診断が遅れてしまうことがあります。

    心筋梗塞の手術について教えて下さい。

    心筋梗塞の「手術」や「血行再建術」と言われるものには2種類あり、一つは冠動脈バイパス術と呼ばれる、全身麻酔での手術です。もう一つはカテーテル治療で、「血管内治療」、「冠動脈インターベンション」などと呼ばれることもあります。実際に急性心筋梗塞と診断された場合には、これらいずれかの治療が基本となります。

    カテーテルの治療は入院期間も一般的に短いため、特に日本では好まれています。一方で再治療率(その後の経過で再び治療が必要になる割合)は冠動脈バイパス術の方が低いとされています。手術に伴うリスクや、心筋梗塞が生じた心臓の部位、治療を受ける病院ごとの得意分野や、心筋梗塞以外の病気を合併していないかどうかなど、様々なことを併せ考えて治療を選択することになります。

    心筋梗塞は、遺伝する病気ですか?

    両親が心筋梗塞なら子にも必ず遺伝するというものではありませんが、心筋梗塞に至りやすい体質や病状(高血圧、糖尿病など)によって間接的に遺伝する傾向はあります。ただし心筋梗塞の発症には、遺伝以外にも食生活を含む環境の要因が大きく関わっています。

    心筋梗塞は、予防できる病気ですか?

    発症を完全に避けることはできませんが、発症のリスクを減らすことは可能です。心筋梗塞は生活習慣と密接に関連しており、例として以下のような危険要因が知られています。

    • タバコ1)
    • 高血圧2)
    • 糖尿病3)
    • 脂質異常症4)
    • 肥満
    • 飲酒
    • 運動5)
    • 食習慣

    これらが危険要因としてどの程度のものなのかについて、次項以下で順に説明します。

    タバコは、どのくらい心筋梗塞に悪影響があるのでしょうか?

    タバコ(喫煙)は心筋梗塞のリスク項目の一つです。

    冠動脈疾患(心筋梗塞など)の発症率・死亡率は、喫煙者で2倍から3倍高い(対 非喫煙者)とする報告があります。死亡リスクが増加するのは受動喫煙でも同様です。

    また、禁煙すると2年以内に冠動脈疾患の発症リスクが低下して、喫煙しない人と同じレベルまで改善します。

    参考:「心筋梗塞二次予防に関するガイドライン(2011年改訂版)日本循環器学会、他11学会」 

    高血圧は、どのくらい心筋梗塞に悪影響があるのでしょうか?

    高血圧は心筋梗塞のリスク項目の一つです。

    冠動脈疾患の発症率は、血圧が135/85以上のグループでは男性で2.1-2.3倍、女性で1.3-2.8倍高い結果であった(対 血圧が135/85未満のグループ)とする報告があります。

    参考:「心筋梗塞二次予防に関するガイドライン(2011年改訂版)日本循環器学会、他11学会」 

    糖尿病は、どのくらい心筋梗塞に悪影響があるのでしょうか?

    糖尿病は心筋梗塞のリスク項目の一つです。

    糖尿病患者では冠動脈疾患の発症率が2.6倍であった(対 非糖尿病患者)とする報告があります。

    参考:「心筋梗塞二次予防に関するガイドライン(2011年改訂版)日本循環器学会、他11学会」 

    コレステロールや中性脂肪の異常は、どのくらい心筋梗塞に悪影響があるのでしょうか?

    コレステロールや中性脂肪の異常(脂質異常症)は、心筋梗塞のリスク項目の一つです。

    以下に、脂質異常と冠動脈疾患に関する研究報告の一部をお示しします。

    • 総コレステロール値が260mg/dl以上のグループでは、冠動脈疾患での死亡率が男性で3.8倍、女性で3.3倍高かった(対 160mg/dl未満のグループ)とされています。
    • LDLコレステロール値が150mg/dl以上のグループでは、冠動脈疾患の発症率が2倍高かった(対 102mg/dl未満のグループ)とされています。
    • HDLコレステロール値は、高い方が望ましいとされている検査項目ですが、40mg/dl未満の男性では、冠動脈疾患の発症率が2.5倍高かった(対 HDL 40mg/dl以上の男性)とされています。
    • 中性脂肪が167mg/dl以上のグループでは、冠動脈疾患の発症率が2.8倍高かった(対 84mg/dl未満のグループ)とされています。

    参考:「心筋梗塞二次予防に関するガイドライン(2011年改訂版)日本循環器学会、他11学会」 

    心筋梗塞後の運動療法は、何をどの程度するのが良いのでしょうか?

    心筋梗塞は心臓に強い負担がかかる病気ですので、発症のすぐ後に急激な運動をすると、かえって体の負担が増してしまうことがあります。

    病状を見ながら、心電図を装着したままルームランナー(トレッドミル)やエアロバイク(自転車エルゴメーター)で心臓がどの程度の運動に耐えられるかを確認します。その上で適切な運動の強さを決めることを、医師による運動処方と呼びます。一般的には以下のような運動が推奨されますが、病状によって適切な運動の強度が異なりますので、医師の指示の下で行うことが重要です。

    週3-4回(可能であれば毎日)、1回30分以上のウォーキング、ランニング、サイクリングなどの有酸素運動や、10-15RM程度のリズミカルな抵抗運動が推奨されています。10-15RMとは、最大で10-15回程度繰り返すことができる負荷での抵抗運動のことです。

    参考:「心筋梗塞二次予防に関するガイドライン(2011年改訂版)日本循環器学会、他11学会」 

    心筋梗塞は、完治する病気ですか?あるいは、治っても後遺症の残る病気ですか?

    心筋梗塞は、現状では残念ながら完治する病気ではありません。心臓の筋肉のうち死んでしまった部分(壊死した部分)は治癒しないため、治療後も残った部分の心臓で、心臓の働き全体を担うことになります。

    心筋梗塞を起こした範囲が広ければ広いほど、残りの心臓にかかる負担は大きくなると言えます。心臓の負担が大きいと少しの運動で息切れが出たり、心不全になりやすくなったりするため、内服薬を飲み続けることで日々の心臓の負担を軽減させる治療を行うこととなります。

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