糖尿病のある心筋梗塞経験者のインタビュー研究
イギリスの研究班が、もともと糖尿病があって心筋梗塞を経験したあとの人を対象に、症状の感じかたなどを聞き取り、結果を専門誌『BMJ Open』に報告しました。
ロンドンの3か所の病院で聞き取り調査が行われました。39人のインタビューの結果から読み取れたことが報告されました。
症状は胸の痛みとは限らない
胸の痛み・不快感が多かったものの、発汗、息切れなどの症状を感じた人もいました。痛みの特徴も、典型的な「締め付けるような痛み」と違っている人もいました。
- 「胸が潰されるようだった」
- 「誰かが胸の中を握りつぶしているみたい」
- 「寝間着が(汗で)びしょびしょになった」
- 「息ができなくて死ぬかと思った」
- 「息ができなくなって、だんだんひどくなって、それから焼けるような感じがした」
- 「何かが腕を這い上がってきて、噛まれたような感じ」
- 「刺すような痛さ」
- 「普通の痛さだった。痛いと言うより鈍く感じた」
- 「胸が何かおかしい感じがして、腕と首と足がひどく痛くなって、動けなくなった…とても鋭い痛みだった」
- 「すごく痛いんじゃなくて、なぜか足が前に出せない。力が抜けた」
- 「痛みと言われているものかもしれないが、わからない。痛みではないと思う。ひどく気分が悪かったと言いたい」
- 「言葉でどう説明すればいいかわからない」
- 「何もなかった。気持ち悪くもないし、痛くもなかった」
- 「痛みも汗も、ほかになにもなかった」
ただし、痛みがなかったと答えた人たち2人は心停止に至ったあと蘇生されていたことから、心停止前の記憶が失われている可能性も否定できないと研究班は考えています。
ほかの原因だと思った、大したことではないと思った
症状が現れたときに心筋梗塞以外の原因を考えた人や、すぐに受診する必要があると思わなかった人もいました。
- 「お腹が張って、ガスがたまっているようで、そんな感じの痛みがあった」
- 「重曹を飲んだけど効かなかった。ガビスコンを飲んでも効かなかった。抗生物質も効かなかった。それで悪いものだと思った」
- 「血圧も糖尿病もあるし、心臓が悪いとは思わなかったからわからなかった」
- 「心臓発作だとは思わなかった。すごく気持ちが悪くて、お腹が空いた」
- 「ふらふらする感じがして、疲れた。糖尿病だからいつもふらふらしていた」
- 「最初は低血糖だと思った」
- 「急に来たけど無視した。もう少しやることがあったから」
- 「朝になって家庭医のところが開くまで待った。電話して症状を伝えたら『すぐ救急車を呼んでください』と言われた」
- 「あまりに長く続くので、『心臓発作かもしれません』と言った」
- 「2週間ぐらい前にもあって[…]椅子に座って20分ぐらいしたらなくなったので、妻に『またあったら医者に電話する』と言った」
- 「見当がついてもよかったんだけど、確かに、はじめて心臓発作があったときとまったく同じ症状だった」
糖尿病の人はどう気を付ける?
糖尿病患者で心筋梗塞の症状の感じかたやそのときの行動を聞き取った研究を紹介しました。
症状は多様で、すぐに診察を求めなかった人もいたという結果がありました。
心筋梗塞はとても多くの人が経験します。糖尿病でその確率が上がること、症状は典型的な「締め付けるような強い胸の痛み」とは違う場合もあることを知っておくのは速やかに必要な診察を求めるために役立つでしょう。
執筆者
'Just like a normal pain', what do people with diabetes mellitus experience when having a myocardial infarction: a qualitative study recruited from UK hospitals.
BMJ Open. 2017 Sep 15.
[PMID: 28918410]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。