血を固まりにくくするリバーロキサバンは心血管疾患の再発を防げるか?
リバーロキサバン(商品名イグザレルト®)は血液を固まりにくくする薬です。血栓が詰まることによる脳梗塞などを防ぐ狙いで使われます。心血管疾患を持つ人での効果が試されました。
心血管疾患があり安定した人に対するリバーロキサバンの効果
世界33か国の研究者によるリバーロキサバンの試験の結果が、医学誌『The New England Journal of Medicine』に報告されました。
この研究は、すでに
対象者はさらに、偽薬とアスピリンを毎日飲む準備期間を最初に設定されました。アスピリンも血液を固まりにくくする作用があります。リバーロキサバンとアスピリンは違ったしくみで働きます。準備期間にアスピリンの副作用が発生したり、薬をきちんと飲まなかった人は対象から外されました。
残った対象者がランダムに3グループに分けられました。
- リバーロキサバン(1日2回2.5mgずつ)とアスピリン(1日あたり100mg)を飲むグループ
- リバーロキサバン(1日2回5mgずつ)を飲むグループ
- アスピリン(1日あたり100mg)を飲むグループ
※リバーロキサバンの2.5mg製剤、5mg製剤は日本では販売されていません。
効果判定には、研究期間に心血管疾患による死亡、心筋梗塞、脳卒中のいずれかに該当した人の数を比較しました。また、副作用による害の指標として、入院や救急治療を必要とするなどの重要な出血を比較しました。
研究参加から平均23か月経過した時点で、それまでのデータからリバーロキサバンが有効と判定され、追跡中止となりました。
1.3%改善
28,275人が研究に参加しましたが、2,320人が準備期間に対象から外されました。
残った人が分けられた3グループでは、試験開始時点でどのグループでも平均年齢およそ68歳、平均の
日本肥満学会の定義では、BMIが25以上を「肥満」としています。BMIが28というのは、身長170cmなら体重81kgほどです。
効果について、心筋梗塞・脳卒中または心血管疾患による死亡は、リバーロキサバン+アスピリンのグループでは4.1% アスピリンのみのグループでは5.4%の人の結果となりました。
副作用について、重要な出血はリバーロキサバン+アスピリンのグループでは3.1% アスピリンのみのグループでは1.9%に発生しました。
リバーロキサバン単独のグループでは、利益についてアスピリンのみのグループと統計学的に差が確認できませんでした(4.9%)が、重要な出血は多くなっていました(2.8%)。
リバーロキサバンは効く?
リバーロキサバンの効果についての研究を紹介しました。アスピリン100mgを基準にすると、リバーロキサバンを加えないより加えたほうが勝る結果となりました。
効果・害ともにほかの指標も検討されていますが、主要な指標について言えば、利益を得た人は1.3%、害が出た人は1.2%ということになります。
リバーロキサバン単独とアスピリン単独を比べればアスピリン単独のほうが害が少ない面で勝る結果でした。
リバーロキサバン1日2回2.5mgずつを基準にして言えば、リバーロキサバンを加えるよりもアスピリンを加えたほうが勝る結果だったとも言えるでしょう。
アスピリンを多く使った場合とアスピリン+リバーロキサバンのどちらが優れているかについては、この研究では試されていません。
また最初の準備期間によって、出血の害が特に現れやすい人や、薬を飲むスケジュールを守れない人はある程度除かれていると考えられるため、ほかの条件に当てはまる人の中でも特に利益が出やすい人の結果と言えるかもしれません。
また費用について、日本の薬価で言うとアスピリン+リバーロキサバンのグループで2日分の用量にあたるイグザレルト®錠10mgは1錠383円で、アスピリン2日分にあたるバイアスピリン錠100mgの2錠は11.2円です(2017年10月時点)。リバーロキサバンを加えると30倍あまりの薬価を使うことになります。
この論文の読者から『The New England Journal of Medicine』に寄せられたコメントのひとつは、効果があり中止となった研究のデータは効果を大きく評価しやすいという報告を参照しつつ、アスピリン+リバーロキサバンによる利益と害の差が小さいことを指摘しています。
なお製薬企業が出した10月5日のプレスリリースによると、違う条件の患者に対してリバーロキサバンによる脳卒中などの予防効果をアスピリンと比較していた研究が、中間解析の時点でリバーロキサバンが勝る可能性は非常に小さいとわかったため中止となりました。中止となった研究ではリバーロキサバンを使うグループのほうがアスピリンを使うグループよりも出血が多くなりました。
血液を固まりにくくする治療はさまざまな状況で有効と考えられています。どの薬をどの程度使うかといった細かい調整は簡単ではなく、最近も上のような検証が続けられています。
報告されたデータを利用し、ほかの選択肢ともあわせて総合的に考えることで、治療方針を選ぶ役に立てることができます。
執筆者
Rivaroxaban with or without Aspirin in Stable Cardiovascular Disease.
N Engl J Med. 2017 Oct 5
[PMID: 28844192 ]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。