2016.06.09 | ニュース

脳梗塞の予兆が出てから、1年以内に脳卒中になる危険性は?

21ヶ国の4,789人を分析
from The New England journal of medicine
脳梗塞の予兆が出てから、1年以内に脳卒中になる危険性は?の写真
(C) Kirsty Pargeter - Fotolia.com

脳卒中の予兆として、ろれつが回らない、手足のしびれなどの症状が見られる一過性脳虚血発作(TIA)があります。TIAを起こしてから1年以内に、実際に脳卒中を発症する危険性を調査した結果が報告されました。

◆脳梗塞の予兆は本当に脳卒中の危険性を増すのか?

脳梗塞などの脳卒中発症する前に、ろれつが回らなくなる、手足がしびれる、といった脳梗塞のような症状が短時間だけ現れて消えることがあります。このような症状が現れることを、一過性脳虚血発作TIA)と言います。 TIAは、脳の血流が一時的に途絶えることで神経に影響し、起きる現象です。特徴としては、症状が見られる時間は比較的短時間(5-10分程度)のことが多く、一見何事もなく治ったように見えるという点です。

ここで紹介する研究では、過去7日以内にTIAを発症した、または軽症の脳卒中を起こした21ヶ国4,789人を対象に追跡調査を行い、その後1年間で脳卒中を発症する危険性と、発症にはどのような要因が関連しているか検証しました。

 

◆1年以内に脳卒中を発症した人は20人に1人以上

調査により以下の結果が報告されました。

2、7、30、90、365日時点における脳卒中の発症率は、カプランマイヤー推定により、それぞれ1.5%、2.1%、2.8%、3.7%、5.1%であった。

多変量解析の結果、脳画像により判定した多発性梗塞、大きい動脈のアテローム硬化、ABCD2スコアが6点または7点であることが、脳卒中リスクが2倍以上であることにそれぞれ関連していた。

TIAの発症後1年以内で脳卒中を発症する危険性は、全体の5%以上でした。そのうちでも脳卒中を発症する危険性が2倍以上高くなる要因として、TIAがあった時点の画像検査で脳梗塞の跡が複数見つかること、大きな動脈に動脈硬化があること、TIAの重症度を判定するABCD2スコアが6点または7点であることが見つかりました。

※ABCD2スコア TIAの重症度を、年齢、血圧、どんな症状が出たか、糖尿病の有無、症状の持続時間から判定する評価方法です。0点から7点の間で点数が高いほど、重症度が高いことを示します。ABCD2スコアが4点以上である場合、治療を開始するべきであるといった報告があります。

 

TIAは一時的な場合も多く、その後放っておいてしまう方も多い病気です。そのため、最近ではTIAに対する注意を促すテレビコマーシャルやテレビ番組も増えてきました。脳卒中を発症する危険性を十分に理解し、そのような症状が見られた場合はすぐに病院を受診した方が良いでしょう。

執筆者

Shuhei Fujimoto

参考文献

One-Year Risk of Stroke after Transient Ischemic Attack or Minor Stroke.

N Engl J Med. 2016 Apr 21

[PMID: 27096581]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。