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一過性脳虚血発作(TIA)

脳の血流が一時的に悪くなり、脳梗塞のような症状が短時間現れて消える病気。数日以内に脳梗塞に進行する可能性がある

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20人の医師がチェック 237回の改訂 最終更新: 2017.05.16

一過性脳虚血発作(TIA)の基礎知識

一過性脳虚血発作(TIA)について

  • 脳の血流が一時的に悪くなり、脳梗塞のような症状が短時間現れて消える病気
    • 脳細胞が死んでしまう前に血流が回復するため、脳細胞は再び元気になり症状は回復する(1時間以内に回復することが多い)
  • 一過性脳虚血発作脳梗塞の「前触れ」でもあり、48時間以内に脳梗塞発症症状や病気が発生する、または発生し始めることする日が多いため、脳梗塞を予防するための治療することが大切
  • 主な原因
    • 下記のように、いくつかの原因が考えられる
    • 脳や首の血管が動脈硬化全身に酸素と栄養を運ぶ動脈の壁が硬くなった状態。加齢の他に、喫煙、高血圧、脂質異常症、糖尿病などが原因となるを起こし、その血管についた老廃物(アテローム動脈の内側に、脂肪を多く含む細胞などが溜まってできたふくらみ。プラークともいう。アテロームが溜まることで動脈硬化が起こる)が脳の血管に一時的に詰まって流れが悪くなる
    • 心房細動などが原因で心臓にできた血栓血管や心臓の中にできた、血のかたまりのこと。血流が悪くなることが原因で、生じることが多いが、脳の細い血管に一時的に詰まって流れが悪くなる
    • もやもや病などの脳の血管の病気で起こる場合がある
  • 60歳以上や、高血圧、糖尿病などのある人に起こりやすい
    • ABCD2スコアという経過の予測スコアがある
      ・A (age):年齢が60歳以上⇨1点
      ・B (blood pressure):収縮期血圧心臓が脈打つたびに、血管(動脈)は張ったり緩んだりを繰り返している。この張っている時の血圧。血圧が120/80であれば、120の部分に相当140mmHg以上または拡張期90mmHg以上⇨1点
      ・C (clinical features) :身体の片側が脱力する⇨2点、脱力はないが喋りづらい⇨1点
      ・D (duration) :症状の持続時間が60分以上⇨2点、症状の持続時間が10-59分⇨1点
      ・D (diabetes) :持病に糖尿病がある⇨1点
    • 上の5項目の点数を合計して、TIA発症後2日以内に脳梗塞になる確率を推定する
      ・0-3点:1.0%
      ・4-5点:4.1%
      ・6-7点:8.1%

一過性脳虚血発作(TIA)の症状

  • 症状の特徴は「短時間で消える脳梗塞のような症状」
    • 片方の手足の動かしづらさ(麻痺神経の障害により、手足などに十分な力が入らない、感覚が鈍くなるなど、身体機能の一部が損なわれること
    • 片方の手足のしびれ(感覚障害)
    • しゃべりづらさ(舌がもつれる、言葉がでてこない、口がうまく閉じない)
    • 突然片目の視界が真っ暗になったり、欠けたりする
  • 症状は数分から30分程度で消えることが一般的

一過性脳虚血発作(TIA)の検査・診断

  • いつ、どのような症状が起きて、どのくらい続いたのかという情報が一番診断の役に立つ
  • 画像検査:首や頭の血管の状態などを詳しく調べる
    • 頚動脈超音波検査空気の細かな振動である超音波を使って、首の中にある頚動脈の状態を調べる検査:首の血管の詰まり具合を調べる
    • 頭部MRI磁力(電磁波)を用いて、頭の中の状態を調べる検査。脳梗塞の診断などに用いられることが多い検査:脳の血管で狭くなっている部分がないかを調べる
  • 頭部血管造影検査造影剤を用いて、頭の中の血管の状態を調べる検査。脳動脈瘤などで行われることがある:必要に応じてカテーテルを使って、脳の血管が狭くなっていないかを調べる
  • 心臓の詳しい検査
    • 心電図心臓から出ている弱い電気を感知して、心臓の状態を調べる検査ホルター心電図首からかけられるサイズの心電図計を丸一日間着用して、心臓の状態を調べる検査。通常の心電図検査よりも情報量が多い心房細動がないか調べる
    • 心臓超音波検査空気の細かな振動である超音波を使って、心臓の状態を調べる検査:心臓の中に血栓血管や心臓の中にできた、血のかたまりのこと。血流が悪くなることが原因で、生じることが多い(血のかたまり)、あるいは血栓を作る原因がないか確かめる

一過性脳虚血発作(TIA)の治療法

  • 一過性脳虚血発作を起こした場合、その後脳梗塞発症症状や病気が発生する、または発生し始めることする可能性が高いことが分かっている
    • 一過性脳虚血発作が疑われる場合は、リスクを判断して予防的治療(アスピリンを飲む)を検討する
    • 症状が完全に消えていても、入院して検査・治療することがある
  • 再発や脳梗塞への進行を予防するため、原因に応じた、薬物治療を行う
    • 抗血小板薬血小板が血栓を作る作用を抑えるための薬。脳梗塞などの予防に使用される抗凝固薬血液を固まりにくくする薬。不整脈に対して、血栓ができるのを予防する目的で用いられることが多い:血液をさらさらにして、血管が詰まりにくくする薬
    • 降圧薬、血糖血液中のブドウ糖のこと。人が活動するためのエネルギー源。血液中の濃度を血糖値といい、糖尿病の診断に用いられる降下薬:脳梗塞になるリスクを下げるために、高血圧や糖尿病といった生活習慣病の治療を行う
  • 手術
    • 首の血管の一部だけ細くなっていて脳の血流が悪くなっているような場合は、血管を拡げる手術を行うことがある
    • 手術方法は主に2つ
    • それぞれメリット、デメリットがあるので、個々の場合によって適した治療が選択される
    • 頚動脈内膜剥離術(CEA)
      ・首の皮膚を切って頚動脈をあらわにして、動脈を切開し血管内にできた塊(脂肪や石灰化部分など)を切除する
      ・細くなっていた血管の通りが良くなり、脳への血流が良くなる
    • 頚動脈ステント細い金属のワイヤーを編み込んだ、チューブ型の医療器材。カテーテルで血管の中に挿入し、血管が狭くなるのを予防する留置術(CAS)
      ・近年手術方式や手術器械の進化により発展してきているカテーテル治療カテーテルと呼ばれる細い管を、腕や脚の付け根の血管から挿入し、治療したい部位の近くまで血管内を進めて治療する方法のこと
      ・太ももの血管から管を入れて治療を行うので、全身麻酔局所麻酔に対して、眠って意識が完全になくなってしまう麻酔のこと。寝ている間は呼吸が止まってしまうため人工呼吸器を使用する必要があるで皮膚を大きく切ったりする必要がなく全身への負担も少ない

一過性脳虚血発作(TIA)に関連する治療薬

FXa阻害薬(抗凝固薬)

  • 体内の血液が固まる作用の途中を阻害し、血栓の形成を抑え脳梗塞や心筋梗塞などを予防する薬
    • 血液が固まりやすくなると血栓ができやすくなる
    • 血液凝固(血液が固まること)には血液を固める要因になる物質(血液凝固因子)が必要である
    • 本剤は血液凝固因子の因子Xa(FXa)を阻害し、抗凝固作用をあらわす
FXa阻害薬(抗凝固薬)についてもっと詳しく

ADP阻害薬(抗血小板薬)

  • 血小板の活性化に基づく血小板凝集を抑え、血栓の形成を抑え血管をつまらせないようにする薬
    • 血小板が凝集すると血液が固まりやすくなり血栓ができやすくなる
    • 体内にADPという血小板凝集を促進させる物質がある
    • 本剤は血小板でのADPの作用を抑えることで、抗血栓作用をあらわす
ADP阻害薬(抗血小板薬)についてもっと詳しく

クマリン系抗凝固薬(ワルファリンカリウム製剤)

  • ビタミンKが関与する血液凝固因子の産生を抑え、血液を固まりにくくし、血栓ができるのを防ぐ薬
    • 血液が固まりやすくなると血栓ができやすくなる
    • 体内で血液を固める要因になる物質(血液凝固因子)の中にビタミンKを必要とするものがある
    • 本剤は体内でビタミンKの作用を阻害し、ビタミンKを必要とする血液凝固因子の産生を抑えることで抗凝固作用をあらわす
  • ビタミンKを多く含む食品などを摂取すると薬の効果が減弱する場合がある
    • 納豆、クロレラ、青汁などはビタミンKを多く含む
    • 本剤を服用中は上記に挙げた食品などを原則として摂取しない
クマリン系抗凝固薬(ワルファリンカリウム製剤)についてもっと詳しく

一過性脳虚血発作(TIA)の経過と病院探しのポイント

一過性脳虚血発作(TIA)かなと感じている方

一過性脳虚血発作では、急にろれつが回らなくなったり、手足が動かなくなったりします。脳梗塞と同様の症状が出ますが、症状がずっと続いてしまう脳梗塞と異なり、数十分以内に大抵は治まるのが特徴の一つです。

一過性脳虚血発作は、神経内科、脳神経外科、脳外科が専門の診療科です。注意が必要な点としては、病院によっては神経内科と脳神経外科(脳外科)が両方ありながら、病院ごとにどちらの科が一過性脳虚血発作脳梗塞といった病気を診療しているかが異なるという点があります。どちらの科を受診しても(もしその後入院が必要そうであれば)適切に案内してもらえるはずですが、事前に確認しておきたければ、病院に直接問い合わせてみるのも良いかもしれません。

一過性脳虚血発作を主に診療する専門医は、神経内科専門医、または脳神経外科専門医です。神経の病気といっても脳出血脳腫瘍のように手術を必要とする病気から、アルツハイマー病パーキンソン病のように脳そのものに変化が生じる病気まで様々ですが、これらの専門医であれば一過性脳虚血発作についても一定以上の経験があると言えます。ただし、専門医でなければ一過性脳虚血発作の診断ができない、治療が行えないというわけではありません。

一過性脳虚血発作の診断は、特定の検査ではなく診察と問診医師が、ある症状や病気についての経過を聞き、質問を繰り返すことで行います。CTX線(放射線)を用いて、体の内部を画像化して調べる検査では診断をつけることができません。MRI磁力(電磁波)を用いて、脳や内臓、筋肉、骨などの組織を詳しく調べる検査は一部のケースでは有用ですが、一過性脳虚血発作ではMRIで異常が見つからないことも多く、検査だけでは診断することが難しい病気です。

脳梗塞のような症状が出てから短時間(通常は数分〜十数分)で症状が消えてしまうというのが一過性脳虚血発作の特徴ですが、少しでも症状が残っている時には、一過性脳虚血発作ではなく脳梗塞の可能性があります。そのような場合では、MRIの検査を行える医療機関を受診することが勧められます。MRIの機械があっても、たとえば夜間は専門の放射線技師が不在の場合がありますので、機械さえ病院にあれば土日や夜間でも行える検査だというわけではない点には注意が必要です。

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一過性脳虚血発作(TIA)でお困りの方

一過性脳虚血発作は、いわば「脳梗塞になりかけたが、一旦治まって元通りになった」という状態ですから、その診断が確実であれば根本治療は必要ありません。しかし、一度脳梗塞になりかけたということは二度目、三度目の危険性が高いということであり、また一過性脳虚血発作の直後数日間は特にそのリスクが高いことが知られています。一過性脳虚血発作では入院が必要となることが多く、脳梗塞への進展を予防するために血液をさらさらにするような治療を行います。
一過性脳虚血発作の治療は特殊な設備を要するものではなく、入院が可能な医療機関ならばどこでも行うことができます。

一過性脳虚血発作を起こした場合、その後に血液が固まりにくくする薬を飲み続ける場合があります。こちらについては、もし入院したのであればそちらの科の外来に退院後もかかり続けることがあるでしょうし、すでに高血圧や脂質異常症などでかかりつけの病院、クリニックがあるのであれば、そちらで薬をまとめて処方してもらうことも可能です。

現在の日本の医療体制では、「通院は近所のかかりつけ医、入院は地域の総合病院内科、外科、小児科、産婦人科など主要な科が揃っている病院のこと。現在、明確な定義はない」といった分業と、医療機関同士の連携が重視されています。重症の患者さんが安心していつでも総合病院にかかれるように、総合病院でなくとも診療が行える病状の方はできるだけ地域のクリニックを受診してもらって、住み分けを行うという形です。これには、地元に自分のかかりつけ医(主治医)を作ることで、その人の病状全体が把握できるというメリットもあり、必要あればその都度、病気ごとに専門の医師や医療機関と連携して診療を行います。一過性脳虚血発作後の通院については、内科のクリニックであれば、特に専門を限らずに定期的な処方と対応が可能です。

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