しんきんこうそく
心筋梗塞
心臓の筋肉に酸素を送る血管(冠動脈)が詰まってしまい、組織が壊死すること。突然死の原因になる
33人の医師がチェック 366回の改訂 最終更新: 2021.02.22

心筋梗塞の原因にはどんなものがあるのか?

心筋梗塞は心臓に栄養を送る血管(冠動脈)が詰まる病気です。冠動脈が詰まると心筋は壊死してしまい動かなくなります。このページでは冠動脈がどうして詰まるのかについて説明します。

1. 冠動脈はなぜ詰まるのか?

冠動脈は2mm前後の太さで、絶えず安定して血液が流れています。冠動脈が詰まると心臓が機能的に動けなくなるため、冠動脈は簡単にはつまらないようにできています。それでも詰まることがあります。その原因には大きく3つが考えられます。

  • 動脈硬化
  • 塞栓
  • 冠動脈のけいれん(冠攣縮)

これらはどういったことが起こっているのかについてもう少し詳しく説明します。

図:冠動脈は心臓を取り巻くように位置している。

動脈硬化

動脈硬化とはその名の通り動脈が硬くなることを指します。多くの場合には粥状動脈硬化(アテローム性動脈硬化)という変化を辿ります。粥状動脈硬化は、血管の内膜にコレステロールプラーク)が蓄積して、それが変性することで動脈が硬くなっていきます。動脈が硬くなると同時に血管の壁は厚くなるため、血管腔(血管の内側を血液が流れる部分)は狭くなっていきます。

血管の内膜に炎症が起こったりコレステロールが蓄積した部分が破綻したりすると、血栓ができることがあります。動脈硬化によって血管腔が狭くなった部分に血栓ができると血液が完全に途絶えることがあります。

冠動脈ではこうした動脈硬化による変化によって、内腔が詰まって血流が途絶えてしまうことがあります。心筋梗塞のほとんどがこの動脈硬化によるものです。

塞栓症

血栓や脂肪や細菌のかたまり、腫瘍などが血流に乗って細い血管に到達して血管をつまらせることを塞栓症と言います。塞栓症が原因となって心筋梗塞が起こることは多くありませんが、心臓の中に血栓や細菌の塊(感染性心内膜炎など)、腫瘍(左房粘液腫など)が見られているときには注意しなくてはなりません。

また、動脈硬化が見られている部位にできた血栓が血流に乗って、より下流の細い血管に詰まることで心筋梗塞が起こることがあります。

冠動脈のけいれん(冠攣縮)

冠動脈がけいれんすることで冠動脈が狭くなることがあります。この場合では完全に血流が途絶えることがないため、ほとんどが心筋梗塞ではなく狭心症になります。しかし、流れが悪くなった血管の中に血栓ができると、それが下流の細い血管をつまらせることがあります。あまり頻度の高いものではありませんが、冠攣縮性狭心症(異型狭心症)と診断されている人で胸痛が長時間続く場合やニトロ製剤(硝酸薬)が効かない場合には、心筋梗塞が起こっている可能性がありますので、医療機関を受診することをおすすめします。

2. 心筋梗塞を起こしやすくなるものに気をつけよう

生活習慣や持病などで心筋梗塞が起こりやすくなることがあるため、危険なのかについて知っておくことが大切です。

この章では心筋梗塞の危険性を高めるものについて説明します。

喫煙は心筋梗塞の原因になるか?

喫煙は心筋梗塞の危険性を高めます。これはタバコを吸うことでニコチンや一酸化炭素が動脈硬化を引き起こすからと考えられています。

男女別に喫煙によってどのくらい心筋梗塞になりやすくなるかについてのデータがあるので、以下の表にまとめます。

【喫煙による心筋梗塞への影響①】

 

男性

女性

非喫煙者に対する喫煙者の心筋梗塞になりやすさ

3.64倍

2.90倍

他にも同じような報告があります。

【喫煙による心筋梗塞への影響②】

 

男性

女性

非喫煙者に対する喫煙者の心筋梗塞になりやすさ

3.39倍

8.22倍

特に女性の影響に関しては数字にばらつきがありますが、いずれの報告でも喫煙の心筋梗塞への影響は大きいです。そのため心筋梗塞を予防したい場合には禁煙することがとても大切です。最近の禁煙外来は薬物療法も非薬物療法も充実しているため、禁煙したいと考えている人は一度相談に医療機関を受診することをおすすめします。

【参考】

Cigarette smoking and risk of coronary heart disease incidence among middle-aged Japanese men and women: the JPHC Study Cohort I.

Eur J Cardiovasc Prev Rehabil. 2006 Apr;13(2):207-13

高血圧症は心筋梗塞の原因になるか?

高血圧の状態が持続すると動脈硬化を引き起こすことが分かっています。そのため高血圧症は心筋梗塞の危険性を高めると考えられています。

高血圧症がある人は高血圧症のない人に比べて、どのくらい心筋梗塞になりやすいのかを調べたデータがあるので以下に示します。

【高血圧による心筋梗塞への影響】

 

男性

女性

非高血圧患者に対する高血圧患者の心筋梗塞になりやすさ

4.80倍

5.04倍

このデータを見る限りでも高血圧症を放置しておくと心筋梗塞になりやすいことがわかります。降圧目標をどのくらいにするのかに関しては、年齢や持病の有無によっても少し異なります。

【血圧の目標】

 

医療機関での測定

自宅での測定

持病のない人(74歳以下)

140/90mmHg未満

135/85mmHg未満

持病のない人(75歳以上)

150/90mmHg未満

145/85mmHg未満

糖尿病患者

130/80mmHg未満

125/75mmHg未満

慢性腎臓病患者

130/80mmHg未満

125/75mmHg未満

脳血管障害患者

140/90mmHg未満

135/85mmHg未満

冠動脈疾患患者

140/90mmHg未満

135/85mmHg未満

これらは絶対的な数字ではありませんが、一つの目安として下さい。血圧は薬物療法・食事療法・運動療法を適切に行うことで下がります。一方で、血圧を下げれば下げるほど良いというわけではありません。一体どのくらいが自分に適しているのかについて詳しく知りたい人は、主治医や産業医などに相談してみて下さい。

【参考】

高血圧治療ガイドライン2014

Sex Differences of Risk Factors for Acute Myocardial Infarction in Japanese Patients

Circ J 2006; 70: 513-17

脂質異常症(高コレステロール血症)は心筋梗塞の原因になるか?

脂質異常症とは身体の中のコレステロールのバランスが乱れる状態のことを指します。具体的には次のことです。

  • LDLコレステロールが高値:140mg/dL以上
  • 中性脂肪が高値:150mg/dL以上
  • HDLコレステロールが低値:40mg/dL未満

脂質異常症は動脈硬化を引き起こします。心筋梗塞は動脈硬化によって起こりますので、脂質異常症がある場合にはそのままにしておくことはおすすめできません。脂質異常症がある人は脂質異常症のない人に対して1.28倍心筋梗塞になりやすいというデータがあります。

脂質異常症が背景にある人の心筋梗塞になりやすさは低リスク・中等度リスク・高リスクの3グループに分けられます。次の5つのうちいくつが該当するかによってグループ分けされます。

  1. 喫煙
  2. 高血圧症
  3. 低HDL-C血症
  4. 耐糖能異常
  5. 早発性冠動脈疾患家族歴(第1度近親者の冠動脈疾患の発症、発症時の年齢が男性で55歳未満、女性で65歳未満)

【グループ分け】

低リスクであればLDLコレステロール値160mg/dL未満、中等度リスクであれば140mg/dL未満、高リスクであれば120mg/dL未満、過去に心筋梗塞を起こしたことがある人ならば100mg/dL未満を目指して治療を行います。具体的には薬物療法・食事療法・運動療法を適切に行うことで脂質異常症を目標値まで改善します。

【参考】

虚血性心疾患の一次予防ガイドライン2012

動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017

Sex Differences of Risk Factors for Acute Myocardial Infarction in Japanese Patients

Circ J 2006; 70: 513-17

糖尿病は心筋梗塞の原因になるか?

糖尿病では血糖値が上がります。血糖値が高いとコレステロールを中心に構成されるリポ蛋白が変性しやすくなります。変性したリポ蛋白は血管の内膜にプラークを作るため、糖尿病が動脈硬化を引き起こすことが分かっています。そのため、糖尿病があると心筋梗塞になりやすくなります。糖尿病がある人は糖尿病のない人に比べて、どのくらい心筋梗塞になりやすいのかを調べたデータがあるので以下に示します。

糖尿病と心筋梗塞への影響】

 

男性

女性

糖尿病患者に対する糖尿病患者の心筋梗塞になりやすさ

2.90倍

6.12倍

特にHbA1cが8.0%を超える人や過去に虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)を罹患したことがある人は心筋梗塞になりやすいため、血糖値を正常化することが大切です。

【参考】

虚血性心疾患の一次予防ガイドライン2012

Sex Differences of Risk Factors for Acute Myocardial Infarction in Japanese Patients

Circ J 2006; 70: 513-17

高尿酸血症は心筋梗塞の原因になるか?

高尿酸血症は血液中の尿酸値が7.0mg/dL以上になる状態で、この状態が続くと足の指関節などが痛くなる痛風になります。

高尿酸血症は心筋梗塞の危険性を上昇させると考えられています。一方で、心筋梗塞の原因になるとは言い切れないという意見もあります。高尿酸血症痛風の治療ガイドラインでは、「血清尿酸値は将来における高血圧発症の独立した予測因子と捉えることが可能である。」としており、高血圧症が関与して結果的に心筋梗塞になりやすくなることが考えられます。高尿酸血症がある場合は、生活習慣を改善して尿酸値を正常化することは、メタボリックシンドローム(腹部肥満、高血圧、耐糖能異常、脂質異常症)の改善にも効果を発揮するため、心筋梗塞の予防につながると考えられます。

【参考】

高尿酸血症痛風の治療ガイドライン 第2版

Sex Differences of Risk Factors for Acute Myocardial Infarction in Japanese Patients

Circ J 2006; 70: 513-17

ストレスは心筋梗塞の原因になるか?

ストレスが心筋梗塞の危険性を高めると考えられています。特に仕事上のストレスは健康状態に関与することが多いので、職場で心身にストレスを感じる人は働き方を見直す必要があります。場合によっては産業医に相談すると良いかもしれません。

また、適度な運動を行うこともとても大切です。適度に身体を動かすことで、心筋梗塞の予防効果が期待できます。

【参考】

虚血性心疾患の一次予防ガイドライン2012

Job Strain and Risk of Acute Recurrent Coronary Heart Disease Events

JAMA. 2007;298(14):1652-60

Physical Activity and Reduced Risk of Cardiovascular Events: Potential Mediating Mechanisms

Circulation. 2007;116(19): 2110-8

身内に冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)を罹患した人がいると心筋梗塞になりやすいか?

身内に冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)を罹患した人がいる場合には心筋梗塞になりやすくなります。実際の数字では1.84倍心筋梗塞になりやすくなるという報告があります。身内に冠動脈疾患を罹患した人がいる場合には注意が必要です。規則正しい生活を心がけることと持病がある場合には治療を欠かさないようにすることを心がけるようにして下さい。

【参考】

虚血性心疾患の一次予防ガイドライン2012

Sex Differences of Risk Factors for Acute Myocardial Infarction in Japanese Patients

Circ J 2006; 70: 513-17

アルコールは心筋梗塞の原因になるか?

アルコールは心筋梗塞の原因とはならないと考えられています。しかし、過度な飲酒は心臓に負担がかかるため避けるようにして下さい。量が過ぎれば治療の妨げになる可能性があるので禁酒するのが望ましいです。

3. どんな生活を心がければ良いのか

心筋梗塞のリスクがある人や心筋梗塞の予防に努めたい人は次のことを心がけるようにして下さい。

  • 適度な運動を行う
  • 乱れた食生活を避ける
  • 過度な飲酒を避ける
  • 喫煙習慣がある場合は禁煙する
  • 持病(特に高血圧症脂質異常症糖尿病高尿酸血症)の薬を飲むのを忘れない
  • 適度なストレス発散を心がける
  • 仕事が大変なときは産業医に相談する

また、体調がおかしいなと思った場合には心筋梗塞が疑わしい症状がないかを確認するようにして下さい。(心筋梗塞の症状に関してはこのページで詳しく説明しています。)もし、疑わしい症状がある場合には医療機関を受診して下さい。