2015.06.18 | ニュース

トランス脂肪酸は本当に悪玉なのか?

ドイツから、有機農法との関係をふまえ
from Critical reviews in food science and nutrition
トランス脂肪酸は本当に悪玉なのか?の写真
(C) Stephen VanHorn - Fotolia.com

マーガリンなどに使われている「トランス脂肪酸」は虚血性心疾患などを増やすと言われ、米食品医薬品局(FDA)は食品にトランス脂肪酸を添加することを禁止するプランを発表しました。トランス脂肪酸と健康の関係には多くの研究がありますが、ここではトランス脂肪酸と言ってもさまざまな種類の物質が含まれうることを強調したドイツの論文を紹介します。ある種類の物質はむしろ健康に有益であることが主張されています。

◆動物由来と工業由来の区別

著者らは次のように主張します。

食品と健康への影響に関するトランス脂肪酸(TFA)の定義と評価は一定していない。[...]反芻動物由来のTFA(R-TFA)と、工業的に合成されたTFA(反芻動物由来でない、I-TFA)という区別を明示するべきだ。反芻動物由来の脂肪においては、R-TFAの50%よりも多くがバクセン酸(C18:1 t11)から成る。さらに、天然の共役リノール酸、すなわちシス9-トランス11共役リノール酸も含まれている。これらはともに有機農法の産物の中で増加するものである。

トランス脂肪酸(TFA)の中でも、食品を工業的に加工する過程で発生する「I-TFA」と、牛などの動物の体に由来する「R-TFA」を別に考えるべきとしたうえ、R-TFAには有機農法によって増加するものも含まれていることを指摘しています。

 

◆動物由来のものは無害?

さらに、R-TFAを有害と判断できる根拠はないという主張を続けています。

トランス11はいくつかの研究において健康上の有益な効果を現している。さらに、牛乳の脂肪に含まれる共役リノール酸はアレルギー喘息の予防と関連する。R-TFAだけに関するわずかな研究の解析から、有害な生理的影響と確信できる事象をR-TFAに帰することはまったくできないことがわかる。極端に高いR-TFAの摂取が血中の脂質に有害な変化を起こすだけである。

R-TFAに多く含まれている「トランス11」という種類の脂肪酸については、むしろ有益とする報告があることにも触れています。この点をふまえ、ヨーロッパでのR-TFAの規制について、次のように述べています。

R-TFAの規制がなされることがあれば、正当な理由なく、牛乳の有機農法に悪い影響を現すだろう。

著者らはR-TFAの規制によって農業に悪影響が出ることを危惧しています。

 

FDAの決定は正確には「部分水素化された油脂(partially hydrogenated oils )」に対するものであって、かつその物質を食品に添加することを問題にしています。一口に「トランス脂肪酸」と言っても、今回紹介した論文のような論点もあるようです。

 

興味のある方は、FDAのニュースリリース原文も参考にご覧ください。

"The FDA takes step to remove artificial trans fats in processed foods"

http://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/ucm451237.htm

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Evaluation of the Impact of Ruminant trans Fatty Acids on Human Health: Important Aspects to Consider.

Crit Rev Food Sci Nutr. 2015 Mar 6 [Epub ahead of print]

 

[PMID: 25746671]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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