じんじょうせいかんせん
尋常性乾癬
皮膚が赤褐色になったり、表面に白い垢のようなものが厚く付着したりする病気。その一部がボロボロと剥がれ落ちるのが特徴
6人の医師がチェック 113回の改訂 最終更新: 2023.11.02

尋常性乾癬の基礎知識

POINT 尋常性乾癬とは

主に肘や膝、お尻、頭の皮膚が赤茶色になったり、表面に厚い白い垢が付着する病気です。皮膚の病変(病気の部分)は一部がボロボロと剥がれ落ちる特徴があり、病変部は少しずつ大きくなります。詳しい原因は分かってはいませんが、免疫の異常と関係していると考えられています。ダーモスコピー(医療用の虫眼鏡)や組織診(病変部を切除し顕微鏡で見る検査)で診断が行われます。ステロイドやビタミンDが含まれた塗り薬や光線療法、免疫抑制作用のある飲み薬が治療に使われます。感染症をきっかけに悪化することがあるので、尋常性乾癬と診断された人は特に感染症にかからないように気をつけることが大事です。尋常性乾癬が心配な人は皮膚科を受診してください。

尋常性乾癬について

  • 赤茶色の発疹が 全身にできる病気
  • 免疫異常が病気の発症と関係していると考えられている
  • 肥満脂質異常症などいわゆる生活習慣病の人に多い
  • 欧米白人では有病率3%、日本人では0.1%
  • 乾癬には、尋常性乾癬以外にも以下のような種類がある
  • 乾癬感染症ではなく、周囲へうつることはない

尋常性乾癬の症状

  • 表面に白い垢が付着した赤茶色の発疹ができる
    • その一部がボロボロと剥がれ落ちるのが特徴
  • 発疹はよく擦れる部位である、肘、膝、腹、尻、頭などにあらわれやすい
  • 爪の形がおかしくなったり、 関節の痛みがあらわれることもある

尋常性乾癬の検査・診断

  • ダーモスコピー
    • 強力に拡大できる虫めがねのようなものでくまなく調べる検査
  • 組織診
    • 治療の効果がみられない場合や、経過の長い場合に発疹の一部を切除して顕微鏡で検査する
  • 血液検査
    • 糖尿病や肝臓の病気を合併している可能性が疑われる場合などにそれらを検査する
  • 乾癬性関節炎を疑うような関節の痛みがあれば画像検査(X線写真など)を行う

尋常性乾癬の治療法

  • 外用治療が始めに考慮される
  • 症状の範囲が広い場合には、内服薬や光線療法、さらには下記のような生物学的製剤、分子標的抗リウマチ薬が使用される
  • 生物学的製剤、分子標的抗リウマチ薬は効果は高いが、高額な治療になる
    • 外用薬
      • ステロイド薬
        • 炎症を抑え、症状を和らげる
      • 活性型ビタミンD3外用薬
        • 皮膚の過剰な増殖を抑える作用がある
    • 光線療法
      • 紫外線の照射が有効
    • 内服薬
      • エトレチナート(商品名チガソン)
      • シクロスポリン(商品名ネオーラルなど)
      • メトトレキサート(商品名リウマトレックスなど)
    • 生物学的製剤
      • インフリキシマブ(商品名レミケードなど)
      • アダリムマブ(商品名ヒュミラ)
      • セルトリズマブペゴル(商品名シムジア)
      • ブロダルマブ(商品名ルミセフ)
      • イキセキズマブ(商品名トルツ)
      • セクキヌマブ(商品名コセンティクス)
      • ウステキヌマブ(商品名ステラーラ)
      • グセルクマブ(商品名トレムフィア)
      • リサンキズマブ(商品名スキリージ)
      • チルドラキズマブ(商品名イルミア)
    • 分子標的抗リウマチ薬
      • オプレミラスト(商品名オテズラ)
  • 感染症をきっかけに悪化することがあるので、感染症にかからないように予防することも重要である

尋常性乾癬に関連する治療薬

活性型ビタミンD3製剤(外用塗布薬)

  • 乾癬の症状が出ている皮膚の細胞増殖を抑え、皮膚の赤みや盛りあがり、かさぶたが剥がれ落ちるなどの症状を和らげる薬
    • 乾癬では免疫異常などにより、皮膚の赤みや角質層が厚くなるなどの皮膚症状があらわれる
    • 乾癬の皮膚症状は表皮の過剰増殖や体内の炎症物質などによっておこるとされる
    • 本剤は活性型のビタミンD3製剤であり、皮膚の過剰な細胞増殖や炎症などを抑える作用をあらわす
  • 乾癬の他、魚鱗癬や掌蹠膿疱症などに使用する製剤もある
活性型ビタミンD3製剤(外用塗布薬)についてもっと詳しく

副腎皮質ホルモン(ステロイド外用塗布剤・噴霧薬など)

  • 抗炎症作用や免疫抑制作用などにより、皮膚炎などにおける湿疹、痒み、赤みなどを和らげる薬
    • アレルギー性の皮膚症状は何らかの原因によりアレルギー反応がおこり湿疹や痒みなどがあらわれる
    • 副腎皮質ホルモンは抗炎症作用、免疫抑制作用、細胞増殖抑制作用、血管収縮作用などをもつ
    • 本剤は副腎皮質ホルモンを元に造られたステロイド外用薬
  • 乾癬などの免疫異常による皮膚症状の治療に使用される場合もある
  • 本剤は作用の強さによって大きく5段階に分類される
    • 作用の弱い順に、V群(ウィーク)、IV群(マイルド)、III群(ストロング)、II群(ベリーストロング)、I群(ストロンゲスト)に分けられる
  • 本剤の剤形には、軟膏剤、クリーム剤、液剤などがあり薬剤によっては用途などに合わせた選択が可能な場合もある
副腎皮質ホルモン(ステロイド外用塗布剤・噴霧薬など)についてもっと詳しく

ブロダルマブ(ヒト型抗ヒトIL-17受容体Aモノクローナル抗体)製剤

  • 体内で産生されるインターロイキン(IL)-17の働きを抑えることで乾癬による皮膚症状や関節炎などを改善する薬
    • 乾癬は紅斑、銀白色の鱗屑(りんせつ)(及び鱗屑がボロボロと剥がれ落ちる落屑)などの皮膚症状があらわれ、場合によっては関節炎などがあらわれることがある
    • 乾癬の原因は詳細には解明されていないが、免疫異常や遺伝的な要因などの他、IL-17という体内物質が関与していると考えられている
    • 本剤はIL-17の働きを抑えることで乾癬の改善作用をあらわす
  • 本剤は特定物質(IL-17受容体A)に結合するモノクローナル抗体の製剤
  • 強直性脊椎炎や体軸性脊椎関節炎などに使われる場合もある
ブロダルマブ(ヒト型抗ヒトIL-17受容体Aモノクローナル抗体)製剤についてもっと詳しく

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