2016.09.30 | ニュース

20代で指の骨が破壊される「乾癬性関節炎」、新薬アプレミラストの効果は?

484人で検証

from The Journal of rheumatology

20代で指の骨が破壊される「乾癬性関節炎」、新薬アプレミラストの効果は?の写真

乾癬性関節炎は若い人に多い病気です。手の指などの関節に炎症を起こし、骨を破壊します。原因は自己免疫と考えられています。ほかの薬を使っても症状が続いている人に、アプレミラストが効果を現したことが報告されました。

世界の99施設で行われた研究の結果が、専門誌『Journal of Rheumatology』に報告されました。
この研究は、以前にほかの薬で治療を受けている乾癬性関節炎の患者を対象に、新薬のアプレミラストで治療する効果を調べています。

 

乾癬は皮膚にガサガサした変化を現す病気です。原因は自己免疫と考えられています。つまり、免疫が異常に働いて自分自身の体を攻撃してしまう病気です。

乾癬の患者の数%程度が、乾癬性関節炎と呼ばれる状態になります。乾癬性関節炎では手の指などの関節に炎症が起こり、進行すると骨が破壊されます。20代ごろの若い人に多く発生します。

 

現在使われている治療のひとつが、DMARDsと呼ばれる種類の薬です。DMARDsは免疫を弱くすることで関節炎を抑えます。ここで紹介する研究では、6か月以上乾癬性関節炎が続いていて、以前にDMARDsの治療を受けたことがある人が対象とされました。

対象者はランダムに3グループに分けられました。

  • アプレミラスト20mgを1日2回飲むグループ
  • アプレミラスト30mgを1日2回飲むグループ
  • 有効成分のない偽薬を飲むグループ

治療によって、痛みのある関節や腫れのある関節の数が20%以上減るなどの基準(ACR20)が達成されるかを判定しました。

 

治療から次の結果が得られました。

ITT対象集団(484人)において、治療16週におけるACR20は、偽薬群(18.9%)よりもアプレミラスト20mg1日2回の群(37.4%、P=0.0002)およびアプレミラスト30mg1日2回の群(32.1%、P=0.0060)で多く達成された。

最も多い有害事象は下痢、吐き気、頭痛、上気道感染症だった。

アプレミラストを飲んだ2グループのどちらでも、偽薬のグループより多く、ACR20の基準を満たす改善がありました。

副作用の可能性があることとして、下痢、吐き気、頭痛、風邪のような感染症が見られました。

 

乾癬性関節炎を確実に治せる方法は見つかっていません。DMARDsなどで効果が出る人もいますが、いろいろな薬を試しても重い症状に苦しむ人もいます。新しい治療法が加われば、ほかの薬では改善しなかった人の役に立つかもしれません。

アプレミラストは現在(2016年9月)、日本で「尋常性乾癬および関節症性乾癬」に対して承認申請中です。近い将来、実際の治療で使われる可能性があります。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

A Phase III, Randomized, Controlled Trial of Apremilast in Patients with Psoriatic Arthritis: Results of the PALACE 2 Trial.

J Rheumatol. 2016 Sep.

[PMID: 27422893]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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