2015.12.06 | コラム

ステロイド外用剤の“副作用”って??

ステロイド外用剤の適正使用〔その②〕
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ステロイドと聞くとなんとなくマイナスなイメージがあるかもしれませんが、医療用のステロイドの多くは私たちの体内で作られている副腎皮質ホルモンのコルチゾールを元に造られた薬です。コルチゾールは抗炎症作用、免疫抑制作用、血管収縮作用など多様な作用をもち生体維持に欠かせないホルモンです。

多くの有益な作用の反面、体内に必要以上にある状態などでは不利益を生じる場合があり高血糖、脂質異常、骨や軟骨の発育障害などの全身症状を引き起こす可能性が考えられます。これらの全身症状が内服薬や注射剤のステロイドによる主な副作用として注意すべきことになりますが、それでは塗り薬などのステロイド外用剤で注意すべき副作用とはどのようなものなのでしょうか?

 

◆ステロイド外用剤の注意すべき副作用

医療用のステロイドの中でもステロイド外用剤(注射剤を除く)は皮膚炎などがおこっている部位に局所的に効果をあらわすように造られた薬であり、内服薬や注射剤を使用した時のような全身への副作用症状があらわれることは稀とされています。(ベリーストロングクラスのステロイド外用剤の長期試験結果においても、症状に合わせて漸減するなど適切に使用した例においては不可逆性の全身的な副作用は生じないことがわかっています。)

しかし全身的な副作用がおこらなかったとしても使用している局所への副作用がゼロというわけではありません。特に症状や使用部位などに対して適切でない強さのステロイド外用薬を使用したり、ただやみくもに長期に渡って継続使用することなどにより、ステロイド外用剤による特徴的な副作用がおこる場合もあります。以下におこる可能性がある副作用の例を挙げてみました。

 

・皮膚の色素消失

部分的に皮膚の色が抜け落ちることです。時々「ステロイド外用剤を使うと皮膚の色が黒くなるの?」という質問を受けることがありますが、黒くなるのは皮膚の炎症による色素沈着です。炎症で赤くなっているときは目立ちませんが、治療により炎症がとれると黒く見えます。ステロイド外用剤を使用しているとメラニンという色素の産生を抑えるため肌の色はむしろ部分的に白っぽくなります。

 

・皮膚萎縮

ステロイド外用剤により、表皮の細胞増殖を抑える作用などにより皮膚が薄くなり、真皮の血管が浮き出る状態になる場合があります。特に強いステロイドを長期間、連続的に塗った場合にあらわれやすくなるとされ、皮膚の表面に細かいしわが生じるようになった場合は特に注意が必要です。

 

・顔に赤く血管が浮いて見える(酒さ様症状)

顔は皮膚が薄いため元々薬の吸収がよく、ステロイド外用剤の作用により更に皮膚が薄くなる場合があります。これにより血管が浮き上がり赤くみえるようになるのです。通常、顔などの皮膚の薄い場所には作用が比較的弱めのステロイド外用剤を用いるためこの副作用がおこることは稀とされますが、長期に渡り不適切にステロイド外用剤が使用された場合などにおいてはおこる可能性が高くなります。

 

ざ瘡(ステロイドざ瘡

ステロイド外用剤により脂腺や毛包の働きが変調し、にきびざ瘡)が生じる場合があります。特に思春期や青年期には注意が必要とされています。

 

感染症

ステロイドの免疫抑制作用により、細菌感染を悪化させたり、脂漏性湿疹水虫、ヘルペスなどの菌やウイルスによる感染症を発症したり悪化させたりする場合があります。(但し、一部の皮膚感染症において炎症を緩和させるため、一時的にステロイド外用剤が抗菌薬や抗真菌薬と併用される場合などもあります)

 

その他、血管が弱くなることによってあざができる(ステロイド紫斑)、男性ホルモンの様な作用により使用部位における多毛、表皮細胞増殖抑制作用などにより皮膚が乾燥しカサつく乾皮症などがあり注意が必要です。

しかし、前述したようにステロイド外用剤は元々私たちの体内で作られているホルモンを元に、全身作用を軽減させ局所的に効果をあらわすように造られた薬です。現在、ステロイド外用剤はアトピー性皮膚炎尋常性乾癬など様々な皮膚疾患に対して使用されており必要不可欠な薬剤の一つとなっています。適切な診断のもと、適切な強さの薬を適切な期間使用すれば有益な治療効果が得られることが多い薬剤なのです。

 

◆ステロイドに対する誤解が招く不利益と適正使用の重要性

1990年代、アトピー性皮膚炎に対してステロイド外用剤を使用する治療は誤りである…という風潮が一時あり、これによってステロイド外用剤が適切に使用されなかった結果、皮膚炎の症状を悪化させてしまうということがありました。近年ではステロイドへの誤解がかなり少なくなってきており、ステロイド外用剤に関しても正しい認識のもとでの適正使用が広く行われています。しかしながら先ほど挙げたように「使用すると皮膚が黒くなる」などの誤解が未だにあるのも事実です。

現在は皮膚疾患に対する製剤の種類も更に増え、例えば炎症性皮膚疾患に対して免疫抑制薬であるタクロリムス水和物(商品例:プロトピック®軟膏)などの薬剤も選択肢に加わり、より患者の症状・体質などに合わせた治療ができるようになっています。また乾燥などから皮膚を守る保湿剤においてもスプレータイプの製剤が発売されるなど、スキンケアなどに対しての選択肢も広がってきています。

それでも皮膚疾患に対してステロイド外用剤が重要な薬剤であることは変わりません。もちろん副作用は注意すべきですが、例えば乾皮症などは保湿剤を併用したり空調を調節し空気の乾燥を避けるなどによって防げたり症状を緩和することもできます。正しい認識のもと適切にそして有効的に使用するため、ステロイド外用剤を使用するにあたり心配なことがある場合は事前に医師や薬剤師に相談しておくとよいでしょう。

執筆者

中澤 巧

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。