きゅうせいいちょうえん
急性胃腸炎
下痢・吐き気・腹痛などを起こす病気。食中毒やほかの患者からうつることが原因。抗生物質が効くのは一部の場合だけでほとんどは自然に治る
21人の医師がチェック 195回の改訂 最終更新: 2024.02.21

急性胃腸炎の基礎知識

POINT 急性胃腸炎とは

急に胃腸に炎症が起こることで、下痢や腹痛などが突然出現する病気です。原因はウイルス感染や細菌感染が多いです。主な症状は下痢・嘔吐・発熱などですが、これらの症状は脱水を起こすため注意が必要です。脱水が悪化した場合はボーッとしたりすぐに寝てしまったりするようになるため、意識が変だなと思った場合は、医療機関を受診するようにして下さい。感染者が子どもである場合は小児科を受診し、大人である場合は内科あるいは消化器内科を受診して下さい。

急性胃腸炎について

  • 急に出現する下痢・嘔吐・腹痛などを起こす病気
  • ほとんどの急性胃腸炎は病院に行かなくても自然に治る
  • 主な原因は細菌ウイルスの2種類
    • 細菌が原因の急性胃腸炎のことを細菌性胃腸炎、ウイルスが原因の急性胃腸炎のことをウイルス性胃腸炎と呼ぶ
    • 乳幼児の急性胃腸炎はほとんどがウイルス性胃腸炎
    • 年長児では細菌性胃腸炎の割合が増える
  • ウイルス性胃腸炎の特徴
    • 数日間で自然に治ることが多い
    • 人から人へうつる場合と食べ物から感染する場合とがある
    • 人から人へうつる場合は吐物や糞便を介してうつる
    • 吐物や糞便処理後の手洗いが不十分であったり、乾燥して成分の一部が空気中に漂ったものを吸い込むことで感染する
    • 感染力が非常に強く、家庭内や保育園・学校生活で容易に感染する
    • 子どもや高齢者は嘔吐や下痢で容易に脱水になるため注意が必要(次の症状がある場合には医療機関にかかる必要がある)
      • 意識がもうろうとする
      • 脈が速い
      • 口が乾いて仕方がない
      • 汗が全く出ない
      • 尿がほとんど出ない
    • 急性胃腸炎の原因になるウイルスにはたくさんの種類がある
      • ノロウイルス(牡蠣などから感染)、ロタウイルス、アデノウイルスなど
      • 原因ウイルスの種類によらず、抗生物質は効かない
      • ウイルスの種類名はあまり重要ではない
    • 治療は水分補給などの対症療法しかない
    • 感染対策として手洗いと生活環境から汚物の隔離を行う
  • 細菌性胃腸炎の特徴
    • ウイルス性胃腸炎よりも重症化しやすい
    • ウイルス性胃腸炎と比べると頻度は低い
    • 病原性大腸菌O-157などは細菌性胃腸炎に含まれる
    • 急性胃腸炎の原因になる細菌の例
      • カンピロバクター
      • 大腸菌(普通の大腸菌は病気を起こさないが、O-157などは食中毒を起こす)
      • 黄色ブドウ球菌
      • サルモネラ菌
      • セレウス菌
      • ウェルシュ菌
      • 赤痢菌
    • O-157、黄色ブドウ球菌、セレウス菌、ウェルシュ菌による食中毒は細菌が作る毒素が原因
      • 潜伏期間は短い(数時間から1日程度)
      • 抗生物質で細菌を殺しても毒素がなくならないので症状は治まらない
    • カンピロバクター、サルモネラ菌、赤痢菌は潜伏期間が数日程度
    • 重症の場合には抗生物質を使うこともあるが、必要性については意見が分かれる
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急性胃腸炎の症状

  • 下痢・嘔吐
    • 水分や食べ物を少し口にする度に水や泥のような便をしたり、激しく嘔吐したりする
  • 熱はある場合とない場合がある
  • 下痢が続くと、腸の粘膜が傷ついて血液が便に混じることがある
  • 脱水(特に年少児で十分な注意が必要)
    • 唇が乾燥する
    • 尿が少なくなる
    • 大泉門がへこむ
    • 進行するとぐったりしたり、逆に興奮したりする
    • 重症になると意識障害(ぼんやりする、もうろうとする)やけいれんなどがみられることもある
症状の詳細

急性胃腸炎の検査・診断

  • 問診(病気になる前の生活の状況を詳しく聞く)
    • 何を食べたか
    • 数週間以内に海外旅行をしていないか
    • 周りに同じような症状の人がいないか
  • ウイルス性胃腸炎の可能性が高いと考えられた場合
    • 症状の問診と体の状態の診察から診断される
    • 流行状況を知る目的や感染管理をする目的で便中のウイルス検査をすることもある
    • 基本的に血液検査は必要ない
      • 脱水が疑われる場合や、細菌性が疑われ症状が強い場合などは行う(細菌が血液の中に混じることがあるため)
  • 便に大量の血液が混じる場合もしくは海外から帰国後数週間以内に下痢が出現した場合
    • 細菌検査:便の中に急性胃腸炎の原因となる細菌がいるかなどを調べる
検査・診断の詳細

急性胃腸炎の治療法

  • ウイルス性・細菌性どちらの場合も最も重要なことは脱水を避けること
    • 子どもは大人と比べて脱水になりやすい
  • ウイルス性胃腸炎の治療
    • 根本的な治療薬はない
    • 症状を和らげる治療薬を使うことがある
      • 整腸剤
      • 吐き気止め
      • 解熱薬
    • 下痢止めが処方されることは少ない
      • 一般的には「腸の中にいるウイルスを体の外へ出し切ってしまうべき」と考えて、下痢はあえて止めない方が良いと考えることが多い
    • 吐き気止めの例:ドンペリドン(商品名ナウゼリンなど)
      • 「1歳以下の乳児には用量に注意し、3歳以下の乳幼児には7日以上の連用を避ける」と決められている
      • 副作用でまれに意識障害、けいれん、錐体外路症状(筋肉が震えたり動きにくくなったりするような異常)などが起こるため注意が必要
    • 解熱薬の例:アセトアミノフェン(商品名カロナールなど)
      • アセトアミノフェンは解熱薬の中でも比較的副作用が少なく子どもにも使える
      • 市販薬にも小児用バファリンCIIなどアセトアミノフェンを主成分とする薬は多い
  • 細菌が原因の場合
    • 原因となる細菌の種類や症状の程度によって抗菌薬が推奨される場合とされない場合がある
    • 細菌の種類によって効く抗菌薬も異なる
  • 脱水を避けるため、少量ずつでも水分をとりつづけることが大切
  • 特に小児では経口補水療法が推奨されている
    • 水分、塩分、糖分の配合バランスを調整した飲料(経口補水液)を口から飲ませることで、脱水状態からの回復や予防を図る
    • 最初から大量に飲むと吐いてしまうので、最初は欲しがっても少量のみ飲料を与える(ペットボトルのキャップ1杯程度)
    • 数分間隔をあけて嘔吐がないことを確認したら、また少量水分を与える
    • 症状が落ち着くまで根気強く繰り返し与える
  • 水分をとって数時間症状が落ち着いていれば、固形物を少しずつ摂取してもよい
    • その際はからいもの・すっぱいもの・味の濃いものなどは避ける
    • 普段よりも柔らかくする必要はない   離乳食であればいつも通りのかたさ、大人と同じ食事ができる年齢であれば普通の食事でよい
    • 柑橘系の果物・果汁や乳製品は症状が落ち着くまで可能な限り避ける   母乳や普段飲んでいる粉ミルクは続けてよい
    • 普段より食欲が落ちていることが多いので、食べやすいものだけでもよい
    • 水分がある程度とれていればよい
  • ごく少量の水分でも嘔吐・下痢がみられる場合や、脱水が進んでいる場合には入院が必要となることもある
  • ロタウイルスの感染はワクチンで予防できる(生後6週以降で2回または3回の任意接種)
  • 胃腸炎をきっかけに腸管同士が重なる腸重積という病気を起こすことがある
    • 胃腸炎の経過中に、イチゴゼリーの様な便がみられた場合や突然泣いたり泣き止んだりを繰り返す場合には腸重積も考える
治療法の詳細

急性胃腸炎に関連する治療薬

整腸剤

  • 腸内環境を整えることで下痢、便秘、腹部膨満などの消化器症状を改善する薬
    • 腸内には多くの細菌が生息していて、何らかの原因により細菌の集団のバランスが崩れ異常をきたすと下痢や便秘などの症状があらわれる場合がある
    • 本剤は乳酸菌などを含む製剤で腸内細菌の環境を整える作用をあらわす
  • 本剤の中には抗菌薬投与時に使用される製剤(抗菌薬耐性乳酸菌製剤など)もある
整腸剤についてもっと詳しく

急性胃腸炎の経過と病院探しのポイント

急性胃腸炎が心配な方

いわゆる「お腹のかぜ」の一つとして、腹痛があって水のような下痢が止まらず、嘔吐や熱が出たりするのが急性胃腸炎です。有名なものではノロウイルスやロタウイルスによる感染症も急性胃腸炎の一種です。

上記のような症状に該当してご心配な方は内科、消化器内科、小児科のクリニックでの受診をお勧めします。ただし、急性胃腸炎の大半には特効薬がないため、医療機関を受診しても熱冷ましや整腸剤など、ドラッグストアで購入できる市販薬と同じような薬を処方することしかできません。軽症であれば自宅で安静にして、脱水にならないよう水分摂取をこころがけるというのも対処法の一つです。

急性胃腸炎という言葉は二通りの使われ方をしています。胃腸に炎症があることを、重症の特殊な感染症から軽症のものまですべて含めて「急性胃腸炎」と呼ぶ場合と、いわゆる「おなかのかぜ」のような、発熱、嘔吐、下痢、腹痛のような症状を来たした状態を「急性胃腸炎」と呼ぶ場合です。ここでは後者について解説していますが、この場合の急性胃腸炎については特に専門的な医療機関での診療を必要としません。

急性胃腸炎は、問診と診察で診断をする病気です。採血やレントゲンは、他の病気ではないことを確かめるために使うことができるかもしれませんが、それ以外の意味では診断の参考には残念ながらなりません。

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急性胃腸炎でお困りの方

急性胃腸炎の多くには抗生物質(抗菌薬)が効かず、薬で治すことができません。対症療法として熱冷ましや整腸剤を処方されることが目的であれば、医療機関を受診するよりもスーパーやコンビニエンスストアで購入できる市販の医薬品で様子を見る(セルフメディケーション)方が負担が少ないこともあるでしょう。

病院で処方される薬と市販の薬では、急性胃腸炎に限って言えば効果にあまり差がありません。病院で処方される医薬品の成分は、発熱や関節痛に対するものであればアセトアミノフェンやロキソプロフェン、整腸剤であればビフィズス菌配合錠といったものがあります。市販薬でもこれらの成分を含むものが多くありますので、選ぶ際の参考にされてみてください。ここに挙げたのはあくまでも一部の例であり、これ以外の成分であってももちろん効果があります。

子どもの胃腸の場合は以下のことに注意して下さい。
 ・尿が半日以上でない
 ・オムツからはみ出るくらいの多量の下痢便が、1時間に1回以上のペースか、1日10回以上のペースで出る
 ・経口補水療法をしても、吐いたりぐったりして全く水分がとれない
これに該当するものがあれば病院を受診すると良いでしょう。

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