かんぴろばくたーちょうえん
カンピロバクター腸炎
カンピロバクター属の細菌による腸の感染症で、細菌性腸炎の中では最も高頻度である
4人の医師がチェック 42回の改訂 最終更新: 2017.12.06

カンピロバクター腸炎の基礎知識

POINT カンピロバクター腸炎とは

カンピロバクター属の細菌による感染症です。カンピロバクター属の混入した食品を摂取することで感染します。多くの場合は、鶏肉の加熱不足によって起こります。主な症状は、高熱・下痢・血便・腹痛・悪心・嘔吐になりますが、症状は数日で治まることが多いです。 便中に感染しますがいることが確認できれば診断となりますが、症状と経過からカンピロバクター腸炎と推測されることがあります。症状が重くなければ治療の必要はありませんが、重症になっている場合には抗菌薬を用います。カンピロバクター腸炎が心配な人や治療したい人は、消化器内科や感染症内科を受診して下さい。

カンピロバクター腸炎について

  • カンピロバクター属の細菌による腸の感染症
    • 菌の混入した飲食物を摂取することで感染する
    • 潜伏期間は2-5日間と考えられている
  • 感染源の多くはトリ肉とその加工品
    • 食肉の加熱不足や調理過程が多い
    • 井戸水やキャンプ場の飲料水などの水からの感染や、ペットからの接触感染もある
  • 頻度(発生率、罹患率、患者数など)
    • 食中毒統計では毎年2,000-3,000人が発症しており、細菌性腸炎のなかでは最多である
  • 免疫正常者では自然回復することが多いが、まれに重症化して以下の合併症を起こすことがある
    • 菌血症
    • 心内膜炎
    • ギランバレー症候群

カンピロバクター腸炎の症状

  • 発熱
    • 38℃程度の発熱が約90%に認められる
  • 下痢、血便
    • 下痢はほぼ全例に確認され、約90%は水様便、約40%は血便
  • 強い腹痛、嘔吐
  • 症状は数日で治まることが多い
    • 1-2週間続くこともある

カンピロバクター腸炎の検査・診断

  • 症状と経過から推測されて治療が開始される場合がある
  • 便検査で、便中にいるカンピロバクターが確認できれば診断が確定される
    • 小さなかもめのような形をしたグラム陰性桿菌である

カンピロバクター腸炎の治療法

  • 特別な治療を行わなくても、自然治癒する場合が多く、水分補給や食事療法などの対症療法が基本
    • 脱水にならないように、こまめな水分補給や必要によっては点滴を行う
    • 食事は症状が安定するまで極力控え目にし、消化の良いおかゆなどを中心にする
  • 症状が強く、重症化が懸念される場合にのみマクロライド系やテトラサイクリン系の抗菌薬による治療を考慮する
    • ニューキノロン系抗菌薬に対して耐性菌が増えており、治療選択順位の上位には来ないと考えられている
    • 下痢止めは経過を悪化させる場合もあるために使用しない
    • 消化機能と腸内環境回復のために消化薬や整腸剤を用いることもある

カンピロバクター腸炎に関連する治療薬

マクロライド系抗菌薬

  • 細菌のタンパク質合成を阻害し細菌の増殖を抑えることで抗菌作用をあらわす薬
    • 細菌の生命維持や増殖にはタンパク質合成が必要となる
    • タンパク質合成はリボソームという器官で行われる
    • 本剤は細菌のリボソームでのタンパク質合成を阻害し細菌の増殖を抑える
  • マイコプラズマやクラミジアなどの菌に対しても高い抗菌作用をあらわす
  • 服用する際、比較的苦味を強く感じる場合がある
マクロライド系抗菌薬についてもっと詳しく

カンピロバクター腸炎の経過と病院探しのポイント

カンピロバクター腸炎が心配な方

カンピロバクター腸炎は、ノロウイルスに並んで国内で最も多い食中毒の一つです。市販されている食肉に菌が付着していて不十分な加熱で摂取した場合や、鶏、牛の肉やレバーを生で摂取したりした場合に多いです。主な症状はその他の一般的な食中毒と同じで、嘔吐、腹痛、下痢、血便、熱といった症状が出現します。このような症状が出た場合、そして特に、同じものを食べた方にも同様の症状が出ている場合にはカンピロバクター腸炎を始めとする食中毒の可能性が考えられます。

カンピロバクター腸炎を疑った場合には、まずはお近くの内科のクリニックを受診するようにしましょう。一般内科でも良いですし、その中でも絞り込むのであれば消化器内科が専門の診療科です。

診断は便からカンピロバクターが検出されるかどうかで確定します。しかし多くの医療機関で行われる検査は、すぐに結果が出るものではありませんので、検査を行うことなく「カンピロバクター腸炎の疑い」または「感染性胃腸炎の疑い」といった暫定的な診断で治療を行います。このような腸炎の多くは抗菌薬の使用で改善しますので、原因がカンピロバクターだということが分からなくても結果的には治ってしまう場合もあります。ただし、抗菌薬が効かない腸炎や抗菌薬を使用しない方が良い腸炎もあるため、症状や経過から大きな方向性(細菌性かウイルス性か、検査を行って病原体を突き止める必要性がどの程度高いかなど)を判断するのが医療機関の主な役割となります。

この判断をする上で、どこで感染したかという情報がとても大切ですので、直近でどのような食事をとったか、周囲で他に症状のある人はいないか、海外旅行後の方はいつからいつまでどこに滞在していたかを医師にぜひ伝えてください。

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カンピロバクター腸炎でお困りの方

カンピロバクター腸炎の場合に気をつけなければならないのが、脱水からの衰弱を予防することです。下痢が治まらないことで体の水分が失われ、また吐き気や食欲不振によって水分摂取量も減ってしまいます。すると脱水になって余計に食欲がなくなるという悪循環に陥ってしまいます。

脱水症の治療は、不足している水分に加えて塩分もしっかりと摂取することです。スポーツドリンクを飲むことができればそれが最も適切な治療になりますし、スポーツドリンクでは塩分がまだ薄いため、食塩を溶かして飲むのも良いでしょう。塩辛くて飲めないほどにする必要はありませんが、ほんのり塩の味を感じるくらいだとより適切です。どうしても口から飲めない方の場合には入院の上で点滴を行い、必要な量の水分をとるようにします。

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