2015.06.19 | ニュース

食品のカンピロバクター汚染はどこで起こったのか

イギリス2011年の流行から学ぶこと
from Clinical infectious diseases : an official publication of the Infectious Diseases Society of America
食品のカンピロバクター汚染はどこで起こったのかの写真
(C) decade3d - Fotolia.com

カンピロバクターという細菌は食中毒を起こす代表的な病原菌です。日本では毎年数百人のカンピロバクター食中毒が発生し、つい最近(2015年6月)にも大阪府の飲食店で発生した食中毒が報道されました。感染源は一般に鶏肉や牛肉が多いと言われていますが、外国ではここで紹介する事例のように、牛乳から感染が広がることもあります。加熱殺菌が不十分だったことが汚染の原因と推定されています。

◆イギリスの集団食中毒を調査

研究班は、牛乳から感染が広がったと思われる、イギリスで2011年に起こったカンピロバクターによる食中毒について、汚染の原因がどこにあったのかを調べました。

患者の便から培養されたカンピロバクターを遺伝子解析し、感染していたカンピロバクターがどのような経路で伝わったのかを調べました。

 

◆殺菌施設で加熱不十分の恐れ

遺伝子解析から次の結果が得られました。

全ゲノムシークエンスによって、20人から、ほかの系統および対照となる分布とは明瞭に区別される単一の系統が同定された。症例対症例の解析によって、アウトブレイク系統の感染と、特定の1件の生産者から出荷された牛乳に関連が見られた(オッズ比8、exact検定でP=0.023)。

遺伝子解析の結果、感染者のうち20人から見つかったカンピロバクターは同じ汚染源から広がったものと見られました。感染者の情報を比較したところ、ある特定の牛乳生産者から出荷された牛乳を飲んでいた人に感染者が多いことがわかりました。

生産者の施設を調べたところ、カンピロバクターは見つからず、新しい製品は正常に殺菌されていましたが、加熱殺菌施設の一部に不具合があり、一時的に加熱が不十分になった可能性があると考えられました


日本で流通している牛乳は殺菌されており、カンピロバクター感染の原因にはならないと言われていますが、加熱不足という点は参考になるかもしれません。大阪の食中毒も食材の加熱不足が疑われています。

参照:堺市報道提供資料(PDF)

http://www.city.sakai.lg.jp/shisei/koho/hodo/hodoteikyoshiryo/0616_01.files/0616_01.pdf

夏は食中毒が増える季節ですので、十分な加熱など、対策にご注意ください。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Partial failure of milk pasteurisation as a risk for the transmission of Campylobacter from cattle to humans.

Clin Infect Dis. 2015 Jun 10 [Epub ahead of print]

 

[PMID: 26063722]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。