2016.11.06 | コラム

今すぐやめて!「免疫力」を高めない7つの誤解

病気にならない生活のために

今すぐやめて!「免疫力」を高めない7つの誤解の写真

免疫力を高めるために気を付けていることは何ですか?たぶんその方法では免疫力は高まりません。世の中には免疫にまつわる誤解がとてもたくさんあります。

免疫とは、少し乱暴に言うと、風邪を引かない、引いても治ることです。たいていの人は、年に数回ぐらいは風邪を引いて、いつも数日で治っているはずです。それが正常な免疫です。

エイズ抗がん剤悪性腫瘍(がん)に効果を発揮する薬剤。ただし、がん以外の良性疾患に用いられることもあるの副作用で免疫が弱くなると、風邪を引きやすいのはもちろん、無害なはずのカビ病気の原因となる微生物のうち、かびの仲間のこと。細菌に対する薬である抗菌薬は効果がなく、真菌感染症には抗真菌薬が用いられるなどから重い感染症何らかの病原体が引き起こす病気。細菌、ウイルス、真菌などが原因となることが多い。人から人へ直接うつらないものも含めた総称にかかり、命を落とすことさえあります。

免疫は目に見えません。ネットで検索すると、体の調子と免疫が関係あるかのように書いてあるページがたくさん見つかりますが、次に例を挙げるような体の調子と免疫はほとんど関係がありません。

  • 体温が低い
  • 寒がり・熱がり・ほてり・冷え
  • 太っている
  • むくみ体の部位がむくんだ状態のこと。血液から水分が周囲に漏れ出ることで、全体が腫れてむくみが生じる
  • 尿の回数が多い
  • 下痢・便秘
  • 白髪

ただし、明らかにこれまでなかった症状が急に出てきて調子が悪く感じるときは、病気の症状かもしれませんので、無理をせず病院で相談してください。

 

全体的に体力が充実している人は風邪を引きにくくひ弱な人が風邪を引きやすいのは明らかですね。このことを指して、「元気だ」という意味でだけ「免疫力」と言うなら大きな間違いはありません。

しかし、「元気になる」という意味を離れて「免疫力を高める」という言葉が使われるときは、ほとんどの場合で誤解や、でたらめや、ときには悪意が隠れています。ネットでよく見かける例を挙げて説明します。

 

いつも笑顔で過ごしたいと誰もが思います。笑いがある生活はきっと幸せでしょう。

しかし、免疫力にはあまり関係ありません。家族や友達にお笑いが好きな人がもしいれば、その人が一度も風邪を引いたことがないかどうか、思い出してみてください。

免疫力のためではなく、幸せのために笑ってください。

 

「免疫力を高めるためにストレスを避ける」という考えも誤解を含んでいます。

重いストレスを受けて、食事ものどを通らず、夜も眠れない…そんな状態が続けば、風邪を引きやすくもなるでしょう。日々の生活にはいろいろなストレスがあります。

  • 家庭
  • 仕事
  • 人間関係
  • 妊娠・出産・育児
  • 自分や家族の健康

日常生活でよく出会うストレスは、健康にも悪影響があります。うつ病自律神経失調症十二指腸潰瘍などの病気は、ストレスが原因で起こることがあります。

しかし、ストレスと関係が深いこれらの病気には、免疫はあまり関係ありません

ストレスがどの程度免疫に影響するかははっきりしていません。脳には免疫に直接影響する機能はありません。感情の変化は免疫に直接影響しません。

趣味がない・外出しない・スマホやパソコンばかり見てしまうなど、ストレスの多い生活は健康的とは言えませんが、直接免疫に大きく関わるとは言えません。

免疫力を高めるためではなく、うつ病にならないためにストレスを避けてください。

 

医学研究の中では、1990年代にはすでに「笑うことで免疫に良い影響があるのではないか」という観点のものが現れています。しかし、「患者を笑わせて病気を治す」という治療法は生まれていません。そんなことができるなら医師が真っ先に試します。笑うとナチュラルキラー細胞(NK細胞免疫を担うリンパ球(白血球の一種)のうちの一つ。NK細胞の他には、B細胞とT細胞がある)が活性化されるなどと唱えた人もいますが、試験管の中で細胞の動きが変わることと、人間が病気になるかならないかは別です。

そもそもNK細胞は免疫の働きの中心ではありません。免疫を担当しているのは白血球血液の中にある血球の一種。免疫を担当しており、病原体が体内に入って来た時に、それと戦う役割を担うです。血液の中にある白血球のうち90%以上が好中球血液中にある白血球の一種で、細菌や真菌に対する免疫を担っているリンパ球血液中にある白血球の一種で、免疫の役割を担っている。B細胞、T細胞、NK細胞に分かれ、それぞれ働き方が異なるです。リンパ球の大部分はT細胞とB細胞免疫を担うリンパ球(白血球の一種)のうちの一つ。Bリンパ球の他には、Tリンパ球とNK細胞があるに分けられます。B細胞は異物を感知すると抗体白血球が作り出す、免疫の一部を担う物質。体内の病原体に付着して、他の免疫細胞の働きを助けたりするを作るように変化します。この説明に出てこない細胞や物質の名前は、とても細かい話だと思っていいでしょう。NK細胞もとても細かいことです。

 

ツボ押し、指圧、鍼灸などには、痛みや不安を和らげる効果があります。しかし、風邪を引かなくなるようなものではありません

マッサージ、呼吸法、体操、ヨガ、瞑想なども免疫とは関係ありません。

カイロプラクティックは効果がないだけでなく、神経を傷付けるなどの重大な事故を起こす場合があります。

肩こりや腰痛でツボ押しに行くと、効果が出て満足できるかもしれません。しかし、ついでに風邪も予防できるとは思わないでください。

 

健康のためには食事にも気を付けるべきです。偏った食事は糖尿病脂肪肝の原因になります。大腸がんの予防には野菜が多く肉は控えめの食事がいいと言われています。

しかし、食事が健康に与える効果は、免疫力のせいではありません

特定の食品を食べることで免疫力が上がったり下がったりすることはありません。着色料、調味料、保存料などの食品添加物も関係ありません。

抗酸化物質と免疫力は関係ありません。ビタミン生物が生きていく上で必要な栄養素の一種。炭水化物、タンパク質、脂質以外の有機化合物のことミネラル水の中に溶けると電気を通す性質をもつ物質で、ミネラルとも呼ばれる。ナトリウムやカリウムが有名、食物繊維も関係ありません。

体に良さそうな謳い文句をつけて、高額な食品を売りつける商法が世の中にあふれています。普通のものをバランスよく食べるよりも健康的な食事はありません。悪徳業者に気を付けてください。

 

糖尿病になると免疫は弱くなります。その意味では、不摂生を長年続けることで免疫が弱くなることはあります。

しかし、糖尿病になるほどの不摂生をしている人はまず糖尿病の心配をするべきです。「免疫力を下げる食べ物」があるのではないかと考える必要はありません。

 

お酒の飲み過ぎはいろいろな病気の原因になります。感染症を引き起こすこともあります。しかし、免疫力の前にアルコール依存症の心配をしてください

 

水分は免疫には直接関係ありません。

冬場に空気が乾燥しているとき、鼻や喉の粘膜が乾くと病原体が入りやすくなるので、適度に保湿をするのはいいことです。しかし、水を飲めば免疫力が高まるということはありません。

もちろん水は人間の体に欠かせません。飲み物としては1日あたり1リットルから2リットル程度が適量です。水分の取りすぎで血液が薄まってしまうと危険なので、飲み過ぎにも気を付けてください。暑い夏はもっと水分が必要になります。尿が数時間に1回出る程度を目安にしてください。

とはいえ、よほどの脱水状態にならない限り、水不足で病気になることはありません。

 

腸内細菌感染症を起こす微生物の1つ。ウイルスと比較して10-100倍の体の大きさをもつによって免疫力が高まる可能性があります。しかし、間違った説明がよくなされています。

腸の中に住み着いている細菌(常在菌)は次のように免疫に関わっています。

  1. 腸の中には多くの常在菌がいる
  2. 腸に食べ物が流れてくると、常在菌が一部を食べてエネルギーを得る
  3. 腸の中にはときどき感染の原因となる細菌が入ってくる
  4. 侵入した細菌は常在菌にとってよそ者であるので、常在菌は自分のエサを取られまいと侵入者を攻撃してくれる

抗生物質微生物が産生する細胞の増殖や機能を阻害する物質。抗菌薬・抗ウィルス薬・抗がん薬を含むは常在菌のバランスを壊す場合があります。偽膜性腸炎は抗生物質が原因で起こりうる病気です。腸以外の場所でも、抗生物質が原因でカンジダ真菌(かび)の一種であり、しばしば様々な部位で感染を起こす原因となる膣炎などが起こることがあります。

この観点から、ヨーグルトなどを利用して腸内細菌のバランスを整え、感染症を防ごうとする研究が、実際に医学上の試みとして行われています。腸内細菌を増やすことで、確かに免疫力が高まる可能性があるのです。

しかし、毎日の食事に取り込むのは積極的にはおすすめできません。

たとえば、子供に特殊なヨーグルトを食べさせると、熱を出す期間が少しだけ減り、便が緩くなることが増えたという報告があります。免疫力を高めようとしてお腹を壊すのでは、何のために食事に気を付けているのかわかりません。しかも、ここで発熱を減らしたとされているのは特殊なヨーグルトです。普通のヨーグルトやほかの発酵食品、食物繊維などに当てはめて考えることはできません。

そもそも特定の食べ物を選んで食べるのは食事のバランスを崩すことにもつながります。バランスのよい食事のためには、「体に良いものを食べよう」という考えは敵です。普通のものを少しずつ、多くの種類を食べてください。

 

健康のために規則正しい生活は大切です。しかし、免疫力とはあまり関係ありません。

 

早寝早起きは健康的なことです。

寝不足で体力を消耗すれば、風邪を引きやすくなるかもしれません。

睡眠相後退症候群といって、睡眠のリズムが崩れ、夜遅くならないと眠れない状態は病気として認識されています。睡眠相後退症候群うつ病などにもつながります。

夜型の生活でつい食事も不規則になり、太ってしまう人もいるかもしれません。実際に夜型生活の人で糖尿病が多いとした研究報告があります。

しかし、早寝早起きで「元気になる」という以上に免疫に影響する特別なしくみがあるわけではありません

自律神経内臓の活動を調整している神経。交感神経と副交感神経を併せた総称と免疫は直接関係ありません。交感神経自律神経の一種で、興奮や緊張しているときに働くもの。交感神経が働くと、血管は細くなり心臓は活発に動くようになる副交感神経自律神経の一種で、安静時や夜に活発になるもの。副交感神経が活発になると、筋肉や血管が緩み、脈は遅くなる。また消化などの内蔵の活動が活発になるをあわせて自律神経と呼びます。つまり、交感神経も副交感神経も免疫とは直接関係ありません。睡眠リズムに関係するメラトニンというホルモン体内で作られて、血流にのって体の特定の部位を刺激する物質。内分泌物質とも呼ばれるもときどき話題になりますが、免疫とは直接関係ありません。

免疫力のためではなく、休養ときちんとした食事のために、早寝早起きをしてください。

 

運動の習慣がある人はたいてい体力があって元気です。かぜも引きにくいかもしれません。

運動は肥満予防のためにはとても大切です。糖尿病に対する運動療法も医療として行われています。ほかに動脈硬化全身に酸素と栄養を運ぶ動脈の壁が硬くなった状態。加齢の他に、喫煙、高血圧、脂質異常症、糖尿病などが原因となるが原因で起こるさまざまな病気にも、運動は有益とされています。大腸がんも運動習慣のある人ではやや少ないとされます。

健康になるために、適度の運動をおすすめします。

しかし、運動と免疫にどんな関係があるかははっきりしません。人間の体は複雑なので、さまざまな影響が想像できますが、「運動はこのように免疫力を高める」と短く説明することはできません。

確かなのは、運動をすると元気になるということです。その効果を信じて運動をするために「免疫力」という言葉は必要でしょうか。

 

冷たい雨に濡れてしまったり、寝冷えしたりすれば、風邪を引くこともあるでしょう。しかし、「温かくして体を休める」という以上に、体温が免疫と強く関係するわけではありません。

「体温が1度変わると免疫力が何倍になる」といった説明もときどき見かけますが、体温が1度も変わるというのは病気による発熱の可能性があります。熱が出る病気のときに免疫が盛んに働くのは当たり前です。病気に強い体になったわけではありません。

病気で熱が出たときに、熱を下げないほうが早く治るかどうかは医学的にも研究されているのですが、結論は定まっていません。つまり、熱があるほうが免疫力が高いとは言えません

また、生活上の工夫で一日中体温をコントロールすることは簡単ではありません。「手足の冷えを見逃さないようにしなければ」と考えすぎると、かえってストレスになるかもしれません。

お風呂に入っても免疫力は高まりません。お風呂では免疫力について難しく考えるのはやめて、リラックスして疲れを取り、ぐっすり眠れるようにしてください。

 

BMI体格指数。「体重[kg]÷身長[m]÷身長[m]」で算出される。18.5から25が普通体重とされているが、筋肉量や脂肪率を反映しないため体格の唯一の基準とはできない(体重[kg]÷身長[m]÷身長[m])が25を超えるほどの肥満は、糖尿病や高血圧などにもつながります。糖尿病になると免疫は弱くなります。自分のBMIを計算したことのない人は、BMIが25を超えていないか一度確かめてください。

しかし、肥満そのものが免疫力を下げるとは言えません。

ましてやBMIが25未満なら、医学的には肥満とは言いません。健康的な体型です

 

喫煙者は一部の感染症にかかりやすいと言われています。その意味では喫煙は免疫を弱くする可能性があります。なるべく早く禁煙したほうがダメージは少ないでしょう。

とはいえ、禁煙が「免疫力を高める」とは言いにくいでしょう。「高める」という言葉には「もとよりさらに高くする」という語感がありますが、禁煙はあくまで弱った体をもとの状態に近付ける方法です。

 

以上で説明したとおり、元気になる方法はいろいろありますが、どれも免疫力を高めるための方法とは言えません

唯一の例外はワクチンです。ワクチンで、特定の病原体に対して免疫をつけることができます。しかし、「免疫力」という言葉から想像されるような、「あらゆる病気に抵抗できる」という効果ではありません。

 

そもそも健康のカギのように言われる「免疫力」は、本当にあらゆる病気を防いでくれるのでしょうか。

繰り返しになりますが、免疫とはごく大雑把に言うと風邪を引かないことです。感染症以外の病気にはたいてい関係ありません。むしろ一部の病気を引き起こします。

 

免疫力を高める方法がないので、免疫力を高めてがん無制限に増殖して周囲へ広がる、異常な細胞(がん細胞)による病気。塊となって腫瘍を作る固形がんと、白血病のように血液中にがん細胞が存在する血液がんがあるを防いだり治したりする方法もありません

 

ニボルマブ(商品名オプジーボ)やペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)は抗がん剤です

免疫のしくみを利用する薬なので「免疫療法」と紹介されることがあります。しかし、免疫力を高める治療ではありません。

また、「免疫療法」のニセ物には注意が必要です。

長年の間、「免疫療法」と謳ってでたらめな治療を高額で売りつける業者が、無数のがん患者を苦しめてきました。

ニボルマブなどの薬は、でたらめな「免疫療法」とはまったく違います。

 

アトピー性皮膚炎は免疫の異常が原因」という説明が誤解されて広まったものと思われます。

正しくは、アトピー性皮膚炎免疫が強すぎて起こる病気です。免疫を弱くすることで症状が治まります。免疫を弱くするために使われるのが、ステロイド薬副腎で作られるホルモンの1つ。ステロイドホルモンを薬として使用すると、体の中の炎症や免疫反応を抑えることができるため、様々な病気の治療で用いられているや、免疫抑制薬と呼ばれるタクロリムス(商品名プロトピック)などの薬です。

ステロイド薬は、もともと体の中で作られている副腎皮質ホルモン副腎皮質で作られるホルモンで、ステロイドホルモンとも呼ばれる。コルチゾール、アルドステロン、アンドロゲンの3種類がある(糖質コルチコイド)をもとにして作られた薬です。

副腎皮質ホルモンは免疫のほか、血糖血液中のブドウ糖のこと。人が活動するためのエネルギー源。血液中の濃度を血糖値といい、糖尿病の診断に用いられる値の維持、骨の維持、ミネラルのバランス維持など、生命維持のために欠かせない働きを持っています。

アトピー性皮膚炎の症状が出ている場所にステロイド薬を塗ると、副腎皮質ホルモンの作用により、強すぎる免疫が抑えられ、症状が改善します。

副腎皮質ホルモンは多くの働きがあるので、体内に大量のステロイド薬が入るとさまざまな面の副作用が出ることがあります。しかし塗り薬では体内に入る量が少ないので、全身の副作用が出ることはまれです。

 

アトピー性皮膚炎と同様、花粉症免疫が強すぎて起こる病気です。花粉症は花粉に対するアレルギー免疫反応によって、体が過剰な防御反応を起こして悪影響が生じてしまう状態ですが、ほかのアレルギーもすべて同様です。喘息の一部もアレルギーです。免疫が強すぎることは病気の原因になるのです。

 

免疫のしくみはとても複雑だということをわかってもらえたでしょうか。これほど複雑な免疫のしくみを「免疫力」というひとことで説明しようとするのは無理があります。「免疫力」にあたる医学上の概念はありません。

このサイトでもイメージが湧きやすいように「免疫力」と言っている場所はありますが、「免疫力」を飛ばして理解したほうがより正確になります。たとえば「ワクチンで免疫力をつけると病気を防げます」という説明なら、「ワクチンで病気を防げます」とだけ言ったほうが不正確さがありません。

「がん免疫療法」と同様、「免疫力」という言葉はでたらめな説明によく使われています。運動や早寝早起きならともあれ有益ですが、「免疫力を高める食品」や「免疫力を高める治療」にお金を出す前には、少し落ち着いて考えたほうがいいでしょう。

 

「免疫力を高める生活」について何かを知る必要はありません。あなたの常識を信じて、当たり前に健康的だと思える生活をしてください。それが病気を防ぐ近道です。

執筆者

大脇 幸志郎

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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