ちょうかんしゅっけつせいだいちょうきんかんせんしょう
腸管出血性大腸菌感染症
「ベロ毒素」という毒素を産生する大腸菌の感染症。ベロ毒素は腸や腎臓の細胞にダメージを与え下痢、血便、腎不全など起こす
4人の医師がチェック 135回の改訂 最終更新: 2023.03.13

腸管出血性大腸菌感染症の基礎知識

POINT 腸管出血性大腸菌感染症とは

大腸菌の産生するベロ毒素によって腸管がダメージを受けて血便の起こる病気です。毒素を出す大腸菌に汚染された食物を食べることで感染し、夏場に起こる事が多いです。主な症状は腹痛・下痢・血便などですが、重症になると意識障害や腎不全によるむくみなどを起こすことがあります。 便の中にベロ毒素があるかを調べて診断します。症状を和らげる治療(対症療法)を行います。抗菌薬を用いて大腸菌を殺してもベロ毒素をなくすことができないので、抗菌薬は無効であることに注意が必要です。腸管出血性大腸菌感染症が心配な人や治療したい人は、消化器内科や感染症内科を受診して下さい。

腸管出血性大腸菌感染症について

  • 「ベロ毒素」という毒素を産生する大腸菌感染症

    • 腸管出血性大腸菌(O-157など)に汚染された食べ物などの摂取が原因
    • ベロ毒素は腸や腎臓の細胞にダメージを与え下痢、血便だけでなく腎不全などを引き起こす
  • 感染の主な原因

    • 汚染された食品を摂取
    • 井戸水
    • サラダ
    • 生肉(生レバー、ユッケなど)
  • 夏期に小児に起こることが多い

  • 感染症法において3類感染症に分類されており、診断した医師は直ちに最寄りの保健所に届け出る必要がある

腸管出血性大腸菌感染症の症状

  • 数日間の潜伏期のあとに症状を起こす
    • 腹痛
    • 下痢
    • 血便(水っぽい下痢の後に血便がでることが多い)
  • 重症例では溶血性尿毒症症候群HUS)や脳症を起こすことがある
    • 脳症の症状
      • 頭痛
      • 意識障害傾眠不穏など)
      • 重症化するとけいれん、昏睡状態になる
    • HUSと脳症はほぼ同時期に発症する
      • 貧血(Hb10g/dl以下)
      • 血小板減少
      • 急性腎不全   HUSは腸管出血性大腸菌感染症の1-10%程度で出現する

腸管出血性大腸菌感染症の検査・診断

  • 便検査
    • ベロ毒素検出は迅速検査で可能
    • 病原体の種類を調べる
  • HUSが起こっていないかを確認するために尿検査、血液検査で腎機能血尿の有無をチェックする

腸管出血性大腸菌感染症の治療法

  • 対症療法
    • 整腸剤
    • 水分補給
    • 安静
  • 細菌自体ではなく毒素が問題であるので、抗菌薬は使用しても効果がない
    • 合併症HUSの予防として抗菌薬を使用することを支持する意見もあるが、逆に状態を悪化させるという意見もあり、現段階では一定の見解はない
    • 抗菌薬を投与しても感染自体には効果が見込めない
  • HUS合併した場合は積極的な治療が必要
    • 血液透析血漿交換療法など
  • 以下のことを行うことで予防をすることができる
    • 食品を十分加熱する
    • 調理後の食品は食べきる
    • 調理時に手指をよく洗う

腸管出血性大腸菌感染症に関連する治療薬

セフェム系抗菌薬

  • 細菌の細胞壁合成を阻害し細菌を殺すことで抗菌作用をあらわす薬
    • 細胞壁という防御壁をもつ細菌はこれがないと生きることができない
    • 細菌の細胞壁合成に深く関わるペニシリン結合タンパク質(PBP)というものがある
    • 本剤は細菌のPBPに作用し細胞壁合成を阻害することで細菌を殺す作用をあらわす
  • 妊婦にも比較的安全に投与できるとされる
  • 開発された世代によって第一世代〜第四世代に分けられる
    • 各世代で、各種細菌へ対して、それぞれ得手・不得手がある
    • 世代が同じであっても薬剤によって各種細菌に対して得手・不得手の違いが生じる場合がある
セフェム系抗菌薬についてもっと詳しく

腸管出血性大腸菌感染症のタグ

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