サルモネラ腸炎の基礎知識
POINT サルモネラ腸炎とは
サルモネラ菌が腸に感染を起こした病気です。サルモネラ菌に汚染された飲食物を摂取したり、サルモネラ菌を持った動物に触れたりすることで感染します。夏から秋に感染が起こりやすく、卵による感染が多いので注意が必要です。主な症状は、発熱・腹痛・嘔吐・下痢・血便などになります。背景に免疫不全(特にAIDS)がある場合は菌血症をきたして重症になることがあります。 細菌検査でサルモネラ菌の存在を確認して診断します。また、血液検査や画像検査を用いて重症度を推定します。症状が軽い場合は治療の必要はありませんが、重症である場合は抗菌薬を用いて治療します。サルモネラ腸炎が心配な人や治療したい人は、消化器内科や感染症内科を受診して下さい。
サルモネラ腸炎について
- サルモネラ菌という
細菌 が、腸へ感染することで生じる病気 - サルモネラ菌に汚染された飲食物や、サルモネラ菌を保有するさまざまな動物(犬、ネコ、牛、ブタ、カメ、ザリガニなど)から感染することで起こる
- 特に生卵を食べることで感染する場合が多い
発症 者数は、例年夏から秋に多い- 食品衛生法で規定されている病気であるので、感染が分かってから24時間以内に最寄りの保健所に届け出る必要がある
サルモネラ腸炎の症状
- 主な症状
- 発熱
- 腹痛
- 嘔吐
- 下痢
- 腹痛はかなり強いことが多く、下痢には血液や
膿 、粘液が混じることもある - 他の
細菌 による胃腸炎と比べて症状が重く、持続時間が長いことが特徴 - 重症の場合、腎不全を引き起こすこともある
- 原因となる食べ物を食べてから症状が出るまでの期間(
潜伏期間 )は、1週間前後であることが多い HIV 感染があると重症化しやすい- 菌血症(細菌が血液中に侵入する重篤な状態)
サルモネラ腸炎の検査・診断
細菌検査 :便からサルモネラ菌の有無を調べる- サルモネラ菌以外の胃腸炎でも同様の症状が出るため、これらとの区別が必要である
- 血液検査:
炎症 の程度や全身の状態を調べる
サルモネラ腸炎の治療法
- 自然に治ることが多いため整腸剤の服用が主な治療方法
- 下痢による脱水を防ぐための水分補給が重要
- 症状が重い場合はニューキノロン系
抗菌薬 が用いられる- 場合によってはホスホマイシンやアンピシリンも使用可能だが、
耐性菌 に注意が必要
- 場合によってはホスホマイシンやアンピシリンも使用可能だが、
- 下痢による脱水が激しい場合は点滴で水分を補う
- 食事の前や動物に触った後はきちんと手を洗うことで、感染のリスクを低下させることができる
サルモネラ腸炎の経過と病院探しのポイント
サルモネラ腸炎が心配な方
サルモネラ腸炎は国内外で感染が見られる、いわゆる食中毒の一つです。市販されている食肉や卵に菌が付着していたり、ペットの動物からご家族に感染したりすることがあります。主な症状は一般的な食中毒と同じで、嘔吐・腹痛・下痢・熱といった症状が出現します。このような症状が出た場合、そして特に、同じものを食べた方にも同様の症状が出ている場合にはサルモネラ腸炎を始めとする食中毒の可能性が考えられます。
サルモネラ腸炎を疑った場合には、まずはお近くの内科クリニックを受診するようにしましょう。一般内科でも良いですし、その中でも絞り込むのであれば消化器内科が専門の診療科です。
診断は便からサルモネラ菌が検出されるかどうかで確定します。しかしすぐに結果が出る検査ではありませんので、検査を行うことなく「サルモネラ腸炎の疑い」または「感染性胃腸炎の疑い」といった暫定的な診断で治療を行います。このような腸炎の多くは抗生物質(抗菌薬)の使用で改善しますので、原因がサルモネラ菌だということが分からなくても結果的には治ってしまう場合があります。一方で、抗菌薬が効かない腸炎や抗菌薬を使用しない方が良い腸炎もあるため、症状や経過から大きな方向性(細菌性かウイルス性か、検査を行って病原体を突き止める必要性がどの程度高いかなど)を判断するのが医療機関の主な役割となります。
この判断をする上で、どこで感染したかという情報がとても大切ですので、直近でどのような食事をとったか、周囲で他に症状のある人はいないか、海外旅行後の方はいつからいつまでどこに滞在していたかを医師にぜひ伝えてください。
サルモネラ腸炎でお困りの方
サルモネラ腸炎の場合に気をつけなければならないのが、脱水からの衰弱を予防することです。下痢が治まらないことで体の水分が失われ、また吐き気や食欲不振によって水分摂取量も減ってしまいます。すると脱水になって余計に食欲がなくなるという悪循環に陥ってしまいます。
脱水症の治療は、不足している水分に加えて塩分もしっかりと摂取することです。スポーツドリンクを飲むことができればそれが最も適切な治療になりますし、スポーツドリンクでは塩分がまだ薄いため、食塩を溶かして飲むのも良いでしょう。塩辛くて飲めないほどにする必要はありませんが、ほんのり塩の味を感じるくらいだとより適切です。どうしても口から飲めない方の場合には入院の上で点滴を行い、必要な量の水分をとるようにします。
サルモネラ腸炎は人から人へ直接感染することはまれですが、念のため家族や近くにいる方、そしてご本人も手洗いは頻回に行うようにして下さい。