検査部位
血液
対象疾患
- 診断、治療経過における指標として用いられる疾患の例
- ワクチン接種後の
抗体 獲得の指標として用いられる疾患の例
概要
抗体検査は
また、病原体に感染したときだけではなく、ワクチンを接種したときにも抗体は作られます。ワクチン接種は、体内で抗体を作らせることで次に同じ病原体が入ってきても感染しなくなるという仕組みです。ワクチンによって感染を防ぐための抗体が十分に作られているかを知るためにも、抗体を測定することがあります。
メリット
ウイルス や培養 困難な細菌 (梅毒、マイコプラズマ、百日咳、クラミジアなど)のように、培養検査 や塗抹検査では調べることができない病原体にも有用である- 簡便である(採血のほか、検査によっては指先から血を1滴採るだけの簡易検査もある)
- 迅速に結果が出る(簡易検査では20分程度)
- 感染症流行時に、地域全体の住民に検査を行うことで、蔓延状況、集団
免疫 の状況を把握することができる
デメリット
- ウインドウ期(感染してから抗体価が上昇するまでの期間)があるため、感染していても陽性とならないことがある
- 「抗体検査陽性=感染症の診断」とは限らないため、迅速診断としての有用性は低い。検査を行う際には、検査の目的を正しく理解する必要がある
詳細
抗体検査は感染症の検査の一つです。私たちの身体では、体内に病原体が入るとそれを認識して排除する「免疫」という働きが備わっています。病原体の表面にあるタンパク質である「抗原」を目印にして、抗体産生細胞により「抗体」というものがつくられます。「抗体」は「抗原」に結合することで、病原体を排除するために一役を担っています。
抗体検査では、特定の病原体に対する抗体が血液中にどのくらい存在しているか測定することで、その感染症にかかったことがあるかを知ることができます。通常の静脈採血で調べる方法のほか、指先に針を刺して出てきた少量の血液で簡易的に調べるキットがある感染症もあります。
抗体にはIgG, IgA, IgM, IgD, IgEの5種類がありますが、抗体検査に用いられるのはIgGやIgMです。体内に病原体が侵入すると最初に上昇するのがIgMで、急性期の診断に用いられることがあります。一方、IgGは感染後しばらくしてから高値になり、治っても長期間血液中に残ります。そのため、現在の感染のみならず、過去の感染でも上昇します。
- IgM陽性かつIgG陽性:感染して数週間くらい
- IgM陽性かつIgG陰性:感染して間もない
- IgM陰性かつIgG陽性:過去に感染したことがある
- IgM陰性かつIgG陰性:感染していない
ただし、必ずしも「陽性だから感染している/していた」、「陰性だから感染していない/したことがない」とは言い切れないことに注意が必要です。それは、抗体価は患者さんの体調や病原体の性質によって左右されるため、「抗体価が低く陰性と判定されたものの、実際は感染していた」といったケースが存在するからです。たとえば、患者さんの体調によって抗体をつくる免疫の働きが弱まっていたり、病原体の性質によって抗体が作りにくかったりすると、感染していても抗体価が低くなり、陰性と判定されてしまうことがあります。
また、新しく感染症にかかったとき、感染してすぐの時期(急性期)としばらく経って回復しはじめた時期(回復期)の2回でIgGの抗体価を比較することで、診断できることがあります。IgGは感染後しばらくしてから上昇する性質があるので、急性期にはあまり上昇していなかったIgGが回復期までに一定以上上昇していれば、その感染症に感染しているということになります。しかし、この方法では回復期になってようやく診断に至るので、早期の診断には不向きであり、実際は有用性が低いといえます。
病原体に感染したときだけではなく、ワクチンを接種したときにも抗体は作られます。ワクチン接種は、身体に抗体を作らせることで次に同じ病原体が入ってきても感染しなくなるという仕組みです。ワクチンによって感染を防ぐための抗体が十分に作られているかを知るためにも、抗体を測定することがあります。
対象疾患の例
| 疾患名 | 調べる抗体 | 意義 |
|---|---|---|
| A型肝炎 | IgM型 |
A型肝炎の診断 |
| B型肝炎 | HBs抗体 | 過去の感染、ワクチン接種後の抗体獲得の指標 |
| HBe抗体 | HBe抗原とともに測定され、どちらか一方が陽性になる。HBe抗原陽性はウイルスの増殖が活発であること、HBe抗体陽性は増殖力は低下していることを示す | |
| IgM型HBc抗体 | B型急性肝炎の診断 | |
| IgG型HBc抗体 | 持続感染(キャリア) | |
| C型肝炎 | HCV感染の |
|
| HIV抗体 | HIV感染のスクリーニング検査として用いられている | |
| 成人T細胞白血病(ATL) / HTLV-1関連脊髄症(HAM) | HTLV-I抗体 | HTLV-1感染のスクリーニング検査として用いられている |
| 梅毒 | RPR抗体(-)かつTP抗体(-):感染していない(まれに感染初期) RPR抗体(-)かつTP抗体(+):過去の感染 RPR抗体(+)かつTP抗体(-):SLEなどほかの病気の |
|
| マイコプラズマ | IgM型マイコプラズマ抗体 | 感染初期 |
| IgG型マイコプラズマ抗体 | 現在または過去の感染 | |
| 百日咳 | IgG型抗PT抗体 | 現在の感染、ワクチン接種後の抗体獲得の指標 |
| IgG型抗FHA抗体 | ワクチン接種後の抗体獲得の指標(診断には用いられない) | |
| クラミジア | IgA型(-)かつIgG型(-):感染していない(まれに感染初期) IgA型(-)かつIgG型(+):過去の感染 IgA型(+)かつIgG型(-):感染初期 IgA型(+)かつIgG型(+):現在または過去の感染 | |
| トキソプラズマ | IgM型トキソプラズマ抗体 | 感染初期 |
| IgG型トキソプラズマ抗体 | 現在または過去の感染 | |
| 赤痢アメーバ | IgM型赤痢アメーバ抗体 | 感染初期 |
| IgG型赤痢アメーバ抗体 | 現在または過去の感染 | |
| 新型コロナウイルス感染症(COVID-19) | ※現在感染しているかどうかはわからない | |
| IgM型抗SARS-CoV2抗体 | 最近(数週間以内が目安)の感染 | |
| IgG型抗SARS-CoV2抗体 | 過去(数年以内が目安)の感染 | |
| 水痘 (みずぼうそう) | IgG型VZV抗体 | 過去の感染、ワクチン接種後の抗体獲得の指標 |
| 流行性耳下腺炎 (おたふくかぜ) | IgG型ムンプスウイルス抗体 | 過去の感染、ワクチン接種後の抗体獲得の指標 |
| 麻疹 (はしか) | IgG型麻疹ウイルス抗体 | 過去の感染、ワクチン接種後の抗体獲得の指標 |
| 風疹 (三日はしか) | IgG型風疹ウイルス抗体 | 過去の感染、ワクチン接種後の抗体獲得の指標 |