レプトスピラ症(ワイル病)の基礎知識
POINT レプトスピラ症(ワイル病)とは
レプトスピラという病原体による感染症です。レプトスピラに感染した犬やネズミの尿から感染することが多いです。主な症状は、発熱・悪寒・頭痛・筋肉痛・発疹ですが、重症になった場合は黄疸(眼や皮膚が黄色になる)・出血・むくみ・息苦しさなどが出現します。 血液検査や細菌検査で診断しますが、通常の病院では診断が難しく、専門施設(国立感染症研究所など)で診断します。抗菌薬を用いて治療します。レプトスピラ症が心配な人や治療したい人は、感染症内科を受診して下さい。
レプトスピラ症(ワイル病)について
- レプトスピラという病原体による
感染症 - 東南アジアや中南米に多い
- レプトスピラに感染した犬やねずみなどの尿からレプトスピラが排泄される
- 菌が入った土や池、川などと体の傷や粘膜が接触することで感染する
- 衛生環境の整備の進んでいる日本では感染者は少ない
- ヒトからヒトへの感染はない
- 重症の場合をワイル病と呼び、全身の臓器に障害が起こる
レプトスピラ症(ワイル病)の症状
レプトスピラ症(ワイル病)の検査・診断
- 血液や尿、
髄液検査 などの検体 を検査- 国立感染研究所など一部の施設でなければ診断する検査はできない
培養検査 :発熱時の血液を培養 してレプトスピラの存在の有無を調べる抗体 検査:レプトスピラに感染したら上昇する抗体の値を調べる。通常は2回チェックして、1回目と比べて2回目がどの程度上昇しているかを見る- 遺伝子検査:レプトスピラの遺伝子が存在しているかを調べる検査
- 国立感染研究所など一部の施設でなければ診断する検査はできない
レプトスピラ症(ワイル病)の治療法
抗菌薬 治療を行う- テトラサイクリン系抗菌薬:主にドキシサイクリン
静注 第3世代セフェム系抗菌薬:主にセフトリアキソン- ペニシリン系抗菌薬 などを使用することが多い
- 腎障害など臓器の障害が起きていればそれらに対しての治療も行う
- 感染が流行している場所では、不用意に水のなかに入らないことが重要
レプトスピラ症(ワイル病)の経過と病院探しのポイント
レプトスピラ症(ワイル病)が心配な方
レプトスピラ症は国内では少ない感染症で、沖縄県を中心に細菌が分布しています。海外では東南アジアや南米で多く報告されています。水場からの感染が多い感染症で、川遊びをした後や、台風で川や下水が氾濫した後に発症する方が多いです。
レプトスピラ症の症状は、「インフルエンザ様」と言われます。熱が出て、節々の痛みが出現し、頭痛が出現します。これだけではインフルエンザを始めとする他の様々な感染症と区別がつかないのですが、流行地域に行った後であることや、他に疑わしい疾患が特に無いこと(インフルエンザ流行中の時期でないなど)から暫定的な診断をつけて治療を開始することになります。
レプトスピラ症であることの診断は血液検査や尿検査で行いますが、結果が出るまでに1週間ほど時間がかかります。それを待っていると治療が遅くなってしまいますので、旅行歴や症状から仮の診断がついた時点で、入院の上で治療を始めることが多いです。
レプトスピラ症そのものが国内では珍しいこともあり、慣れている病院や医師でないと診断をつけることが困難です。流行地域(沖縄県)の病院か、そうでなければ感染症科のある病院、あるいは地域の中核病院が良いでしょう。その際には、いつからいつまでどこに旅行をしていたかをぜひ医師に伝えてください。
なお、レプトスピラ症が人から人へ伝染することはありませんので、その心配は不要です。