発疹チフスの基礎知識
POINT 発疹チフスとは
発疹チフスはシラミを介して感染の広まるリケッチア感染症です。現在でも貧困地域で感染が見られていますが、1958年以降は日本で発症の報告はありません。発疹チフスの症状は発熱(多くの場合高熱が2週間ほど続く)・発疹・頭痛・嘔吐・意識朦朧などになります。検査は血液を用いた抗体検査を行います。 発疹チフスの治療はテトラサイクリン系抗生物質を用います。これを用いることはどこの病院でもできますが、発疹チフスの検査は簡単ではありません。そのため、シラミに咬まれた後に上記の症状が出た場合は、近くの感染症内科や皮膚科にかかって診察を受けて下さい。
発疹チフスについて
- リケッチアと呼ばれる微生物によって引き起こされる
感染症 である - 発疹チフス患者の血液を吸ったシラミによって、ヒトからヒトへと感染する
- シラミはリッチケアに感染後、2週間程度で死亡するが、死亡後もシラミの体内には数週間リッチケアが残るので注意が必要である
- 日本では1957年以降の感染例はないが、海外では不衛生な地域や人口密集地域で現在も見られる
- 腸チフスとは症状が似ているが全く異なった病気である
発疹チフスの症状
- 感染から
発症 までは約1~2週間 - 発熱:39~40℃の高熱
- およそ2週間で急速に解熱する
発疹 - 発熱から数日後(2~5日程度)に、身体にピンク色の小さい発疹が現れ、急速に全身に広がる
- 顔や手のひら、足裏には現れない
- 発疹は数日経つと赤黒く変化する
- 激しい頭痛
- 手足の筋肉痛やかゆみ
- 嘔吐
- 寒気
意識障害 - 重症の場合は昏睡状態になる場合もある
発疹チフスの検査・診断
発疹チフスの治療法
- 薬物療法
- テトラサイクリン系
抗菌薬 :通常は使用開始から3日以内に解熱する
- テトラサイクリン系
- ヒトからヒトへの直接的な感染がないため、一番の予防はリケッチアを媒介するシラミを駆除することである
- ワクチン接種も予防として効果的であるが、日本では使われていない
- 発疹チフスから回復しても体内にリッチケアが潜伏し、数年後に再発することがある(ブリル・ジンサー病とよばれる)
- 症状はほとんどの場合が軽度で、発疹チフスと同様である
- 適切な治療が用いられれば死亡することはないが、未治療の場合の死亡率は50%を超えるとの報告もある
発疹チフスの経過と病院探しのポイント
発疹チフスが心配な方
発疹チフスは、渡航者やその人を発端とした感染を除き、国内では数十年間感染が報告されていない感染症です。シラミに吸血されることが原因となる感染症で、現在ではアフリカ諸国で多く報告されています。
発疹チフスでは、高熱に加えて皮膚が赤くなったりぶつぶつができたりします。診断は血液検査で行いますが、特殊な検査であるために血液を専門の検査機関へ送って検査が行われます。結果が出るまでに数日から1週間ほど時間がかかり、それを待っていると治療が遅くなってしまいます。したがって、旅行歴や症状から仮の診断がついた時点で、入院の上で治療を始めることが多いです。
発疹チフスそのものが国内では珍しいこともあり、慣れている医師でないと診断をつけることが困難です。もしお近くに感染症科のある病院や、感染症専門医のいる病院があるのであれば、そのような病院を受診されるのが適切かもしれません。そうでなければ、クリニックよりは地域の中核病院が良いでしょう。その際には、いつからいつまでどこに旅行をしていたかを医師に伝えてください。
なお、発疹チフスがシラミを介さずに人から人へ直接伝染することはありませんので、その心配はありません。