おたふくかぜ(りゅうこうせいじかせんえん、むんぷす)
おたふく風邪(流行性耳下腺炎、ムンプス)
唾液をつくる耳下腺(耳の前〜下)、顎下腺(あごの下)が腫れて痛み、熱がでる感染症。特に小児に多い
10人の医師がチェック 155回の改訂 最終更新: 2022.05.04

おたふく風邪(流行性耳下腺炎、ムンプス)の基礎知識

POINT おたふく風邪(流行性耳下腺炎、ムンプス)とは

ムンプスウイルスの感染症で、通称をおたふく風邪と呼ばれます。子どもに多い病気です。主な症状は耳の下の腫れ・咽頭痛・発熱などで、発症して2日くらい経つと治まってくることがほとんどです。精巣炎や髄膜炎を合併することもあり、その場合は陰嚢の腫れ・痛みやけいれん、意識障害などを起こします。 おたふく風邪は血液検査で診断することができますが、多くの人は症状と流行状況から診断されます。治療に有効なものはありませんが、症状が強い人では症状を和らげる治療(対症療法)が行われます。おたふく風邪が心配な人や治療したい人は、小児科・内科・感染症内科を受診して下さい。

おたふく風邪(流行性耳下腺炎、ムンプス)について

  • 唾液を作る耳下腺(耳の前から下にある)、顎下腺(あごの下にある)が腫れて痛み、熱が出る感染症
  • 主な原因
    • ムンプスウイルスへの感染
    • ウイルスを持つ人からの接触感染飛沫感染(咳やくしゃみなどでうつる)
  • 年齢とともに増加し、4歳が最も多い
    • 4歳以下の割合が約5割
  • 主な合併症
    • 精巣炎
      • 思春期以降の成人男性の場合、軽いものも含めると20-25%が精巣炎合併する
    • 無菌性髄膜炎
      • 最も多い合併症で、女性より男性で合併しやすい
      • 頭痛を訴える
      • 耳下腺や顎下腺の腫れと同時に合併することもあれば、腫れが出る前や後に合併することもあり、タイミングはさまざま
      • 通常は後遺症なく自然に治る
    • 膵炎
      • 子どもと大人の両方で合併することがあるが、まれ
      • 通常は対症療法治癒する
    • 難聴
      • ワクチンのない時代は、子どもの難聴の原因はおたふく風邪が多かった
      • 突然発症するが、まれに徐々に難聴が進行する例もある
      • 合併はまれだが、難聴が後遺症として残る可能性がある
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おたふく風邪(流行性耳下腺炎、ムンプス)の症状

  • 2-3週間の潜伏期間を経て発症する
  • 主な症状
    • 耳下腺・顎下腺の腫れ
    • 耳下腺・顎下腺を押したときの痛み
    • 飲み込みのときの痛み
    • 発熱
  • 病気の説明
    • 通常、最初に症状が出現した瞬間から48時間以内に症状がピークに達する
症状の詳細

おたふく風邪(流行性耳下腺炎、ムンプス)の検査・診断

  • 基本的には症状から診断され、検査は必須ではない
  • 血液検査
    • 診断が疑わしい場合に、特殊な検査としてムンプスウイルス感染の有無を調べる目的で行われることがある
    • ただし、結果が出るまでは数日間を要することが多く、また標準的に行われる検査ではない
検査・診断の詳細

おたふく風邪(流行性耳下腺炎、ムンプス)の治療法

  • 特効薬はないが、ほとんどの場合1-2週間で自然に完治するため、対症療法で様子を見る
    • 痛みが我慢できる程度であれば、安静にしているのがよい
    • 一度下がった熱が再発し、腹痛、頭痛などがある場合、髄膜炎などの合併症が起きている可能性を考慮して検査を要する
  • 予防、再発予防方法
    • おたふくかぜワクチン接種によって予防する
    • 現段階では任意接種のワクチンではあるが、予防効果の観点から2回のワクチン接種が推奨されている
    • 好発年齢は3-6歳であることを踏まえて、3歳までの接種が望ましい
  • 「耳下腺や顎下腺の腫れが出現してから5日が経過して、かつ全身の状態が良くなるまでは登園・登校禁止」と学校保健安全法に定められている
治療法の詳細

おたふく風邪(流行性耳下腺炎、ムンプス)の経過と病院探しのポイント

おたふく風邪(流行性耳下腺炎、ムンプス)が心配な方

おたふく風邪流行性耳下腺炎ムンプス)は耳下腺や顎下腺といったあごの周囲の部分が腫れたり痛くなったりする感染症です。熱やのどの痛みも出るので、通常の風邪と区別がつきづらいことがあります。

まず始めに理解しておきたいのは、おたふく風邪は通常の風邪と同じく、元々元気な方であれば深刻に捉える必要はあまりない病気であるということです。治療薬といっても解熱薬のような対症療法薬のみでそれ以外は必要のない(そもそも特効薬がない)病気でもあります。高熱が出たり意識がぼーっとしたりというような場合を除けばとりあえず自宅で様子を見るというのも選択肢の一つです。

したがって、おたふく風邪で医療機関を受診する目的というのは、他の病気ではないことを確認すること、そしておたふく風邪による合併症がないことを確認することということになります。おたふく風邪では髄膜炎といって脳周囲でウイルスが炎症を引き起こし、頭痛が出たり意識がぼーっとしたりすることがあります。また数万人に一人ではありますが難聴の後遺症が残ってしまうことが報告されています。こういった際に早期に変化を発見することや、そしてご家族の方に正しい知識を身につけてもらうことも受診の際には大切なことの一つになります。

もし診断がおたふく風邪だということになれば、熱があれば熱冷ましが処方されますが、熱もないおたふく風邪の場合、特に薬が出ないことも多いです。ご自宅で無理せず過ごして、様子をみてもらうことになるでしょう。周囲へ感染を広げてしまうことにもなるので、学校や職場はお休みして、自宅では頻回の手洗いうがいを行いましょう。

受診先は、お子さんならば小児科のクリニック、成人の方であれば内科のクリニックが良いでしょう。おたふく風邪は小児に多い病気ですが、成人もかかることがあります。小児科の医師は診断に慣れていますが、成人を主に診ている医師では、場合によってはおたふく風邪の可能性が思い浮かびにくいこともあるかもしれません。お近くにおたふく風邪の方がいるなど、ご自身の体調不良に心当たりがある場合は、最初に受診の目的や心配事をぜひ医師にお伝えください。

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