ずいまくえん
髄膜炎
脳と脊髄を包んでいる髄膜が、炎症を起こしている状態。場合によっては神経の重い後遺症が残ったり死に至ったりすることもある
17人の医師がチェック 200回の改訂 最終更新: 2022.02.05

髄膜炎の基礎知識

POINT 髄膜炎とは

脳や脊髄の周囲に存在する脳脊髄液という液体を覆うように存在するのが髄膜です。何らかの原因で髄膜に炎症が起こった状態が髄膜炎になります。主な原因は、感染性(細菌、ウイルス、真菌、結核菌)、自己免疫疾患、がんなどが挙げられます。中でも細菌による髄膜炎は進行が早く後遺症が残りやすいため、すぐに診断し治療を行う必要があります。主な症状は発熱・頭痛・嘔吐・首の硬直・意識朦朧・けいれんなどですが、細菌性髄膜炎になると特にぐったりすることが多いです。 腰に針を刺して脳脊髄液を採取して、その中に原因がないかを調べる検査(腰椎穿刺)を行います。治療は髄膜炎の原因に基づいたものを行いますが、原因がわからない場合は細菌性髄膜炎の可能性を考えて抗菌薬を投与することになります。検査や治療は専門的なことを行うため、神経内科や感染症内科を受診して下さい。

髄膜炎について

  • 脳や脊髄を包んでいる髄膜に炎症が存在する状態
    • 細菌ウイルス真菌などに感染したことが原因となる場合が多い
    • まれに、アメーバやマラリアのような原虫や寄生虫が原因となることもある
    • 膠原病などの自己免疫性疾患でも起こることがある
    • がんの影響で起こることがある
  • 病原体によって分類される(詳細はそれぞれの疾患を参照)
  • 髄膜の炎症が脳まで達すると脳炎という状態になる
  • 化膿性髄膜炎は症状が重くなることが多く、脳に障害を起こしたり、死に至ることもある
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髄膜炎の症状

  • 主な症状
    • かぜのような軽い症状(初期)
    • 発熱
    • 嘔吐
    • 頭痛
  • 性髄膜炎の場合は重症となりやすく、以下の症状が現れ、脳の障害に至ることもある
    • 首が曲がらない
    • 意識がもうろうとする
    • けいれん
症状の詳細

髄膜炎の検査・診断

  • 血液検査
    • 炎症が起こっているかや全身の炎症がどの程度なのかなどを調べる
  • 髄液検査
    • 腰に針を刺して脳脊髄液を採取する検査(腰椎穿刺
    • 髄液の中にどの程度炎症物質やタンパク質があるのかを調べる:髄膜炎であるかどうかを調べる
    • 髄液の中にウイルス細菌がいるかを調べる
      • 髄液の中に細菌がいるのかを顕微鏡で調べる
      • 髄液を用いて細菌の培養やウイルスの培養検査を行う
      • 髄液を用いてウイルスの抗体価を調べる
  • 画像検査
    • CT検査
      • 髄膜炎以外の病気がないか調べる
      • 髄液検査が適切に行えるかどうかを判断するために行われることもある
    • MRI検査
      • 髄膜炎が進行することによる細菌のかたまり(膿瘍)ができていないかを調べる
検査・診断の詳細

髄膜炎の治療法

  • 主な治療は薬物治療
    • 細菌が原因となっている場合(化性髄膜炎)
      • 抗菌薬
      • 最初はさまざまな細菌に効く抗菌薬を使う
      • 原因となっている細菌が分かり次第、最も適した抗菌薬に切り替える
    • 細菌以外が原因となっている場合(無菌性髄膜炎)
      • ウイルスには抗菌薬は効かない
      • 水分の補充など体力の回復を促しながら治癒を待つ
      • 一部の種類のウイルス(ヘルペスウイルス水痘帯状疱疹ウイルスサイトメガロウイルス)が原因と考えられる場合には、抗ウイルス薬と呼ばれる薬が使われることもある
治療法の詳細

髄膜炎に関連する治療薬

カルバペネム系抗菌薬

  • 細菌の細胞壁合成を阻害し殺菌的に抗菌作用をあらわす薬
    • 細胞壁という防御壁をもつ種類の細菌は、細胞壁が作れないと生きることができない
    • 細胞の細胞壁合成に深く関わるペニシリン結合タンパク質(PBP)というものがある
    • 本剤は細菌のPBPに結合し細胞壁合成を阻害することで抗菌作用をあらわす
  • 本剤がもつ抗菌作用の範囲は幅広く多くの細菌に対して抗菌作用が期待できる
カルバペネム系抗菌薬についてもっと詳しく

セフェム系抗菌薬

  • 細菌の細胞壁合成を阻害し細菌を殺すことで抗菌作用をあらわす薬
    • 細胞壁という防御壁をもつ細菌はこれがないと生きることができない
    • 細菌の細胞壁合成に深く関わるペニシリン結合タンパク質(PBP)というものがある
    • 本剤は細菌のPBPに作用し細胞壁合成を阻害することで細菌を殺す作用をあらわす
  • 妊婦にも比較的安全に投与できるとされる
  • 開発された世代によって第一世代〜第四世代に分けられる
    • 各世代で、各種細菌へ対して、それぞれ得手・不得手がある
    • 世代が同じであっても薬剤によって各種細菌に対して得手・不得手の違いが生じる場合がある
セフェム系抗菌薬についてもっと詳しく

髄膜炎の経過と病院探しのポイント

髄膜炎が心配な方

髄膜炎は大きく病状に幅のある病気です。症状が微熱と軽い頭痛程度で、かぜと間違えられて、それでもいつの間にか自然に治っているという場合もそれなりの割合であると考えられています。軽いものであればこのように、診断もつかないうちに治ってしまいます。一方で重症のものでは意識がもうろうとして動けなくなってしまったり、全身がけいれんしたりといった場合もあります。

ご自身が髄膜炎でないかと心配になった時、意識がはっきりとしていればまずはお近くの内科や小児科クリニックの受診をお勧めします。その上でもし髄膜炎が強く疑われるということになれば、最初にかかった医療機関から診療情報提供書(紹介状)をもらった上で専門病院を受診する形になることが多いでしょう。

髄膜炎の診断のためには腰椎穿刺といって、背中から針を刺して背骨の内側にある髄液を採取することが必要です。レントゲンやCTなどの画像検査で髄膜炎を診断することはできませんが、他の病気でないことを確かめるために頭部CTの撮影が必要になることがあります。

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髄膜炎でお困りの方

髄膜炎の治療は、細菌性髄膜炎かそれ以外かで大きく分かれます。細菌性髄膜炎は重症感染症の一つで、抗生物質の点滴を行います。それ以外の髄膜炎には一部を除き効果的な薬がないため、対症療法を行います。また内服薬では治療できないため、そして悪化すると命に関わる病気であるため、入院が必要となります。

髄膜炎については、診断がつき次第その場で治療が開始されますし、治療の方法にもバリエーションが少ないため、どのような治療を受けるか迷う余地は少ない病気と言えます。

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髄膜炎が含まれる病気

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