ずいまくえん
髄膜炎
脳と脊髄を包んでいる髄膜が、炎症を起こしている状態。場合によっては神経の重い後遺症が残ったり死に至ったりすることもある
17人の医師がチェック 199回の改訂 最終更新: 2018.10.20

髄膜炎の検査について:診断のために必要なこと

髄膜炎が疑われる人には問診や身体診察、画像検査、髄液検査などが行なわれます。「髄膜炎かどうか」や「髄膜炎の原因」を調べることが検査の目的です。

1. 問診:状況や背景の確認

問診では身体に起こっている状況や、持病といった患者さんの背景が確認されます。患者さんは問診で、困っている症状や心配なことなどをお医者さんに伝えてください。一方で、お医者さんからは持病や内服中の薬などの質問を受けます。髄膜炎が疑われる人は問診で次のような質問を受けます。

  • どんな症状で困っているのか
  • 症状を自覚したのはいつくらいか
  • 症状が現れている場所はどこか
  • 症状が良くなったり悪くなったりするか
  • 今までにかかったことがある病気や、持病はあるか※
  • 定期的に飲んでいる薬はあるか※

答えるのにコツがいる※印の質問は次で詳しく説明します。

今までにかかったことがある病気や、持病はあるか

免疫力が低下している人」や「脳外科の手術を受けた人」、「脳に器具を埋め込んでいる人」は健康な人に比べて髄膜炎になりやすいです。加えて、起炎菌(髄膜炎の原因となる細菌)が健康な人とは異なります。治療は起炎菌に合ったものが選ばれなければなりません。今までにかかったことがある病気や持病は起炎菌を予想するうえでの手がかりになるので、正確に伝えることが大切です。

次のように整理しておくと上手に伝えることができます。

  • 通院をしている病気
  • 入院をしたことがある病気
  • 治療をしていたが治ったと言われた病気
  • 手術を受けた病気

治療に際してより詳しい情報が必要になる場合があります。その際には、治療を受けた医療機関の名前を伝えると、お医者さん同士で連絡を取り合って情報の共有が行われます。病気について詳しい状況が説明できない場合は、どの医療機関でいつ頃治療したかを伝えてください。

定期的に飲んでいる薬はあるか

髄膜炎は薬の副作用で起こることがあり、薬剤性髄膜炎と呼ばれます。

髄膜炎を起こす薬剤としては解熱鎮痛剤(痛み止めや熱冷まし)や抗てんかん薬などが知られています。市販薬として購入できるものでも髄膜炎の原因になることがあるので、医療機関から出ている薬だけではなく市販薬も伝えるようにしてください。医療機関から出ている薬を上手に伝える方法としては「お薬手帳」の活用するとよいです。お薬手帳には服用中の「薬の種類」や「薬の開始時期」などが記載されているので、薬の情報をもらさずに伝えることができます。

2. 身体診察

身体診察ではお医者さんが全身をくまなく調べて客観的な評価を行います。髄膜炎が疑われる人には主に次のような身体診察が行なわれます。

  • バイタルサインの測定
  • 視診:身体の表面を観察する診察
  • 触診:身体を触る診察
  • 聴診:聴診器を使った診察
  • 打診:身体を軽く叩くことによる診察
  • 神経診察

髄膜炎が疑われる人の身体診察で、特に大切な「バイタルサインの測定」と「神経診察」について詳しく説明します。

バイタルサインの測定

バイタルサイン(vital signs)は日本語にすると「生命徴候」という意味で、次の6つを指すことが多いです。

【バイタルサイン】

  • 脈拍数
  • 呼吸数
  • 体温
  • 血圧
  • 意識状態
  • 酸素飽和度(血液中に含むことのできる酸素の最大量に対して実際に含まれている酸素の割合)

生命に危険が迫っている場合には複数のバイタルサインに異常が現れます。髄膜炎のような深刻な病気では、生命の危険をすばやく察知するためにバイタルサインが注目され、治療中に何回もバイタルサインが測定されます。

神経診察

身体の反射や動き方などから脳や神経の異常を調べることができます。神経診察はたくさんの診察がありますが、髄膜炎が疑われる場合、髄膜刺激症状の有無が特に重要です。

■髄膜刺激症状

脳や脳脊髄液を覆う髄膜に炎症が起こると、髄膜刺激症状という症状が現れます。発熱や頭痛、嘔吐に髄膜刺激症状が加わると髄膜炎が起こっている可能性が高まります。髄膜刺激症状として主に次の3つが知られています。

  • 項部硬直
  • ケルニッヒ徴候
  • ジョルトサイン(jolt accentuation)

専門的な言葉なので、それぞれについて詳しく説明します。

  • 項部硬直

項(うなじ)の部分が固くなることを「項部硬直」といいます。平たくいうと首が固くなっているということです。診察では、仰向けに寝た患者さんの頭部をお医者さんが持ち上げて、首の曲がりにくさ(抵抗)の有無を調べます。抵抗があると「項部硬直がある」と判断されます。

  • ケルニッヒ徴候

仰向けに寝た患者さんの片足を、膝を曲げた状態で持ち上げて股関節を曲げます。その後、股関節を曲げた状態で膝を伸ばそうとしても膝が伸びきらない場合、ケルニッヒ徴候が陽性(異常がある)、つまり髄膜刺激症状があると判断されます。また、膝から下を伸ばしたまま股関節を曲げようとすると、膝が曲がってしまう場合もケルニッヒ徴候は陽性です。

  • ジョルト・サイン(jolt accentuation)

1秒間に2−3回首を左右に振ってもらい、首を振る前後で頭痛が悪化するかどうかを調べる診察です。頭痛が悪化した場合はジョルト・サインが陽性です。

3. 血液検査

血液検査は「炎症の程度」や「全身状態」を知る目的で行われます。

炎症の程度を調べる

髄膜炎では身体の中に炎症が起こっています。炎症が起こると炎症性サイトカインという物質が身体でつくられて、その影響を受けて身体にさまざまな反応が起こり、血液中では白血球CRPというものが増加します。

■白血球(WBC)

白血球は体内で感染が起こると増加することが多いので、感染の有無を推測するのに用いられます。感染以外でも白血球が増加するので、白血球の増加だけで感染が起こっていると確定的な判断できません。白血球の量は炎症の程度などを判断する材料として使うことができます。

■CRP(C反応性蛋白)

CRPは炎症が起こったときに肝臓で作られるタンパク質です。白血球同様に感染症が疑われる際に測定されることが多いです。CRPは感染症以外の炎症でも増加するので、CRPが上昇しているからといって感染症が起こっている判断はできません。白血球と同じように炎症の程度を推測するのに役立てることができます。

全身状態を調べる

髄膜炎が起こると、嘔吐や発熱などにより脱水になったり電解質(身体の水分に含まれている物質)に異常が現れたりします。

血液検査を行うことで、異常の程度を知ることができます。脱水や電解質の異常がある場合、髄膜炎の治療とともに点滴で異常を整えます。

また、髄膜炎の治療薬は肝臓や腎臓の機能に合わせて薬の量の調節が必要です。薬の量を決めるために、血液検査で肝臓や腎臓の機能が低下していないかどうかも調べられます。

4. 画像検査

髄膜炎が疑われる場合、CT検査とMRI検査が行われます。

頭部CT検査

CT検査では、放射線を用いて身体の中を画像としてみることができるので、脳の形や脳の中での出血の有無などを調べることができます。髄膜炎の診断を頭部CT検査で行うわけではありませんが、髄膜炎以外の病気が起こっていないかを調べるのに向いています。例えば、意識障害を起こしている患者さんには髄膜炎が疑われる一方で、くも膜下出血など他の病気の可能性についても検討されければなりません。CT検査を行うことで髄膜炎と他の病気との区別がつきやすくなります。

また、髄膜炎が疑われる人に行われる髄液検査は、脳ヘルニア(脳が変形している状態)や脳の占拠性病変腫瘍や出血、の溜まりなど)がある人には行うことができません。頭部CT検査では、脳ヘルニアや、脳の占拠性病変の有無も判断できます。

頭部MRI検査

MRI検査は磁気を利用した検査です。放射線を用いることはないので、被曝の心配はありません。またCT検査と同様に頭の中の状態を画像化して詳しく調べられます。

頭部CT検査の結果からは頭の中の状態の判断が付きづらい場合には、頭部MRI検査が用いられることがあります。しかし、MRI検査は時間がかかるので、すみやかに治療を始めなければならない場合には向いていません。病気の治療が進んで、身体の状態が安定した場合などに行われることがあります。

5. 微生物学的検査

微生物学的検査では髄膜炎の原因微生物を特定することができます。
原因微生物が分かると最適な治療法を選ぶことができるので、微生物検査は重要です。
髄膜炎の微生物学的検査には主に「塗抹検査」と「培養検査」「遺伝子検査」の3つがあります。

塗抹検査

塗抹検査は感染が疑われる検体(人体から得られるもの)を顕微鏡で観察する検査のことです。例えば、肺炎が疑われる場合は痰が検体になり、髄膜炎が疑われる場合は髄液が検体になります。塗抹検査では原因微生物の大まかな特徴を知ることができます。また、次で説明する培養検査とは違って、短時間(10分から30分程度)で結果がわかるので、治療を始める際に役立てられます。短時間で結果がわかる一方で、細菌や真菌の名前などの詳しい情報は塗抹検査ではわからないので、より詳しい情報を得るために次で説明する培養検査も必要です。

培養検査

培養検査は微生物が育ちやすい環境に検体をおいて、微生物を増やして調べる検査です。培養検査では塗抹検査より多くの情報が得られます。具体的には「微生物の名前」や「薬の効きやすさ」などです。

微生物の詳しい情報を得ることができる培養検査ですが、塗抹検査とは違って結果が判明するのに数日かかります。治療を開始する際には培養検査の結果はわからないので、開始時の治療の参考にはできません。検査結果が出た後には、得られた微生物の情報を元に治療薬を最適なものに変更することができます。

遺伝子検査

遺伝子検査では、主に脳脊髄液に含まれている原因微生物のDNAやRNAを特殊な方法で増幅させて、病原体を詳しく調べます。ウイルス結核菌が原因と疑われる場合に遺伝子検査が用いられます。代表的な遺伝子検査はPCR法というものです。遺伝子検査は培養検査と同じく結果がわかるまでに数日かかるので、治療を始める際には参考にできません。しかし、結果がわかった後にはをそれを踏まえて治療を最適なものに変更することができます。

6. 髄液検査

髄液検査では髄液(脳脊髄液)を取り出していくつかの項目を調べます。検査結果から髄膜炎の原因を推測することができます。

髄液を取り出す方法:腰椎穿刺

髄液は腰椎穿刺という方法を用いて取り出されます。腰椎穿刺では腰の骨の間に細い針を刺して、脳脊髄液を抜き出します。腰椎穿刺の詳しい方法については「腰椎穿刺(ルンバール)の目的、方法、合併症」で説明しているので参考にしてください。

髄液検査で調べられること

髄液検査では主に次の項目が調べられます。専門的な内容も含んでいるので、ここは読みとばしても問題はありません。

【髄液検査で調べられること】

  • 髄液の外見
  • 髄液圧
  • 細胞数
  • 総蛋白

髄膜炎は原因によって、次の表で示すような特徴が現れます。

【原因別にみる髄膜検査の結果】

  細菌 ウイルス 結核 真菌性
髄膜の外見 混濁 透明 透明〜黄色 透明
髄液圧 ↑↑
(非常に高い)

(高い)

(高い)

(高い)
細胞数 ↑↑
(非常に多い)
多形核白血球

(多い)
リンパ球

(多い)
リンパ球

(多い)
リンパ球
総蛋白 ↑↑
(著しく増加)

(増加)

(増加)

(増加)

(低下)

(正常)

(低下)

(低下)

髄膜炎のなかでも細菌性髄膜炎は重症化しやすく生命に危険を及ぼすことがあるので、髄膜炎が疑われる場合、細菌性髄膜炎かどうかをはっきりさせることが重要です。

「髄液が膿で濁っている」「髄液圧が非常に高い」など細菌性髄膜炎は髄液検査に特徴があるので、検査の結果からすみやかに診断できることがあります。また、細菌以外の原因も髄液検査の結果から見当をつけることができるので、原因の推測に役立てられます。

【参考文献】

・「神経内科ハンドブック第5版」(水野美邦/編)、医学書院、2016年
細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014-日本神経感染学会
・「レジデントのための感染症診療マニュアル第3版」(青木眞/著)、医学書院、2015年
・「がん患者の感染症診療マニュアル」(大曲貴夫/監)、南山堂、2012年
厚生労働省 重篤副作用別疾患対応マニュアル 無菌性髄膜炎