ずいまくえん
髄膜炎
脳と脊髄を包んでいる髄膜が、炎症を起こしている状態。場合によっては神経の重い後遺症が残ったり死に至ったりすることもある
17人の医師がチェック 199回の改訂 最終更新: 2018.10.20

髄膜炎の予防のために知っておきたいこと:ワクチンの接種や感染力の強い髄膜炎菌について

髄膜炎の主な原因は細菌ウイルスなどによる感染症です。手洗いやうがい、ワクチンの接種などによって感染症にかかる可能性を下げることができます。また、髄膜炎にかかりやすい特徴を持っている人はより予防を徹底する必要があります。

1. 髄膜炎を予防するために知っておきたいこと

髄膜炎を起こす病原体(細菌やウイルスなど)の一部にはワクチンがあり、予防接種をすることで感染する可能性を下げることができます。感染予防の基本である、手洗いやうがいなどの「衛生の保持」も重要です。また、免疫機能の働きが低下している人は感染症にかかりやすいので、健康な人よりも予防を徹底しなければなりません。

衛生の保持を行う

髄膜炎の原因の多くは病原体が身体に入り込んで起こる感染症です。一般的な感染症と同様に手洗いやうがいが予防に有効です。手洗いやうがいによって、手やのどについた病原体が身体の中まで侵入するのを防ぐ効果が期待できます。

身体に傷がある場合はさらに注意が必要です。身体は皮膚や粘膜のバリア機能により病原体から守られています。しかし、傷ができるとバリア機能が破綻して、病原体が侵入しやすくなります。傷ができた場合は、水で洗浄して清潔を保つことが重要です。

予防接種を行う

髄膜炎を起こす病原体(細菌やウイルスなど)の中にはワクチンがあるものがあります。予防接種をすることで感染の危険性を下げることができます。

予防接種がある病原体は主に次のものです。

  • 細菌
    • 肺炎球菌(小児と高齢者)
    • インフルエンザ桿菌
    • 結核菌
    • 髄膜炎菌
  • ウイルス

予防接種を受ける前に知っておきたい「予防接種の種類」と「持続期間」について説明します。

■予防接種には定期接種と任意接種の2種類がある

予防接種には「定期接種」と「任意接種」2つの種類があります。定期接種は法律に基づいて市町村が主体になって、公費(一部で自己負担あり)を用いて行われます。任意接種は個人の希望で実施するもので、費用は自己負担になります。上のリストの中では、インフルエンザウイルス(高齢者を除く)と髄膜炎菌は任意接種ですが、他は定期接種で受けることができます。

髄膜炎菌の予防接種は「中央アフリカなどの流行地に行く人」や「ハイリスクの人(脾臓を摘出している人、脾臓が先天的にない人)」に行うことが勧められています。

■予防接種の効果の持続期間には違いがある

ワクチンごとに効果の持続期間に違いがあるので注意が必要です。例えば、インフルエンザウイルスワクチンは毎年打つことが推奨されていますが、高齢者の肺炎球菌ワクチンは5年毎が推奨されています。このようにワクチンによって打つ間隔が違います。どのワクチンをいつ打ったのかを記録しておくとワクチンを打つタイミングをはっきりさせることができます。

予防接種については「麻疹流行に備えて感染症内科医から伝えたいこと」や「風疹流行に際し感染症内科医から伝えたいこと」「2歳までに16回!赤ちゃんの予防接種スケジュールの上手な立て方」で詳しく説明しているので参考にしてください。

2. 髄膜炎に注意が必要な人:中耳炎・副鼻腔にかかっている人や脳外科手術後の人、易感染状態の人など

誰でも髄膜炎になる可能性はありますが、特に髄膜炎に気を付けなければならない人がいます。具体的に次のような人です。

ここであげた人について個別に説明します。

なお、髄膜炎に早く気づくためには症状についての理解も重要です。症状は「髄膜炎の症状について」で説明しているので参考にしてください。

中耳炎副鼻腔炎にかかっている人

中耳炎副鼻腔炎にかかっている人では、耳や鼻の感染が広がって髄膜炎が起こることがあります。特に、このあと説明する易感染状態(感染に対する抵抗力が落ちている状態)の人が中耳炎副鼻腔炎になっているときには注意が必要です。

■脳外科手術後の人

脳外科の手術で頭を開くと、一定の確率で細菌が入り込んでしまいます。このため、手術の後には細菌性髄膜炎が起こりやすいです。脳外科手術後にお医者さんが毎日診察をする目的の1つは、髄膜炎が起こっていないかを調べることです。髄膜炎が見つかった場合は、抗菌薬による治療が行われ、必要に応じて再手術が検討されます。

また、脳外科の手術では症状を軽くして、退院後の生活を送りやすくするために、脳に器具を埋め込むことがあります。器具を埋め込んだ周りは病原体が繁殖しやすい環境なので、感染が起こりやすくなります。

頭に器具を埋め込んでいる人が、退院後に頭痛や発熱を自覚した場合、感染が起こった可能性があります。手術を受けた医療機関を受診してください。

■易感染症状態の人

感染に対して抵抗力が落ちている状態のことを易感染状態といいます。糖尿病や免疫抑制剤の服用、がん肝硬変などが原因です。易感染状態になると、感染症にかかりやすく、かかった後も重症化しやすいです。易感染状態の人は普段から上で説明した「衛生の保持」や「予防接種」を行い、予防に努めてください。また、感染が起こった後は重症化をさけるために、なるべく早く治療を始めなければなりません。易感染状態の人は、感染が疑われる症状や受診するタイミングについて、かかりつけのお医者さんと相談しておいてください。

3. 髄膜炎はうつる病気なのか

髄膜炎が「うつる」ことはほとんどありません。

髄膜炎は細菌やウイルスなどの感染性のある病原体が原因で起こります。原因となった病原体は他の人に「うつる」ことはあっても、その後、髄膜炎を起こすとは限らず、実際、髄膜炎にならないことがほとんどです。しかし、例外があります。髄膜炎菌は「うつる」と髄膜炎菌性髄膜炎を起こしやすく、流行性髄膜炎とも呼ばれます。

髄膜炎菌性髄膜炎は日本では多くはありませんが、海外では流行している地域があるので、渡航前に髄膜炎菌の予防接種が勧められています。特に、中央アフリカを中心に髄膜炎菌は流行しているので、ワクチンを接種するようにしてください。流行地以外の海外でも、集団生活で感染するリスクが高くなるとされています。留学先で寮生活をする場合は、髄膜炎菌の予防接種をするようお勧めします。

4. 髄膜炎は再発することがあるのか

適切な治療を行わないと髄膜炎は再発することがあります。再発させないためには治療をきちんとすることが大切です。例えば、真菌性髄膜炎や結核性髄膜炎は治療期間が長く1年以上かかることがあります。状態が落ち着けば退院して治療を続けることになるので、長期間に渡って自分で薬の管理をしなければなりません。症状がなくなると、もう治ったものと自己判断をして薬をやめてしまう人がいますが、これは危険な行為です。お医者さんの指示通り定期的に通院をし薬を飲み続けないと、再発の危険性が高まります。再発を防いできちんと病気をなおすために、薬の投与期間はしっかりと守るようにしてください。

【参考文献】

・「神経内科ハンドブック第5版」(水野美邦/編)、医学書院、2016年
細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014-日本神経感染学会
・「レジデントのための感染症診療マニュアル第3版」(青木眞/著)、医学書院、2015年
・「がん患者の感染症診療マニュアル」(大曲貴夫/監)、南山堂、2012年
厚生労働省 重篤副作用別疾患対応マニュアル 無菌性髄膜炎