ずいまくえん
髄膜炎
脳と脊髄を包んでいる髄膜が、炎症を起こしている状態。場合によっては神経の重い後遺症が残ったり死に至ったりすることもある
17人の医師がチェック 199回の改訂 最終更新: 2018.10.20

髄膜炎の原因について:子どもと大人の起炎菌の違いや起こりやすい人の特徴(手術後・免疫不全など)

髄膜炎は細菌性髄膜炎と無菌性髄膜炎の2つに大別されます。細菌性髄膜炎の原因は細菌ですが、無菌性髄膜炎の原因はウイルスがん自己免疫疾患などさまざまです。

1. 髄膜炎の原因と種類について:細菌感染やウイルス感染など

髄膜炎は細菌性髄膜炎(細菌感染が原因)と無菌性髄膜炎(細菌以外が原因)の2つに大別されます。主に肺炎球菌インフルエンザ桿菌が原因になります。一方で、無菌性髄膜炎の原因は、ウイルスや真菌といった感染症、がん、自己免疫性疾患といった病気などです。また、結核スピロヘータは細菌ですが、治療などが特殊なため無菌性髄膜炎に分類されることが多いです。

【髄膜炎の主な原因】

  • 細菌性髄膜炎
    • 肺炎球菌
    • インフルエンザ桿菌
    • 髄膜炎菌
    • リステリア
  • 無菌性髄膜炎
    • ウイルス
    • 真菌
    • 結核菌
    • スピロヘータ
    • 悪性腫瘍(がん)
    • 自己免疫性疾患
    • 薬剤

それぞれ治療法が異なるので、原因を特定することが重要です。

次に原因について詳しく説明します。

2. 細菌性髄膜炎の起炎菌について

起炎菌(起因菌または原因菌)は感染を起こしている菌のことです。最も効果が高い抗菌薬を選ぶためには、起炎菌の情報が必要になります。起炎菌は微生物学的検査によって知ることができます。しかし、一刻も早く治療を始めなければならない重症な髄膜炎では検査より先に治療を始めなければならないことがあります。その際には、年齢や身体の特徴によって髄膜炎の起炎菌を予測して治療を始めます。(細菌性髄膜炎の治療は「髄膜炎の治療について」で説明しているので参考にしてください。)

次に、年齢や身体の特徴に注目して細菌性髄膜炎の起炎菌を説明します。

年齢ごとの髄膜炎の起炎菌:赤ちゃん、子ども、大人

年齢によって髄膜炎の起炎菌になりやすいものが異なります。
生後3ヶ月以内の赤ちゃんではB群溶連菌や大腸菌、リステリアなどが起炎菌になります。新生児では産道を通過するときに母体についている細菌に感染することが、主な感染経路です。生後3ヶ月以降の子どもから大人まではインフルエンザ桿菌や肺炎球菌が主な起炎菌になり、まれに髄膜炎菌も起炎菌になります。大人でも50歳以上の人では肺炎球菌やインフルエンザ桿菌に加えて、大腸菌やクレブシエラといった腸内細菌が起炎菌になることがあります。

髄膜炎が起こりやすい特徴がある人の起炎菌:易感染状態の人や脳外科手術後の人

次の特徴がある人は、健康な人に比べて髄膜炎になりやすく、その起炎菌も異なります。

  • 易感染状態の人(感染症に対する抵抗力が落ちている人)
  • 脳の手術後の人や脳の中に器具を埋め込んでいる人

次にそれぞれの条件を持つ人が感染しやすい起炎菌ついて説明します。

■易感染状態の人

易感染状態とは感染症への抵抗力が落ちている状態のことです。具体的には、主に「糖尿病の人」や「免疫抑制剤を使っているの人」、「がんの治療中の人」、「手術後の人」のことです。易感染状態の人では次のような細菌が髄膜炎の原因になることが多いです。

  • 肺炎球菌
  • 髄膜炎菌
  • リステリア
  • 緑膿菌

健康な人の主な起炎菌である肺炎球菌や髄膜炎菌に加えて、易感染状態の人ではリステリアや緑膿菌が起炎菌になります。

■脳の手術後の人や脳に器具を埋め込んでいる人

脳の手術で頭を開いた時に、細菌が頭の中に紛れ込んでしまい、髄膜炎が起きることがあります。また、身体の中にある異物は細菌がついて繁殖しやすいので、感染の原因になります。頭に埋め込んでいる器具に感染が起こると、髄膜炎になることがあります。脳の手術後の人や脳に器具を埋め込んでいる人の髄膜炎は次のような細菌が原因になることが多いです。

  • 黄色ブドウ球菌
  • コアグラーゼ陰性ブドウ球菌
  • 緑膿菌

正常な人の主な起炎菌である肺炎球菌やインフルエンザ桿菌ではなく、皮膚の常在菌(黄色ブドウ球菌やコアグラーゼ陰性ブドウ球菌)が起炎菌になりやすいです。また、手術直後は免疫機能が低下しているので、易感染状態の人と同じく緑膿菌なども起炎菌になることがあります。

3. 無菌性髄膜炎の原因について

無菌性髄膜炎は細菌感染以外の原因によるものを一括りにしたものです。その原因はウイルスや真菌などの感染症、がん、薬の副作用などさまざまです。

【無菌性髄膜炎の原因】

  • ウイルス
  • 真菌
  • 結核菌
  • スピロヘータ
  • 悪性腫瘍(がん)
  • 自己免疫性疾患
  • 薬剤

それぞれの原因について詳しく説明します。

ウイルス

ウイルスも細菌も感染症を起こす病原体として知られていますが、全く異なる微生物です。例えば、大きさを比較すると、ウイルスは細菌の1/10から1/100 程度しかありません。

髄膜炎を起こすウイルスには主に次のようなものがあります。

ウイルスは感染を起こす点で細菌と同じですが、細菌に有効な抗菌薬は効きません。そのため、ウイルス性髄膜炎にかかった場合は、抗菌薬で治療するのではなく免疫機能によってウイルスが排除されるのを待ちます。例外として、単純ヘルペスウイルスと水痘帯状疱疹ウイルスに対しては抗ウイルス薬があるので、状況に応じて使うことがあります。治療の詳しい説明は「髄膜炎の治療について」で説明しています。

結核菌

結核菌は主に肺に感染することが多いですが、脳脊髄液に侵入して髄膜炎の原因になることがあります。なお、結核は細菌の一種ですが、特殊な例として無菌性髄膜炎の1つとして扱われることが多いです。細菌性髄膜炎とは違って結核性髄膜炎の症状は、比較的緩やかに現れることが多いです。また、細菌性髄膜炎では目立って見られる発熱や髄膜刺激症状(「髄膜炎の症状について」を参考)といった特徴的な症状が現れないことがあるので、疑われにくいです。

また、結核性髄膜炎であっても、塗抹検査から結核菌が検出されないことも多いので、塗抹検査だけでは見落とされてしまいます。このため、塗抹検査に加えて培養検査(抗酸菌培養検査)や遺伝子検査、抗体検査(T-SPOT、クオンティフェロンTBゴールド)が行われ、複数の検査結果から総合的に診断が行われます。(塗抹検査、培養検査、遺伝子検査については「髄膜炎の検査について」を参考。)

治療には、肺結核と同様に結核菌に対して殺菌効果のある抗結核薬が用いられるほか、後遺症を残りにくくするためにステロイド薬も使われます。

結核性髄膜炎についてさらに詳しく知りたい人は「結核性髄膜炎(脳結核腫)の基礎情報ページ」も参考にしてください。

真菌

名前は似ていますが、真菌と細菌は違う病原体です。真菌はいわゆる「カビ」のことです。髄膜炎を起こす主な真菌は「カンジダ」と「クリプトコッカス」の2つです。

■カンジダ

次のような条件をもつ人にカンジダによる髄膜炎が起こりやすいと考えられています。

【カンジダによる髄膜炎になりやすい人】

  • 火傷後の人
  • 広域スペクトラムの抗菌薬(幅広い種類の細菌に有効な抗菌薬)を使用している人
  • ステロイド治療(免疫力を抑える治療)中の人
  • V-Pシャント水頭症の治療。詳しくは「水頭症の基礎情報ページ」)がある人
  • 中心静脈カテーテル(身体の太い静脈に挿入する点滴用の管)を入れている人

症状は緩やかに現れる場合もあれば急激に現れる場合もあります。髄液の塗抹検査や培養検査でカンジダの有無を調べることによって診断が行われます。アムホテリシンBリポソーム製剤(アムビゾーム®)やアムホテリシンB(ファンギゾン®)、フルコナゾールが治療に用いられます。

■クリプトコッカス

免疫力が低下した人〔AIDS後天性免疫不全症候群)や悪性リンパ腫の人、ステロイド治療中などの人〕に起こりやすいことが知られています。アムホテリシンBリポソーム製剤とフルシトシンという2つの薬で治療されることが多く、治った後も再発予防として、しばらく薬を飲み続ける必要があります。

スピロヘータ

スピロヘータは細菌のなかの1グループを指します。しかし、特殊な構造をしているので、一般的な細菌とは区別されることが多く、髄膜炎の分類でも無菌性髄膜炎に分類されることが多いです。スピロヘータにもいくつも種類がありますが、代表的なものが梅毒トレポネーマです。梅毒トレポネーマによる髄膜炎は神経梅毒という呼び名で知られています。その他の、髄膜炎を起こすスピロヘータにはレプトスピラ症ワイル病)やライム病があります。

悪性腫瘍(がん)

がん細胞が、髄膜に包まれている脊髄液に入り込んで広がり、髄膜炎を起こすことがあります。これをがん性髄膜炎といいます。がんが脳に転移をした後に起こることが多いので、脳転移を起こしやすい肺がん乳がんが主な原因です。がん治療中に頭痛や吐き気、ボーッとするなどの症状が現れた場合にはがん性髄膜炎を起こしている可能性があります。疑わしい症状がある場合は治療を受けている医療機関で相談してください。

自己免疫性疾患

本来は自分の身を守ってくれる免疫機能の異常によって、自分の身体が攻撃を受けてしまう病気を自己免疫性疾患といいます。全身性エリテマトーデスベーチェット病強皮症などです。自らの免疫細胞が髄膜に炎症を起こすと、髄膜炎になることがあります。自己免疫性疾患の治療中に頭痛や気分の落ち込み、けいれんなどの症状が現れた場合には、髄膜炎を起こしている可能性があるので、治療を受けている医療機関で相談してください。

薬剤

薬の副作用によって髄膜炎が起こることがあり、薬剤性髄膜炎といいます。薬剤性髄膜炎を起こすものとして「解熱鎮痛薬」と「抗てんかん薬(てんかん発作の薬)」が知られています。イブプロフェン(イブ®)やロキソプロフェン(ロキソニン®)といった市販薬として入手できる解熱鎮痛剤でも薬剤性髄膜炎の原因になります。薬剤性髄膜炎は薬を中止しないとよくなることはありません。

もし、髄膜炎が疑われたときには、服用している薬を市販薬をふくめて全て伝えるようにしてください。服用している薬に伝えもれがあると、お医者さんは薬剤性髄膜炎を疑うことができないこともあります。市販薬でも髄膜炎の原因になると聞くと心配になりますが、薬剤性髄膜炎の頻度は少ないので過度に心配する必要はありません。

【参考文献】

・「神経内科ハンドブック第5版」(水野美邦/編)、医学書院、2016年
細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014-日本神経感染学会
・「レジデントのための感染症診療マニュアル第3版」(青木眞/著)、医学書院、2015年
・「がん患者の感染症診療マニュアル」(大曲貴夫/監)、南山堂、2012年
厚生労働省 重篤副作用別疾患対応マニュアル 無菌性髄膜炎