ぜんしんせいきょうひしょう
全身性強皮症
皮膚を中心として体のさまざまな臓器が線維化する(弾力性を失って機能が落ちる)病気
7人の医師がチェック 147回の改訂 最終更新: 2020.01.15

全身性強皮症の基礎知識

POINT 全身性強皮症とは

皮膚を中心として体のさまざまな臓器が線維化する(弾力性を失って機能が落ちる)病気です。免疫の異常により起こる自己免疫疾患の一種です。症状としてレイノー現象、指先を中心として皮膚が硬くなる、息苦しさ、咳などを自覚します。食道の動きが悪悪くなることもあり、食べ物が胸で通りにくくなります。血液検査、レントゲン検査、CT、心臓超音波検査などを行います。治療としてステロイド、免疫抑制薬、プロトンポンプ阻害薬などの薬剤を使用します。気になる方はリウマチ内科、膠原病内科を受診してください。

全身性強皮症について

  • 皮膚を中心として体のさまざまな臓器が線維化する(弾力性を失って機能が落ちる)病気
  • 免疫の異常により起こる自己免疫疾患の一種と考えられている
  • 日本国内の患者数は2万人以上
    • 男女比は1:10と女性に多い
  • 全身性強皮症は、主に2つに分類される
    • びまん皮膚硬化型全身性強皮症:肘や膝を越えて皮膚硬化が起こる
    • 限局皮膚硬化型全身性強皮症:肘や膝よりも先の部分だけに皮膚硬化が起こる

全身性強皮症の症状

  • まずレイノー症状や皮膚変化が生じることが多い
    • その後、どれくらいの期間でどの内臓の症状が起きるかは人によって異なる
  • 主な症状
    • レイノー症状:寒さなどにより指の先が白くなったり、紫色に変化する
    • 皮膚症状:指先の腫れぼったさから起こることが多い
    • 爪の症状:爪の甘皮の部分に小さな出血が起き、黒い点のように見える
    • 間質性肺炎、肺線維症:通常はスポンジのように柔らかい肺が固くなり、咳が出たり、十分な酸素の取り込みができなくなって息苦しくなる
    • 消化器症状:食道や腸が食べ物を先に送る運動が障害され、食べ物が胸につかえたり、胸焼けがしたり、しつこい便秘になったりする
    • クリーゼ:腎臓につながる血管が障害され、急に血圧が上がる
    • 肺高血圧症:肺に血液を送りにくくなり心臓に負担がかり、息切れなどが起こる
    • 心臓の病気:心筋炎不整脈がおこる。
  • その他の症状として、不整脈・下痢・便秘なども起こることがある

全身性強皮症の検査・診断

  • 血液検査:全身性強皮症に特徴的な自己抗体の有無を調べる
    • どのような抗体が陽性かによって、タイプが異なる
      • 抗セントロメア抗体陽性:限局皮膚硬化型
      • 抗トポイソメラーゼI抗体陽性:間質性肺炎合併しやすい
      • 抗RNAポリメラーゼIII抗体陽性:腎クリーゼ発症しやすい
  • 画像検査
    • CT(胸部、腹部)検査:肺が固くなる変化が出ていないか、食道や腸が拡張していないかを調べる
    • 呼吸機能検査:肺活量など、肺の機能が障害されていないか調べる
  • 肺高血圧症が疑われる場合に行う検査
    • 心臓超音波検査
    • 心臓カテーテル検査
  • 間質性肺炎肺高血圧予後を決めるため、早期に見つけることが大切

全身性強皮症の治療法

  • どの臓器にどの程度の障害が起こっているかによって、治療法が大きく異なる
  • レイノー症状
    • カルシウム拮抗薬(アムロジンなど)
    • ビタミンE(ユベラ)
    • 手袋をするなどして手を冷やさないようにする
  • 皮膚硬化
    • ステロイド薬(プレドニゾロンなど)
    • 免疫抑制薬(リウマトレックスなど)
  • 間質性肺炎
    • ステロイド薬(プレドニゾロンなど)
    • 免疫抑制薬(エンドキサン)
    • 線維化薬(オフェブ)
  • クリーゼ
    • ACE阻害薬(レニベースなど)
  • 逆流性食道炎
     - プロトンポンプ阻害薬 (タケキャブ、ネキシウムなど)
  • 肺高血圧症
    • エンドセリン受容体拮抗薬(トラクリア、ヴォリブリス、オプスミット)
    • PDE5阻害薬(レバチオ、アドシルカ)
    • グアニル酸シクラーゼ刺激薬(アデムパス)
    • プロスタサイクリン誘導体(ドルナー、ベラサス、ケアロード、フローラン)
  • 大量のステロイド薬は腎クリーゼのリスクとなるため使用しない
  • 長期的な経過
    • 病気が進行するにつれて、皮膚だけでなく内臓(食道など)への障害が出現する
    • 心臓、肺または腎臓の組織に障害が起きた場合、特に腎臓の障害がある場合、余命に影響が出る
    • 軽症だった経過が急速に悪化して、致死的な症状を起こす場合もあるので長期にわたって注意が必要

全身性強皮症の経過と病院探しのポイント

全身性強皮症が心配な方

全身性強皮症では、手の色の変化(一時的に真っ白になるレイノー現象)や、皮膚の変化(色や質感の変化)が典型的な症状です。手足の筋力が弱くなったり、全身のだるさ、また、まぶたや手などに皮膚の変化(色や質感の変化)が出現します。

ご自身が全身性強皮症でないかと心配になった時、最初に受診するのは膠原病科かリウマチ科の病院が適しています。専門の医師はリウマチ専門医になりますが、リウマチ専門医には内科系の医師と整形外科系の医師がいるため区別が必要です(両者を認定しているのは同じ学会です)。その医師が内科に所属しているのか、整形外科に所属しているのかが分かれば判断がつくかと思いますが、全身性強皮症を診療するのは内科系のリウマチ専門医になります。

全身性強皮症の診断は問診と診察、血液検査、そして胸部レントゲンやCTで行います。血液検査は一般内科では測定しない特殊な項目も確認しますので、内科のクリニックを受診してその日のうちに診断がつく、というような病気ではありません。既に病気が進行して症状がはっきりとした全身性強皮症でない限り、専門の医師でないと診断をつけることは難しいかもしれません。

特殊な医療機関としては、リウマチセンターを開設している病院もあります。これらの医療機関では、全身性強皮症を専門とする医師やその他スタッフが多く、重症度が高かったり、他の病気と似ていて診断の確定に難渋しているような方に適しています。なお、俗に「リウマチ」とだけ言うと医学的には関節リウマチを指すことが多いですが、「リウマチ系疾患」、「リウマチセンター」というような場合については、関節リウマチに限らず、その他の関節や全身の痛みを伴う疾患(膠原病疾患と重なります)をまとめて指します。全身性強皮症もこの中に含まれる疾患の一つです。

もしかかりつけの内科医師がすでにいるようであれば、いずれの場合でもそこから診療情報提供書(紹介状)をもらった上でより専門的な病院を受診することをお勧めします。全身性強皮症を診断する上で普段の様子やその他の病気の有無、検査結果はとても参考になりますし、診療情報提供書がないと基本的な検査を一からやり直すことになってしまうためです。

全身性強皮症に関連する診療科の病院・クリニックを探す

全身性強皮症でお困りの方

全身性強皮症は自己免疫疾患といって、免疫細胞(白血球)が不適切に活動してしまうことが原因の病気です。したがって治療は、免疫細胞の働きを抑えるような内服薬になります。また、肺や食道などに病気が進展してきた場合にはそれぞれについての対症療法を行います。

患者さんによって効果的な薬が異なること、同じ薬でもどの程度の量で効果があるかが異なることから、通院しながら少しずつ薬を調整して、その人に合った処方を探します。多くの方にとって、治療のために必ず入院しなければならないというような病気ではありませんが、完治が簡単に望める病気でもないため(症状が取れたり、薬の内服が必要なくなったりすることはあります)、継続的に通院を続ける必要があります。

全身性強皮症で入院が必要となるのは、最初の診断確定の検査に必要な場合、そして全身性強皮症で生じやすい間質性肺炎肺高血圧症の治療を行う場合です。

膠原病は専門性の高い分野ですので、膠原病科(あるいはリウマチ科)の医師の中でも、専門とする分野が分かれていることが多いです。全身性強皮症のような自己抗体関連疾患(関節リウマチ全身性エリテマトーデスなど)を中心で診ている人もいれば、脊椎関節炎(強直性脊椎炎など)や血管炎顕微鏡的多発血管炎など)などを専門に見ている人もいます。小さな病院では膠原病が専門の医師がそもそもおらず、診療が難しい場合もあるでしょう。膠原病科のある総合病院であれば、それぞれの分野の専門家がいるでしょうから、適切な医師が担当となったり、院内で連携相談しながら治療に当たってくれることが多いです。他の科の病気と比べると、適切に診療できる経験をもった医師が少ないのが膠原病でもありますが、長く付き合っていく病気であるため、信頼できる主治医を見つけることが大切です。

全身性強皮症に関連する診療科の病院・クリニックを探す

全身性強皮症のタグ