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腰椎穿刺(ルンバール)について:目的、方法、合併症

髄液検査髄膜炎などの致命的な病気が疑われた場合に行われます。髄液腰椎穿刺(ルンバール)という方法で取り出し、中に含まれている成分などを調べます。髄液を抜き出すのに必要な腰椎穿刺を行った後には頭痛が起こることがありますが安静にし、水分補給をすることでよくなります。

1. 髄液検査とは?

髄液(ずいえき)検査は脳やその周りの状態を調べるために行われます。

脳の周りはくも膜という薄い膜で包まれており、脳とくも膜の間のスペースをくも膜下腔(くもまくかくう)と言います。下の図の灰色のスペースがくも膜下腔です。

脳の断面の画像。脳の周りのくも膜下腔は脳脊髄液(髄液)で満たされている。

くも膜下腔には脳脊髄液(のうせきずいえき)、略して髄液と呼ばれる液体が満たされています。くも膜下腔は脳の周りと脊髄の周りでつながっているので、腰の下あたりから髄液(脳脊髄液)を取り出すことができます。
 

髄液検査と骨髄検査はまったく違う

髄液検査は骨髄(こつずい)の検査ではありません。骨髄は骨の一部です。骨髄には骨髄液という液体が入っています。名前が紛らわしいですが、「髄液」は脳脊髄液の略であり、骨髄液の略ではありません。

2. 腰椎穿刺(ルンバール)とは?

髄液を取り出すために針を腰骨に刺すことを腰椎穿刺((ようついせんし)、ルンバール)と言います。

腰椎穿刺(ルンバール)で何がわかるのか

腰椎穿刺(ルンバール)により髄液を採取して、髄液の圧(髄液圧、脳圧)の高さや成分を調べることで次のことがわかります。

  • 髄膜炎(ずいまくえん)や脳炎など、頭のなかの感染があるか
  • 頭のなかの腫瘍や脳の転移の有無、その状態
  • その他の脳や脊髄の病気の有無

髄液検査から、病気の有無や、病気の推定を行うことが可能です。

腰椎穿刺(ルンバール)の合併症について

腰椎穿刺によって頭痛が起こることがあり、合併症として知られています。頭痛は腰椎穿刺が上手く行かなかったから発生するわけではなく、ある一定の確率で起こってしまうものです。

手術の「ルンバール」は腰椎麻酔のこと

腰椎穿刺と同じ「ルンバール」という名前が、腰椎麻酔という麻酔の方法を指す際に使われることがあります。「ルンバール」は英語のlumbarに当たる言葉で、もとは「腰」という意味です。手術のときに「麻酔はルンバールで…」と聞こえたら腰椎麻酔のことを指していると考えてください。

3. 腰椎穿刺(ルンバール)の目的は?

腰椎穿刺によって取り出した髄液を調べる(髄液検査)と、次の病気の有無を調べることにつながります。

【髄液検査によってわかる病気】

腰椎穿刺が行われる場合、上のリストの病気のどれかが疑われている可能性があります。特に頭痛で髄液検査が必要と言われた場合には髄膜炎や脳炎などが疑われていることが多いです。

髄膜炎が疑われるとなぜ腰椎穿刺(ルンバール)が必要なのか?

髄膜炎は、細菌ウイルスが脳や脊髄の周りで炎症を起こし、命に関わる病気です。早く診断する必要がありますが、原因の細菌やウイルスは血液の中にも出てくるとは限りません。このため血液検査で髄膜炎を見分けることはできないので、髄液の中身を直接調べる必要があるのです。つまり、髄膜炎の診断には腰椎穿刺による髄液検査がきわめて重要ということです。

4. 腰椎穿刺(ルンバール)の行われ方(手技)

腰椎穿刺をするときの手順(手技)を説明します。

患者さんはベッドに横になって、図のようにできるだけ背中を丸めます。この体位は、刺す部位で骨の隙間を広くするためです。

次に刺す部分を消毒し、局所麻酔の注射をします。局所麻酔には本番の針よりももっと細い針で注射をするのですが、細い針とはいえ注射なので多少の痛みはあります

局所麻酔が効いているのを確かめたうえで、腰の下のあたり(第3腰椎と第4腰椎の間のあたり)を狙って、血液検査で使用する針と同じくらいの太さの長い針を刺します。局所麻酔が効いていればほとんど痛みはありませんが、背中を押される感じがします。

腰椎穿刺(ルンバール)


針の先がくも膜下腔に届くと髄液が出始めます。髄液の圧を測ったり、色や透明度をみながら髄液が採取されます。

髄液を十分採取できたら、針を抜きます。10mlから15ml程度採取すれば髄液検査ができます。子どもでは少なめにする場合があります。針を抜いたあとは出血しないよう圧迫します。

針を刺した部位から髄液が漏れるのを防ぐために、30分から1時間ほど仰向けの状態で過ごします。髄液が漏れると、頭痛などの原因になることがあるので、安静にすることで予防ができます。

腰椎穿刺が難しい人

次の条件に当てはまる人は腰椎穿刺が簡単ではないと考えられています。

【腰椎穿刺が難しい人】

  • 高齢者
  • 腰椎の間が狭くなっている人
  • 太っている

腰椎穿刺が成功しない場合は針を指す場所を少し変えたりするなどの工夫をします。

5. 腰椎穿刺(ルンバール)をしてはいけない場合(禁忌)

次の場合は腰椎穿刺を行ってはいけない(禁忌)とされています。

  • 髄液の圧が高いことが症状からわかっている(頭蓋内圧亢進症状)
  • 出血しやすい状態にある(抗凝固薬の使用中など)
  • 針を刺す部分に明らかな感染がある
  • 脊髄に動静脈奇形がある

髄液に高い圧力がかかっている場合、腰椎穿刺をすると脳の周りから腰に向かって髄液が流れていきます。すると、脳が脊髄の手前に引き出される大後頭孔ヘルニアという非常に危険な状態が懸念されます。

また、血が固まりにくい状態では、刺した場所から出血する恐れが強くなるので、腰椎穿刺は避けられることが多いですし、感染した場所を刺すと悪化する恐れがあるので見送らられることが多いです。

動静脈奇形とは、異常な細い血管の塊です。出血しやすいため、傷付ける恐れがあることは避けるべきです。

6. 髄液検査は病気があるとどうなるか

髄液検査では以下の情報が得られます。

【髄液検査で知ることができること】

ほかにも髄液を詳しく調べる方法があります。顕微鏡で観察する検査(病理検査)でがんの細胞を探せます。抗体の検査で免疫の異常なども調べられます。

7. 腰椎穿刺(ルンバール)のあとに頭痛がすることがある

腰椎穿刺は頭痛などの問題(合併症)を引き起こすことがあります。腰椎穿刺後には10%から30%に頭痛が出現します。

髄液を採取することで、頭のなかの圧が低くなることが頭痛の原因と考えられます。針を刺した穴がすぐにふさがらず、検査の後もしばらく髄液が漏れ続けていると頭痛が長引きます。

腰椎穿刺のあとでひどい頭痛が何日も長引く場合は「脳脊髄液減少症」という状態になっているかもしれません。詳しくは脳脊髄液減少症のページで説明しているので、参考にしてください。

頭痛は腰椎穿刺のあとに出やすいという意味では後遺症とも言えますが、ほとんどは自然に治ります。腰椎穿刺によって重い後遺症が残ることはめったにありません。

腰椎穿刺後頭痛を予防するには?

一般に、腰椎穿刺後頭痛を予防するために、腰椎穿刺の直後1時間ほど横になっているよう指示されます。しかし、最近の研究では横になる必要はないとする説も出ています。むしろ横になると頭痛が増えたとするデータもあります。

結局のところ確実な予防法は見つかっていません。各病院の考えで「念のため」寝かせているというのが現状です。

参照文献:Cochrane Database Syst Rev. 2016 Mar 7.

腰椎穿刺(ルンバール)のあとの頭痛が出たらどうすればいい?

腰椎穿刺のあとに頭痛が出たら、安静にして水分補給をしてください。安静によって腰椎穿刺の傷口がふさがり、脳脊髄液が再び作られることで、2週間以内に頭痛はよくなることが多いです。