おたふくかぜ(りゅうこうせいじかせんえん、むんぷす)
おたふく風邪(流行性耳下腺炎、ムンプス)
唾液をつくる耳下腺(耳の前〜下)、顎下腺(あごの下)が腫れて痛み、熱がでる感染症。特に小児に多い
10人の医師がチェック 155回の改訂 最終更新: 2022.05.04

おたふく風邪(流行性耳下腺炎、ムンプス)はどうやって診断するのか?検査はどんなことを行う?

おたふく風邪は主に、問診と身体診察によって診断されます。特別な検査は必要ないことが多いですが、血液検査や微生物検査などの検査が行われることもあります。

1. おたふく風邪の診断方法について

おたふく風邪は主に、問診と身体診察によって診断されます。問診と身体診察で診断がつかない場合には、血液検査や微生物検査などの検査を行うこともあります。おたふく風邪の診断を確定させることで、似た症状を来たす他の病気と区別することができます。

2. 問診

問診では、いつからどんな症状があるのか、周囲でおたふく風邪が流行っているか、おたふく風邪にかかったことがあるか、おたふく風邪の予防接種を打っているか(打っている場合、時期と回数)などを医師に伝えます。予防接種歴は母子手帳を見せると良いでしょう。耳下腺の腫れや発熱などおたふく風邪を疑う症状があって、学校や家族内など周囲でおたふく風邪が流行っている場合にはおたふく風邪の可能性があります。過去におたふく風邪にかかったことも予防接種を打ったこともない人では、その可能性が最も高くなります。ただし予防接種を打った人でも、おたふく風邪の症状と周囲の流行があれば、おたふく風邪を発症した可能性があります。

3. 身体診察

身体診察ではまず体温を測り熱が出ているかどうかを調べます。そして医師が視診・触診(患部を目で見て手で触れて診察)します。視診・触診では耳の前下方にある耳下腺が腫れているか、触れると痛むかを確認します。耳下腺が腫れていると顎のあたりの輪郭が丸くなり、下顎角(耳の下の方にあって、エラと言われる顎の角の部分)の場所が不明瞭になります。

4. 血液検査(血清学的検査)

問診と身体診察で診断がつかない場合、血液検査を行うことがあります。血液検査では、白血球数やアミラーゼ値、ムンプスウイルスに対する抗体の量などを調べます。白血球数は減少し、血清アミラーゼ値は上昇することが多いです。またムンプスウイルスに対するIgMという抗体価が上昇します。

ただしIgMは、おたふく風邪発症からまもなくの検査では数値が上がっていないことや、おたふく風邪の予防接種を受けたことのある人では数値が上がらないことがあるため、結果の解釈には注意が必要となります。

5. 微生物検査

問診と身体診察で診断がつかない場合、微生物検査をすることがあります。おたふく風邪の原因であるムンプスウイルスを調べるのが微生物検査です。微生物検査には、ウイルスそのものを分離する方法と、ウイルス遺伝子を検出する方法があります。

ウイルス分離

おたふく風邪の原因であるムンプスウイルスそのものを見つけ出す方法で、最も直接的な診断方法です。ムンプスウイルスは唾液に多く排出されるため唾液を採取します。発症後できるだけ早期(0-2日以内)に採取する必要があり、検査をしてから結果が出るまでに1-3週間の時間がかかります。

PCR法

ムンプスウイルスの遺伝子を検出する方法で、RT-PCR法やReal-time PCR法などがあります。検査は数時間で行われ、感度の高い検査法です。感度とはおたふく風邪にかかっている人のうちでこの検査が陽性となる人の割合のことです。感度が高いPCR法で陰性であればおたふく風邪にかかっている確率は低いと言えます。

6. 髄膜炎が疑われたときに行われる検査

おたふく風邪の合併症として髄膜炎(ずいまくえん)を起こすことがあります。髄膜炎になると、頭痛、吐き気・嘔吐、発熱などの症状が出ます。耳下腺は腫れずに髄膜炎だけを起こすこともあります。そのため、耳下腺が腫れていてもいなくても、これらの症状が出た場合には髄膜炎が疑われます。おたふく風邪による髄膜炎は、耳下腺が腫れている最中だけでなく、その前後にも起こる可能性があります。

髄膜炎が疑われたときには髄液検査が行われることがあります。おたふく風邪による髄膜炎には特別な治療法はなく、症状を軽減させるための対症療法を行います。経過は良好であることが多く、後遺症を残さずに完治します。

髄液検査

脳と脊髄を覆っている髄膜にウイルスなどが感染すると髄膜炎になります。脳と脊髄の周りには髄液という液体が流れていて脳と脊髄の様子を反映するので、髄液を調べることで髄膜炎の診断をすることができます。髄液検査は一般的に腰椎穿刺(ようついせんし)といって、腰の背骨の間から細い針を刺して髄液を採取します。採取した髄液中の白血球、総蛋白、糖などを調べるほか、髄液からウイルス分離やPCR法で直接ムンプスウイルスを調べることもあります。