せいじんてぃーさいぼうせいはっけつびょう/りんぱしゅ
成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)
乳幼児期に1型ヒトT細胞白血病ウイルス (HTLV-1) に感染した人が、成人になってから発症する白血病
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最終更新: 2024.08.11
成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)の基礎知識
POINT 成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)とは
1型ヒトT細胞白血病ウイルス (HTLV-1) に感染した人が成人になってから発症する白血病です。HTLV-1の感染が原因になります。HTLV-1は、出産・母乳・輸血・性交渉などで感染することがありますが、主には母乳を介して母親から乳幼児へと感染します。HTLV-1に感染している人の約5%がATLを発症すると言われています。ATLを発症した場合の主な症状は、皮疹・発熱・リンパ節の腫れ・倦怠感・腹痛・下痢などになります。また、免疫力が低下することによって、ニューモシスチス肺炎・カンジダ症・クリプトコックス症・アスペルギルス症・糞線虫症など、免疫力が正常な人ではあまりかからない感染症にかかることがあります。血液検査でHTLV-1感染があることを確認したうえで、血液・皮膚・リンパ節の一部を採取して顕微鏡で調べることによりATLは診断されます。病状の具合によって治療方法が変わるため、主治医とよく相談することが大切です。成人T細胞性白血病が心配な人や治療したい人は、血液内科を受診してください。
成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)について
- 幼少期に1型ヒトT細胞白血病
ウイルス (HTLV-1: human T-cell leukemia virus type-1) に感染した人が成人になってから発症 する白血病 - HTLV-1は
免疫 に関わる重要な細胞であるT細胞に感染する- HTLV-1に感染すると、感染された細胞の遺伝子に変化が起こる
- 遺伝子が変異したT細胞が
がん 細胞となり、白血病になる - T細胞ががん化すると
感染症 にかかりやすくなる
- HTLV-1の感染経路は次の4つ
- 出産時の感染:母から新生児に感染する
- 母乳による感染
- 日本では、母乳によって感染する例がほとんどである
- HTLV-1感染のチェックは妊婦健診の項目となっており、公費負担も整備されている
- 輸血や臓器移植、注射
- 日本では、輸血用血液の
スクリーニング検査 が導入されてから、輸血感染はなくなった
- 日本では、輸血用血液の
- 性交渉
- 成人になってからHTLV-1に感染した人はほとんど白血病にならない
症状 や検査によって病型が分類される- 急性型
- リンパ腫型
- 慢性型
- くすぶり型
成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)の症状
成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)の検査・診断
成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)の治療法
- 病型によって治療法が異なる
- くすぶり型、
予後 不良因子のない慢性型:治療はせずに経過観察 するのが一般的- 経過観察により、くすぶり型で5-10年ほど、慢性型で3年ほどの生存が期待できる
- 慢性型:以下の予後不良因子がどれかひとつでもあれば強力な
化学療法 を行う- 血中尿素窒素 (BUN) の上昇
LDH の上昇- 低アルブミン値
- 急性型・リンパ腫型:強力な化学療法
- くすぶり型、
- 強力な化学療法を必要とするような場合は、予後が1年弱と報告されている
- 65歳以下で元気な方の場合には、ドナーがいれば
骨髄移植 を行う - 骨髄移植により長期生存できるケースもある
- 65歳以下で元気な方の場合には、ドナーがいれば
- 日本においては母乳からの感染を予防することが重要
- ATLの患者さんはタイプによらず
感染症 合併 のリスクが高いので、感染対策には特に注意を要する
成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)に関連する治療薬
分子標的薬(モガムリズマブ〔ヒト化抗CCR4モノクローナル抗体〕)
- 腫瘍細胞の表面に発現しているCCR4に結合し腫瘍細胞を障害する薬
- 成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)ではリンパ球T細胞のがん化がおこる
- 多くのATLでは白血球遊走の因子となるケモカインの受容体であるCCR4というものが強く発現している
- 本剤は腫瘍細胞の表面で強く発現しているCCR4に結合することで腫瘍細胞を障害する作用をあらわす
- 本剤は特定分子の情報伝達などを阻害することで抗腫瘍効果をあらわす分子標的薬となる
ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬(ツシジノスタット)
- ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の異常な活性化を阻害し抗腫瘍効果をあらわす薬
- 成人T細胞白血病(ATL)は、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)への感染によって引き起こされる血液がん
- 白血病や悪性リンパ腫などの血液がんではHDACという酵素の異常な活性化がみられ腫瘍化が亢進する
- 本剤はHDACを阻害し細胞周期停止及び細胞の自滅を誘導する作用をあらわす