ぼうこうえん
膀胱炎
尿をためる膀胱の炎症。若い女性では毎年数%の人に起こる。原因は大腸菌が80%程度。
14人の医師がチェック 171回の改訂 最終更新: 2018.12.05

膀胱炎とはどんな病気?原因、症状、治療法など

排尿したときに違和感や痛みを感じるとどきっとします。特に原因のない単なる違和感かもしれませんが、膀胱炎による症状かもしれません。このページでは膀胱炎の原因や症状などを説明していきます。

1. 膀胱炎にはどんな種類があるのか

膀胱炎(ぼうこうえん)はいくつかの種類に分かれます。よくあるタイプの膀胱炎は、たとえばこんな状況で見つかります。

41歳女性の田中さんは特に持病もなく健康だと自認していました。まだ閉経はしていません。ある日、トイレで排尿したあとに違和感を覚えました。数日で違和感はしだいに強くなり、排尿すると熱い感じを覚えるようなってきました。

問診や診察で、膀胱炎らしいかどうか、また膀胱炎とすればどのタイプの膀胱炎かを見分けて治療法を決めます。

膀胱炎は急に起こる場合とゆっくりと時間をかけてじわじわと起こる場合があります。前者はほとんどが細菌感染による急性の膀胱炎で、後者はさまざまなことが原因となって慢性的な膀胱炎になります。

膀胱炎を種類別に大きく分けると次のように分けられます。

  • 細菌性膀胱炎
  • 出血性膀胱炎
  • 間質性膀胱炎
  • 放射線性膀胱炎
  • 好酸球性膀胱炎

間質性膀胱炎や好酸球性膀胱炎などあまり聞き慣れない病名も多いと思います。次の段落から各々の膀胱炎について簡単に説明していきます。

細菌性膀胱炎

尿は腎臓で作られて尿管を通って膀胱に至ります。膀胱はダムのように尿を貯留して、たまったら排尿します。

細菌性膀胱炎は名前の通り細菌感染によって膀胱に炎症が起こることを指します。膀胱炎の中でも感染の起こりやすい背景がない膀胱炎と感染の起こりやすい背景がある膀胱炎の2つに大別して考えます。前者を単純性膀胱炎といい、後者を複雑性膀胱炎といいます。

例えば尿の通り道が変形したり尿の通り道にがんがあったりすることで膀胱炎になりやすくなります。また、抗がん剤治療中などで免疫力が低下するような状態があっても膀胱炎になりやすくなります。こうした状況下でかかる膀胱炎が複雑性膀胱炎となります。

単純性膀胱炎と複雑性膀胱炎の特徴を比べると以下のようになります。

  • 単純性膀胱炎
    • 基礎疾患(持病)がない人に起こる膀胱炎
    • 急に起こることが多い(急性)
    • 若い女性に起こることが多い
    • 大腸菌が原因菌になりやすい
    • 治りやすい
  • 複雑性膀胱炎
    • 基礎疾患(持病)がある人に起こる膀胱炎
    • 抗がん剤ステロイドなどの免疫を抑える薬を飲んでいる
    • 尿道カテーテルなどの医療デバイスが膀胱にある
    • 急に起こる場合(急性)も時間をかけて起こる場合(慢性)もある
    • 男女を問わず様々な人で起こる
    • 大腸菌だけでなく、耐性菌を含むさまざまな細菌が原因となりうる
    • 治療に難渋することや再発することも多い
    • 腎盂腎炎(じんうじんえん)や菌血症などの重症になることも多い

単純性膀胱炎であれば治療期間は3日間という短期間になります。しかし、複雑性膀胱炎であれば重症にもなりやすいですし、治療期間も7日になります。

田中さんの例は単純性膀胱炎らしい特徴があります。ほかの病気や違う種類の膀胱炎ではないかもチェックして診断に近付いていきます。

細菌性膀胱炎を疑った場合は尿の中にどんな細菌がいるのかを確認する検査が非常に重要になります。尿の細菌検査では、塗抹(とまつ)検査と培養(ばいよう)検査を行います。

  • 塗抹検査
    • 尿を直接スライドガラスに広げたものに特殊な染色を行い観察する検査
    • 20分程度で細菌の形や白血球の数が分かる
    • 細菌の推定はできるが、細菌の特定はできない
    • どんな抗菌薬が効くのはわからない
  • 培養検査
    • 尿に含まれる細菌を培養して増やすことで詳細を調べる検査
    • 培養の結果が出るまでに時間(数日程度)がかかる
    • 細菌の特定が可能である(例:大腸菌、腸球菌、肺炎球菌など)
    • どんな抗菌薬が効くのか判定できる

以上のようにどちらの検査にも長所と短所があります。そのため両方を同時に行って補完しあうと効果的です。膀胱炎に対して細菌検査を行わずに抗菌薬治療するよりも、塗抹検査と培養検査を駆使して原因菌を見定めた治療を行うほうがより高い効果が期待できます。

出血性膀胱炎

出血性膀胱炎は膀胱に炎症が生じることで出血した状態を指します。ウイルス感染や薬剤による副作用が主な原因となります。アデノウイルスによる感染やシクロホスファミドの副作用が特に有名です。

血尿頻尿、排尿時痛がよく現れる症状になります。明らかに尿が赤くなっていたらかなりの出血があります。実際には少し尿の色が濃く見えるだけだったりほとんど色が変わらなかったりするので注意が必要です。

以下に該当する人は出血性膀胱炎になりやすいと言われています。

  • 抗がん剤治療を受けている人
  • 骨盤部に放射線治療を受けたことのある人
  • 高齢者
  • 出血しやすい人
    • 生まれつき(先天的)
    • 薬剤の作用(抗凝固薬抗血小板薬など)
  • 慢性的に尿路感染のある人
  • 排尿の神経の働きが落ちている人(神経因性膀胱のある人)
  • 糖尿病のある人
  • 長期的にステロイドを使用している人
  • 尿路結石のある人

どれかに当てはまる人が排尿に不調を感じた場合は、一度医療機関を受診すると良いかもしれません。出血性膀胱炎について詳しくは「出血性膀胱炎とは?症状、原因、治療、予防について」で説明します。

間質性膀胱炎

間質性膀胱炎は膀胱の粘膜の下に慢性的な炎症が起こる病気です。細菌性膀胱炎や出血性膀胱炎と違って、尿検査を行ってもほとんどの場合で異常は見られません。

下腹部の痛み・尿意切迫感・頻尿・性交時痛などが主な症状になります。

診断は非常に難しく、感染・膀胱がん子宮内膜症・精神疾患などの病気がないことを確認できた場合に診断されます。場合によっては膀胱鏡を用いて膀胱の内側を観察することもあります。

間質性膀胱炎について詳しくは「間質性膀胱炎とは?症状、診断方法、原因、治療など」で説明します。

放射線性膀胱炎

放射線治療などで膀胱やその周囲に大量の放射線を浴びた場合に起こる膀胱炎です。頻尿や排尿時痛、血尿が主な症状になります。ときに排尿障害が起こることもあります。

好酸球性膀胱炎

好酸球性膀胱炎は、アレルギー反応によって起こる膀胱炎のことです。薬剤が原因となっている場合にはその薬を使用することをやめることで改善します。

膀胱内に腫瘍のようなものができることがあり、膀胱がんと区別するために生検(疑わしい部位を採取して顕微鏡で調べる検査)を行うことがあります。

2. 膀胱炎の原因は?

膀胱炎は膀胱に炎症が起こった状態のことです。膀胱炎の原因で最も有名なのは細菌による感染です。しかし、細菌感染以外にも多くの原因があります。

細菌感染

本来はほぼ無菌状態である尿路(尿が作られてから体外に排泄される経路にあたる腎臓-尿管-膀胱-尿道)に細菌が侵入して感染が起こった状態を尿路感染症といいます。特に膀胱で感染が起これば膀胱炎となります。大腸菌やクレブシエラ桿菌、腸球菌などが細菌性膀胱炎の原因になります。

女性に起こりやすいですが、尿路に異常のある人や免疫力の低下している人でも起こりやすいです。治療は安易に抗菌薬を使用するのではなく、原因菌に適した抗菌薬を使用することが大切です。また、細菌感染を繰り返す場合は、抗菌薬治療を行う一方で繰り返す原因を探すことも大切です。

膀胱結石

膀胱結石は強い痛みを起こすことで有名な尿管結石と同じようなものです。石が膀胱に存在すると膀胱結石となります。膀胱結石は強い痛みを起こすことはありませんが、膀胱を刺激することで膀胱炎を起こしやすいです。尿の中に細菌が見つからないけれど膀胱炎の症状(頻尿、排尿時痛、血尿など)が出る場合には、膀胱結石が原因となっていることがあります。膀胱結石を疑った場合は、エコー検査や膀胱鏡を用いて膀胱内に石が存在するかどうかを調べます。

薬剤性(薬物の副作用)

薬の副作用で膀胱に炎症が起こることがあります。以下が特に注意するべき薬剤です。

  • 抗がん剤
    • シクロホスファミド(エンドキサン®)
    • イホスファミド(イホマイド®)
    • ブスルファン(ブスルフェクス®)
  • 漢方薬
    • 柴苓湯(サイレイトウ)
    • 小柴胡湯(ショウサイコトウ)
    • 柴朴湯(サイボクトウ)
  • ペニシリン系抗菌薬
    • アモキシシリン(サワシリン®など)
    • アンピシリン(ビクシリン®など)
    • ピペラシリン(ペントシリン®など)
    • ベンジルペニシリン(ペニシリンG)
    • ベンジルペニシリンベンザチン(バイシリン®G)
  • 抗アレルギー薬
    • トラニラスト(リザベン®)※

※トラニラストはアレルギー疾患治療薬の他、ケロイド肥厚性瘢痕の治療薬としても使われる場合があります。

これらの薬剤が原因となる薬剤性膀胱炎が疑われた場合は、疑わしい薬剤の使用を中止することが大切です。とはいえ、他の病気の治療のために必要な薬剤である場合は中止することが難しい場合もあります。かかりつけの医者とよく相談するようにしてください。

腫瘍

膀胱がんなどの膀胱にできる腫瘍によって膀胱に炎症が波及して膀胱炎が起こることがあります。がんの炎症が臓器の中にとどまらず広範囲に広がることがあるため、膀胱周囲の臓器のがんが膀胱炎を起こすこともあります。具体的には、子宮体がん子宮頸がん卵巣がん前立腺がんなどが膀胱炎を起こすことがあります。

放射線

放射線治療の副作用で膀胱の壁に炎症が生じることがあります。医療現場に用いる放射線は検査に関するものと治療に関するものがありますが、検査よりも治療に用いる放射線のほうが線量が多いです。

放射線性膀胱炎は多くの場合でがんの放射線治療が原因となります。特に骨盤内にあるがんの放射線治療が問題となりやすいです。具体的には、膀胱がん前立腺がん子宮頸がん子宮体がん卵巣がんに対する放射線治療が原因となりやすいです。

便秘

便秘の人は膀胱炎になりやすいです。便の中に含まれている細菌が膀胱炎の原因となる事が多いのですが、便秘などで便通が不規則だと便中の細菌が増えることがあります。すると膀胱に細菌が入りやすくなるため、膀胱炎になりやすくなります。

特に便秘がちの人が便通をスムーズにしておくことは大切ですので、以下のことを心がけるようにしてください。

  • 水分を多めに摂取する
  • 繊維質を多く含む食物を摂取する
  • 適度な運動を行う

性行為(セックス)

性行為は膀胱炎の原因となることがあります。特に女性で多いです。

女性の膣と尿道は非常に近くに位置しているため、性行為の最中に膣や陰茎などの陰部に存在する細菌が尿道口に入り込むことがあります。尿道口に細菌が入り込んでも、白血球や排尿などの防御システムの働きがあるので必ずしも膀胱炎になるわけではありませんが、一部の人では膀胱炎が起こってしまいます。

細菌性膀胱炎を予防するために、性行為の前後にシャワーを浴びたりして清潔な状況下で性行為を行うことは大切です。

ウォシュレット

ウォシュレット®のような温水洗浄便座は肛門を清潔にしますが、肛門周囲に便を撒き散らしている側面もあります。尿道口に便が飛び散ることがあり、その際には膀胱炎の原因となります。

男性には陰茎があるため尿道口の位置が肛門から離れていることと、尿道口と膀胱までに距離があることから温水洗浄便座による膀胱炎は男性に起こりにくいです。一方で、女性は尿道から細菌が侵入しやすいため温水洗浄便座による膀胱炎が起こりやすいです。

神経因性膀胱

神経因性膀胱はあまり聞き慣れない病気かもしれません。排尿する際には尿を溜める信号と尿を出す信号を神経が膀胱に送っています。この神経の信号をうまく送れなくなった状態を神経因性膀胱と言います。神経因性膀胱になると、尿が溜まってもうまく出せなくなったり、尿が溜まることなく尿もれを起こしたりします。尿がうまく出せなくなる状態になると膀胱に細菌が侵入しやすくなるため膀胱炎になりやすくなります。

以下の病気は神経因性膀胱になりやすいことがわかっています。

3. 膀胱炎の症状は?

膀胱炎の症状は多様です。症状は膀胱炎にだけ特徴的であるわけではありません。膀胱炎になると以下の症状が現れることがあります。

  • 残尿感
  • 頻尿
  • 血尿
  • 排尿時痛
  • 発熱
  • 腹痛(下腹部痛)

ここで注意しなくてはならないのは、発熱があったからといって膀胱炎と決まるわけではありませんし、血尿のある人の多くは膀胱炎以外の病気が原因にあるということです。しかし、膀胱炎になると起こりやすい症状を知っておくことは大切です。自分の感じている症状の原因が膀胱炎らしいのかを疑うことができるようになれば、検査を受けに医療機関に行くことができるようになります。

残尿感、頻尿

正常な膀胱は一定量まで尿を溜めることができます。そして、一定量が溜まると膀胱の壁が伸展するため、その刺激を受けて尿意を覚えることで排尿します。

膀胱炎になると膀胱が過敏になるために「頻尿」や「残尿感」といった症状が出るようになります。

  • 頻尿
    • 膀胱が過敏になることで、尿があまり貯留していなくても刺激を感じて排尿したくなる
  • 残尿感
    • 排尿しても膀胱が過敏なままであるため尿意が残る

気にしすぎるとこれらの症状は悪化します。実際に膀胱に満々と尿が貯留されているわけではないので、何か他のことに集中して気にしないようにすることも大切です。

血尿

膀胱で炎症が起こると出血することがあります。尿の中にわずか1000分の1の量の血が混じるだけでも尿が赤くなって見えることが分かっていますので、膀胱内にごく少量の血液が漏れ出るだけでも血尿となります。また、肉眼的に尿の色が変わらなくても実は血尿が潜んでいること(顕微鏡的血尿)があります。顕微鏡的血尿は尿検査を行わないと分かりません。

血尿は感染や腫瘍、薬剤の副作用などで起こりますが、良性血尿といって特に問題なくても血尿になることがあります。そのため、血尿が指摘された場合には尿の再検査と原因の追求を行うようにしてください。

排尿時痛

膀胱の炎症の影響を受けて、排尿時に痛みを覚えることがあります。

排尿するときは膀胱が収縮するため、膀胱に圧力がかかります。膀胱炎になると膀胱が過敏になっているため、この圧力が痛みを誘発することがあります。

多くの場合は膀胱炎が治ると排尿時痛も改善されます。

発熱

発熱は全身の炎症の症状です。膀胱炎によって起こった膀胱の炎症が強くなり全身に炎症が波及すると発熱することがあります。

膀胱炎を治療して炎症が改善することで解熱しますが、発熱によって身体が衰弱している場合は解熱鎮痛薬を用いることがあります。

腹痛(下腹部痛)

膀胱の炎症が周囲に波及すると腹痛が起こります。特に下腹部で痛みを感じることも多く、押すことで痛みが誘発されることもあります。

以上に挙げた症状は膀胱炎でよく見られます。これらの症状に加えて、悪寒戦慄(寒気と震え)・腰背部叩打痛(背中を叩くと響いて痛い)・吐き気・意識障害などが出現することがあります。これらの症状が出た場合は腎盂腎炎(じんうじんえん)や敗血症などの重症感染症になっている可能性もあるので、必ず医療機関を受診するようにしてください。

4. 膀胱炎の治療法にはどんなものがある

膀胱炎は膀胱に炎症がある状態のことを指します。その原因は細菌感染が最も多いですが、他にも薬剤の影響や結石、腫瘍などが原因となります。代表的な原因別に治療を簡単に説明すると次のようになります。

【原因別治療法】

原因 治療法
細菌感染 抗生物による治療
薬剤の副作用 疑わしい薬剤の中止
結石 結石の除去
腫瘍 腫瘍に対する治療(手術、抗がん剤など)

治療法としてどんなものがあるのか、もう少し詳しく見ていきましょう。

抗生物質(抗菌薬)

抗生物質(抗菌薬)は細菌性膀胱炎に対して用いられます。抗菌薬を使うと細菌は増殖できなくなり細菌感染は改善します。しかし、抗菌薬はすべての細菌に対して効果があるわけではありません。例えば大腸菌であれば、Aという抗菌薬は効くけれどもBという抗菌薬は効かないといった具合になります。これは細菌の種類だけでなく耐性化によっても異なるため判断は単純ではありません。耐性化とは特定の抗菌薬が効きにくいように細菌が変化することです。同じ大腸菌でも、Aという抗菌薬に耐性がある大腸菌、Cという抗菌薬に耐性がある大腸菌といった違いがあり、どの抗菌薬なら効くかは使ってみるまでわからない部分があります。

しかし、患者さんの状況からある程度予想を立てることができるため、細菌性膀胱炎に対してよく使われる抗菌薬は限られてきます。

  • ペニシリン系抗菌薬
  • セフェム系抗菌薬
  • ST合剤
  • ニューキノロン系抗菌薬

以上が細菌性膀胱炎の治療によく用いられる抗菌薬になります。これらの中でもニューキノロン系抗菌薬は細菌への有効性が低下している(耐性菌が増えている)傾向が見られているので注意が必要です。

膀胱炎に対する抗菌薬についてもっと詳しく知りたい方は、「膀胱炎の治療法:抗生物質は必要?漢方薬や市販薬は効くのか?他にも上手な治し方はあるのか?」で説明している内容を参考にして下さい。

抗コリン薬(主に過活動膀胱などの治療に使われる薬)

自律神経のうち、副交感神経は主に神経伝達物質であるアセチコリンの働きによって亢進されます。

膀胱ではアセチルコリンが自身の受容体(ムスカリン受容体)に作用し副交感神経が優位になると、膀胱が収縮し尿道は緩んで尿が排出されます。過活動膀胱は何らかの理由により、このシグナル伝達のやりとりが正常に働かなくなることで、尿が少量しか溜まってないのに急にトイレに行きたくなる尿意切迫感や頻尿、場合によっては我慢できずに尿が漏れてしまう(尿失禁)などの症状が引き起こされます。

抗コリン薬は膀胱のアセチルコリンによる作用を阻害する抗コリン作用によって、膀胱の異常な収縮を抑え、過活動膀胱などによる尿意切迫感や頻尿などを改善します。ここでは過活動膀胱に使われる抗コリン薬に関していくつかみていきます。

◎ソリフェナシン(商品名:ベシケア®)

日本では2006年に承認された抗コリン薬で、過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿、切迫性尿失禁などの改善が期待できます。抗コリン薬による懸念事項のひとつに唾液腺でのアセチルコリンの作用が抑えられることで唾液の分泌低下による口渇などの副作用がありますが、ソリフェナシンは唾液腺に比べて膀胱に作用しやすい(膀胱に選択性の高い)特徴があり(ベシケア®錠インタビューフォームより)、抗コリン薬の中でもより膀胱組織への作用に選択性をもった薬のひとつともいえます。

ソリフェナシンは通常、1日1回経口投与する製剤で、通常の錠剤に加え口腔内崩壊錠(ベシケア®OD錠)の剤形(剤型)もあります。口腔内崩壊錠は少量の水(あるいは水なし)で服用でき、速やかに口の中で溶ける特徴を持つため、嚥下機能が低下している人などに対してのメリットも考えられます。

◎フェソテロジン(商品名:トビエース®)

日本では2012年に承認された抗コリン薬で、過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿、切迫性尿失禁などの改善が期待できます。唾液腺に比べて膀胱に対する選択性の高い抗コリン薬のひとつです。フェソテロジンは経口投与後に速やかに活性代謝物(5-HMT)に加水分解されて効果をあらわします。この活性代謝物はフェソテロジン以前に承認され臨床で使われていたトルテロジン(商品名:デトルシトール®)が体内で変換される活性代謝物と同じですが、トルテロジンがこの物質に変換されるには肝臓の薬物代謝酵素(CYP2D6)の働きが必要となります。薬物代謝酵素の働く度合いは遺伝や体質などによっても多少の違いがあらわれることがあるため、この代謝酵素の影響を受けずに活性代謝物へ変換されるフェソテロジンは個々の体質の違いによる影響を受けにくく効果をあらわすことができると考えられます。また通常、1日1回の服用が可能であることも服用方法におけるメリットと考えられます。

◎イミダフェナシン(商品名:ウリトス®、ステーブラ®)

日本で開発され2007年に承認された抗コリン薬で、過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿、切迫性尿失禁などの改善が期待できます。

イミダフェナシンは唾液腺に比べ膀胱に選択的に作用する抗コリン薬であり、アセチルコリンによる膀胱平滑筋の収縮と神経末端からのアセチルコリンの遊離を抑える作用をあらわすとされています。

イミダフェナシンは通常、1日2回の服用によって経口投与されます。また抗コリン薬は症状に応じて量の変更が検討されることがありますが、イミダフェナシンも増量が可能で1日量として0.2mgから状態に合わせて1日量として0.4mgまで増量可能であることが2009年に追加承認されています。

◎オキシブチニン(主な商品名:ポラキス®、ネオキシ®)

抗コリン作用に加え、カルシウム拮抗作用という細胞内カルシウムの遊離と細胞外カルシウム流入の阻害作用により膀胱平滑筋への直接作用もあらわす薬です。この2種類の作用により膀胱の過度な緊張状態を抑えることで、不安定膀胱、神経因性膀胱に伴う頻尿、尿意切迫感、尿失禁などの改善が期待できます。成人にはもちろん、小児の昼間尿失禁(昼間のおもらし)や夜尿症(おねしょ)などの治療へ使われることもあります。

錠剤の剤形に関しては日本では1988年から使われていますが、2013年にはオキシブチニンのテープ剤(ネオキシ®テープ)が承認を受け臨床で使われるようになりました。ネオキシ®テープは市販薬のサロンパス®シリーズなど貼付剤の製造等に定評がある久光製薬株式会社が開発した製剤で日本初の経皮吸収型過活動膀胱治療薬です。ポラキス®などオキシブチニンの錠剤(内服)製剤は通常、1日3回の服用が基本ですが、ネオキシ®テープは有効成分を徐放化することで「1日1回貼付」を可能にしつつ急な血中濃度の上昇を抑えることで副作用の軽減が期待できる製剤になっています。ただし、皮膚への「貼り薬」ですので、適用部位のかゆみや皮膚炎などの皮膚症状等には注意が必要です。

◎プロピベリン(商品名:バップフォー®など)

抗コリン作用とカルシウム拮抗作用をあらわし、日本では1993年に承認された薬です。元々、神経因性膀胱、神経性頻尿、不安定膀胱、膀胱刺激状態に伴う尿失禁や頻尿などに対して有用性が認められていましたが、2009年には過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿、切迫性尿失禁に対しても追加承認されています。

プロピベリンは通常、1日1回(必要に応じて1日2回に分けて服用)で経口投与され、用量や体質などにもよりますが副作用も比較的少ないとされています。

◎その他

過活動膀胱の治療に使われる抗コリン薬としては他にトルテロジン(商品名:デトルシトール®)やプロパンテリン(商品名:プロ・バンサイン®)などがあり治療の選択肢となる場合があります。その中でもトルテロジンはその有効性や中枢神経への影響の少なさといったメリットからガイドライン等でも有用な薬剤のひとつとされていますが、薬物代謝酵素による活性が必要なこと等の理由(詳しくはフェソテロジン欄に記載)から現在ではフェソテロジン(商品名:トビエース®)を使う場合が多くなっています。

◎抗コリン薬の副作用は?

抗コリン薬は神経伝達物質アセチルコリンの作用を抑える(抗コリン作用をあらわす)ことで過活動性膀胱などの改善作用をあらわしますが、一方で抗コリン作用によって少なからず副作用があらわれる懸念もあります。

  • 口渇:唾液腺への抗コリン作用により唾液の分泌が抑えられることで口や喉の渇きがあらわれる場合があります。近年、発売された抗コリン薬は唾液腺に比べて膀胱に選択性が高い薬剤が多くなってきていますが、持病にシェーグレン症候群などがある場合や、抗不安薬や抗精神病薬等の口渇があらわれやすい薬を服用している場合にはより注意が必要です。
  • 便秘:抗コリン作用により、消化管の運動や胃腸の平滑筋の収縮が抑えられることで便秘等の消化器症状があらわれる場合があります。腸閉塞イレウス)などの病歴がある場合には事前に医師や薬剤師に相談することが大切です。
  • 排尿困難・尿閉:抗コリン薬は膀胱の収縮を抑えることで尿意切迫感や頻尿などの症状を抑えますが、作用が過度になることにより排尿困難(尿が出にくい)や尿閉(尿が出なくなる)などの症状があらわれる可能性もあります。前立腺肥大症などの持病を持つ場合には特に注意が必要です。
  • 眼症状:抗コリン作用により、瞳孔が開く散瞳が起こったり眼圧が上昇することで、目のかすみなどの眼症状があらわれる場合があります。閉塞隅角緑内障といった緑内障の種類や病態によっては抗コリン薬が適しないケースもあるのでこのような持病がある場合は医師や薬剤師への事前の相談が大切です。

この他、不整脈などの心疾患や甲状腺機能亢進症重症筋無力症などの持病を持つ場合にはこれらの病気の症状等に影響があらわれる可能性もあり注意が必要となります。

また目のかすみ、頭痛やめまい、眠気などの症状があらわれる場合もあるので日常生活の中で車の運転など危険を伴う作業をする場合には特に注意が必要です。

ミラベグロン(選択的β3受容体作用薬)(商品名:ベタニス®)

交感神経の受容体に作用する薬で、日本で開発された世界初の選択的にβ3アドレナリン受容体へ作用する過活動膀胱の治療薬です。

過活動膀胱の薬物治療では副交感神経を亢進させるアセチルコリンの受容体に対して阻害(拮抗)作用をあらわす抗コリン薬がよく使われていますが、抗コリン作用によって口渇、便秘、目のかすみなどの症状や排尿困難や尿閉などの症状も懸念されます。

ミラベグロンは抗コリン薬とは異なる作用によって過活動膀胱の改善が期待できる薬です。もう少し詳しく作用の仕組みをみていくと、膀胱にあるβ3という交感神経の受容体は神経伝達物質であるノルアドレナリンの作用によって亢進しその結果、膀胱は弛緩します。

ミラベグロンは膀胱のβ3受容体に作用し蓄尿期のノルアドレナリンによる膀胱の弛緩作用を増強することで膀胱の容量を増大させ、これにより正常な蓄尿期の状態に近づけ過活動膀胱による尿意切迫感、頻尿、切迫性尿失禁などを改善する効果をあらわします。

β3受容体に作用する仕組みなどからみても、ミラベグロンは抗コリン薬に比べて唾液腺や消化管などへの影響がかなり少ないと考えられますが、口渇や便秘などへは注意が必要です。またβ3受容体への選択性が高い薬ではありますが、それ以外のタイプ(β1及びβ2受容体)への影響がゼロというわけではなく、動悸頻脈、血圧変動などの循環器症状があらわれる可能性も少なからず考えられます。また肝機能の状態などによっては用量の減量等が考慮される場合もあります。心疾患や高血圧症、肝疾患などの持病を持つ場合には事前に医師や薬剤師に相談しておくことが大切です。

排尿障害などの改善が期待できるα1遮断薬

α1遮断薬は、頻尿や蓄尿のコントロールに関わる交感神経のα1受容体を遮断する作用をあらわす薬です。

尿道や膀胱の平滑筋におけるα1受容体遮断作用により、尿道の通りを改善し排尿量を増やすことで結果として残尿量が減少し、尿意切迫感や頻尿などの改善が期待できます。

男性においてはα1受容体は前立腺にも存在し、この部位への作用により前立腺の筋肉も弛緩させることから、泌尿器領域におけるα1遮断薬は主に中高年男性の前立腺肥大における排尿障害の改善に使われています。臨床ではシロドシン(商品名:ユリーフ®)、タムスロシン(主な商品名:ハルナール®)、ナフトピジル(主な商品名:フリバス®)などのα1遮断薬が使われています。

α1遮断薬の中でもウラピジル(商品名:エブランチル®)は男性だけでなく女性に対しても使われることがある薬のひとつで、過活動膀胱の中でも尿を溜めたり出したりする信号がうまく伝えられなくなっている状態である神経因性膀胱などに対して改善効果が期待できる薬です。ウラピジルは同じく神経因性膀胱などの治療に使われるベタネコール(商品名:ベサコリン®:主に副交感神経に作用することで排尿改善作用などをあらわす)などと一緒に使われることもあります。

α1遮断薬で注意すべき副作用には低血圧や立ちくらみなどの循環器症状、頭痛やめまいなどの精神神経系症状などがあります。交感神経のα1受容体は血管平滑筋などにも存在し、α1遮断作用により少なからず末梢の血管抵抗が減少することで血圧を下げる作用が現れることが考えられます。実際にウラピジルなどα1遮断薬の中には高血圧症に対して保険承認がされている薬もあります。主に男性の前立腺肥大による排尿障害に使われるシロドシンやタムスロシンなどは比較的、血圧低下などのリスクが少ないとされていますが注意は必要です。

仮に排尿障害などの泌尿器症状があり血圧も元々高め・・・という状態であればむしろα1遮断薬は適しているとも考えられますが、元々血圧が低めであったり心疾患などの持病があるなどの場合には特に注意が必要です。

その他、膀胱炎、過活動膀胱、排尿障害などの泌尿器症状で使われる薬

過活動膀胱における抗コリン薬やミラベグロン、排尿障害におけるα1遮断薬といった薬の他にも症状や状態などに合わせて使われる薬はあります。

フラボキサート(商品名:ブラダロン®など)は膀胱の排尿運動や膀胱平滑筋などへの作用から頻尿や残尿感の改善が期待できるとされていて、一般的に副作用が少ないというメリットなども考えられることから治療の選択肢になる場合もあります。

またクレンブテロール(商品名:スピロペント®など)は尿失禁の治療に使われることがある薬です。この薬は交感神経(主にβ2受容体)へ作用する薬で、気管支拡張作用をあらわすことで気管支喘息など呼吸器疾患の治療にも使われますが、膀胱内圧を低下させる作用や膀胱括約筋を弛緩させる作用などもあらわすことで特に女性に多いとされる腹圧性尿失禁(お腹に強い力(腹圧)がかかった時に尿漏れがおこる)などに対して有用とされています。尿失禁(腹圧性尿失禁)が起こる要因のひとつに骨盤底筋という筋肉のゆるみ(弱り)がありますが、骨盤底筋のゆるみは閉経によるエストロゲン卵胞ホルモン)の低下によっても起こるため、このような場合にはエストロゲンの補充療法が有用となることも考えられます。

一般的にはアレルギー疾患の治療薬として使われるTh2サイトカイン阻害薬であるスプラタスト(商品名:アイピーディー®など)は好酸球(白血球の一種で間質性膀胱炎を引き起こす因子のひとつとされる)などへの作用により間質性膀胱炎の治療に使われることもあります。

間質性膀胱炎の治療では内服薬(飲み薬)としてアミトリプチリン(主な商品名:トリプタノール®)などの抗うつ薬、ヒドロキシジン(主な商品名:アタラックス®)などの抗ヒスタミン薬などが使われる場合があります。間質性膀胱炎には膀胱内へ薬剤を投与する膀胱内注入療法も有用とされ、ジメチルスルホキシド(DMSO:米国などでは50%DMSO製剤が間質性膀胱炎を対象として承認されている)やヘパリンなどの薬剤を膀胱内へ注入する治療が選択肢となる場合もあります。

漢方薬

膀胱炎の治療では抗菌薬を用いるのが基本ですが、抗菌薬を使った後で検尿の所見が改善しているのに膀胱炎の症状を改善しない場合もみられます。また慢性的な膀胱炎のひとつで痛みや頻尿、尿意切迫などの症状があらわれる間質性膀胱炎(膀胱上皮の透過性亢進や機能異常、自己免疫反応、アレルギーなどが原因とされている)には抗菌薬が著効しません。これらの場合には漢方薬が有用となることもあります。ここでは主に女性の膀胱炎など泌尿器症状に対して効果が期待できる漢方薬をいくつか挙げてみていきます。

■猪苓湯(チョレイトウ)

頻尿や残尿感などを伴う症状や排尿時の痛みや膀胱に炎症がみられる際の尿トラブル改善にも使われる漢方薬です。

方剤名の由来にもなっていて主薬でもある猪苓(チョレイ)は利尿作用などが期待できる生薬であり、この他にも沢瀉(タクシャ)、茯苓(ブクリョウ)、阿膠(アキョウ)、滑石(カッセキ)といった水や血といった体液などに関わる生薬から構成されています。滑石には清熱といって炎症を抑える作用も期待できるとされています。

猪苓湯は速効性が期待できる漢方薬のひとつで、一時的に尿量を増やして不要なものを排出しやすくすることで結果的として頻尿などの症状を改善することも期待できます。

猪苓湯から派生した漢方薬には猪苓湯合四物湯(チョレイトウゴウシモツトウ)もあります。こちらは文字通り猪苓湯に補血作用などをあらわす四物湯(シモツトウ)を加えたもので、一般的に炎症がやや慢性化した場合に対し使われ、特に胃腸は比較的丈夫だが顔色が悪かったり、皮膚が乾燥し冷えがあるような症状に適するとされています。

■五淋散(ゴリンサン)

冷えがあり、慢性的な頻尿、排尿痛、残尿感などの症状に対して効果が期待できる漢方薬です。方剤名に含まれる「淋」とは「尿が出にくくなる」などの意味を持ち、泌尿器領域がイメージしやすい漢方薬とも言えます。

結石(尿路結石、腎結石など)や血液が混じる尿などによる排尿異常に対して有用とされていて、特に反復する尿路感染症による症状や検査異常を認めないような泌尿器症状などに対して効果が期待できるとされています。

■清心蓮子飲(セイシンレンシイン)

全身の倦怠感などを伴う頻尿、残尿感、排尿痛などに対して効果が期待できる漢方薬です。

方剤名の「清心」とは横隔膜より上部の熱(心熱)を冷ますという意味を持ち、体上部の炎症や顔面紅潮、イライラ、不眠、口渇などの症状を改善することを示すとされています。体上部の心熱により体の下部との調和が乱れ泌尿器系にも影響が出ることが考えられます。

本剤は平滑筋の弛緩作用などをあらわす蓮肉(レンニク:植物のハスの種子)、咳を鎮めたり渇きなどを改善する麦門冬(バクモンドウ)、利尿作用などをあらわす茯苓(ブクリョウ)など、計9種類の生薬から構成されています。膀胱炎、排尿障害などにより神経が衰弱したような状態などに対して効果が期待でき、特に胃腸が虚弱で倦怠感があり、冷え、神経過敏などを伴うような症状に対して有用とされています。

■当帰四逆加呉茱萸生姜湯(トウキシギャクカゴシュユショウキョウトウ)

冷えやすく四肢の末端の痛み、下腹部の痛みや腰痛、下痢などがあるような症状に効果が期待できる漢方薬です。水滞といって体の水が滞っている(停滞している)状態を改善するため頭痛や吐き気などの他、頻尿などの泌尿器症状にも効果が期待できるとされています。方剤名にある「四逆」とは四肢の末端から逆に肘膝以上まで冷えを呈することをあらわす言葉でその名が示す通り、比較的強い冷えを伴うような間質性膀胱炎にも効果が期待できるとされています。

■その他の漢方薬

竜胆瀉肝湯(リュウタンシャカントウ)は体力が比較的あり下腹部の筋肉が緊張する傾向があるような泌尿器症状に効果が期待できる漢方薬です。この漢方薬は排尿痛や残尿感などに対して効果が期待できる他、女性のこしけ(おりもの)などの症状に対しても使われることがあります。

自律神経の失調や精神的症状を伴う場合には当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)や加味逍遙散(カミショウヨウサン)といった漢方薬が有用となる場合もあります。

また猪苓湯などを使っても痛みが改善しない場合には附子(ブシ)を加えることで緩和できることもあります。附子には脊髄を介した痛みの抑制に関わる下行性抑制系の賦活作用などがあるとされ、間質性膀胱炎の慢性的な痛みや神経障害性疼痛などに効果が期待できるとされています。一般的にはブシ末(加工ブシ末)などが臨床で使われています。この他、色々な漢方薬を試しても再発を繰り返す場合に有用とされる補中益気湯(ホチュウエッキトウ)なども効果が期待できる漢方薬とされています。

市販薬

膀胱炎の治療では抗菌薬を用いることが原則になります。抗菌薬を主成分とする製剤の多くは医療用医薬品(病院やクリニックなど医療機関から出される薬)であり、特に膀胱炎などの症状に対して使われる内服薬(飲み薬)や注射剤などは基本的に医療機関の受診により医師の指示の下で使われる製剤になっています。

ドラッグストアや薬局などで購入できる市販薬(一般用医薬品)で膀胱炎に対して効果が期待できる薬の多くは漢方薬や生薬(しょうやく)成分を含む製剤になります。

実際に猪苓湯(チョレイトウ)、八味丸(八味地黄丸:ハチミジオウガン)、五苓散(ゴレイサン)、竜胆瀉肝湯(リュウタンシャカントウ)など医療用としても使われている漢方薬は市販薬としても販売されていて膀胱炎などの効能を持っているものもあります。またハルンケア®(ハルンケア®内服液など:八味地黄丸と同様の生薬構成により造られている)のように漢方方剤名とは別の商品名で販売されているものもあります。

この他、生薬のウワウルシ(コケモモの葉を原料とする生薬)は残尿感など排尿に際し不快感があるような症状に対して効果が期待できるとされ膀胱炎や尿道炎に対しても効果が期待できるとされています。市販薬にはこのウワウルシに加え、キササゲ、カゴソウなどの利尿作用をあらわす生薬を配合した製剤もあり、膀胱炎などに効果が期待できるものもあります。

【ウワウルシを含む市販薬(一般用医薬品)の例】

  • 腎仙散(ジンセンサン)
  • 三和生薬腎臓仙 
  • ベアベリックス 

これらの多くは市販薬の中でも慢性的な泌尿器症状に対して効果が期待できるものです。しかしこれらを一定期間服用しても改善が得られない場合には医療機関の受診が必要となります。また市販薬といっても漢方方剤や生薬を由来とする製剤であり「薬」のひとつですので特に体質に合わない場合などは好ましくない症状があらわれる可能性もあります。購入に際しては薬剤師などの薬の専門家に相談し適切に服用することが大切です。

飲水

膀胱炎になると頻尿になったり残尿感を覚えたりするため、飲水の量を減らして尿のトラブルを減らそうと考えてしまいがちです。しかし、尿を出すと膀胱内の細菌も一緒に体外に出せるため、飲水を我慢しないで尿量を増やすほうが膀胱炎は早く治ります。膀胱炎の症状が強いからといって飲水を控えることはしないようにして下さい。

食べ物(サプリメント、クランベリージュースなど)

食品(サプリメントを含む)の中にも膀胱炎や排尿時の不快感などに効果が期待できる可能性があるものもあります。

医薬品としても使われているウワウルシは尿路への殺菌・利尿作用などをあらわすと考えられていることから、膀胱炎や尿道炎などに使われることがありますが、ツツジ科のコケモモ(クマコケモモ)の葉を原料とするため食品(サプリメントなどを含む)としても流通しています。ウワウルシはハイドロキノンという成分を含むため、美白効果なども期待できるとされ、ハーブ茶やサプリメントなどの成分として使われていることもあります。ケースとしては多くはないかもしれませんが、ウワウルシ含有の医薬品を服用している際にはこれらの食品との飲み合わせにも注意が必要です。

また、同じくツツジ科のツルコケモモ亜属に属するクランベリーも膀胱炎予防などに効果が期待できる可能性があると考えられています。北アメリカ原産のクランベリーは古くは先住民が食品や染料としてだけでなく薬としても活用していた歴史を持ちます。クランベリーの実と葉は創傷や胃腸障害などの疾患の他にも、尿路系疾患にも使われていたこともあり、現在でも食品(クランベリージュースなど)やサプリメントなどに活用されています。クランベリーの成分には大腸菌等の細菌によって感染症が引き起こされるのを予防する可能性などが考えられていて研究も行われています。なおクランベリーには尿を酸性に保つ働きなどがあると考えられ細菌に対しての効果などが期待できるとされていましたが、その効果は小さいといった報告もあります。

一方で、発症している尿路感染症に対して有効であることは証明されていなく、予防に関しても決定的な根拠ともなっていません。膀胱炎など尿路感染症が疑われる症状がある場合は、食べ物に頼らずに医療機関を受診し適切な治療を受けることが必要です。