ぼうこうえん
膀胱炎
尿をためる膀胱の炎症。若い女性では毎年数%の人に起こる。原因は大腸菌が80%程度。
14人の医師がチェック 171回の改訂 最終更新: 2018.12.05

女性は膀胱炎になりやすい:原因や症状、注意事項について

女性は膀胱炎になりやすいです。膀胱炎は誰もがなりうる非常に身近な病気である一方で、性行為や妊娠といったライフスタイルやライフイベントに注意事項があります。このページでは女性の膀胱炎の原因や症状から注意事項までを網羅的に説明します。

1. 女性の膀胱炎に多い原因は?

膀胱炎になった女性を思い浮かべてみましょう。たとえばこんなふうに見つかることがよくあります。

41歳女性の田中さんは特に持病もなく健康だと自認していました。まだ閉経はしていません。ある日、トイレで排尿したあとに違和感を覚えました。数日で違和感はしだいに強くなり、排尿すると熱い感じを覚えるようなってきました。

膀胱炎の種類はさまざまです。主なものを挙げると次の種類があります。

  • 細菌性膀胱炎
  • 出血性膀胱炎
  • 間質性膀胱炎
  • 放射線性膀胱炎
  • 好酸球性膀胱炎

細菌感染が膀胱炎の原因となる場合もあれば飲んでいる薬が膀胱炎の原因となる場合もあります。膀胱炎を起こす原因はさまざまです。

  • 細菌感染
  • 膀胱結石
  • 薬剤性(薬物の副作用)
  • 腫瘍
  • 放射線
  • 便秘
  • 性行為(セックス)
  • ウォッシュレット
  • 神経因性膀胱

主な原因を上に挙げましたが、その中でも特に女性が気をつけたほうが良いものを説明します。

細菌感染による膀胱炎

本来はほぼ無菌状態である尿路(尿が作られてから体外に排泄される経路にあたる、腎臓、尿管、膀胱、尿道)に細菌が侵入して感染が起こった状態を尿路感染症といいます。尿路の中でも膀胱で感染が起これば細菌性膀胱炎となります。大腸菌やクレブシエラ桿菌、腸球菌などが細菌性膀胱炎の原因になります。

女性の尿道(膀胱から尿の出口をつなぐ道)が短いため細菌が体外から膀胱に侵入しやすいので、細菌性膀胱炎は女性に起こりやすいです。また、尿路に異常のある人や免疫力の低下している人でも起こりやすいです。治療は安易に抗菌薬を使用するのではなく、原因菌に適した抗菌薬を選んで使用することが大切です。また、細菌感染を繰り返す場合は、抗菌薬治療を行う一方で繰り返す原因を探すことも大切です。

便秘の影響による膀胱炎

便秘の人は細菌性膀胱炎になりやすいです。便秘などで便通が不規則だと便中の細菌が増えることがあります。肛門周囲の細菌が多くなると膀胱に細菌が入りやすくなるため、細菌性膀胱炎になりやすくなります。

特に便秘がちの人が便通をスムーズにしておくことは大切ですので、以下のことを心がけるようにしてください。

  • 水分を多めに摂取する
  • 繊維質を多く含む食物を摂取する
  • 適度な運動を行う

女性の方が便秘になりやすいですし、特に女性は便秘による膀胱炎には気をつけるようにして下さい。

性行為(セックス)による膀胱炎

性行為は細菌性膀胱炎の原因となることがあります。特に女性で多いです。

女性の膣と尿道は非常に近くに位置しているため、性行為の最中に膣や陰茎などの陰部に存在する細菌が尿道口に入り込むことがあります。尿道口に細菌が入り込んでも、白血球や排尿などの防御システムの働きがあるため、必ずしも膀胱炎になるわけではありませんが、防ぎきれず膀胱炎が起こってしまうこともあります。

細菌性膀胱炎を予防するために、性行為の前後にシャワーを浴びたりして清潔な状況下で性行為を行うように心がけて下さい。

ウォシュレット®の使用による膀胱炎

ウォシュレットのような温水洗浄便座は肛門を清潔にしますが、肛門周囲に便を撒き散らしている側面もあります。尿道口に便が飛び散ることがあり、その際には細菌性膀胱炎の原因となります。

男性には陰茎があるため尿道口の位置が肛門から離れていることと尿道口と膀胱までに距離があることから、温水洗浄便座による膀胱炎は男性には起こりにくいです。温水洗浄便座が原因の膀胱炎になりやすい人や繰り返す人は排便後のお尻の拭き方も気をつけてください。後ろから前に拭くと大便の細菌が尿道口に近づくため膀胱炎になりやすいです。前から後ろに拭くようにして下さい。

女性が膀胱炎になりやすい危険因子は?

上で述べたように女性は膀胱炎になりやすいです。女性の中でも膀胱炎になりやすい人がいます。

【女性の膀胱炎の危険因子

年齢 危険因子
全年齢共通
  • 尿路感染症の既往(前にかかったことがある)
  • 泌尿器科的手術後
  • 尿道カテーテルの使用
  • 結石による尿路の閉塞
  • 神経因性膀胱
  • 腎移植
成人女性
  • 女性の親族に尿路感染症になりやすい人がいる
  • 性行為
  • 性行為後に排尿をしない
  • 新たなセックスパートナー
  • ペッサリー(避妊具)の使用
  • 妊娠
  • 糖尿病
高齢女性
  • 身体障害あるいは精神障害
  • エストロゲン分泌の低下
  • 膀胱脱

参考:Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases 8th edition

これらの表に該当する人は膀胱炎になりやすいです。該当する人に膀胱炎を疑うような症状(排尿時の違和感、頻尿など)がある場合には膀胱炎の可能性が高いので、医療機関を受診するようにして下さい。

2. 女性の膀胱炎に多い症状は?残尿感、頻尿、血尿、排尿時の違和感や痛み、腹痛、おりものの増加など

田中さんは近所の診療所に来て症状を説明しました。するとお医者さんは「排尿時に痛みはありませんか?すぐにトイレに行きたくなったりしませんか?」と尋ねました。

膀胱炎になると頻尿(ひんにょう)や排尿時の違和感などの症状が現れます。膀胱炎の症状は生活の質を下げることや自然に改善する可能性が低いことから、放置しておいてもあまり得がありません。

女性の膀胱炎でよく出現する症状は次のものです。

  • 残尿感
  • 頻尿
  • 排尿時の違和感や痛み
  • 血尿
  • 腹痛
  • おりものの増加

これらの症状は軽度なら正常の範囲に収まっていることも考えられます。気にしすぎで膀胱炎かもしれないと思えてしまうこともあるかもしれません。こうした症状があっても、必ずしも膀胱炎が原因とは限りません。

しかし、症状が続く場合は放置しないほうが良いです。膀胱炎を治療しないのに治ることは少ないですし、大変な病気が潜んでいることがあるからです。

ずっと続く膀胱炎の症状を放置してはならない理由:膀胱周囲の腫瘍の影響

膀胱炎の原因のほとんどは細菌による感染です。一方で、頻度は高くないですが、膀胱以外の腫瘍の影響で膀胱炎症状が出ることがあります。

【膀胱炎症状が起こることのある膀胱周囲の腫瘍】

性別 膀胱炎症状の原因となる腫瘍
女性
男性

女性では子宮や卵巣、大腸といった膀胱周囲の臓器のがんに注意が必要です。膀胱の周囲に生じたがんが起こした炎症が膀胱に波及すると膀胱炎になります。

細菌性膀胱炎は性行動の活発な若い人に起こりやすいですが、これらのがんは年齢とともに罹患(りかん)しやすくなります。つまり年齢が高いほうががんができる確率は高いです。そのため、特に40歳以上の人で膀胱炎症状が持続する場合には原因を調べるための検査を受けるほうが良いです。

ずっと続く膀胱炎の症状を放置してはならない理由:性病の影響

田中さんの診察が続いています。お医者さんはさらに思いがけないことを聞いてきました。

「込み入ったことを質問させて下さい。今までに性病になったことはありますか?セックスをする相手は一人ですか?」

膀胱炎の症状の原因が性病であるということがあります。特に性活動が活発な人(複数のセックスパートナーがいる、性風俗店を利用する、コンドームを使用しないことがあるなど)は性病による膀胱炎症状を考えなくてはなりません。

性病とは淋菌やクラミジア、梅毒などによる感染症で、主に性行為によって感染がうつるもののことです。性行為でうつるため性器を中心に感染が起こります。女性の性病で感染が起こる主な臓器は以下です。

  • 子宮頚部
  • 子宮体部
  • 子宮付属器(卵巣、卵管など)
  • 尿道
  • 腹膜

これらの臓器で感染が起こった場合には、膀胱に炎症が波及することがあります。すると残尿感や頻尿などの症状が出現します。

性病は治療しないと治りません。感染が長期化すると不妊症子宮外妊娠の原因となるため、早期発見・早期治療が大切です。また、自分だけでなくセックスパートナーも一緒に治療しないと、結局また感染してしまうことになります。セックスパートナーと一緒に治療するようにして下さい。

3. 女性の膀胱炎の治療はどんなことをする?

診察が終わり、お医者さんは「おそらく単純性膀胱炎でしょう。抗生物質をお出しします」と言いました。

田中さんはふと気になって「その薬はどんな効果があるのでしょうか?」と聞きました。

膀胱炎の治療は大きく分けると2つになります。

  • 膀胱炎の原因となっているものに対する治療
  • 膀胱炎の症状を和らげる治療

膀胱炎の原因となっているものに対する治療は、原因によって種類が変わっていきます。例えば細菌性膀胱炎であれば抗菌薬(抗生物質)が用いられますし、薬剤性膀胱炎であれば疑わしい薬剤(被疑薬)を中止することが治療になります。

一方で、膀胱炎の症状を和らげる治療は、尿のトラブルを解決するものが中心になります。漢方薬や市販薬にも効果が期待できるものがあります。

女性の膀胱炎に対して行う抗菌薬治療

細菌性膀胱炎の治療には抗菌薬を用います。用いられる抗菌薬は主に以下のものです。詳しく知りたい人は、「膀胱炎の治療法:抗生物質は必要?漢方薬や市販薬は効くのか?他にも上手な治し方はあるのか?」を参考にして下さい。

  • セフェム系抗菌薬
  • ペニシリン系抗菌薬
  • ST合剤
  • ニューキノロン系抗菌薬

この4種類の抗菌薬の中で、妊娠している場合にはニューキノロン系抗菌薬やST合剤の使用を避ける必要があります。また、自分の妊娠に気づかないうちにうっかり飲んでしまうこともありえますので、特に妊娠希望のある方は気をつけなくてはなりません。

とはいえ、実はST合剤とニューキノロン系抗菌薬は妊娠に気づかなくてうっかり飲んだ場合には胎児にほとんど影響がないと言われています。(産婦人科診療ガイドライン2014産科編)もし妊娠していることがわかったときにST合剤あるいはニューキノロン系抗菌薬を飲んでいる場合は、落ち着いて産婦人科医あるいは抗菌薬を処方した医師に相談して下さい。他に代替薬がない場合には、抗菌薬を継続するメリットとデメリットを鑑みて判断することになります。

抗コリン薬(主に過活動膀胱などの治療に使われる薬)

自律神経のうち、副交感神経は主に神経伝達物質であるアセチコリンの働きによって亢進されます。

膀胱ではアセチルコリンが受容体(ムスカリン受容体)に作用し副交感神経が優位になると、膀胱が収縮し尿道は緩んで尿が排出されます。過活動膀胱は何らかの理由により、このシグナル伝達のやりとりが正常に働かなくなることで、尿が少量しか溜まってないのに急にトイレに行きたくなる尿意切迫感や頻尿、場合によっては我慢できずに尿が漏れてしまう(尿失禁)などの症状が引き起こされます。

抗コリン薬は膀胱のアセチルコリンによる作用を阻害する抗コリン作用によって、膀胱の異常な収縮を抑え、過活動膀胱などによる尿意切迫感や頻尿などを改善します。ここでは過活動膀胱に使われる抗コリン薬に関していくつかみていきます。

◎ソリフェナシン(商品名:ベシケア®)

ソリフェナシンは日本では2006年に承認された抗コリン薬で、過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿、切迫性尿失禁などの改善が期待できます。抗コリン薬による懸念事項のひとつに唾液腺でのアセチルコリンの作用が抑えられることで唾液の分泌低下による口渇などの副作用がありますが、ソリフェナシンは唾液腺に比べて膀胱に作用しやすい(膀胱に選択性の高い)特徴があり(ベシケア®錠インタビューフォームより)、抗コリン薬の中でもより膀胱組織への作用に選択性をもった薬のひとつともいえます。

ソリフェナシンは通常、1日1回経口投与する(飲む)製剤で、通常の錠剤に加え口腔内崩壊錠(ベシケア®OD錠)の剤形(剤型)もあります。口腔内崩壊錠は少量の水(あるいは水なし)で服用でき、速やかに口の中で溶ける特徴を持つため、嚥下(飲み込み)機能が低下している人などに対してのメリットも考えられます。

◎フェソテロジン(商品名:トビエース®)

フェソテロジンは日本では2012年に承認された抗コリン薬で、過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿、切迫性尿失禁などの改善が期待できます。唾液腺に比べて膀胱に対する選択性の高い抗コリン薬のひとつです。フェソテロジンは経口投与後に速やかに活性代謝物(5-HMT)に加水分解されて効果をあらわします。この活性代謝物はフェソテロジン以前に承認され臨床で使われていたトルテロジン(商品名:デトルシトール®)が体内で変換される活性代謝物と同じですが、トルテロジンがこの物質に変換されるには肝臓の薬物代謝酵素(CYP2D6)の働きが必要となります。薬物代謝酵素の働く度合いは遺伝や体質などによっても多少の違いがあらわれることがあるため、この代謝酵素の影響を受けずに活性代謝物へ変換されるフェソテロジンは個々の体質の違いによる影響を受けにくく効果をあらわすことができると考えられます。また通常、1日1回の服用が可能であることも服用方法におけるメリットと考えられます。

◎イミダフェナシン(商品名:ウリトス®、ステーブラ®)

イミダフェナシンは日本で開発され2007年に承認された抗コリン薬で、過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿、切迫性尿失禁などの改善が期待できます。

唾液腺に比べ膀胱に選択的に作用する抗コリン薬であり、アセチルコリンによる膀胱平滑筋の収縮と神経末端からのアセチルコリンの遊離を抑える作用をあらわすとされています。

イミダフェナシンは通常、1日2回の服用によって経口投与されます。また抗コリン薬は症状に応じて量の変更が検討されることがありますが、イミダフェナシンも増量が可能で1日量として0.2mgから状態に合わせて1日量として0.4mgまで増量可能であることが2009年に追加承認されています。

◎オキシブチニン(主な商品名:ポラキス®、ネオキシ®)

オキシブチニンは抗コリン作用に加え、カルシウム拮抗作用という細胞内カルシウムの遊離と細胞外カルシウム流入の阻害作用により膀胱平滑筋への直接作用もあらわす薬です。この2種類の作用により膀胱の過度な緊張状態を抑えることで、不安定膀胱、神経因性膀胱に伴う頻尿、尿意切迫感、尿失禁などの改善が期待できます。成人にはもちろん、小児の昼間尿失禁(昼間のおもらし)や夜尿症(おねしょ)などの治療へ使われることもあります。

錠剤の剤形に関しては日本では1988年から使われていますが、2013年にはオキシブチニンのテープ剤(ネオキシ®テープ)が承認を受け臨床で使われるようになりました。ネオキシ®テープは市販薬の、サロンパス®シリーズなど貼付剤の製造等に定評がある久光製薬株式会社が開発した製剤で日本初の経皮吸収型過活動膀胱治療薬です。ポラキス®などオキシブチニンの錠剤(内服)製剤は通常、1日3回の服用が基本ですが、ネオキシ®テープは有効成分を徐放化することで「1日1回貼付」を可能にしつつ急な血中濃度の上昇を抑えることで副作用の軽減が期待できる製剤になっています。ただし、皮膚への「貼り薬」ですので、適用部位の痒みや皮膚炎などの皮膚症状等には注意が必要です。

◎プロピベリン(商品名:バップフォー®など)

プロピベリンは、抗コリン作用とカルシウム拮抗作用をあらわし、日本では1993年に承認された薬です。元々、神経因性膀胱、神経性頻尿、不安定膀胱、膀胱刺激状態に伴う尿失禁や頻尿などに対して有用性が認められていましたが、2009年には過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿、切迫性尿失禁に対しても追加承認されています。

プロピベリンは通常、1日1回(必要に応じて1日2回に分けて服用)で経口投与され、用量や体質などにもよりますが副作用も比較的少ないとされています。

◎その他

過活動膀胱の治療に使われる抗コリン薬としては他にトルテロジン(商品名:デトルシトール®)やプロパンテリン(商品名:プロ・バンサイン®)などがあり治療の選択肢となる場合があります。その中でもトルテロジンはその有効性や中枢神経への影響の少なさといったメリットからガイドライン等でも有用な薬剤のひとつとされていますが、薬物代謝酵素による活性が必要なこと等の理由(詳しくはフェソテロジン欄に記載)から現在ではフェソテロジン(商品名:トビエース®)を使う場合が多くなっています。

◎抗コリン薬の副作用は?

抗コリン薬は神経伝達物質アセチルコリンの作用を抑える(抗コリン作用をあらわす)ことで過活動性膀胱などの改善作用をあらわしますが、一方で抗コリン作用によって少なからず副作用があらわれる懸念もあります。

  • 口渇:唾液腺への抗コリン作用により唾液の分泌が抑えられることで口や喉の渇きがあらわれる場合があります。近年発売された抗コリン薬は唾液腺に比べて膀胱に選択性が高い薬剤が多くなってきていますが、持病にシェーグレン症候群などがある場合や、抗不安薬抗精神病薬等の口渇があらわれやすい薬を服用している場合にはより注意が必要です。
  • 便秘:抗コリン作用により、消化管の運動や胃腸の平滑筋の収縮が抑えられることで便秘等の消化器症状があらわれる場合があります。腸閉塞イレウス)などの病歴がある場合には事前に医師や薬剤師に相談することが大切です。
  • 排尿困難・尿閉:抗コリン薬は膀胱の収縮を抑えることで尿意切迫感や頻尿などの症状を抑えますが、作用が過度になることにより排尿困難(尿が出にくい)や尿閉(尿が出なくなる)などの症状があらわれる可能性もあります。前立腺肥大症などの持病を持つ場合には特に注意が必要です。
  • 眼症状:抗コリン作用により、瞳孔が開くこと(散瞳)や眼圧が上昇することで、目のかすみなどの眼症状があらわれる場合があります。閉塞隅角緑内障といった緑内障の種類や病態によっては抗コリン薬が適しないケースもあるのでこのような持病がある場合は医師や薬剤師への事前の相談が大切です。

この他、不整脈などの心疾患や甲状腺機能亢進症重症筋無力症などの持病を持つ場合にはこれらの病気の症状等に影響があらわれる可能性もあり注意が必要となります。

また目のかすみ、頭痛やめまい、眠気などの症状があらわれる場合もあるので日常生活の中で車の運転など危険を伴う作業をする場合には特に注意が必要です。

ミラベグロン(選択的β3受容体作用薬)(商品名:ベタニス®)

ミラベグロンは交感神経の受容体に作用する薬で、日本で開発された世界初の選択的にβ3アドレナリン受容体へ作用する過活動膀胱の治療薬です。

過活動膀胱の薬物治療では副交感神経を亢進させるアセチルコリンの受容体に対して阻害(拮抗)作用をあらわす抗コリン薬がよく使われていますが、抗コリン作用によって口渇、便秘、目のかすみなどの症状や排尿困難や尿閉などの症状も懸念されます。

ミラベグロンは抗コリン薬とは異なる作用によって過活動膀胱の改善が期待できる薬です。もう少し詳しく作用の仕組みをみていくと、膀胱にあるβ3(ベータスリー)という交感神経の受容体は神経伝達物質であるノルアドレナリンの作用によって亢進しその結果、膀胱は弛緩(しかん;ゆるむこと)します。

ミラベグロンは膀胱のβ3受容体に作用し蓄尿期のノルアドレナリンによる膀胱の弛緩作用を増強することで膀胱の容量を増大させ、これにより正常な蓄尿期の状態に近づけ過活動膀胱による尿意切迫感、頻尿、切迫性尿失禁などを改善する効果をあらわします。

β3受容体に作用する仕組みなどからみても、ミラベグロンは抗コリン薬に比べて唾液腺や消化管などへの影響がかなり少ないと考えられますが、口渇や便秘などへは注意が必要です。またβ3受容体への選択性が高い薬ではありますが、それ以外のタイプ(β1及びβ2受容体)への影響がゼロというわけではなく、動悸頻脈、血圧変動などの循環器症状があらわれる可能性も少なからず考えられます。また肝機能の状態などによっては用量の減量等が考慮される場合もあります。心疾患や高血圧症、肝疾患などの持病を持つ場合には事前に医師や薬剤師に相談しておくことが大切です。

排尿障害などの改善が期待できるα1遮断薬

α1遮断薬(アルファワンしゃだんやく)は、頻尿や蓄尿のコントロールに関わる交感神経のα1受容体を遮断する作用をあらわす薬です。

尿道や膀胱の平滑筋におけるα1受容体遮断作用により、尿道の通りを改善し排尿量を増やすことで結果として残尿量が減少し、尿意切迫感や頻尿などの改善が期待できます。

男性においてはα1受容体は前立腺にも存在し、この部位への作用により前立腺の筋肉も弛緩させることから、泌尿器領域におけるα1遮断薬は主に中高年男性の前立腺肥大における排尿障害の改善に使われています。臨床ではシロドシン(商品名:ユリーフ®)、タムスロシン(主な商品名:ハルナール®)、ナフトピジル(主な商品名:フリバス®)などのα1遮断薬が使われています。

α1遮断薬の中でもウラピジル(商品名:エブランチル®)は男性だけでなく女性に対しても使われることがある薬のひとつで、過活動膀胱の中でも尿を溜めたり出したりする信号がうまく伝えられなくなっている状態である神経因性膀胱などに対して改善効果が期待できる薬です。ウラピジルは同じく神経因性膀胱などの治療に使われるベタネコール(商品名:ベサコリン®:主に副交感神経に作用することで排尿改善作用などをあらわす)などと一緒に使われることもあります。

α1遮断薬で注意すべき副作用には低血圧や立ちくらみなどの循環器症状、頭痛やめまいなどの精神神経系症状などがあります。交感神経のα1受容体は血管平滑筋などにも存在し、α1遮断作用により少なからず末梢の血管抵抗が減少することで血圧を下げる作用が現れることが考えられます。実際にウラピジルなどα1遮断薬の中には高血圧症に対して保険承認がされている薬もあります。主に男性の前立腺肥大による排尿障害に使われるシロドシンやタムスロシンなどは比較的、血圧低下などのリスクが少ないとされていますが注意は必要です。

仮に排尿障害などの泌尿器症状があり血圧も元々高め・・・という状態であればむしろα1遮断薬は適しているとも考えられますが、元々血圧が低めであったり心疾患などの持病があるなどの場合には特に注意が必要です。

その他、膀胱炎、過活動膀胱、排尿障害などの泌尿器症状で使われる薬

過活動膀胱における抗コリン薬やミラベグロン、排尿障害におけるα1遮断薬といった薬の他にも症状や状態などに合わせて使われる薬はあります。

フラボキサート(商品名:ブラダロン®など)は膀胱の排尿運動や膀胱平滑筋などへの作用から頻尿や残尿感の改善が期待できるとされていて、一般的に副作用が少ないというメリットなども考えられることから治療の選択肢になる場合もあります。

またクレンブテロール(商品名:スピロペント®など)は尿失禁の治療に使われることがある薬です。この薬は交感神経(主にβ2受容体)へ作用する薬で、気管支拡張作用をあらわすことで気管支喘息など呼吸器疾患の治療にも使われますが、膀胱内圧を低下させる作用や膀胱括約筋を弛緩させる作用などもあらわすことで特に女性に多いとされる腹圧性尿失禁(お腹に強い力(腹圧)がかかった時に尿漏れがおこる)などに対して有用とされています。尿失禁(腹圧性尿失禁)が起こる要因のひとつに骨盤底筋という筋肉のゆるみ(弱り)がありますが、骨盤底筋のゆるみは閉経によるエストロゲン(卵胞ホルモン)の低下によっても起こるため、このような場合にはエストロゲンの補充療法が有用となることも考えられます。

一般的にはアレルギー疾患の治療薬として使われるTh2サイトカイン阻害薬であるスプラタスト(商品名:アイピーディー®など)は好酸球(白血球の一種で間質性膀胱炎を引き起こす因子のひとつとされる)などへの作用により間質性膀胱炎の治療に使われることもあります。

間質性膀胱炎の治療では内服薬(飲み薬)としてアミトリプチリン(主な商品名:トリプタノール®)などの抗うつ薬、ヒドロキシジン(主な商品名:アタラックス®)などの抗ヒスタミン薬などが使われる場合があります。間質性膀胱炎には膀胱内へ薬剤を投与する膀胱内注入療法も有用とされ、ジメチルスルホキシド(DMSO:米国などでは50%DMSO製剤が間質性膀胱炎を対象として承認されている)やヘパリンなどの薬剤を膀胱内へ注入する治療が選択肢となる場合もあります。

女性の膀胱炎に対して有効な漢方薬はあるのか?

膀胱炎の治療では抗菌薬を用いるのが基本ですが、抗菌薬を使った後で検尿の所見が改善しているのに膀胱炎の症状を改善しない場合もみられます。また慢性的な膀胱炎のひとつで痛みや頻尿、尿意切迫などの症状があらわれる間質性膀胱炎(膀胱上皮の透過性亢進や機能異常、自己免疫反応、アレルギーなどが原因とされている)には抗菌薬が著効しません。これらの場合には漢方薬が有用となることもあります。ここでは主に女性の膀胱炎など泌尿器症状に対して効果が期待できる漢方薬をいくつか挙げてみていきます。

■猪苓湯(チョレイトウ)

頻尿や残尿感などを伴う症状や排尿時の痛みや膀胱に炎症がみられる際の尿トラブル改善にも使われる漢方薬です。

方剤名の由来にもなっていて主薬でもある猪苓(チョレイ)は利尿作用などが期待できる生薬であり、この他にも沢瀉(タクシャ)、茯苓(ブクリョウ)、阿膠(アキョウ)、滑石(カッセキ)といった水や血といった体液などに関わる生薬から構成されています。(滑石には清熱といって炎症を抑える作用も期待できるとされています)

速効性が期待できる漢方薬のひとつで、一時的に尿量を増やして不要なものを排出しやすくすることで結果的として頻尿などの症状を改善することも期待できます。

猪苓湯から派生した漢方薬には猪苓湯合四物湯(チョレイトウゴウシモツトウ)もあります。こちらは文字通り猪苓湯に補血作用などをあらわす四物湯(シモツトウ)を加えたもので、一般的に炎症がやや慢性化した場合に対し使われ、特に胃腸は比較的丈夫だが顔色が悪かったり、皮膚が乾燥し冷えがあるような症状に適するとされています。

■五淋散(ゴリンサン)

冷えがあり、慢性的な頻尿、排尿痛、残尿感などの症状に対して効果が期待できる漢方薬です。方剤名に含まれる「淋」とは「尿が出にくくなる」などの意味を持ち、泌尿器領域がイメージしやすい漢方薬とも言えます。

結石(尿路結石、腎結石など)や血液が混じる尿などによる排尿異常に対して有用とされていて、特に反復する尿路感染症による症状や検査異常を認めないような泌尿器症状などに対して効果が期待できるとされています。

■清心蓮子飲(セイシンレンシイン)

全身の倦怠感などを伴う頻尿、残尿感、排尿痛などに対して効果が期待できる漢方薬です。

方剤名の「清心」とは横隔膜より上部の熱(心熱)を冷ますという意味を持ち、体上部の炎症や顔面紅潮、イライラ、不眠、口渇などの症状を改善することを示すとされています。体上部の心熱により体の下部との調和が乱れ泌尿器系にも影響が出ることが考えられます。

本剤は平滑筋の弛緩(しかん)作用などをあらわす蓮肉(レンニク:植物のハスの種子)、咳を鎮めたり渇きなどを改善する麦門冬(バクモンドウ)、利尿作用などをあらわす茯苓(ブクリョウ)など、計9種類の生薬から構成されています。膀胱炎、排尿障害などにより神経が衰弱したような状態などに対して効果が期待でき、特に胃腸が虚弱で倦怠感があり、冷え、神経過敏などを伴うような症状に対して有用とされています。

■当帰四逆加呉茱萸生姜湯(トウキシギャクカゴシュユショウキョウトウ)

冷えやすく四肢の末端の痛み、下腹部の痛みや腰痛、下痢などがあるような症状に効果が期待できる漢方薬です。水滞といって体の水が滞っている(停滞している)状態を改善するため頭痛や吐き気などの他、頻尿などの泌尿器症状にも効果が期待できるとされています。方剤名にある「四逆」とは四肢の末端から逆に肘膝以上まで冷えを呈することをあらわす言葉で、その名が示す通り、比較的強い冷えを伴うような間質性膀胱炎にも効果が期待できるとされています。

■その他の漢方薬

竜胆瀉肝湯(リュウタンシャカントウ)は体力が比較的あり下腹部の筋肉が緊張する傾向があるような泌尿器症状に効果が期待できる漢方薬です。この漢方薬は排尿痛や残尿感などに対して効果が期待できる他、女性のこしけ(おりもの)などの症状に対しても使われることがあります。

自律神経の失調や精神的症状を伴う場合には当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)や加味逍遙散(カミショウヨウサン)といった漢方薬が有用となる場合もあります。

また猪苓湯などを使っても痛みが改善しない場合には附子(ブシ)を加えることで緩和できることもあります。附子には脊髄を介した痛みの抑制に関わる下行性抑制系の賦活作用などがあるとされ、間質性膀胱炎の慢性的な痛みや神経障害性疼痛などに効果が期待できるとされています。一般的にはブシ末(加工ブシ末)などが臨床で使われています。この他、色々な漢方薬を試しても再発を繰り返す場合に有用とされる補中益気湯(ホチュウエッキトウ)なども効果が期待できる漢方薬とされています。

■漢方薬にも副作用はある?

一般的に安全性が高いとされる漢方薬も「薬」の一つですので、副作用がおこる可能性はあります。

例えば、生薬の甘草(カンゾウ)の過剰摂取などによる偽アルドステロン症(偽性アルドステロン症)や黄芩(オウゴン)を含む漢方薬でおこる可能性がある間質性肺炎や肝障害などがあります。しかしこれらの副作用がおこる可能性は非常に稀であり、万が一あらわれても多くの場合、漢方薬を中止することで解消されます。

また漢方医学では個々の症状や体質などを「証(しょう)」という言葉であらわしますが、漢方薬自体がこの証に合っていない場合にも副作用が現れることは考えられます。

例えば、竜胆瀉肝湯(リュウタンシャカントウ)や猪苓湯合四物湯(チョレイトウゴウシモツトウ)などの漢方薬には構成生薬として地黄(ジオウ)が含まれていますが、胃腸が虚弱気味な体質の人が服用した場合には食欲不振などの消化器症状があらわれやすくなることも考えられます。

ただし、何らかの気になる症状が現れた場合でも自己判断で薬を中止することはかえって治療の妨げになる場合もあります。もちろん非常に重い症状となれば話はまた別ですが、漢方薬を服用することによってもしも気になる症状が現れた場合は自己判断で薬を中止せず、医師や薬剤師に相談することが大切です。

膀胱炎などに効く市販薬はあるのか

膀胱炎の治療では抗菌薬を用いることが原則になります。抗菌薬を主成分とする製剤の多くは医療用医薬品(病院やクリニックなど医療機関から出される薬)であり、特に膀胱炎などの症状に対して使われる内服薬(飲み薬)や注射剤などは基本的に医療機関の受診により医師の指示の下で使われる製剤になっています。

ドラッグストアや薬局などで購入できる市販薬(一般用医薬品)で膀胱炎に対して効果が期待できる薬の多くは漢方薬や生薬(しょうやく)成分を含む製剤になります。

実際に猪苓湯(チョレイトウ)、八味丸(八味地黄丸:ハチミジオウガン)、五苓散(ゴレイサン)、竜胆瀉肝湯(リュウタンシャカントウ)など医療用としても使われている漢方薬は市販薬としても販売されていて膀胱炎などの効能を持っているものもあります。またハルンケア®(ハルンケア®内服液など:八味地黄丸と同様の生薬構成により造られている)のように漢方方剤名とは別の商品名で販売されているものもあります。

この他、生薬のウワウルシ(コケモモの葉を原料する生薬)は残尿感など排尿に際し不快感があるような症状に対して効果が期待できるとされ膀胱炎や尿道炎に対しても効果が期待できるとされています。市販薬にはこのウワウルシに加え、キササゲ、カゴソウなどの利尿作用をあらわす生薬を配合した製剤もあり、膀胱炎などに効果が期待できるものもあります。

【ウワウルシを含む市販薬(一般用医薬品)の例】

これらの多くは市販薬の中でも慢性的な泌尿器症状に対して効果が期待できるものです。しかしこれらを一定期間服用しても改善が得られない場合には医療機関の受診が必要となります。また市販薬といっても漢方方剤や生薬を由来とする製剤であり「薬」のひとつですので特に体質に合わない場合などは好ましくない症状があらわれる可能性もあります。購入に際しては薬剤師などの薬の専門家に相談し適切に服用することが大切です。

女性の膀胱炎に勧められる食べ物はあるのか(サプリメント、クランベリージュースなど)

食品(サプリメントを含む)の中にも膀胱炎や排尿時の不快感などに効果が期待できる可能性があるものもあります。

医薬品としても使われているウワウルシは尿路への殺菌・利尿作用などをあらわすと考えられていることから、膀胱炎や尿道炎などに使われることがありますが、ツツジ科のコケモモ(クマコケモモ)の葉を原料とし、食品(サプリメントなどを含む)としても流通しています。ウワウルシはハイドロキノンという成分を含むため、美白効果なども期待できるとされ、ハーブ茶やサプリメントなどの成分として使われていることもあります。ケースとしては多くはないかもしれませんが、ウワウルシ含有の医薬品(詳しくは上の「膀胱炎などに効く市販薬はあるのか」の節で紹介しています)を服用している際にはこれらの食品との飲み合わせにも注意が必要です。

また、同じくツツジ科のツルコケモモ亜属に属するクランベリーも膀胱炎予防などに効果が期待できる可能性があると考えられています。北アメリカ原産のクランベリーは古くは先住民が食品や染料してだけでなく薬としても活用していた歴史を持ちます。クランベリーの実と葉は創傷や胃腸障害などの疾患の他にも、尿路系疾患にも使われていたこともあり、現在でも食品(クランベリージュースなど)やサプリメントなどに活用されています。クランベリーの成分には大腸菌等の細菌によって感染症が引き起こされるのを予防する可能性などが考えられていて研究も行われています。(クランベリーには尿を酸性に保つ働きなどがあると考えられ細菌に対しての効果などが期待できるとされていましたが、その効果は小さいといった報告もあります。)

一方で、発症している尿路感染症に対して有効であることは証明されていなく、予防に関しても決定的な根拠ともなっていません。膀胱炎など尿路感染症が疑われる症状がある場合は、食べ物に頼らずに医療機関を受診し適切な治療を受けることが必要です。

4. 女性の膀胱炎で気をつけるべきこと

お医者さんは「ほかに気になっていることはありませんか?」と尋ねました。

田中さんはまた膀胱炎になるのは嫌だと思ったので、「私はどんな風に生活すれば良いですか?何かポイントがあったら教えてください。」と質問しました。

膀胱炎の原因の多くは細菌感染です。女性は男性よりも尿道口(おしっこが出る部位)から膀胱までが短いため、膀胱に細菌が侵入しやすい背景があります。

女性は膀胱炎になりやすいですし、治ったと思っても感染を繰り返すことが多いです。この章では膀胱炎の対策として日常生活から気をつけるべきことについて述べていきます。

性行為(セックス)

特に若い女性では性行為が原因で細菌性膀胱炎になることがあります。女性の膣と尿道口は近くに位置するため、性行為によって細菌が膀胱に入ることがあります。

性行為の際に気をつけるべきことは次のようになります。

  • 性行為の前後でシャワーを浴びて清潔な環境を心がける
  • 性行為後に排尿する
  • 複数のセックスパートナーを持つ人は特に注意する
  • 性行為の際にはコンドームを装着する

これらを気をつけることで膀胱炎になる危険性は下がります。性行為の際には是非心がけるようにして下さい。

トイレ

排尿を我慢すると膀胱炎になりやすくなります。できるだけ尿意を我慢しないようにして下さい。排尿は膀胱に侵入した細菌を体外に出す作用がありますので、排尿は膀胱炎の予防になります。

また、ウォシュレット®のような温水洗浄便座を使用しすぎることも膀胱炎の原因になると考えられています。特に膀胱炎を繰り返す人は、温水洗浄便座の使用方法を再考すると良いかもしれません。

排便の際にも注意点があります。便の中にいる細菌(大腸菌など)が膀胱炎の原因となるため、できるだけ尿道口に便がつかないようにする配慮する必要があります。排便のあとに拭く際には、後ろから前に拭くのではなく、前から後ろに拭くようにして下さい。

飲水と食事

飲水や食事は膀胱炎と関係があります。

飲水量を増やすことは膀胱炎の予防や治療に役立ちます。排尿で膀胱内の細菌も一緒に体外に出せるため、飲水を我慢しないで尿量を増やすほうが膀胱炎は早く治ります。膀胱炎になると頻尿になったり残尿感を覚えたりするため、飲水の量を減らして尿に関する不快感を減らそうと考えてしまいがちです。しかし、膀胱炎の症状が強いという理由で飲水を控えないことが大切です。

食べ物の中ではツツジ科のコケモモ(クマコケモモ)や同じくツツジ科のツルコケモモに属するクランベリーも膀胱炎予防などに効果が期待できる可能性があると考えられています。食品(クランベリージュースなど)やサプリメントなどに活用されていますので、これらから摂取することができます。

しかし、これらはすでに発症している尿路感染症に対して有効であることは証明されていません。また、予防に関しても有効性が明確になっていないので、膀胱炎に悩んでいる人は一度医療機関にかかることが大切です。

5. 妊婦が膀胱炎になったらどうしたら良い

妊娠は女性を細菌性膀胱炎になりやすくさせます。膀胱炎は妊娠中のトラブルになりやすいものの一つです。

妊婦が細菌性膀胱炎になった場合には抗菌薬を用いて治療します。しかし、妊娠中に薬を用いると胎児へ影響が及ぶことがあるため、安易に薬を使用できません。一方で、妊娠中に用いても問題ないことがわかっている抗菌薬はあります。

一般的に膀胱炎に対する抗菌薬は以下のものを使います。

  • セフェム系抗菌薬
  • ペニシリン系抗菌薬
  • ST合剤
  • ニューキノロン系抗菌薬

しかし、この中でもST合剤とニューキノロン系抗菌薬は胎児への影響が懸念される点から妊婦に対して使用することができません。そこで主にセフェム系抗菌薬かペニシリン系抗菌薬を治療に用いることになります。より具体的に述べると以下のものを用いることが多いです。

  • 飲み薬(経口薬)
    • アモキシシリン(サワシリン®など)
    • アモキシシリン・クラブラン酸(オーグメンチン®など)
    • セファレキシン(ケフレックス®など)
    • セフォチアム(パンスポリン®など)
    • セファクロル(ケフラール®など)
  • 点滴薬
    • セフォチアム(パンスポリン®など)
    • アンピシリン・スルバクタム(スルバシリン®など)
    • セフトリアキソン(ロセフィン®など)
    • セフェピム(マキシピーム®など)

妊娠しているのにST合剤やニューキノロン系抗菌薬をうっかり飲んでしまったことにあとから気付くことがあります。しかし、ST合剤とニューキノロン系抗菌薬は妊娠に気づかなくてうっかり飲んだ場合には胎児にほとんど影響がないと言われていますので、落ち着いて産婦人科医あるいは抗菌薬を処方した医師に相談して下さい。(産婦人科診療ガイドライン2014産科編)とは言え、飲み続けても問題ないというわけではないので、他の代替薬を探す必要があります。どうしても飲み続けなくてはならないような場合には、抗菌薬を継続するメリットとデメリットを鑑みて判断します。

6. 男性の膀胱炎と女性の膀胱炎の違いは?

男性と女性の膀胱炎は少し様相が異なります。特に細菌感染による膀胱炎は多くの女性が経験するもので、その治療法や予防法の知識はとても大切です。

なぜ細菌性膀胱炎は女性に多いのでしょうか。

膀胱炎はどうして女性に多いのか

図:膀胱の周りの臓器の男女比較。女性は尿道が短く、膣や肛門の近くに開くため、細菌が入りやすい。

男性には陰茎があります。一方で、女性には陰茎がないため、尿道口(おしっこの出る部分)と膣口や肛門の位置が近いです。そのため、排便や性交の際に尿道口に細菌が運ばれてくることが多いです。

また、女性は陰茎がないため尿道口から膀胱までの距離が近いです。そのため男性よりも尿道口付近に到達した細菌が膀胱内に侵入しやすいです。

細菌が膀胱内に侵入すると必ず膀胱炎が起こるわけではありません。身体には侵入した細菌を倒すシステムが存在します。尿路でも細菌に対する防御機構があります。

  • 尿の性質
    • 浸透圧の原理や弱酸性のバランス(pH)によって、尿に細菌が侵入しても増殖しにくくできています。
  • 排尿
    • 腎臓で作られた尿は膀胱で溜められています。排尿するときは勢いをつけて膀胱から体外に尿が出ていくため、膀胱内に細菌が存在しても尿と一緒に排除されます。
  • 膀胱粘膜の防御機能
    • 膀胱が尿と接する部分は粘膜という組織でできています。この膀胱粘膜は細菌が増殖しにくい仕組みになっています。
  • 炎症反応
    • 膀胱で炎症が起こると、白血球や炎症性サイトカインなどの物質が働いて炎症を沈静化します。
  • 獲得免疫システム
    • 細胞性免疫や液性免疫と呼ばれるシステムによって、細菌の特性を記憶することと考えられています。次に同じ細菌による感染が起こったときには、記憶した特性を用いて免疫システムの働きを効果的にします。

しかし、これらのシステムがくぐり抜けた細菌は膀胱炎を起こします。

細菌性膀胱炎を起こさないようにするためには、排尿を我慢しないことや性交前後にシャワーをあびることや排便後に前から後ろに拭くことを心がけて下さい。

性病との関連性

性病とは性行為によってうつる感染症のことで、淋菌やクラミジアが代表的な原因微生物です。近年感染者が増えていることが社会的な問題となっています。

性病によって膀胱炎症状が出ることがあります。性病は性器を中心に多くの臓器(子宮頚部、子宮体部、膣、卵巣、卵管、尿道、腹膜など)で感染を起こします。感染臓器から炎症が膀胱に波及することで症状が起こります。

女性にとって膀胱炎はありきたりな感染症ですが、男性は膀胱炎になりにくいです。そのため特に性行動が活発な若い男性が膀胱炎症状を感じた場合は性病の可能性を考えなくてはなりません。もしセックスパートナー(男性)が膀胱炎症状を訴えた場合は、性病も含めて医療機関で検査を受けるようにすることが大切です。

性病にならないためにはセイファーセックスを心がけて下さい。もちろん性行為は人生の中で大切な行為ですが、病気になる危険性が隣り合わせであることは忘れてはなりません。セイファーセックスとはより安全な性行為を意味します。具体的には、コンドームを正しく使った性行為や不特定多数と関係を持たないなどを指します。