じゅうしょうきんむりょくしょう

重症筋無力症

免疫の異常が原因で目や口など様々な場所の筋力が低下する病気。

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12人の医師がチェック 123回の改訂 最終更新: 2017.05.17

重症筋無力症の基礎知識

重症筋無力症について

  • 免疫病原体に対する体の防御システム。何かのきっかけで、免疫が過剰反応している状態がアレルギーで、免疫が自分自身の体を攻撃してしまうのが自己免疫疾患の異常が原因で目や口など様々な場所の筋力が低下する病気
    • 本来は外敵から守るはずの免疫システムが、自分の細胞を攻撃してしまう自己免疫疾患本来は外敵を倒すために働くはずの免疫が、何らかの異常によって自分の体を攻撃してしまう病気の総称の一種
    • 胸腺腫など、胸腺の異常が原因に関わっていることが多い(異常な抗体白血球が作り出す、免疫の一部を担う物質。体内の病原体に付着して、他の免疫細胞の働きを助けたりするを作り免疫の異常を引き起こす)
    • 呼吸ができなくなって死に至ることもある
    • 病名は「筋無力症」の重症という意味ではない(英語のMyasthenia gravisの誤訳が定着した)
  • 病気のメカニズム
    • 免疫の異常により、神経から筋肉に命令が上手く伝わらくなる
    • 神経と筋肉の間の伝達物質(アセチルコリン神経細胞から神経細胞、または筋肉へ情報を伝える神経伝達物質。副交感神経や運動神経の末端から放出される)が、免疫の異常によって邪魔されてしまう
  • 10万人あたりに11-13人かかると言われている
    • 全国で患者は1-2万人程度いると言われている
    • 女性が多い(男性の2倍)
    • 発症症状や病気が発生する、または発生し始めることしやすい年齢は性別で違う
      ・男性:10歳から65歳の間に多い
      ・女性:30歳、55歳にピークが多い
  • 分類
    • 2つのタイプに分かれる
      ・眼筋型重症筋無力症:目やその周囲に症状が出るタイプ
      ・全身型重症筋無力症:全身がだるいなど全身に症状が出るタイプ

重症筋無力症の症状

  • 症状が日によって変わる
    • 一般的に朝は症状が軽く、夕方以降に症状が重くなる
  • 目の症状
    • まぶたまぶたのこと。眼球の上下にある皮膚の部分を指し、それぞれを上眼瞼、下眼瞼と呼ぶが開きにくい(眼瞼まぶたのこと。眼球の上下にある皮膚の部分を指し、それぞれを上眼瞼、下眼瞼と呼ぶ下垂)
    • 物が二重に見える(複視物が二重に見える状態。左右の視線が一点に揃わないことによる
    • 目の症状を初期症状として発見されることが多い
  • 口、口の周りの症状
    • 物を飲み込みにくい(嚥下障害
    • しゃべりづらい(構音障害舌や口を動かす筋肉が麻痺してうまくしゃべれなくなった状態。脳の病気(脳腫瘍や脳卒中)、顔面神経の病気などが原因で起こる
  • 全身の症状
    • 全身の筋力低下(肩が上がりにくい、立ち上がりにくいなど)
    • 疲れやすい
  • 筋無力症クリーゼ主に体の働きを調節するホルモンの分泌に異常が起き、ホルモンが多すぎる、または少なすぎることで体が陥る危機的状態のこと。ホルモン以外についても用いられることがある(患者の約10%に起きる):重度の手足の麻痺神経の障害により、手足などに十分な力が入らない、感覚が鈍くなるなど、身体機能の一部が損なわれること、または呼吸するための筋力の低下(死に至ることもある)

重症筋無力症の検査・診断

  • 主な検査
    • 反復刺激試験:筋肉を動かす神経に繰り返し電気刺激を加えて、筋肉にどの程度刺激が伝わっているかをみる検査
      ・重症筋無力症では反復刺激試験を行うと筋肉に伝わる刺激が小さくなる(漸減現象)が起こる
    • 筋力持久力検査:筋力の低下の程度を調べる
    • 血液検査
      ・抗アセチルコリン神経細胞から神経細胞、または筋肉へ情報を伝える神経伝達物質。副交感神経や運動神経の末端から放出される受容体抗体白血球が作り出す、免疫の一部を担う物質。体内の病原体に付着して、他の免疫細胞の働きを助けたりするが現れる
      ・抗MuSK抗体という抗体も近年注目されている
  • 場合によって行われる検査
    • アセチルコリンの分解を妨げる薬(テンシロン)を注射して、筋力が上がるかどうかを調べる検査(テンシロンテスト)を行うこともある
    • 甲状腺機能亢進症胸腺腫合併ある病気や治療によって、他の病気や病態が引き起こされることすることがあるので、それぞれに対して検査を行うこともある
  • 日本神経学会によるガイドライン治療や検査の場面において、医療従事者や患者が、適切な判断や決断を下せるように支援する目的で体系的に作られた文章のことで最近の研究を踏まえた診断基準案が提示されている
    • 症状がひとつ以上当てはまる:眼瞼まぶたのこと。眼球の上下にある皮膚の部分を指し、それぞれを上眼瞼、下眼瞼と呼ぶ下垂、眼球運動障害、顔面筋力低下、構音障害舌や口を動かす筋肉が麻痺してうまくしゃべれなくなった状態。脳の病気(脳腫瘍や脳卒中)、顔面神経の病気などが原因で起こる嚥下障害、咀嚼障害、頸部筋力低下、四肢筋力低下、呼吸障害
    • AChR抗体陽性またはMuSK抗体陽性(当てはまれば下の検査は陽性でなくてもよい)
    • 次の検査のどれかが陽性で、ほかの病気ではないことが確かめられている:眼瞼の易疲労性試験、アイスパック試験、テンシロン試験、反復刺激試験、短線維筋電図筋肉に針を刺し、筋肉が発する電気を感知することで、筋肉や神経の異常を調べる検査でジッターの増大(当てはまれば抗体検査は陽性でなくてもよい)

重症筋無力症の治療法

  • 治療法の概要
    • 発症症状や病気が発生する、または発生し始めること年齢、重症度、胸腺異常の有無によって治療法が変わる
  • 主な治療
    • 拡大胸腺摘出術:画像検査などで胸腺の異常(胸腺腫など)が見つかった場合は早期に手術を行い胸腺と胸腺周囲の脂肪を広範囲に切除する
    • ステロイド薬副腎で作られるホルモンの1つ。ステロイドホルモンを薬として使用すると、体の中の炎症や免疫反応を抑えることができるため、様々な病気の治療で用いられている
      ステロイド副腎で作られるホルモンの1つ。ステロイドホルモンを薬として使用すると、体の中の炎症や免疫反応を抑えることができるため、様々な病気の治療で用いられているを長期的に使わなければならない場合は、免疫病原体に対する体の防御システム。何かのきっかけで、免疫が過剰反応している状態がアレルギーで、免疫が自分自身の体を攻撃してしまうのが自己免疫疾患抑制剤を併用してステロイドの量を減らす(sparing effect)試みを行うことがある
    • 免疫抑制薬
    • 抗コリンエステラーゼ薬
    • 血液浄化療法
  • 筋無力症クリーゼ主に体の働きを調節するホルモンの分泌に異常が起き、ホルモンが多すぎる、または少なすぎることで体が陥る危機的状態のこと。ホルモン以外についても用いられることがあるによる呼吸困難になった場合、急速に呼吸困難に陥るので、一時的に気管挿管をして人工呼吸器を使用する(機械で強制的に呼吸をさせる方法)
  • 重症筋無力症では、使用できない薬が多い
    • ベンゾジアゼピン系薬剤
    • 一部の抗菌薬細菌感染症に対して用いられ、細菌の増殖を防ぐ、もしくは殺菌する薬。ウイルスや真菌(かび)には効果がない
    • 一部の抗不整脈
    • 利尿薬
  • 状況によって使ってはいけない(禁忌)とされる薬がある
    • 妊婦は免疫抑制薬の一部を使ってはいけない
    • ステロイド薬、免疫抑制薬の使用中に生ワクチンを打ってはいけない
    • ACE阻害薬の使用中にイムソーバによるアフェレシスを行ってはいけない
    • 閉塞隅角緑内障があれば一部の点眼薬目薬のことが使えない
  • 最近の治療で治る見込み(予後病気の長期的な経過や、回復の見込み)は改善した
    • 50%ほどは日常生活に支障がないようになる
    • 完治したと言える状態はないが、全体の20%近くが寛解(症状がなくなった状態)に至る
    • 薬をやめても1年以上症状が出なくなる人もいる
    • 死亡は少数だがありえる

重症筋無力症に関連する治療薬

コリンエステラーゼ阻害薬(重症筋無力症治療薬)

  • アセチルコリンの分解酵素を阻害して重症筋無力症での目や口、全身の筋力低下などを改善する薬
    • 重症筋無力症では免疫異常により神経と筋肉の伝達物質(アセチルコリン)が邪魔をされているため筋力の低下がおこる
    • アセチルコリンはコリンエステラーゼという酵素によって分解される
    • 本剤はコリンエステラーゼ阻害作用によりアセチルコリンの量を増加させる
  • 特徴的な副作用に下痢、吐き気、発汗、徐脈などがある
コリンエステラーゼ阻害薬(重症筋無力症治療薬)についてもっと詳しく

副腎皮質ホルモン(ステロイド内服薬・注射薬)

  • 抗炎症作用、免疫抑制作用などにより、アレルギー性疾患、自己免疫疾患、血液疾患などに効果をあらわす薬
    • 副腎皮質ホルモンの一つのコルチゾールは抗炎症作用、免疫抑制作用、細胞増殖抑制作用、血管収縮作用などをもつ
    • 本剤はコルチゾールを元に造られたステロイド薬
  • 本剤は薬剤のもつ作用持続時間によって、(作用の短い順に)短時間作用型、中間型、長時間作用型に分けられる
  • 本剤は多くの有益の作用をもつ反面、副作用などに注意が必要となる
    • 副作用の軽減目的のため、抗菌薬や胃薬などを併用する場合もある
副腎皮質ホルモン(ステロイド内服薬・注射薬)についてもっと詳しく

コリンエステラーゼ阻害薬(点眼薬)

  • アセチルコリンの分解酵素を阻害して重症筋無力症での眼の筋力低下や緑内障での眼圧を改善する薬
    • 神経伝達物質のアセチルコリンはコリンエステラーゼという酵素によって分解される
    • 重症筋無力症では免疫異常により神経と筋肉の伝達物質(アセチルコリン)が邪魔をされているため筋力の低下がおこる
    • 目の筋力の低下により、まぶたが開きにくいであったり物が二重に見えるなどの症状がおこる
    • アセチルコリンは副交感神経の作用を高め、眼房水(眼圧上昇の原因となる体液)の排泄を促進させる
  • 斜視(調整性内斜視)の治療に使用する場合もある
コリンエステラーゼ阻害薬(点眼薬)についてもっと詳しく

重症筋無力症の経過と病院探しのポイント

重症筋無力症かなと感じている方

重症筋無力症は、現在でも治療が難しい難病の一つです。治療の目標は症状を抑えることと、それがうまくいった場合には、治療薬なしで症状が改善した状態(寛解(かんかい)状態といわれます)を目指すことになります。

まず始めに出やすい症状は、ものが二重に見える複視物が二重に見える状態。左右の視線が一点に揃わないことによるという状態です。目の筋肉がうまく動かなくなることによって、右目と左目の焦点が少しずつずれてしまいます。斜視のように他人から見て分かるほど最初から両目の向きがずれてくるわけではありませんが、本人にとっては「ピントが合わせづらい」または「視力が落ちた」ように感じられます。その後、ものが飲み込みにくくなったり疲れやすくなったり呼吸がしづらくなったりという経過が一般的です。

このような症状に当てはまる場合には、お近くの内科、もしくは神経内科を受診されることをお勧めします。複視や飲み込みづらさの原因となる病気は重症筋無力症以外にも数多くあります。他の病気も含めて診断するための診察や検査が必要になりますが、これを最も専門的に行っているのは神経内科です。神経内科のクリニックがある場合にはそちらの受診をお勧めしますし、神経内科に限らず一般的な内科クリニックをまずはじめに受診するのも良いでしょう。

他の病気よりも重症筋無力症の可能性が高いとなってきた場合には、より精密な診断を行うため、総合病院内科、外科、小児科、産婦人科など主要な科が揃っている病院のこと。現在、明確な定義はないや大学病院の受診が必要となります。はじめからこれらの病院を受診するということもできなくはないのですが、紹介状前の病院で行われた検査や治療、経過をまとめて、他の医療機関へ引き継ぐための資料。正式名称は「診療情報提供書」なしでの受診は追加で受診費用がかかることと、まずは重症筋無力症の可能性がどのくらいあるのかを判断した上でその次にこのような専門病院を受診した方が、不必要な受診が避けられる(最初から専門病院を受診した後に重症筋無力症ではない、となると、もう一度別の診療科を受診し直す必要が出てきます)という点があります。

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