じゅうしょうきんむりょくしょう

重症筋無力症

免疫の異常が原因で目や口など様々な場所の筋力が低下する病気。

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12人の医師がチェック 123回の改訂 最終更新: 2017.06.15

重症筋無力症のQ&A (19件)

    重症筋無力症と症状が似ている病気はありますか?

    重症筋無力症は手足の筋力低下や目が開かなくなるといった症状が現れますが、同じような症状があらわれる病気は他にもあります。重症筋無力症と似た症状の出る病気と重症筋無力症との違いについて、重要な病気に絞って簡単に説明します。

    (1) Lambert-Eaton症候群(ランバートイートン症候群)

    重症筋無力症と同じく神経筋接合部での障害なのですが、こちらは神経側から筋肉への伝達物質が減ってしまうことにより伝達がうまくいかず力が入りにくくなります。肺がん(中でも特に小細胞がん)に合併することが多いことが知られています。

    症状は、手足に現れることが多いです。重症筋無力症では眼や喉(しゃべりづらさ、飲み込みづらさ)に症状がよく出ますが、Lambert-Eaton症候群では目や喉の症状はめったに見られません。

    四肢の症状は、運動を続けると最初はだんだん力が弱くなっていく所は重症筋無力症とそっくりなのですが、その後徐々に力強くなっていくということが起きます。それを反映して、反復刺激試験(神経を電気で刺激して筋肉の動きをみる)でも低い頻度での刺激では筋肉の動きはだんだん弱くなっていきますが、高い頻度での刺激では逆に強くなっていくという現象がみられます。

    また、自律神経症状も区別するのに有効です。重症筋無力症では自律神経の障害はありませんが、Lambert-Eaton症候群では口が乾きやすい、便秘、排尿障害などの自律神経症状がみられます。

    (2) 筋萎縮性側索硬化症(ALS)

    筋力低下をきたす病気の代表格です。重症筋無力症では喉(のど)の症状(しゃべりづらさ、飲み込みづらさ)が現れますが、これはALSにも特徴的な症状です。ただし、重症筋無力症の症状の特徴である易疲労性・日内変動・日差変動は、ALSではあまりみられません。ちなみに、このしゃべりづらさや飲み込みづらいといった喉の症状はMuSK抗体陽性の重症筋無力症で高率に認めます。

    また、ALSでは筋肉のぴくつきがみられますが、重症筋無力症ではみられません。

    気をつけなければならない点としては、ALSでも反復刺激試験でだんだん力が弱くなっていく所見が見られることがあるということです。

    (3) 開眼失行

    自分で眼を開けようと思っても開けられなくなってしまいます。眼を開けようとする時は、額の筋肉に力を入れて眉毛を上げて開けようとしなければなりません。

    重症筋無力症でみられる眼瞼下垂と区別が難しいことがあります。区別するポイントとしては、重症筋無力症では上記のように無理やり眼を開けようとすることはなく、また、1日の内で症状が変動するが、開眼失行では症状の変動はないということです。

    (4) 眼瞼痙攣

    まぶたに力が入ってしまい、眼を強く閉じてしまう状態となります。ジストニアの1種と言われています。開眼失行と一見区別が難しいですが、開眼失行では額の筋肉を収縮させて眼を開けようとするために眉毛が上がっています。それに対し、眼瞼痙攣では眼を強く閉じてしまっている状態なので眉毛が下がっています。これも眼瞼下垂との区別が難しいことがあります。区別の仕方は開眼失行と同じです。

    他にも色々な病気がありますが、重症筋無力症の特徴である易疲労性、日内変動、日差変動といった部分に注目すれば同じような症状を呈する病気はあまり多くありません。ただし、重症筋無力症も非常に重症となってしまえば1日中症状が重く日内変動はなくなるなど、特殊な場合があり、いつでも区別が簡単というわけではありません。そういう場合には血液検査が非常に重要になります。

    重症筋無力症に対するステロイド治療について教えてください

    重症筋無力症の治療の中核は免疫療法であり、ステロイドによる治療はさらにその中核となるものです。上でも述べたように、飲み薬として使う場合と点滴で使う場合があります。

    (1) 飲み薬として使う場合

    ステロイドはまず治療を開始する際には飲み薬として使用します。飲み薬としてのステロイドはプレドニゾロン(プレドニン®)という薬が使われます。この際に注意しなければならないのは、重症筋無力症ではステロイド投与開始時に、一時的に症状が悪くなってしまう「初期増悪」と呼ばれる現象があることです。従って、飲み薬を始める際には、注意深く少量から使っていく必要があります。まずはプレドニンを5-10 mg/日から飲み始めて、徐々に増やしていきます。その後、プレドニンの高用量投与、すなわち50-60 mg/日までステロイドの量を増やしていきます。ステロイドの投与は隔日(一日おき)に投与することが多いです。

    病気が落ち着いてきたらステロイドの量を徐々に減らしていきますが、これもゆっくり減らしていくことが多いです。ステロイドの量を減らすことで病状が悪化してしまうことがあるからです。とはいえ、いつまでも使うステロイドの量を多いままにしていたら副作用の問題が出てきますので、現状で減らすことができるのかを適切に判断する必要があります。そのためステロイドを減らす際には、臨床症状にくわえて反復誘発筋電図検査の結果を参考にします。

    ステロイドを服用していると、易感染性(免疫が抑えられてしまうために感染症にかかりやすい)など、注意しなければならない副作用が色々と出てきますので、一定量以上ステロイドを服用している期間は入院して治療を受けることになります。

    (2) 点滴として使う場合

    点滴のステロイド治療は、いわゆる「ステロイドパルス療法」が中心になります。他の病気でもよく使われる治療法で、ステロイドを注射で3日間ほど大量投与します。重症筋無力症の症状が急に悪くなってきた時に行うもので、速やかに効果が得られる上に、副作用が比較的少ない治療法です。しかし、重症筋無力症の治療を始める際にいきなりステロイドパルス療法を行ってはいけません。ステロイドを使用する際は初期増悪があると上で述べました。ステロイドパルス療法は大量にステロイドを点滴で投与する治療法であるために、いきなり行ってしまうと初期増悪がみられる可能性がかなり高くなります。従って、ステロイドの飲み薬を少量使用してしばらくしてから行うことになります。とはいえ急激に悪くなっている状況であれば、いきなりステロイドパルス療法を行うこともありますので、状況を見ての判断になります。

    重症筋無力症の免疫抑制薬による治療について教えてください

    免疫治療にはステロイド以外にも免疫抑制薬という薬を使った治療もあります。重症筋無力症の治療に用いられるのはシクロスポリン(ネオーラル®)とタクロリムス(プログラフ®)です。ステロイド治療による効果がいまひとつである場合に用いられます。

    また、免疫抑制薬を併用すると、飲み薬のステロイドの量を減らせるというメリットも有ります。 以上の免疫療法でも効果が限定的な場合、以下の治療を組み合わせて用いることがあります。

    (1) 免疫グロブリン大量療法(IVIG)

    免疫グロブリン大量療法(IVIG)も他の多くの病気で使われています。中等症から重度の重症筋無力症の治療に用いられます。重症筋無力症の症状が急に悪くなってきた時に短期間で効果が得られる有効な治療法です。下記の血液浄化療法と比べると簡単に行える(点滴のみ)ため、比較的よく用いられます。

    (2) 血液浄化療法

    こちらも適応は基本的にはIVIGと同様です。重症筋無力症の症状が急に悪くなってきた時に行います。抗アセチルコリン受容体抗体が陰性の重症筋無力症に対しても、これは有効であることが知られています。

    この治療を行う際には、腎臓が悪い方が血液透析治療で使うような体外循環装置が必要であり、IVIGよりも大掛かりな治療法となります。

    重症筋無力症の胸腺摘除術について教えてください

    重症筋無力症は胸腺腫という病気と深く関わりがあります。胸腺腫と関連する重症筋無力症は全体の15-25%を占めます。胸腺腫を合併している場合は、重症筋無力症の治療に加えて胸腺腫に対する手術も必要になります。したがって、重症筋無力症と診断された患者さんには必ず胸部CT検査を行います。

    胸腺腫を合併していることがわかった場合、治療法としては胸腺摘除術に加えて放射線療法、化学療法などがあります。特に、発症年齢が若く、発症から手術までの期間が短く、抗アセチルコリン受容体抗体が陽性の患者さんに対して手術をすると、治療効果が高くなることが知られています。

    手術後も再発の有無を確認するために年に1回程度、胸部のCT検査を行います。

    なお、胸腺腫を合併していない場合に胸腺を摘出するべきかどうかについては、昔から議論されてきたところではありますがいまだ結論は出ていません。施設によって考え方は異なると思います。

    重症筋無力症の症状を和らげる抗コリンエステラーゼ薬について教えてください

    抗コリンエステラーゼ薬は重症筋無力症の症状を和らげる効果があり、上記の治療に追加して積極的に用いられます。飲み薬が治療に用いられ、よく使われるのはメスチノン®、マイテラーゼ®、ウブレチド®です。注射の薬は作用時間が短時間であり重症筋無力症の診断に用いられます(いわゆるテンシロンテスト)。

    重症筋無力症の眼瞼下垂に対する治療法はありますか?

    重症筋無力症の症状の中で最も代表的なものは瞼が垂れ下がって目を開けづらくなる眼瞼下垂です。瞼が下がっていると見栄えが悪いだけでなく、物が見えづらかったり二重に見えたりするなど日常生活に支障をきたすことがあります。その場合、ガイドラインではナファゾリン(プリビナ®)点眼により症状を和らげる効果が期待できると記載されています。また、どんな治療をしてもなかなか治らない眼瞼下垂に対しては、眼瞼挙上術という手術を行うこともあります。この手術は眼科や形成外科で行われています。

    重症筋無力症治療の今後の展望について教えてください

    これまで、重症筋無力症の治療といえばステロイド+胸腺摘除術+抗コリンエステラーゼ薬、とされてきました。ステロイドに大きく依存する治療法であり、重症筋無力症のコントロールはついてもステロイドの副作用に苦しむ方が多かったです。そういった点を踏まえ、ステロイドを減らす流れになってきました。このように重症筋無力症の治療法は現在見直されている段階であり、今後も治療法については大きく変わってくる可能性があります。

    また、いくつか新薬も検討されています。日本ではまだ重症筋無力症の治療に対しては未承認ですがだんだん使われてくるようになった薬の中に、リツキシマブというものがあります。元々はB細胞性リンパ腫の治療に用いられている薬ですが、リンパ腫と重症筋無力症が合併している患者さんにリツキシマブを投与したところ重症筋無力症も改善したということがあり重症筋無力症の治療薬として注目をあびるようになりました。リツキシマブを投与して数週間で重症筋無力症の症状が改善するという短期的効果が得られるとともに、半年から数年の経過で症状が改善する長期的効果も得られるとされています。他の治療法ではなかなかうまくいかない重症筋無力症に対して、有望な治療方法の一つとなるのではないかと期待されています。

    免疫抑制薬も、現在は使える薬が限られていますが、その他にもいくつか有効性があるのではないかと言われている薬はあります。

    このように重症筋無力症は今、治療法が大きく変わりつつあることがお分かりいただけたと思います。今後もさらなる発展が見込まれる分野です。このページが、重症筋無力症で苦しまれている患者さんにとって病気を理解する助けとなれば幸いです。

    重症筋無力症の原因、メカニズムについて教えて下さい。

    神経筋接合部(神経と筋肉のつなぎ目)周囲の分子に対する自己抗体が身体の中で作られることにより、刺激伝導が障害される(神経から筋肉への命令が伝わりにくくなる)ことが原因とされています。体を感染症から守るための免疫に異常がみられる、自己免疫疾患の一つとして捉えられています。

    重症筋無力症は、どのくらいの頻度で起こる病気ですか?

    2006年の調査では人口10万人あたり11.8人で、女性が男性の1.7倍とされています。

    重症筋無力症は、他人にうつる病気ですか?

    他人への影響は知られていません。

    重症筋無力症は、遺伝する病気ですか?

    家族内発症はごくわずかに報告されていますが、一般的には遺伝しないものとみなされています。

    重症筋無力症は、どんな症状で発症するのですか?

    「眼筋型」と「全身型」で異なります。「眼筋型」は眼瞼下垂(まぶたが垂れる)、眼球運動障害(目が動かしにくく物が二重に見えるなど)といった症状が起きます。「全身型」は手足・首・喉や口の筋力低下・易疲労性(疲れやすい)といった症状があります。呼吸を行うための筋肉に症状が出た場合、呼吸困難を生じることもあります。いずれも、朝よりも夕方・夜に、症状が重くなるというように、1日のうちに症状が変化するのが特徴です。一部には、当初「眼筋型」だったが後に「全身型」に移行した、という方もいらっしゃいます。

    重症筋無力症に関して、クリーゼとは何ですか?

    急に筋力低下がひどくなり、呼吸困難などを生じている状態です。程度によっては命に関わることがあります。筋無力症性クリーゼ(元々の重症筋無力症の症状がとても悪くなった状態)と、コリン作動性クリーゼ(治療薬であるコリンエステラーゼ阻害薬が過剰な状態)があります。前者はストレス・感染・妊娠・禁忌薬の使用などをきっかけに生じることがあり、全患者さんの1割強の方がどこかの段階で経験すると言われています。この際は、呼吸状態によっては人工呼吸器をによる治療を受ける必要があります。

    重症筋無力症は、どのように診断するのですか?

    診断するにあたり以下のような検査を行います。

    (1) 神経筋接合部の障害

    ・眼瞼の易疲労性試験:患者さんに目だけ上に動かしてもらい、それを1分間続けます。これでまぶたが下がってくるかをみます。

    ・アイスパック試験:氷のパックを3-5分間ほどまぶたに押し当てます。それでまぶたの下がり方がましになるかをみます。

    ・エドロホニウム(テンシロン)試験:コリンエステラーゼ阻害薬であるエドロホニウムを注射し、症状が良くなるかどうかをみます。

    ・反復刺激試験:神経を電気で刺激して筋肉の動きをみます。連続して刺激を加え、筋肉の動きが弱くなってくれば陽性です。筋肉の動きの変化は見た目だけで判断するのではなく、電極を貼って機械を用いて評価します。

    (2) 血液検査

    最初に、重症筋無力症は自己抗体による病気だということを説明しました。この自己抗体の多くはアセチルコリン受容体抗体と呼ばれるもので、血液検査で調べます。重症筋無力症の患者さんの85%程度でこの自己抗体が陽性になると言われています。陰性の人のうち、数%はMuSK抗体という自己抗体が陽性になります。これであわせて90%程度の人が血液検査で診断がつくことになります。

    とはいえ、10%程度の人が残ってしまいます。最近、第3の自己抗体としてLrp4抗体というものが注目されていますが、非常に頻度は低く、検査もまだ研究室レベルでしかやっていません。

    (3) 画像検査

    重症筋無力症は神経筋接合部の障害による病気なので、筋肉とは別の部位の部位の画像を撮っても異常は出ません。ですが、この病気が疑われる時には胸部のCTを絶対に撮影します。重症筋無力症では胸腺腫などの胸腺(心臓の前にある、免疫に関わる組織、大人では通常は小さく縮み、ほとんど機能していない)の病気を合併することが多いため、胸部CT検査が必要になるのです。特にアセチルコリン受容体抗体が陽性の患者さんでは、75%程度で胸腺の異常があるといわれており、病気の発症にはなんらかの形で胸腺が関与していると言われています。その胸腺の異常がないか調べるために、胸部CT検査を施行します。

    なお、胸腺に異常がある場合には手術でとってしまいます。それで症状が良くなってしまうこともあります。

    重症筋無力症の、その他の検査について教えて下さい。

    重症筋無力症の患者さんには、胸腺腫という腫瘍が同時に起こりやすいため、胸部のCTを行い確認します。

    重症筋無力症の治療法について教えて下さい。

    胸腺腫が原因で、重症筋無力症が起こることもあるため、胸腺腫がある場合は胸腺摘除術を行います。施設によっては胸腺腫が明らかでない場合でも、特に全身型では、念のために胸腺の摘出を行うことがあります。有効性については議論があります。その上で、コリンエステラーゼ阻害薬や免疫抑制剤を使用します。治療開始の最初の頃に一時的に症状が悪くなる「初期増悪」という現象が知られており、治療の開始は慎重に行います。特に重症の場合など、初めから特殊な治療が必要な事情がある場合は、血液浄化療法あるいは免疫グロブリン大量静注療法を先に行うこともあります。

    重症筋無力症の内服治療薬の使い分けについて教えて下さい。

    軽症にとどまる場合、コリンエステラーゼ阻害薬のみで治療を行うことがあります。ごく軽症の場合以外はステロイドを中心とする免疫抑制薬を使います。 従来はステロイド中心の治療を行い、効果が思わしくない場合に他の免疫抑制剤を使用する、という考えが主流でした。しかしステロイドの長期投与のデメリットも無視できず、最近はより早期から積極的にステロイド以外の免疫抑制剤も導入して、短期間での改善を目指すという考え方が主流になりつつあります。現在治療法は様々に検討されており「これが正解」というものが決まっているわけでもなく、施設によって少しずつ方針は異なることをご理解いただければと思います。

    重症筋無力症は完治しますか?薬は、生涯飲み続けることになるのですか?

    一概には言えませんが、治療が終わった後、一定程度の薬を使っている状態で生活に支障のないレベルになる方、及びそれより症状が軽い方が計5割程度とされています。症状が完全になくなり薬がいらなくなる方は1割程度と見積もられています。逆に言えば、9割程度の患者さんは長期にわたり何らかの治療が必要です。

    重症筋無力症に関して、日常生活で気をつけるべき点について教えて下さい。

    概ね健常な方と近い生活を送れますが、ステロイドなどの免疫抑制剤による治療中には感染の注意が必要です。また、重症筋無力症の方は使えない薬が多くあります。ベンゾジアゼピン系の薬(睡眠薬・精神安定剤など)が代表格です。本症のかかりつけ医以外から処方を受ける際は必ず重症筋無力症であることを伝えてください。 感染などをきっかけにクリーゼを起こすことがありますので、急に息が苦しくなった、吞み込みにくくなった、というような場合は至急医療機関に相談してください。