ぼうこうえん
膀胱炎
尿をためる膀胱の炎症。若い女性では毎年数%の人に起こる。原因は大腸菌が80%程度。
14人の医師がチェック 171回の改訂 最終更新: 2018.12.05

排尿時に違和感や痛みを覚えたら

普段であれば特に意識しない排尿の際に不快感を覚えることがあります。排尿時の違和感を覚える病気に膀胱炎がありますが、他にも似たような症状を覚える病気があります。膀胱炎とはどういった病気なのか、架空の例を踏まえて考えてみましょう。

41歳の女性が排尿時に覚えた違和感とは?

41歳の女性(仮名:田中さん)は特に持病もなく健康だと自認していました。ある日田中さんが排尿した時のことです。

「おや、なんだか変な感じがするぞ。」

田中さんは何かに気づきました。しかし、汗をたくさんかいたあとやトイレをずっと我慢したあとに違和感を覚えた経験がある田中さんは、気のせいかもしれないと思い様子を見ることにしました。何となく感じる排尿時の違和感以外は身体に異常を感じないこともあり、田中さんは特に焦る様子もありません。

しかし、数日が経つと状況が変わってきました。

違和感が段々と強くなってきた

最初は気のせいかなと思っていた田中さんでしたが、症状は治まるどころか強くなってきました。排尿するとなんだか熱い感じを覚えるようなってきたのです。

そこで近くの診療所にかかることにしました。

「今どんな症状がありますか?症状はだんだん悪くなっていますか?」

お医者さんから聞かれた田中さんは冷静に状況を振り返りました。

「おしっこを出す時になんだか熱く感じます。でもそれ以外に症状はありません。」

と答えた田中さんにお医者さんは、

「排尿時に痛みはありませんか?すぐにトイレに行きたくなったりしませんか?」

と尋ねました。

このやり取りの中に膀胱炎の大事なポイントが隠れています。もう少し詳しく解説しましょう。

ポイント1:排尿時の違和感の感じ方はさまざま

排尿時に熱い感じがあると言った田中さんに対して、医者は痛みはありますかと尋ねました。実はこの2つの症状はどちらも膀胱炎に起こりやすい症状です。お医者さんは膀胱炎に起こりやすい症状がいろいろと出ていないかを確認しているのです。

一般的に膀胱炎で排尿時に起こりやすい症状は次のものと考えられています。

  • 排尿時の痛み

  • 排尿時の熱感(熱い感じ)

  • 排尿時の違和感

  • 残尿感

  • 下腹部の痛み

これらに当てはまるものが多ければ膀胱炎である可能性が高くなります。排尿時に違和感を覚えたら、これらに当てはまるものがあるかどうか確認してみて下さい。

ポイント2:尿の色やにおいに変化はあるか

膀胱炎になると尿に変化が出現することがあります。膀胱炎では細菌感染によって膀胱の壁に炎症が起こっています。その影響を受けて次のような尿の変化が起こりやすくなります。

  • 尿が濁る(尿混濁)

  • 尿が赤みを帯びる(血尿

  • 尿のにおいが強くなる

排尿時の違和感だけでなく、尿の様子にも注目すると膀胱炎による変化の有無がわかりやすくなります。

ポイント3:すぐに排尿したくなる

膀胱炎になると排尿の回数も変化します。膀胱が炎症を帯びることで過敏になっているので、ちょっとした刺激で排尿したくなります。そのためいつもよりも少ない量の尿が膀胱内に溜まってもトイレに行きたくなります。また、膀胱の炎症は排尿の時にかかる圧力の刺激を助長するため、排尿してもまだ排尿したくなります。この状況が残尿感として感じられます。

背景によって治療法が異なる

田中さんはいろいろと聞かれることにびっくりしつつも自分の症状について丁寧に答えました。しかし、お医者さんはさらに続けます。

「今までに何か病気をしたことはありますか?同じ症状を経験したことはありますか?」

田中さんは特に思い当たるフシはありませんでした。するとお医者さんはびっくりすることを聞いてきます。

「失礼ですが、閉経していますか?」

田中さんは本当に失礼なことを聞くなあと思いつつも、閉経していないことを伝えました。

ポイント1:膀胱や尿管に病気があるか

多くの病気で、今までにどんな病気をしていたか(既往歴)はとても重要になります。一部の人は膀胱炎を繰り返します。問診を行うと、膀胱炎を繰り返しているかどうかや、膀胱炎を起こしやすい病気をもっているかどうかについて分かります。

膀胱や尿管に病気があると膀胱炎になりやすいです。

これらは膀胱炎になりやすい病気の例です。問診や検査をしながら、こうした病気が存在していないかを調べる必要があります。

ポイント2:同じ症状を以前に経験したことはあるか

膀胱炎は繰り返しやすい病気です。そのため、以前に同じ症状があったかどうかはとても大事なポイントです。

膀胱炎を起こしやすい病気がある場合や膀胱炎を繰り返す場合を複雑性膀胱炎といいます。複雑性膀胱炎は再発が起こりやすかったり、抗菌薬の効きにくい(耐性傾向の強い)細菌が原因となりやすかったりします。

一般的な膀胱炎(単純性膀胱炎)であれば第1世代セフェム系抗菌薬(ケフレックス®など)や第2世代セフェム系抗菌薬(パンスポリン®、ケフラール®など)、ST合剤(バクタ®など)を用いて治療します。複雑性膀胱炎は特殊な細菌が原因となりやすいため、過去に尿から検出された細菌を参考に抗菌薬を選択する必要が出てきます。(詳しくは、「膀胱炎の治療薬」を参考にして下さい。)

膀胱炎の診断の際には患者さんの以前の経験から患者さん自身が膀胱炎かもしれないと考える直感はとても役に立つことが分かっています。

ポイント3:閉経しているか

一見なんにも関係がなさそうですが膀胱炎と閉経は関係があります。閉経した女性の膀胱炎は複雑性膀胱炎と考えます。複雑性膀胱炎は過去の治療歴(どんな抗菌薬を使って治療したか)や過去の細菌歴(どんな細菌が身体から検出されているか)ががとても重要になります。閉経していなければ単純性膀胱炎と考えて治療することができます。

腎盂腎炎というもっと重い病気に進行することがある

お医者さんは田中さんの腰を叩いたり下腹部を押したりしながら全身をくまなく診察していきます。腰を叩かれた時には田中さんは異常を感じませんでしたが、下腹部を押された時に違和感と軽い痛みを感じました。

お医者さんは全身を診察しながら「寒気や震えを感じますか?」と聞きました。

田中さんは寒気や震えを風邪の時に経験したことがあります。そのため、寒気や震えを風邪の症状と思っていた田中さんはとても不思議に感じました。

ポイント1:寒気や震えはないか?

寒気や震えのことを医学的には悪寒戦慄(おかんせんりつ)と言います。もちろん風邪肺炎でも悪寒戦慄の有無は重要ですが、膀胱炎でも重要です。

膀胱炎が重症になると腎盂腎炎(じんうじんえん)という病気になることがあります。これは膀胱から尿管をつたって腎臓にまで細菌が侵入して、腎盂や腎臓で感染が起こる病気です。腎盂腎炎では全身の症状が出やすいです。悪寒戦慄は出やすい全身の症状になります。

また、腎盂腎炎では菌血症という病気が合併しやすいです。菌血症は血液の中に細菌が侵入して感染を起こす病気です。血流を介してさまざまな臓器に細菌が侵入するため、全身に炎症が起こりやすくなります。悪寒戦慄がある場合には菌血症にも気をつける必要があります。

性病に要注意

全身を一通り診察し終わったあとにお医者さんは次のように言いました。

「おそらく膀胱炎ですね。おしっこの簡単な検査と培養検査をしましょう。」

尿の検査は痛くないので田中さんはなんだかホッとして気持ちになりました。検査室に行こうとしている時にお医者さんは思いがけないことを聞いてきました。

「込み入ったことを質問させて下さい。今までに性病になったことはありますか?」

「セックスをする相手は一人ですか?」

あまりに意外な質問をされたので田中さんはびっくりしましたが、冷静を努めて田中さんは応えました。

「性病になったことはありません。セックスをする相手も夫一人です。」

お医者さんはどうしてこんなプライベートなことを尋ねたのでしょうか。

ポイント1:性病でも同じような症状が出る

膀胱炎で感じるような残尿感や頻尿といった症状は性病でも起こります。そのため性病になりやすい人が膀胱炎を疑われた場合には性病も考えなくてはなりません。

性病になりやすい人は次のようなことに当てはまる人です。

  • 不特定多数と性行為を行う

  • コンドームを適切に使わない

  • 風俗店にしばしば通う

性病を考えなければならない状況では、これらに当てはまるかどうかを診察中に聞かれます。恥ずかしいと感じる人もいると思いますが、状況を把握するのに大切な質問ですので、正直に答えるようにして下さい。

ポイント2:性病を疑ったらパートナーも一緒に検査を

性病が疑われた場合にはパートナーも一緒に検査を受ける必要があります。自分が性病になっている場合にはパートナーも性病である可能性が非常に高いです。

また、治療についても自分だけでなくパートナーも一緒に治療する必要があります。自分だけ治療しても相手が治療されなければ、早晩また自分に性病がうつります。これをピンポン感染といい、性病が行ったり来たりするのを防ぐためにもパートナーも一緒に検査・治療する必要があります。

性病についてもっと知りたい方は「性病のまとめ記事」に詳しく書いてありますので参考にして下さい。

普段どういうった生活をしたら良い?

「失礼しました。プライベートなことを聞いて申し訳ありません。」

「おそらく単純性膀胱炎です。バクタという抗生物質を3日分お出しするので、1日に2回飲んで下さい。」

お医者さんからそう言われた田中さんは、ふと疑問が湧いてきました。

同じような診察を受けて問診されるのは嫌だから、どんな日常生活を送れば良いのだろうと考えたのです。

「私はどんな風に生活すれば良いですか?何かポイントがあったら教えてください。」

お医者さんは頷きながらこう言いました。

「水分を多めに摂って下さい。あとおしっこは我慢せずにこまめに行くことが大事です。排便のときはお尻を前から後ろに拭くようにすると良いでしょう。」

ポイント1:飲水を多めに

水分を多めに摂って尿をたくさん出すことは膀胱炎の予防につながります。そのため水分を多めに摂ることが有効です。膀胱炎による残尿感や頻尿の悩みからあまり飲みたくないと思う人は多いです。しかし、膀胱炎と分かっている場合には飲水を多めにして排尿を促す気持ちでいるほうが良いです。

ポイント2:トイレを我慢しすぎない

排尿は細菌が膀胱に入ってきても、膀胱の外に細菌を出す作用があります。排尿をこまめに行うことで膀胱炎は予防できます。トイレを我慢しすぎないことが大切です。

また、膀胱炎の原因菌として便の中の細菌が問題となることが多いです。排便後のトイレットペーパーの使い方に注意して下さい。便が尿の出口(尿道口)につかないように、前から後ろに拭くようにすると良いです。

ポイント3:性行為について

上で述べたように性行為でうつる性病は膀胱炎と同じような症状をきたします。そのためセイファーセックス(より安全なセックス)を心がけることが大事です。セイファーセックスのためには次のことに気をつけて下さい。

  • 不特定多数と性行為を行わない

  • コンドームを適切に使用した性行為を心がける

万が一、性病に思い当たるふしがある場合にはパートナーと一緒に受診して検査することが望ましいです。

また、性行為自体が膀胱炎の原因になることがあります。女性の尿道口は膣の近くにあるため、性行為の際に雑菌が尿道口から膀胱に入ってくることがあります。もちろん男性でも尿道口に雑菌が侵入することはあるのですが、男性の場合には尿道口から膀胱までの距離(尿道の長さ)が長いため膀胱炎になりにくいです。性行為による膀胱炎になりにくくするには次のことを行って下さい。

  • 性行為の前後にシャワーなどを用いて清潔にする

  • 性行為のあとに排尿をする

性行為のあとにいつのまにか眠ってしまうこともあると思います。特に膀胱炎に悩まされている人は性行為前後の注意点を気にするようにして下さい。

女性に多い膀胱炎に詳しくなろう

膀胱炎になると生活の質が下がります。女性は身体の構造(尿道が短い)から膀胱炎になりやすいです。一度膀胱炎になると、生活が変わらない限りまたなりやすいのが膀胱炎の特徴です。膀胱炎のページにある注意点を参考にして下さい。

【膀胱炎に対する大事なポイント】

  • 膀胱炎になると排尿時に症状が出やすい

  • 性病も同じような症状が出る

  • 排尿時の違和感や残尿感、尿の性状の変化を感じたら受診する

  • 生活上の注意点がある

    • 飲水を多めに取る

    • トイレを我慢しすぎない

    • 清潔な環境で性行為をする