せきずいそんしょう
脊髄損傷
背骨の中に存在する太い神経(脊髄)がダメージを受けることにより、感覚障害や運動障害がおこる
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最終更新: 2022.02.21
脊髄損傷の基礎知識
POINT 脊髄損傷とは
脳とつながる背中の中の神経(脊髄)がダメージを受けることを指します。運動機能や感覚機能に障害が起こり、その症状は多様です。例えば、下半身が動かなくなったり、尿意や便意を感じなくなったりしますし、損傷部位によっては命に関わることもあります。脊髄損傷の主な原因には交通事故や転落外傷などです。脊髄のダメージは回復することが難しいので、残った機能を上手に使うように訓練することが治療になります。脊髄損傷が疑われる人は整形外科や、救急救命科、リハビリテーション科などで検査や治療が行われます。
脊髄損傷について
- 脳から
背骨 の中を通る太い神経(脊髄 神経)が障害されて、感覚機能や運動機能に障害がおこった状態- 強い外力により背骨が骨折したり、首や背中が後ろに曲がったりすることで、脊髄にダメージが及ぶことが原因となる
- 主な原因
- 交通事故
- 高いところからの転落
靭帯 の石灰化(後縦靱帯骨化症):直接的な原因ではないが、脊髄損傷を起こしやすくなる原因の一つ- 浅いプールに頭から飛び込んで顔をぶつけることで、頭が背中側に強くそることで頚髄の損傷を起こすことがある
- 年に約5000人が
発症 - 男性に多い
- 完全損傷と不完全損傷の2つに分けられる
脊髄損傷の症状
- 症状は損傷した部位による
- 基本的に高い位置で脊髄損傷が起こると、重症になる
- 首の位置で損傷が起こると(頚髄損傷)、首から下の感覚や運動などに障害がでる(部位によっては呼吸ができなくなり植物状態や死に至ることがある)
- 場所によっては下半身のみの症状になったりする
- しばしば出る症状には次のものがある
- 運動
麻痺 - 感覚障害
- 排尿
排便障害
- 運動
- その他に
自律神経 障害が起こり、血圧や体温が一定に保たれなくなることもある
脊髄損傷の検査・診断
- 画像検査:骨折がないかなどを調べる
レントゲン 検査CT 検査MRI 検査:脊髄 そのものの障害を調べるために最も重要な検査
脊髄損傷の治療法
- 治療
- 手術:関節固定術(
背骨 の固定を行い、リハビリテーションを早期から行えるようにするため、あるいはそれ以上症状の進行を起こさないために行う) - 薬物療法:
ステロイド薬 が使用されることもあるが、それを含め、確実に有効とされる治療薬はない - 筋弛緩薬:脊髄損傷を起こすと筋肉は過剰に固くなってしまうため、それを柔らかくするための
対症療法 - 鎮痛薬:手術後の痛みを軽減する
- リハビリテーション:生活に必要な動作の獲得、体の働きを一部改善する
- 手術:関節固定術(
- 長期的な経過
- 長期的にリハビリを行い、残った体の中での働き(動く筋肉や感覚)を使って生活や職業復帰ができるようにすることが必要
- 下半身
麻痺 で車いす生活になることもあるため、必要に応じて生活しやすいように生活環境を調整すること(家の改修など)が必要 - 排便
- できるだけ便が柔らかくなるような食事を心がける
- 便秘薬も使う
- 必要に応じて摘便(指で便をかき出す)なども行う
- 排尿
- 尿が溜まった感覚がない場合は時間を決めて排尿する
- 尿道口から膀胱まで細い管を挿入し、管を介して排尿する
脊髄損傷に関連する治療薬
筋弛緩薬
- 脳から筋肉への筋肉緊張の伝達を抑え筋弛緩作用をあらわし、痛みやしびれ感などを緩和する薬
- 筋肉の緊張状態が続くと、肩こり、腰痛、頭痛などがおこりやすくなる
- 筋肉の緊張は脳から脊髄を経て筋肉に指令が伝わることでおこる
- 本剤は脳→脊髄→筋肉と伝わる筋肉緊張の伝達などを抑えて筋肉の緊張を緩和する作用(筋弛緩作用)をあらわす
- 筋肉がつっぱったまま動かなくなる痙性麻痺などに使用する薬剤もある