かぜ(きゅうせいじょうきどうえん)
かぜ(急性上気道炎)
鼻やのど(上気道)が炎症を起こしている状態の総称。原因はほとんどがウイルス感染であるため、抗菌薬を使用するメリットに乏しい
26人の医師がチェック 328回の改訂 最終更新: 2026.01.06

風邪(急性上気道炎)で気をつけたい日常のこと

風邪は基本的に自然治癒するウイルス感染症で、皆さんがかかる病気です。よくあることだからこそ、正しい知識を持っておくことは重要です。ここでは風邪の予防法や、ひいたときの対策・注意点などを解説します。

1. 風邪になったらどんな食べ物を摂るとよいのか

栄養や食材について

まず前提として「どのような栄養や食材を摂れば風邪が早く治るのか」という質問に関して医学的にしっかりと証明されている答えはありません。ただ、間違いなく言えることとしては、風邪で熱が出ている場合には汗も出ますし、体から水分の蒸発も増えるので、意識してしっかりと水分を摂ることは重要です。ただの風邪であれば、風邪そのものは基本的に自然治癒しますが、風邪による脱水症の影響で脳梗塞心筋梗塞などの血栓症を起こしてしまうケースは高齢者などではしばしばみられます。

また、風邪に対してビタミンを意識して摂取すると風邪の治療に役立つという意見もありますが、特に医学的に証明されているようなことはありません。ビタミンB、ビタミンCに関しては多めに摂っても有害にはなりにくいので、意識して摂っていただくぶんには構わないと思います。ビタミンAは過剰に摂取すると有害であることが分かっているので、ほどほどにしておきましょう。

ビタミンAは粘膜などを正常に保つことなどに必要な栄養です。緑黄色野菜、乳製品、レバー、うなぎ、イカなどに多く含まれています。

ビタミンBは疲労の回復や粘膜の維持など、多くの方面で必要な栄養です。豚肉、大豆、乳製品、うなぎ、レバーなどに多く含まれています。

ビタミンCはミネラルの吸収を助けるなど多彩な作用があります。柑橘類、ピーマン、ブロッコリー、イチゴ、アセロラなどに多く含まれています。

医学的に特に多く摂っておくべき、と分かっているような栄養素や食材はないので、過剰に意識せず、しっかり水分を摂って休むことを最優先していただければ良いと思います。

食事や料理のレシピに関して

食事に関しても、「どのような食事を摂れば風邪が早く治るのか」という疑問に関して医学的にしっかりと証明されている答えはありません。一般論として、消化のよく食べやすいものを摂ることをお勧めします。水分に関しては意識してしっかりと摂る必要がありますが、1日や2日であれば多少食事量が減ってもすぐに体力が大きく落ちることは無いので、吐き気がある場合や、喉が痛くて食事が進まない場合などは、無理をしすぎず食べられる範囲で食べましょう。

消化のよい食事の例としては、おかゆ、うどん、食パン、ジャガイモ、豆腐、白身魚、赤身肉、人参、カボチャ、キャベツ、大根、りんご、バナナなどが挙げられます。脂分や繊維質が少ない食材、料理は消化が良いと考えられます。

逆に消化が悪い食事の例としては、ラーメン、そば、コーンフレーク、さつまいも、こんにゃく、納豆、おから、油揚げ、生卵、目玉焼き、タコ、イカ、貝類、青魚、霜降り肉、とんかつ、ソーセージ、ハム、ごぼう、れんこん、たけのこ、オクラ、きのこ類、わかめ、昆布、ひじき、キウイ、スイカ、ドライフルーツなどが挙げられます。

消化が悪いものを全部避けなければいけないわけではありません。あくまでお腹の調子がよくないと感じたときに、油ものや繊維が多いものをたくさん食べないといった程度の目安にすれば十分でしょう。

2. 風邪になったらどんな飲み物を飲むとよいのか

風邪に効く飲み物はあるのか

残念ながら「何を飲めば風邪が早く治るのか」という質問に関して医学的にしっかりと証明されている答えはありません。ただ、間違いなく言えることとしては、風邪で熱が出ている場合には汗も出ますし、体から水分の蒸発も増えるので、意識してしっかりと水分を摂ることは重要です。ただの風邪であれば、風邪そのものは基本的に自然治癒しますが、風邪による脱水症の影響で脳梗塞心筋梗塞などの血栓症を起こしてしまうケースは高齢者などではしばしばみられます。スポーツドリンクや、可能であれば薬局などで売っている経口補水液を飲むとよいでしょう。

その他に風邪の際によく飲まれるものとしては、栄養ドリンク、甘酒、たまご酒、オレンジジュース、しょうが湯、ゆずドリンク、ココア、紅茶、チキンスープ、など様々ですが、それらの効果に関してはハッキリしません。風邪で辛いときに、飲みやすいものであれば飲んでいただいて構わないと思います。栄養ドリンクに関して別のページでも解説しています。

お酒は飲んでも良いのか:ビールや日本酒など

風邪をひいたときにアルコールを摂取して、風邪が治るまでの期間がどう変化したかを調べたしっかりとした研究結果は無いので確定的なことは言えませんが、医学的に考えてお酒の摂取は推奨できません。理由としては例えば以下のようなことが挙げられます。

  • 飲酒により、風邪の際の脱水症状が助長される
  • 睡眠の質が悪化することで体力を消耗する
  • 風邪薬との併用で効果が強くでたり弱くなる可能性がある

風邪のウイルスをアルコールで消毒できるから飲酒は有効、というのは迷信です。体に感染しているウイルスにアルコールが直接作用するとは考えにくいからです。

甘酒、たまご酒、しょうが酒、ホットワインなど風邪の際に飲まれることがあるお酒も、アルコールを含んでいる限りは同様に有害と考えられます。もし飲むにしても少量にしてください。多く飲めば上記のような弊害があることは間違い無いでしょう。

3. 風邪になったらお風呂には入らないほうが良いのか

高熱があるときにお風呂に入ってはいけないと言われることがありますが、これも正しいことかどうかは分かっていません。むしろ欧米などでは発熱した子供を積極的にぬるま湯につからせて熱をとることが良いと考えられている地域もあります。特にデータがあるわけではありませんが、ひどい高熱でぐったりしているような状況でなければ、お風呂に入っても問題はないと思います。体力を著しく消耗するような長風呂などはお勧めできません。

4. 風邪になったら運動は控えたほうが良いのか

結論から言うと、風邪に運動が良いか悪いかも医学的な正解は分かっていません。「運動して体温を上げると、免疫力が上がるので風邪が早く治る」、「腹痛や吐き気が無ければ運動してOK」、「風邪の初期だったら運動した方がよい」、「有酸素運動ならばOK」、「ヨガをすると早く治る」、など様々な意見があります。しかし、いずれも医学的にしっかりとした根拠は無い話です。

少なくとも、高熱があってぐったりしているときに無理やり運動するようなことは、体力を消耗しますし、危険ですので避けた方が良いと思います。

5. 風邪になったら自宅で安静にしたほうが良い? 病院にかかったほうが良い?

病院にかかったほうが良いのはどんな場面か

結論から述べると、以下の通りです。

  • ただの風邪と思うならば、基本的に医療機関を受診する必要はない。(ただし、もともと別の病気があり、敷居を低くして受診するよう指示されている患者さんは例外)
  • 病院を受診しても、風邪を早く治すことはできない。
  • ただの風邪としては症状が長過ぎる、強すぎる、症状の出方がおかしい、など違和感があれば医療機関を受診するべきである。
  • 一度は風邪と診断されても、症状がどんどん悪化していく、風邪としてはおかしいと感じたら再受診する。(どんな名医でも、本当に初期に受診された場合には、仮に重病だったとしても正しく診断できるとは限りません)

まず前提として、一般的な風邪を早く治すことができると証明されている治療は何もありません。風邪は基本的に自然治癒するウイルス感染症です。ウイルスが原因の病気に対して抗菌薬抗生物質)を使っても全く効かず、風邪の場合にはむしろ有害となりうるので、風邪に対して抗菌薬を使用することは推奨されません。抗菌薬以外の治療薬にしても、いずれもつらい症状を緩和(対症療法)するための薬であり、風邪そのものを早く治すことはできません。本当にただの風邪であれば、つらいところわざわざ混んでいる病院に行ったり、薬局に行ったりして体力を消耗するよりは、自宅でゆっくり休んでおくということは十分合理的な選択と言えるでしょう。

特に効果が証明されている治療というわけではありませんが、一般論として栄養や水分、睡眠をしっかりとって、よく休まれることをお勧めします。

風邪である限りは基本的に数日で自然に治癒していきます。むしろ、風邪で病院を受診する最大の意義は、風邪症状に隠れている重大な病気を見逃さないことです。風邪として疑いを感じないような状況であれば、通常は医療機関の受診は特にお勧めできません。

風邪では何科にかかると良いのか

前項で解説したように風邪で医療機関にかかることを無条件にはお勧めできません。しかし、なんらかの理由で受診されることはもちろんあるでしょう。

そのような場合には内科や小児科の受診をお勧めします。一般的な内科医や小児科医であれば、風邪は十分に診なれているので、問題なく診てもらえると思います。基本的には電話で診てもらえるか問い合わせてから受診するとスムーズなケースが多いでしょう。

内科や小児科以外では、喉や鼻の症状が主であれば耳鼻科、咳や痰が特に目立つ大人の場合には呼吸器内科の受診でも良いと思います。

6. 流行する風邪の対策として気をつけるべきこと

流行りだす前に打っておきたいワクチン(予防接種)

ここでは主に大人に関して解説します。子どもの受けるワクチンスケジュールに関しては下で別に解説しています。

風邪とはあまり関係ないものも多いですが、大人が受けられるワクチンには以下のようなものがあります。

なお、百日咳のワクチンは日本では子どものときに4種混合ワクチン・5種混合ワクチンで接種しますが、大人が使える百日咳ワクチンはありません。欧米では大人用の百日咳ワクチンも使用されています。

麻疹風疹水痘ムンプスあたりは子供のときにワクチン接種をしていなかったり、ワクチンによる免疫が弱くなってきている場合があります。可能であれば、ご自身が抗体を持っているか医療機関でチェックしてもらい、必要であれば予防接種を受けると良いでしょう。特に風疹ワクチンは妊娠する可能性のある女性やパートナーの接種が重要です。これらのワクチンに関しては風邪の解説からやや話が逸れるので、それぞれ麻疹風疹水痘流行性耳下腺炎、の項をご覧ください。

「流行りだす前に打っておきたいワクチン」ということで言うと、まずインフルエンザウイルスに対するワクチンが挙げられます。高齢者や持病がある方では特に強くお勧めしますが、健康な子供や成人でも予防接種をしておくメリットは十分あるでしょう。インフルエンザワクチンに関しては別のページで詳細に解説しています。

また、時期によって流行が目立つようなものではありませんが、肺炎球菌ワクチンを接種しておくと、肺炎にかかる確率を減らすことができるので、高齢者や持病がある人はやはり接種しておくことをお勧めします。

流行期には手洗い・うがいを忘れずに

手洗いは手についたウイルスが鼻や口から侵入するのを防ぎます。指の間、爪、手の甲などは洗い残しが多いところなので意識して洗うようにしましょう。手を濡らして拭くだけ、というような手洗いでは意味がありません。可能なかぎり石鹸を使用して、最低でも15秒くらいは時間をかけて洗ってください。

うがいも日本ではひろく行われている風邪の予防法です。うがいが風邪予防に有用であるというデータはさほど多いわけではありませんが、京都大学からの報告で、水でのうがいによって風邪が40%減るというものがあります。この報告では、消毒液を使ったうがいではむしろ風邪は減らせなかったとしており、喉にいる正常な菌まで殺してしまっていることが良くないのではないかと考察しています。

他にも緑茶でのうがいが良いとする報告、緑茶と水道水では変わらないとする報告などいろいろありますが、基本的には水道水でのうがいをして頂ければ良いと思います。

参考文献
Satomura K, et al. Prevention of upper respiratory tract infections by gargling: a randomized trial. Am J Prev Med. 2005; 29: 302-7.

流行期にはマスクの着用も

ウイルスそのものは市販マスクの生地の穴よりもかなり小さいので、一般的なマスクがウイルスの通過を防ぐ効果は実は十分でありません。ただし咳やくしゃみで飛散する、ウイルスが含まれた飛沫を防ぐ効果はあり、風邪をひいている患者さんがマスクをつけるのは周囲に感染を広げないために特に有用でしょう。風邪をひいていない方も、マスクを着用することによって、咳やくしゃみなどで空気中を漂っている飛沫を直接吸い込んでしまうことは防げると考えられます。

アルコール消毒は有用か

アルコール消毒液を手や指に擦り込むことは、風邪の予防に有効と考えられます。ただし、流水での手洗いをせずにアルコール消毒だけ、という使い方では万全の手指衛生とは言い難いです。なぜならば、風邪の原因で最も多いライノウイルスはアルコール消毒に抵抗性で、アルコール消毒では十分な効果が得られません。ライノウイルス以外にも、急性胃腸炎を起こす原因であるノロウイルスなどもアルコール消毒が有効でないウイルスとして有名です。

7. 風邪が長引く場合に考えること

風邪は基本的に自然に治癒する鼻や喉などのウイルス感染症です。不自然に長引く風邪の場合には、単なるウイルス感染以外に何らかの病気が隠れていることがあります。風邪が不自然に長引く場合には基本的には医療機関の受診をお勧めしますが、長引く症状別に考えられる状況をここでは解説します。

咳が治まらない

風邪ではしばしば咳がでます。風邪の咳では多少の痰が絡むこともありますし、ほとんど出ないケースもあります。風邪による咳であれば風邪の治癒とともに、数日から1週間くらいの単位で治ることが一般的です。ただし、感染後咳嗽(かんせんごがいそう)といって、風邪で空気の通り道(気道)が傷ついてしまうことによって長期的に咳が出やすくなることもあります。長い方では月単位で感染後咳嗽が続くケースもあります。

咳は風邪でよく見られる症状ですが、以下のような病気が隠れていることもあります。

風邪をひいただけで、上に挙げたような病気を疑う必要は全くありませんが、風邪としては咳が長過ぎる、咳が強すぎる、症状の出方がおかしい、咳に加えて38℃以上の発熱が4-5日以上続いている、息苦しさがひどい、など違和感があれば医療機関を受診しておく、というスタンスをお奨めしたいと思います。目安として2-3週間以上続く咳はただの風邪ではないことを疑って受診するのに十分な理由と思われます。

咳が続くというのはよくある症状なので、まずはかかりやすいクリニック・病院の受診で構いませんが、大人の場合には呼吸器内科が専門とする症状になります。特にかかりつけなどがなければ、呼吸器内科がある医療機関を優先的に受診すると良いでしょう。

発熱が続く

大人の風邪ではそもそも38℃以上の発熱が出ないこともよくありますが、仮に38℃以上の発熱があっても、風邪は基本的に自然に治癒するウイルス感染症なので、特に治療しなくても数日以内には解熱するはずです。子供の場合にはただの風邪でも39℃以上の発熱になったり、数日続いたりすることはあります。しかし、年齢によらず、4-5日以上38℃以上の発熱が続くというのは、自然に治癒しているとは言いがたく、風邪以外の病気が隠れている可能性が高くなってきます。

様々な病気の可能性がありますが、風邪のような症状であれば、隠れている病気としては肺炎が最も強く考えられます。ただの風邪だと思っても、38℃以上の発熱が丸3日経っても治らないようなケースでは医療機関を受診したほうが良いでしょう。

発熱の初期にあまり心配する必要はありませんが、5日以上にわたって熱が続くような風邪もどきでは、例として以下のような病気も考慮されます。(熱が出る病気を挙げはじめるとキリが無いので、一例になります。)

鼻水・鼻づまりが治らない

風邪ではしばしば鼻水が出ます。風邪ではウイルスが空気の通り道(気道)に広範囲な炎症を起こすため、鼻関連では鼻水(鼻汁)、鼻づまり(鼻閉)、くしゃみ(噴嚔:ふんてい)などの症状が出ます。

風邪の代表的な症状である喉の痛みや咳に関しては、放置しておくと命の危険もあるような大変な病気が隠れていることもたまにありますが、鼻水やくしゃみに関しては幸い命に関わるほどの重病が隠れているケースは稀です。

風邪ではない鼻水や鼻づまり、くしゃみの原因としては以下のようなものが挙げられます。

1-2週間以上にわたって鼻水や鼻づまり、くしゃみなどの症状が続く場合にはアレルギー性鼻炎慢性副鼻腔炎などの可能性も考えられます。そのような場合には耳鼻科を受診することをお勧めします。

8. 妊婦の風邪の注意点

個人差はありますが、妊娠中は基本的に風邪に対する抵抗力があまり高くないため、風邪をひきやすい状態になります。妊娠中は特に風邪には気をつけて頂いている方が多いと思いますが、それでもひいてしまうことはあるでしょう。ここでは妊娠中の風邪に関する注意点や対処法に関して解説します。

妊婦の風邪の症状

妊娠中に風邪をひいても基本的な症状は変わりません。つまり、鼻水、喉の痛み、咳、痰、鼻水、発熱、寒気などが主な症状となります。風邪のウイルス自体が羊水や胎児に直接影響を与えることは無いと言われているので、風邪をひいても過度に心配する必要はありません。

ただし、咳が続くとお腹が張ったり、高熱が出ると胎児の脈が速くなるなどの変化が起こることはあります。切迫流産切迫早産のリスクがあると言われている方ではお腹の張りは危険なことがありますし、高熱が続くと胎児に負担がかかることもあるので、そのような場合には医療機関を受診したほうがよいでしょう。

妊婦の風邪の治療法

基本的に風邪は数日で自然に治るウイルス感染症であり、風邪のウイルス自体が羊水や胎児に直接影響を与えることは無いと言われているので、一般的な風邪として何ら不自然な点がなければ、医療機関を受診せず、薬も飲まないで、しっかりと水分と休息をとって家で休んでいて良いでしょう。

ただし、以下のような場合には医療機関を受診しておくことをお勧めします。

  • 38℃以上の発熱が数日以上続く(高熱で胎児に負担がかかるので、解熱薬を使うかどうか相談するため。また、風邪以外の病気が隠れている可能性もあるため。)
  • 咳が週単位で続く(咳が続くと腹圧があがり、状況によっては流産早産のリスクが高まる可能性があるため。また、咳喘息など風邪以外の病気が隠れている可能性もあるため。)
  • 皮膚に発疹が出てくる場合(風疹水ぼうそうりんご病など胎児への影響が懸念される「風邪もどき」の病気である可能性があるため。)
  • その他、ただの風邪としては症状が長過ぎる、強すぎる、症状の出方がおかしい、など違和感がある場合

医療機関を受診する際、問題はどこにかかるかですが、まずは普段通っている産婦人科に電話で相談することをお勧めします。かかりつけの産婦人科で診てくれる、かかりつけの病院の内科で診てくれる、近所の内科に電話してから行くよう指示される、などのパターンがあります。飛び込みで行くと、他の妊婦さんにうつる危険があるので断られてしまったり、内科でも妊婦さんの風邪は診られません、と言われてしまうケースもあります。

また治療薬についても注意が必要です。市販薬でも妊娠中に飲むことが望ましく無いものも多くあり、医師や薬剤師に相談してから飲むようにしましょう。特に妊娠2ヶ月から4ヶ月頃は胎児の重要な器官が形成されていく時期でもあり、胎児が薬の影響を最も受けやすいとされています。

妊娠する前に打っておきたいワクチン

風邪とはあまり関係ないものも多いですが、一般的に大人が受けられるワクチンには以下のようなものがあります。

なお、百日咳のワクチンは日本では子供のときに4種混合ワクチン・5種混合ワクチンで接種しますが、大人が使える百日咳ワクチンはありません。欧米では大人用の百日咳ワクチンも使用されています。

麻疹風疹水痘ムンプスあたりは子供のときにワクチン接種をしていなかったり、ワクチンによる免疫が弱くなってきている場合があります。これらの感染症に妊婦がかかる確率はそれほど高くありませんが、かかると流産のリスクが上がる可能性があるものや、生まれつきの障害を残す可能性があるものが含まれています。特に、妊娠中に風疹にかかることで起こる先天性風疹症候群は有名かつ危険な病気です。妊娠する前に、ご自身が抗体を持っているか医療機関でチェックしてもらい、抗体を十分に持っていなければ予防接種を受けると良いでしょう。風疹ワクチンは妊娠する可能性のある女性はもちろん、パートナーの接種も重要です。これらのワクチンに関して、より詳しくはそれぞれ麻疹風疹水痘流行性耳下腺炎、の項をご覧ください。

また、インフルエンザワクチンについても接種しておくことをお勧めします。インフルエンザワクチンは毎年打たないとインフルエンザの予防効果が弱いので、妊娠期間中でも、インフルエンザシーズンと重なる場合にはワクチンを接種しましょう。妊娠中のワクチン接種による胎児への影響は問題ないとされています。また、妊娠中にインフルエンザにかかると流産や早産、低出生体重、胎児死亡などのリスクが上がる可能性があります。仮に妊娠中にインフルエンザにかかったとしても、上記のような問題が実際に起きる確率は高く無いので過度に心配する必要はありませんが、可能ならばワクチンの接種をお奨めします。妊娠中や授乳中のインフルエンザ対策に関しては別のページで詳細に解説しています。

9. 子どもの風邪の注意点

子どもは大人よりもよく風邪をひきます。その一方で、特に小さいうちは自分で症状を言い表すことができないので、保護者の方の不安も大きいことでしょう。ここでは子どもが風邪をひいた時の注意点や、理想的なワクチン接種のスケジュールに関して解説します。

新生児の風邪

子どもが38℃以上の熱を出すことは決して珍しいことではありませんが、生後3ヶ月未満の赤ちゃんが38℃以上の熱を出している場合には要注意です(「新生児」は生後28日未満を指します)。この時期は母体からもらった免疫力で守られており、本来は発熱はほとんど見られない時期です。この時期の発熱には重大な病気が隠れている可能性もあり、生後3ヶ月未満に38℃以上の発熱があった場合には急いで小児科を受診してください。入院が必要になるケースもしばしばあります。

熱以外の風邪症状、つまり鼻水、咳、下痢などの場合には程度にもよりますが、ぐったりしている様子が特になければ数日程度までは様子をみてもよいでしょう。長引く場合や、元気がなくぐったりする場合には小児科を受診しましょう。

新生児以外の風邪

子ども、特に1歳頃までは大人よりも平熱が高めであることが多いです。なので、大人では38℃以上の発熱はそれほど頻繁に見られるものではありませんが、子どもは少し体温が上がるだけでも頻繁に38℃以上の発熱となります。また、生後6ヶ月を過ぎる頃からは母体由来の免疫力が徐々に落ちてくるため感染症にかかりやすくなります。このように、子どもは感染症に対する免疫も未熟ですし、すぐに38℃以上くらいの熱が出てしまうので、一般的には数日以内で治まる程度の38℃以上の発熱であればただの風邪として特段心配しなくてよいでしょう。ただし、生後3ヶ月未満に38℃以上の発熱があった場合には急いで小児科を受診してください。

一般的な風邪以外に赤ちゃんがかかりやすい感染症としては、水痘(水ぼうそう)突発性発疹アデノウイルス感染症(咽頭結膜熱:プール熱流行性角結膜炎:はやり目)、ヘルパンギーナインフルエンザなどがあります。4-5日以上38℃以上の発熱が続く場合には、ただの風邪以外の感染症や川崎病なども心配されるので、小児科を受診するようにしてください。

熱以外の風邪症状、つまり鼻水、咳、下痢などの場合には程度にもよりますが、ぐったりしている様子が特になければ数日程度までは様子をみてもよいでしょう。長引く場合や、元気がなくぐったりする場合には小児科を受診しましょう。

子どものワクチンスケジュール

子どもが受けるワクチンには多くの種類があり、1つのワクチンを複数回打つ必要があるものも多いので、子どものワクチンスケジュールは複雑です。

子どもが打つべき定期接種のワクチンには以下のようなものがあります。

日本小児科学会:予防接種スケジュールより)

また、子どもが打つことのできる任意接種のワクチンには以下のようなものがあります。

スケジュールは複雑であり、また推奨される接種内容やスケジュールは変更されることがあるので、日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュールや、当社のコラムを参照のうえ接種し、接種した記録をしっかりと保存しておくようにしましょう。

ワクチンの接種に関しては、同時に複数のワクチンを接種しても効果や副作用の面で問題はないとされています。日本では厚生労働省の定期接種実施要領に「2種類以上の予防接種を同時に同一の接種対象者に対して行う同時接種(混合ワクチンを使用する場合を除く。)は、医師が特に必要と認めた場合に行うことができること」との記載があるなど、従来特別な事情が無い限りは同時接種は控える傾向にありました。しかし、海外では同時に複数を接種することが一般的であり、何度もワクチン接種のために受診するのは大変なので、近年は複数ワクチン同時接種を推奨する動きが高まっています。

10. 喘息持ちの人が風邪になったら

咳喘息気管支喘息を持病として持っている場合には、風邪によって喘息発作を起こすことがあるので注意が必要です。まずは風邪の予防が大事なので、手洗いやうがいをしっかりすることは重要でしょう。また、毎年インフルエンザの予防接種をしておくことをお勧めします。

気をつけていても、もちろん風邪をひいてしまうことはあるでしょう。大した症状がなければ喘息持ちでない方の風邪と同じように、水分や休息をしっかりとって様子をみて頂ければよいと思います。

発作が起きてしまった際には、ほとんど自覚しないわずかな胸苦しさや咳から、会話や歩行ができなくなるほどの高度発作まであり、喘息発作の重症度は様々です。発作が起きてしまったらどのようにすれば良いかは患者さんによって異なるので、喘息治療の主治医に確認しておくのがベストではあります。

発作が起きてしまった時の一般的な対応としては、なるべく安静にしておくのが無難でしょう。既に処方を受けている方は短時間作用型β2刺激薬(SABA)の吸入を行います。効果が不十分であれば1時間までは20分おきに吸入を繰り返し、以降は1時間に1回を目安に吸入します。もともとシムビコート®を処方されている患者さんの場合には、発作出現時に1吸入、数分間経過しても発作が持続する場合にはさらに追加で1吸入する使い方もあります。ただし、患者さんによって実際の使用方法の指示は異なることがありますので、主治医の指示を優先してください。

これらの対応で様子をみて症状が消える場合、ピークフローメーターを持っている患者さんでは良い時の値の80%以上が出る場合、このような時には自宅でそのまま様子をみていておおむね問題ないでしょう。

喘息発作が起きたときに、どのような状況になったら救急外来を受診すべきかというのは患者さんによって異なるので、これもやはり日頃から主治医に聞いておくのがベストでしょうが、喘息治療のガイドラインでは以下のような状況のとき受診することを目安としています。

  • 手持ちの短時間作用型β2刺激薬(SABA)の吸入を1時間から2時間おきに必要とするとき
  • 手持ちの気管支拡張薬で3時間以内に症状が改善しないとき
  • 症状が次第に悪化していくとき
  • 中等度以上の喘息症状のとき

ここでいう中等度の喘息発作とは、苦しくて横になれないとか、かろうじて歩ける程度の息苦しさ、を目安としています。またパルスオキシメーターという酸素濃度測定器を持っている患者さんの場合にはSpO2が95%以下の場合、ピークフローメーターを持っている患者さんの場合には普段の80%以下の値しか出ない場合、というのが目安になります。

参考文献
・日本アレルギー学会喘息ガイドライン専門部会/編, 喘息予防・管理ガイドライン2015, 協和企画, 2015
Bousquet J, et al. Budesonide/formoterol for maintenance and relief in uncontrolled asthma vs. high-dose salmeterol/fluticasone. Respir Med. 2007 ; 101 : 2437-46.

11. COPD(肺気腫)持ちの人が風邪になったら

COPD(肺気腫)は主にタバコの煙によって呼吸がうまく出来なくなる病気です。COPDと診断されている患者さんはインフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンを接種しておき、風邪が流行するシーズンではとくに手洗いうがいなどの対策を徹底することをお勧めします。

気をつけていても、もちろん風邪をひいてしまうことはあるでしょう。鼻水が出るだけ、喉が少し痛いだけ、などのように大した症状がなければCOPDでない方の風邪と同じように、水分や休息をしっかりとって様子をみて頂ければよいと思います。

しかし、COPDの患者さんではCOPD急性増悪(ぞうあく)といって、COPDでもともと悪くなっている呼吸機能が、風邪などを引き金として一気に悪化してしまうことがあります。風邪をひいて38℃以上の熱がある場合、普段よりも息苦しさが強く感じる場合、痰の量が増えている場合には、COPD急性増悪発症していたり、肺炎になっている可能性があります。急性増悪は治療が遅れると命に関わることもある危険な状態ですから、上記のような症状がある場合には急いで医療機関を受診してください。