2017.07.11 | ニュース

咳止めの薬で呼吸抑制?ジヒドロコデインリン酸塩が12歳未満禁忌へ

厚生労働省から通知
咳止めの薬で呼吸抑制?ジヒドロコデインリン酸塩が12歳未満禁忌への写真
(C) nadezhda1906 - Fotolia.com

厚生労働省は、咳止めや風邪薬などの市販薬にも使われているコデインリン酸塩水和物またはジヒドロコデインリン酸塩を含む医薬品の安全性の懸念から、添付文書の改訂などを関係者に求めました。

厚生労働省は2017年7月4日に、コデインリン酸塩水和物またはジヒドロコデインリン酸塩(以下「コデイン類」)を含む医薬品を12歳未満の子供には使用させないよう、添付文書を改訂することなどを関係者に求める通知を出しました。

 

コデイン類は神経に対する作用があり、咳や痛みを抑えることから、多くの医薬品の成分として使われています。コデイン類を含む薬剤の中には、市販薬として薬局・ドラッグストアなどで処方箋なしで買えるものもあります。また「こども」「小児用」という名前がついているものもあります。

 

背景として、コデイン類が12歳未満の子供に対して呼吸抑制を起こす可能性が指摘されていました。

たとえばアメリカの規制当局である食品医薬品局(FDA)は2017年4月20日に、コデインに呼吸困難などの恐れがあるとして、12歳未満の子供には「禁忌」とする文書を公表ました。

第3回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会でコデイン類を含む医薬品の安全対策について検討がなされました。呼吸抑制は、コデイン類の代謝に関わる酵素の遺伝的な違いによって現れやすい人がいるとされます。しかし、日本人では当てはまる人が少なく、比較的危険性は小さいと考えられました。

これらをふまえ、予防のために12歳未満の子供には使用させないよう添付文書の改訂などを行うことが決められました。

 

市販薬に含まれる有効成分は包装などに明記されています。咳止めや風邪薬の成分を確かめて、コデイン類を含んでいた場合は、12歳未満の子供には使用しないでください(2017年7月時点では添付文書上で決められたことではありませんが、安全のためには使用しないことが合理的と考えられます)。

漢方薬の成分(生薬)を配合した薬剤の中にもコデイン類を含むものがあります。

もし薬の成分などがはっきりわからない場合には、医師や薬剤師などに相談してください。

とはいえ、これらの市販薬には従来12歳未満の子供にも使われてきたものがあります。日本で死亡例がないことなどもふまえると、コデイン類を含む薬剤を知らずに子供に与えてしまったとしても、深刻な事態をもたらす恐れは非常に小さいと考えられます。

 

コデイン類を含む市販薬を避けるとすると、12歳未満の子供が咳をしていたらどうすればいいのでしょうか。

咳を止める作用があり、コデイン類を含まない市販薬もあります。しかし、子供が風邪をひいて咳をしているような状況では、咳があることがさらに事態を悪化させる恐れは小さいとも言えます。咳はのどに入ってきた異物を排除しようとする体の自然な反応です。

変わった症状がなく元気そうなら、薬は使わずゆっくり休んで体力を回復させるのも十分合理的な選択肢と言えるでしょう。その一方で、咳が激しくて苦痛が強いような場合には、コデイン類を含まない咳止めを使うことで楽になる見込みがあります。

また、咳を特徴とする重い病気のことも考えられます。極端な例としては結核が長引く咳で気付かれる場合もあります。2週間以上続く咳、血痰、その他見慣れない症状がある場合などは、一度診察を受けたほうがいいでしょう。こうした場合には咳止めの薬を使っても早く治る効果は期待できません。

薬の効果と副作用のバランスを知って賢く使うことで、日々の健康維持の役に立ててください。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

薬生安発0704第2号・薬生安発0704第3号「コデインリン酸塩又はジヒドロコデインリン酸塩を含む医薬品の「使用上の注意」改訂の周知について(依頼)」、2017年7月4日

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。